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致命的な水不足

不思議なことにマルが俺を友と認めてくれて3日ほど経過した。


「はぁ、はぁ、中々・・・・川が見付かりませんね」

「そうだな」


その3日間、俺達で俺達はかなり追い込まれている状況だ。

水の備蓄も1日目で切れたし、後は飲まず、食事も喉を通らない状況が続いている。

このままだと、俺達は仲良くぶっ倒れることになる・・・・急いで水を。


「喉・・・・渇いた」

「が、我慢してくれ、今水を探して」


マルの言葉に対し、返事をすると同時にこいつは俺に体重を掛けてきた。


「うくぅ」


流石にこの疲れ切った状態の足と体でマルの体重を支えることが出来るわけも無く

俺はマルに押し倒されるような形でぶっ倒れた。


「マル? ど、どうした?」

「・・・・・・」

「マル!」


擦れきった声でなんとか振り絞った大きな声、しかし返事は無い。

もしかして、限界が来て! いや、冷静になるんだ、呼吸はしている。

密着しているこの状況だから、こいつの鼓動も僅かに感じる。

大丈夫だ、まだ生きている! だが、呼吸は小さく、鼓動も不安定なリズムだ。

生きていると言うだけで、かなりヤバい状況なのは変わっていない。


「リオさん! ま、マルさん! だ、大丈夫ですか?」

「あ、あぁ、俺は大丈夫だ・・・・だが、マルはヤバいぞ」


俺はマルに接触しているこの状況で分かったことを全てリオに説明した。

こう言うのもこいつならよく知ってそうだし。


「なる程、かなり危険ですね・・・・分かりました、私が背負います」

「お、おい、マルは保存食が大量に入ったリュックを」

「そのリュックもまとめて背負いますよ、リオさんに持って貰ったら、今度はリオさんが」


・・・・確かにそうだよな、ただでさえ自分のリュックでも限界近い

それなのにマルの分も背負うとなると・・・・確実に動けなくなる。


「すまない、でも、大丈夫なのか?」

「はは、だ、大丈夫ですよ、体力はありますから」

「でも、お前は俺達以上に水も食事も取れてない、俺はまだ2日だが、お前はもう3日目で」

「ふふ、私はもう大人ですので、体力は十分ですよ・・・・」


あいつはそんな風に言っているが、俺はそれが強がりだとすぐに分かる。

と言うか、こいつの状況を見れば誰でも分かる、異常な程にフラフラしてるし

目も凄く細目で足も手も震えてる、これだけでもかなりヤバい状況だというのはすぐに分かる。


「無理は・・・・うぅ」


でも、俺も限界だ、そろそろ視界も霞んできたぞ・・・・手足も痺れて感覚も鈍くなってきている。

この寝転んだ状態から立ち上がることが出来るかも怪しいくらいだ。


「クソ・・・・マジでやばい」

「もう、あまり時間がありませんね、やっぱりおしっこを飲めば」


普段なら全力で拒絶していただろうが、今、この状況ではそれが正しかったと分かる。

・・・・昔見た記憶があるサバイバル番組でこう言う状況ではそれが正しいと言ってたし。

だが、小便を飲むなんて・・・・現実じゃ出来ないって。


「そうだな」

「はは、な、殴られると思いましたが、やはりそんな状況じゃ無いようですね

 ふ、ふふ、この状況ならリオさんに悪戯しても抵抗され無いでしょうね、ふふ」

「お前・・・・こんな状況で良くそんな戯れ言を言えるな、脳みそ沸いてんのか?」

「ふふ、そんな返しが出来る位、元気なのを確認できて・・・・私は安心しました」


どんな診断方法だよ・・・・と、とにかく、ここでうずくまってても仕方ないか。

俺は震える手足を無理矢理動かし、ゆっくりと立ち上がった。

ただ、立ち上がった直後にすぐにクラッとしてしまう・・・・やっぱ、不味いかな。


「進みましょう、川を探して」


アルルはマルを背負うと俺の方を向き、笑いながらそんな言葉を掛けてくれた。

この状況でも笑っていられるとは・・・・大した精神力だ。


