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目が覚めると

意識を失って、どれ程経ったか分からないが

俺は何処かから走る鈍い痛みで目を覚ました。


「う・・・・うぐぅ!」


意識がハッキリとすると同時に、腹部に異常なほどの激痛が走る。

まるで腹の内側から焼かれているような、そんな痛み。

この痛みだけで・・・・も、もう一回意識を失いそうなほどだ。


「う・・・・つぅ」


自分の腹部を見てみると、そこには真っ赤に染まった包帯が巻いてあった。

触ってみたが、血は固まってない・・・・どうやら、まだ血が止まってないらしい。


「・・・・てか、ここ、何処だ?」


痛みにばかり意識が集中して気が付かなかったが、周りもおかしい。

周りは無機質な石の壁、目の前には大きな鉄格子が張ってある。


「どうなってる」


本当にどうなってるんだ? まさか、つ、捕まったか?

マズった、俺が意識を失ってる間に、敵が来たのか・・・・

・・・・そうだ! アルルとマルは何処に居るんだ!?


「アルル・・・・マル・・・・」


激痛のせいで、俺は声を殆ど出せず、ものすごく擦れた小さな声しか出なかった。

そして、その程度の大きさの声で、腹に結構な激痛が走る。


「はぁ、はぁ」


状況は不明、あいつらの安否も分からない、ここが何処かもさっぱり分からない。

それにしても、どうして俺の腹から血が出ているんだ? 

もし、殺すためにやったとするなら、この状況は不自然だ。

殺すために攻撃したのに、どうして手当をして、牢屋に突っ込んでるんだ?

意味が分からない、どうしてこんな事をしているのかも意味不明だ。

それに、結構傷は深いが急所は外れているし、さっぱり分からない。


「うぅ」


だが、急所を外れているからとは言え、痛みはかなりの物だ。

意識を集中させることも出来ないから、銃を召喚するのにも苦労しそうだ。


「・・・・・・」


こうなると、俺が出来ることは考えることだけか。

まぁ、ここが何処かの可能性は2つしか無いから楽だろう。

1つはマルの両親達が俺達を敵と認識して拘束、だが、この可能性は薄い。

なんせ、マルが居るんだから、あいつが言ってくれれば何とかなりそうだし。

だとすると、もう一つの可能性・・・・あいつらの基地だ。


「位置がバレていたのか」


でも、兵士が動いてたような気配は無かった気がするが・・・・

そう言えば、マルの両親が戦って居たのは魔道兵のみだった気がする。

なら、何か? マルの両親達に魔道兵で対応している間に

俺達の方に兵士を派遣してきていたのか? 俺の耳を欺いて?

いや、それは無いはずだ、抜き足で移動したとしても、気が付くはずだ。

そ、そうか、あの兵士達が悲惨な最期を遂げたせいで集中力が散漫になってたんだ!

その間に、移動してきていたのか? いや、違う、俺の狙撃音で動いたのかも知れない。

対物ライフルを消音無しで放ったんだ、馬鹿でかい大きな音が響いたのだろう。

で、それを合図に音がする方に移動した、そして、俺は意識を失い、その間に・・・・クソ!


「やっぱり、浅はかだったか」


感情を表に出して、浅はかな判断をしてしまった。

動揺していたとは言え、注意を行なわなかった俺のせいだ。


「ふん、起きたか、ガキ」

「・・・・・・」


牢屋の向こう側で、長い槍を持った男がこちらを見ている。

どうやら、俺の見張りらしい・・・・はぁ、警戒されてるな。

だが、一応思うんだが、むしろ警戒が居ない方が逃げられにくい気がするんだがな。

俺はいつでも銃を出し、制圧し、鍵を奪うことも出来るんだからな。


「何だよ、槍なんて物騒な」

「ふん、ガキのくせに、その傷でも会話が出来るんだな

 そもそも、普通は泣きじゃくりそうなもんだがね」

「この程度でかんしゃく起こしてたら兵士なんてやってられねえよ」


俺の返答を受けて、兵士は少しだけ動揺しつつ、見張りに付いた。

やはり俺の言動は子供にしてはおかしいらしい、しっかし、超痛い。

軽く動揺をしないように言葉を発したが、痛みを堪えるのは辛いな。

俺は自分の傷口を押え、ちょっとだけ後悔した。


「・・・・・・」


しかし、どうするか・・・・この状況下で脱走するのは困難だろう。

見張りの位置も分からないし、腹部の痛みもヤバい。

この状況では逃げだしたところですぐ制圧、あっさり殺されるだろうよ。

理由は分からないが、今は俺は殺されていないんだ、下手に動くのは良くない。


「おい、あんた、なんで俺は殺されてないんだ?」

「教える理由はないだろう」


まぁ、ごもっともだ、いちいち囚人の疑問に答えていたら意味ないしな。


「あぁ、悪いな、そもそも、一介の兵士程度がそんな重要そうな情報を知ってる訳ないか」

「何だと!?」


おぉ、この程度の挑発に乗ってくるとは、精神的には弱いらしい。


「ふん、まぁ良い、どうせ貴様もすぐに人形になるだけだ」

「人形?」


人形だと? 訳が分からないぞ・・・・俺が人形になるわけが無い・・・・

いや、そんな情報よりも重要な事・・・・さっき、あいつは・・・・も、と言った!


「まさか・・・・」


まさか、そんな・・・・いや、でも、あり得ない・・・・そんな事・・・・

あの人形という言葉、多分それは催眠術のことだ!

催眠術で操り人形にされるという、そう言う意味かも知れない。

そして・・・・も、と言う事は・・・・もうすでに誰かが操られている!

その操られている奴は!?


