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脱出経路

時間はあまりない・・・・しかし、傷を治さないと魔法も何も扱えない。

このままだとマルがヤバいし、アルルの安否も分からない。


「・・・・・・」


俺はそんなことを思いながら、自分の腹をさすった。

すると、やっぱり痛みが走る、まだまだ癒えては無いだろう。

そりゃそうだろうな、まだ怪我をして、数時間程度しか経っていないんだから。

しかし、絶好のチャンスを落としたのは、かなり痛いな。

あと少しで倒すことが出来ただろうに、この傷のせいで失敗か。


「はぁ」


とにかく、何とか脱出手段を見つけ出さないと不味いよな。

傷が癒えるまで悠長に待っているなんて、そんな愚手は打てない。

だから、どう移動するか、そう言う事を確認しないと不味い。

せめて、少しくらい傷口が塞がってくれれば良いんだがな。


「うーん」


俺は脱出手段を探す為に、周囲を軽く見渡した。

しかし、脱出が出来そうな箇所などあるはずもなく、周囲はコンクリートに囲まれている。

正攻法では、絶対にこの牢獄を脱出することは出来ないだろう。


「脱出口でも探しているのか? まぁ、無駄な行動だがな」

「そうみたいだな、何処を見てもコンクリートの壁ばっかりだ」


脱出することは非常に困難、出来ないわけじゃ無いんだけどな。

ただ、この傷だと脱出不可能だと言う事は間違いない。

こうやって、足止めを食らう事になるとは・・・・嫌になるな。


「抵抗は止めて、大人しく人形になる時を待っていろ」

「あぁ、そうかい」


傷を癒やすことしか出来ないのか、くぅ、この怪我さえ無ければ。

そもそも、この怪我はどうして付いたのか、それは今でも分かっちゃい無い。

まぁ、そんな事はどうでも良いか、今大事なのは、この怪我を治すことだ。


「仕方ない、寝るか」


俺はこの傷での脱出は困難だと判断し、しばらく休む事にした。

その間、ずっと周囲を探っていたのだが、脱出口は見付からなかった。

唯一見付かった気になる物は、牢屋の外に付いている通気口だ、何処に繋がってるんだろうか。

と言っても、牢から出る方法が無いと、あそこを調べられないから意味は無いか。


・・・・それから、10日ほど時間が経過した、怪我はまだ癒えてはいないが

前までに比べれば、比較的落ち着いて来ている、集中してもあまり痛みが走らなくなった。

ここまで怪我が癒えれば、一応戦う事は出来そうなのだが・・・・戦闘は避けたい。

この怪我だと、狙撃銃を放ったときの反動で結構なダメージが俺を襲うことだろう。

そうなると、戦いすぎると傷口が開く可能性が出てくる、そうなれば動けないだろう。


「そろそろ、怪我は治ったかな?」


俺が怪我を押えていると、フードの女の子が牢屋の前に立っている。

フードで隠れているが、邪悪な笑みが浮かんでいるのが分かる。


「うーん、まだ難しそうかな、全く早く治してね」


この女の子を倒すチャンスだ、俺は狙撃銃を召喚しようとしたが

彼女はあと少しの所で牢屋の前から消えてしまった。

あと少し・・・・あと少しの所でまた逃がした・・・・クソ!