「あ、あぁ」


こんな状況で笑顔を作れるのか? と言う疑問はあったが、俺は普通に笑顔で返すことが出来た。

きっと、この馬鹿の影響だろう、全く・・・・訳が分からない奴だ。

そして、俺達はお互い小さく頷き、再び足を進めた、そして、10分ほど歩いたときだった。


「この音は!」


前を歩いていたアルルがいきなり声を発した、普段の会話程度の声だ。

何かあったのかと思い、俺も耳を澄ませてみた・・・・しかし何も聞えない。


「音なんて・・・・何もしないじゃ無いか」

「良く・・てください」

「なんだ? もう少し、大きな声で言えよ」

「・・・・・・」


アルルが口を動かしているのは分かるんだが、なんて言ってるかは分からない。

と言うか、なんか暗くなってきたぞ・・・・うくぅ、周りが見えにくい。


「・・・・!」

「え?」


あいつは俺の顔を見て、驚愕の表情を浮かべた後、俺の腕をいきなり引っ張り出した。

このフラフラの足で・・・・こいつの歩幅に合わせて移動するのはキツいが。

こんな状況で1人で歩くよりは・・・・まだ、マシかも知れない。

俺はそんなことを思いながらも、半分以上は意識が無い状態で、ただあいつに引っ張られて行った。

しばらく引っ張られていると、俺の殆ど周りが見えていない視界に、いきなり眩しい光が見えた。


「川?」


なんだ? 音がしない川だと? そんな川があるのか? あ、もしかして三途の川?

三途の川の水音なんて聞いたことないが、死人が行き着く川なら、音が無くてもおかしくないか。

じゃあ、ついに俺もくたばるのか? くそう、短い人生だった。


「・・・・!」

「・・・・・・」


アルルの手が離れた、俺はそれと同時に動けず、その場にへたれ込むように座った。

何故だか少し涼しい・・・・死人の通る川だし涼しいのか・・・・も。


「・・・・!」

「むぐ!」


そんな夢を見ているような感覚を引き戻す、強烈に冷たい物が俺の顔に引っ掛かった。

更にものすごく冷たい物が口の中に入ってきたのが分かった。

それと同時に、俺の意識はいきなりハッキリとした物に変わった。


「けほけほ!」

「リオさん! 聞えます!?」


さっきまで殆ど聞えていなかった声が急にハッキリと聞えるようになった。


「な、なんだよ」

「良かった!」


安堵の表情を浮かべているアルル、状況が理解できていない、俺は死んだんじゃ?


「私の言葉に反応しないから驚きました」

「何か言ってたのか? ・・・・てか! え!? 川の音が聞える!」


さっきまで無音だったはずの川の音がハッキリと聞えてきた。

他にも風が吹き抜けるような音も聞えている、さっきまで無風だったのに。


「良かった・・・・そうだ! マルさんにも飲ませないと!」


背負っていたマルを急いで降ろし、あいつはろ過装置に川の水を通し、手皿にのせた。

しかし、マルは意識を失っている状況で、口を開きそうに無い。


「うぅ、口を開かせないと・・・・でも、両手塞がって」

「俺が口を無理矢理開けるから、急いで飲ませろ」

「分かりました」


俺は意識を失っているマルの口を無理矢理こじ開けた。

開いたのはほんの少しだったのだが、水を飲ませるならこれ位で十分!


「飲んでくださいね、ゆっくりと」


口が開いたことを確認すると、マルの口の中に少しずつ水を入れていった。

喉の方を見ていると、しっかりと喉が動いているのが分かる。

どうやら、無意識ながらも水を飲めているようだ。


「よしよし、良い子ですね、そのままゆっくりですよ」

「ん・・・・ん・・・・」


マルの小さな声が聞える、しっかりと水を飲めていると言う良い証拠だ。


「よし! 全部です」

「・・・・」


手皿にあった水を全て飲んだはずなのだが、目を覚ます気配は無い。

もしかして、時間切れ? いや、でも水を飲んでいた音は聞えていた。

確実に生きている筈だ! きっと意識を失って、戻らないだけ!