「あぁ、来たな、人形が」

「・・・・・・」


俺は汗を流しながら、こちらに歩いてくるような足音を聞いている。

そして、その足音は・・・・俺の牢屋の近くまで聞え、そして、姿が見えた。


「・・・・・・ま、マル」

「・・・・・・」


マルの目は虚ろだった、だが、その視線で俺を見ていることは分かった。

その目は・・・・道ばたで無様に潰れている虫を見ている様な視線に感じる。

こんな所で潰れて、気持ち悪いし邪魔だな、と、そんな感じの視線だ。


「ま、ま! うぐ!」


牢屋の中に入ってきたと思うと、いきなり俺の首を絞めてきた。

くぅ、ち、力が強いわけじゃ無いが、は、腹の怪我のせいで・・・・力が入らない!


「・・・・お前は、私が・・・・ころ」

「ま・・・・る・・・・」

「・・・・・・」


な、何だ? す、少しだけ・・・・力が弱くなった気が。


「おい! 何をやっている!」

「・・・・・・」

「けほ、けほ」


その様子を見ていた看守が急いでマルを俺から引き剥がした。

そのお陰で、俺は何とか死なずにすんだわけだ。

しかし、さっき・・・・どうなったって言うんだ? 何で、少しだけ力が弱まった?

そもそも、どうしてこいつは催眠術者の指示とは違うであろう動きをした? 分からない。


「やはり、暴走したか」

「・・・・」


マルが暴走して、少し経って新しい奴が姿を見せた。

その子は、あの時外で見たフードの女の子。


「お、お前が・・・・マルを」

「違うね、私は手伝っただけ・・・・でも、まだ早かった」

「あ?」

「まぁ、そこで待ってて、その傷じゃ難しいだろうし」

「待て! うぐ!」


急いで追いかけようとしても、俺は激痛のせいで狙撃銃も出せないし

動くことも出来なかった、その様子を見たフードの少女の口元が少しにやけたのが分かった。

だが、それだけで、彼女はすぐにそこから姿を消した・・・・くぅ。


「マル!」

「・・・・」

「無駄だよ、聞えるわけが無い、漆黒の闇に声なんて届かない」


フードの少女はそう言うが、俺には分かった・・・・マルが動揺したのが。

あいつは、本当に僅かだが・・・・震えている、指先が僅かに動く程度だが。

それでも、震えているのは確かだ・・・・どうやら、まだ完璧じゃ無いみたいだ。

だが、このままだとマルは・・・・あの女の子に完全に操られる!


「う、うぐぅぅ!」


腹に激痛が走ろうと、この機会を逃すわけにはいかない!

マルを・・・・救うには! 今! ここであのフードの子を倒さないと!


「うぐぅぅうぅ!」

「ふん!」

「うぐ!」


しかし、あと少しで狙撃銃を出せそうだったときに邪魔が入ってきた。

さっきまで見張りをしていた男だ、あいつが槍の棒部分で殴ってきた。

流石にこんな状況で、その一撃を受けたら集中なんか出来ない。

あと少しで出せそうだった魔法は、一瞬で解除されてしまった。


「・・・・はぁ、はぁ、ち、ちく・・・・しょう」

「そう焦らなくても良い、その怪我が治ったら・・・・君も楽になれるから」


そう言って、フードの少女は不気味な笑顔をこちらに向けてきた。

その表情からは喜びでは無く、ただただ狂気のみが伝わってきた。

・・・・だが、俺は・・・・この笑顔に似た爽やかな笑顔を・・・・何処かで。


「ふふふ、楽しみ、来て」

「・・・・」


あと少しで、その似ている笑顔を思い出せそうだったのに

彼女が後ろを振り向いたせいで、思い出すことは出来なかった。


「マル!」


そんな事よりもだ、マルを何とかしないと! 叫べば、もしかしたら!


「・・・・・・」

「クソ!」


しかし、マルは俺の呼びかけには答えずに、フードの少女の後を付いていった。

畜生! 結局、救えなかったじゃ無いか! あいつの為にやったのに

それが・・・・裏目に出るなんて・・・・捕まって、あいつは洗脳! アルルは行方不明。

最悪だ・・・・浅はかだった、こんな事になるって想像もしてなかった。


「そら」

「うっつぅ」


傷心していると男の兵士が俺を押し、牢屋の奥に移動させてきた。


「大人しくしていろ、ガキ」

「・・・・・・畜生」


ゆっくりと牢が閉まり、鍵が掛けられた・・・・これで、追えなくなったな。

・・・・・・このままじゃ、俺は・・・・誰も救えないじゃ無いかよ。

何でこんな幼くて、ヤワな体になったんだよ。

こんなんじゃ、1人で何かを変えることなんか・・・・出来ない。

こんな時、あいつならなんて言うだろうか、あのポジティブ馬鹿なら。

もし、俺が行方知れずだったら、あいつはどう動くだろうか。


「いや、どうでも良いか」


こんな状況で、そんな事を考えたとしても・・・・意味は無いだろう。

だが、せめて少しくらい前向きで行こう・・・・そうだな

ここに捕まった事で、俺はあのフードの女の子、そして幹部を全て射程に入れたんだ。

この怪我さえ治れば、まだ逆転の好機はある! 今は怪我を治すことに集中だ。

出来る限り早く治す方法を考えるしか無い。

そして、あの馬鹿を信じてみるのも良いかもしれない、捕まってないだろうってな。

変った物だ、今までならずっとネガティブで行っただろうに。

今はこんな状況でも前向きか・・・・さて、出来るだけ早く怪我を治すよう努力しないとな。

何をするにしても、怪我を治さないと何も出来ないしな。

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