「・・・・く!」


急いで牢屋に近寄ろうとも思ったのだが、この怪我で派手に動いて怪我がまた開くのは困る。

これ以上時間を食って、マルが戻らなくなったりしたら大変だしな。

それから、また10日ほど時間が経った、俺の怪我はそこそこ落ち着いてきている。

これなら、多少派手に動いても問題は無いだろう。


「・・・・ふふ、どうやら、そろそろだね、うふふ、随分と待たされたよ」

「はん、何だ? 人形とやらにする準備でも出来たか?」

「そうだね、でも、大事を取ってあと1日かな、楽しみに待ってるよ」


彼女は目を見開き、白い歯を大きく見せた狂気染みた笑顔を俺に向けてきた。

狙撃のチャンスなのだが、番兵の兵士が邪魔で狙えない、嫌な場所に立ちやがって。


「それじゃあね、精々怯えてれば良いよ」

「こら、待て!」

「明日が楽しみだね、うふ、うふ、きひ、きひひ」

「うぇ、気持ち悪い笑い方」


気味の悪い笑い声をだして、彼女は牢の前から移動した。

あの子はかなりヤバいな、出来る限り戦いたくない。


「相変わらず、あのガキは怖いもんだ、笑い方も気色悪い」

「仲間を馬鹿にするのか?」

「あんなガキを仲間なんぞと思ったことはない、ありゃ、ただの狂気だからな」


同じ兵士にもただの狂気なんて言われるなんて、どんだけだよ。


「まぁ、どうでも良いさ、とりあえずお前の寿命が決まったんだ、祝ってやるよ」

「まだまだ、5歳が寿命なんて嫌だね」

「これが現実なのさ、精々人形になって長生きして」


見張りの兵士が話している最中に、周りから大きな警笛が鳴り響いた。


「な、何だ!? 鐘の音だと! 敵襲か!」


敵襲? マルの両親達が動いたのか? にしても、行動が遅い気がする。

あそこまで血気盛んに行動していた兵士が20日間も潜伏して攻撃だと?