「く!」


だが、不安を拭いきれない俺はこいつの鼓動を確認するためにこいつの胸に手を当てた。

頼むから動いててくれよ・・・・・・! 俺の手に小さな振動が伝わってきた! 呼吸音も聞える!


「・・・・・・はぁ、生きてる」


こいつの生存を確認できた俺はその場で脱力してしまった。

安心しきったせいだろうな、体のどの場所も動かせそうに無い。


「良かったです・・・・それじゃあ、私もお水を飲みます」

「飲んでなかったのか?」

「先に飲むわけ無いじゃないですか、私はリオさん達を優先しますから」


そんな事を言いながら川の水をろ過装置に移し、出て来た水を手皿で受け取り飲み干した。


「ぷはぁ! 生き返ります!」

「良かったな・・・・」


強烈に安心したせいか知らないが、俺は強烈な疲労感に襲われた。

そして、強烈な眠気に負けてしまいその場で寝てしまった。

目を覚ますと、そこはテントの中で、俺は寝袋の中にいた。

隣にはスヤスヤと寝息を立てているマルが寝ていた。

どれ位眠っていたのだろうか、テントの出入り口の隙間から見える外は明るい。


「あまり寝てないのか」


自分の寝袋のチャックを開き、俺は異常に重たい足を引きずりながらテントから外を見てみた。


「うぅ、眩し」


テントの出入り口の前にすらうぃ、かなり眩しい光が俺を包んだ。

日の光を熱いと感じず、温いと感じたのはなんか感動的だった。

それにしてもこの場所、なんかデコボコしてて座りにくいな。

なんかあったっけ? 黒くて何も無かったように思ったんだけどな。


「いやぁ、良い匂いです」

「は?」


自分が座っている場所を見てみると、そこにはアルルの姿があった。

・・・・何で俺はこいつを下敷きにしているんだ?


「うふふ~、いやぁ、良い匂いで」

「ふん!」

「あぴゃぁ!」


とりあえず殴ることにした、なんか独り言がキモっいし、なんで股の間にいるんだよ。


「おい、何故そこにいた?」

「り、リオさんが乗ってきたんじゃ無いですか、私は幸せだったんで良いんですよ?

 リオさんの大切な所のや」

「オラァ!」

「ぎゃー! はにゃ! はにゃがちぎれまふ!」

「・・・・もう一度聞くぞ? 何故あんな場所にいた?」

「そ、外の状況を見てただけにゃのです! 本当です! 雨降らないかなとか思ってただけにゃのです!」


ふーん、だから入り口付近で寝転んでいたのか・・・・気が付かなかったな。


「ふーむ、寝起きだったから気が付かなかったのかもな」

「分かってくれましたよね!? お願いですので手を離してください!

 私の鼻から赤いお花畑が生まれる前に!」

「よく分からない言い回しをするな、まぁ離すさ、ばっちいし」


アルルの鼻から指を出し、アルルの服でその指を拭いた。


「何故私の服で?」

「ほら、お前の汚れだからお前に返そうかなと」

「まぁ、良いですけど幸せな体験が出来ましたからね」

「今度は口の中に鉄の棒をぶち込むぞ? とびっきり太い奴」


俺は自分の手元にバレットM95を出し、アルルに向って笑顔でそう聞いてみた。


「私の口が裂けちゃうので止めてください」

「じゃあ、鼻の穴か?」

「もっと私が大変なことになりますから勘弁してください」

「ふん」


まぁ、今回は俺にも落ち度はある、だが1番は分かりにくい状態で空を見てたこいつが悪い。

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