てっきり、撤退したのかと思っていたが、まだ撤退はしていなかったのか。

まぁ、何にせよ、これはチャンスだ、敵襲となれば警戒も緩くなるはず。

なら、これを機に脱出を開始するとしよう。


「良かったな、脱出のチャンスだぜ? まぁ、脱出は出来ないだろうが」

「警戒は甘くなるだろうし、出来そうだけどな」

「無理だね、なんせ俺がここにいるんだからよ」


兵士がそう言うと、牢獄の部屋が開く音が聞えてきて

そこから、別の兵士がやって来た。


「おい、敵襲だぞ!」

「分かってる、で? 何だ? 俺も行けってか?」

「いいや、違う、ここの見張りをしっかりしろと伝えに来たんだ」

「端っからそのつもりだ、危険な場所に自分から行くなんて言う馬鹿じゃ無いからよ」

「全くだよな、本当にお前が羨ましいぜ、こんなガキのお守りを理由に戦地に向わないで良いんだから」

「そうだろ? とりあえず、行ってこい」

「ち、覚えてやがれ」


そう言って、報告にやって来た兵士は早足で牢の部屋から出て行った。


「はん、ざまぁねぇぜ」

「何だ? お前さんは行かないで良いのか?」

「当たり前だろ? 誰が好き好んで死にに行くかってんだ」

「そうか・・・・実はここの方が危険だったりするんじゃ無いか?」

「は! 何を馬鹿な事を言って」


俺は狙撃銃を召喚し、非殺傷のサイレンサーカスタムで見張りの兵士を撃ち抜いた。


「な・・・・貴様、ど、どうや・・・・」

「な? 言ったろ? こっちのが危ないって」


見張りの兵士を気絶させた後に、兵士が持っている鍵を無理矢理剥いだ。

そして、牢の鍵を開き、脱出が出来るように状況を変えた。


「よし・・・・後は、あの通気口だな」


俺は倒した兵士を踏み台にして、ちょっとだけ高い台に上り、通気口の中に入った。

しかし随分と狭いな、子供でも通るのが結構しんどいぞ。

まぁ、武器とかは自由自在だから、多少狭かろうと関係ないがな。

さてと、それじゃあ、状況を確認することにするか。


「ふぅ・・・・」


俺は目を瞑り、精神を集中させた・・・・これで周りの音が良く聞える。

・・・・うーん、急ぎ足で動いている足音は100以上、あまり急いでいないのは2人くらいか。

正確には分からないが、おおよそでは分かる気がする。

なるほどな、この能力も結構便利かも知れない、足音の反響でどことなく地形もわかる。


「・・・・はぁ、はぁ」


あぁ、危うく意識が飛ぶところだった、やっぱり極限まで集中すると息が止まるらしい。

そう言う所が無ければ、超便利なんだけどな。


「っと、お?」


通気口を進んでいくと、妙に明るい場所が見付かった。

どうやら、通気口の出口らしい、ちょくちょく上りも通ったし、2階か1階か

あの牢屋が何階なのか分からないから、ここが何階かは分からないんだけどな。

でも、雰囲気的に、ここは1階だろう、となると牢屋は地下だったって事か。

いやいや、でも、その割には窓とかもあったし・・・・山の上だからか? よく分からないが。


「おっと」


通気口の出口から外を見ていると、何人かの兵士達が走ってきた。

それに気が付いた俺は、少しだけ後ろに下がり、隠れた、どうやらバレては無い様だ。

まぁ、そもそも通気口に人が居るなんて普通は思わないからな。


「えっと、他に足音は・・・・」


俺は再び集中をして、周囲を探したが、近くに足音は無かった。

俺はそれを確認した後、通気口を音が鳴らないように開け、出た。

そして、通気口のカバーを元の場所に音を無く戻し、サイレンサーを付けた狙撃銃を召喚した。

これで周辺警戒をしながらバレずに、確実に倒さないとな。


「・・・・・・」


息を殺しながら、抜き足差し足でマルとアルル、そしてフードの女の子。

ついでに敵国の帝王様とやらを探す事にした。

だが、最優先の目標は2人の奪還だ・・・・マルは恐らくフードの女の子と一緒に行動しているだろうから

目印はあるのだが、アルルの位置は未だに分からない。

精神集中しても、動かない奴の位置が分かるわけがないからな。


「集まったな」


俺がゆっくり移動していると、大きめの扉の奥から話し声が聞えてきた。

俺はその言葉に反応して、素早く見えにくい場所に移動、話を盗み聞くことにした。


「それで、今回集めた理由は何だ?」

「簡単だ、今回の襲撃、敵の狙いについての話し合いだ」

「その程度の事で私達を呼んだのかしら? 馬鹿馬鹿しいわね

 狙いが何であれ、片っ端から敵兵を沈めれば良いだけの話よ」

「そんなんだから、貴様は脳筋女と言われるんだ」

「何ですって!?」


どうやら、幹部同士はそんなに仲がよくないように思える。

会話の一言一言で相手を牽制している気がするからな。


「目的を知れば取引も出来る、迎撃も可能だ、出来る限り兵力は温存したい」

「兵士なんて所詮駒よ、温存なんてくだらない」

「あぁ、魔法も使えない役に立たない雑魚はどうでも良い、だが、魔法を扱えるガキは重要だ」

「そうね、魔道兵、催眠術、あと、意味が分からない魔法

 あと1人は価値も無い役にも立たない能力だけどね」

「でだ、それを踏まえての推測だが、恐らく奴らの狙いは最近捕まえた茶色の髪のガキだろう

 もう一方は必要も無い戦力だろうから奴らが奪還などする理由はないだろう」


さっきっから、マルの能力がディスられてるな、使い方を知らない間抜けだ。

実際上手く使えば恐ろしい程の能力だって言うのに。


「と言う事は、あの茶髪の娘を人質にすれば良いのね」

「そう言う事だ、そうすれば戦意も落ちるだろう、もしくは・・・・目の前で殺せ」

「どう殺せば良いのかしら? 心臓を1突き? それとも首をちょんとやっちゃうの?」

「後者だな、その方が強烈な死を見せ付けれる、だが、基本は人質だ、分かったな」

「はいはい、分かったわ」

「殺せば良いのに」


幹部連中は随分と血気盛んらしい、しかし、この会話にフードの女のこの声は無い。


「良いか、私達は勝利をディーアス様に贈るのだ」

「分かってるよ、ディアス」

「と言うか、なんで帝王様とあんたの名は似てるの?」

「私がディーアス様にこの名をいただいたからだ、それだけの事」

「で、その名前か本当に酔狂な奴だ」

「帝王様に忠義を尽くすのは当然のことだ、それとも何か? 貴様らには忠義の意思はないのか?」

「まさか、忠誠を誓っていなければ、帝王様のために戦うなんてするはずが無いじゃないか」

「それもそうだな、それでは貴様ら、作戦を開始してくれ」

「あぁ、で、誰がガキを連れて行くんだ?」

「では、パルス、頼む」

「なんで私なのかしら?」

「テールに預けたら殺してしまうだろうからな、私は前線の指揮がある」

「はぁ、私も最前線で戦いたいんだけど、まぁ、良いわ」


さて、どうするかな、このままだと俺が脱出したことがバレてしまうだろう。

そうなれば、警戒が強くなってしまいそうだが・・・・分断できるだけの兵力はあるのか?

まぁ、どっちにせよバレるのは時間の問題だったんだ、情報を知れただけマシか。

それにしても、さっきの話でアルルの話題が一切出て来なかったな。

最近拘束したというのなら、あいつの話題が出てもおかしくないだろうに。


「それでは、各自行動を始めろ」

「分かったわよ、確か地下よね?」

「そうだ、ほら、速く行け」

「はいはい、命令しないでっての」


そう言って、各々は扉から出て来ようとした。

俺はそれを察知して、視界に入らない場所に移動した。

一応、狙撃銃を召喚して、いつでも対応できるようにVSSを召喚している。

連射は速いが、魔力消費も大きから出来る限り使いたくないが。

だが、俺の心配は無駄だったようで幹部連中は俺に気付かなかったようだ。

俺はそれを確認した後、影から出て周囲を捜索する事にした。

さて、マルとアルルを探し出さないとな。

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