大会
練習試合を終え、俺達は合宿場へ移動した。
そして、今回の情報交換を行なった。
「ふんふん、なる程ねぇ」
フェミー達の基本戦術はある程度情報を集めて分かった。
今回は戦車を主に利用しての攻撃を仕掛けようとして居るようだ。
通りで前大会では殆ど活躍をしていなかった戦車が
かなりボロボロになってたわけだ、派手に練習したって事だな。
そんな風に交流を行なっている内に、夏期合宿はすぐに終了した。
今回知り得た情報はかなり役に立った。
まずは基本戦術だが、それは今回と前回では違う方針にしたみたいだった。
去年は総攻撃に隠れて暗躍する戦闘スタイルだったが
今回は殆ど姿を見せないように行動する作戦に変えたみたいだった。
当然、同じ戦術などはしないと踏んではいた。
その予想通りだったと言えば予想通りだったな。
「最初の戦術は囮だったな」
最初の殲滅戦で見せた正面突破作戦。
その作戦は完全に俺達に作戦を読まれないようにした手だった。
だが、去年やっていた戦術だと言う事もあり、それなりに効果的だった。
あそこまで完成度が高い攻め方なら、騙せてもおかしくは無かったな。
でもまぁ、去年の大会で戦ってたわけだから予想が出来た。
「よし、今回の夏期合宿から戦術を練るか」
夏期合宿を終わらせ、無事に母国へ戻った。
そして、今回の夏期合宿で知り得た情報から
ファース地方と戦う時の対策を練る事にした。
大会を練るのは俺とミロルの2人がメインだ。
顧問であるアルル達はこの対策にはあまり口を出さない方針だ。
そもそも、俺達が練った方が戦術のクオリティーが良いと言うのが現実かな。
「ファース地方での戦術として、1番効果的なのは捜索の目を増やすことだろうな」
「どんな風に? 少数で目を広げるでは不意打ちで各個撃破される可能性もあるわよ」
「あぁ、だから、戦術としては2人で個別で展開する感じだ。
そんで、あまり行動をせず、隠れた状況で立ち回る。
そうすれば向こうもこっちの位置を把握するのは困難になるだろう。
完全に網を張るように展開する作戦だ」
「確かに良いけど、どう配置するの?」
「そうだな、こんな感じに」
俺は公式戦が行なわれるマップを用意し、自陣を中心にピンを立てた。
なんかこう言うの面白いよな、作戦をより考えてる感じで気分が良い。
とりあえず、俺が提示した配置はその気になれば合流が出来る配置だ。
発見、集合、攻撃という感じに行動をする。
合図は当然無線で行ない、場所もお互いに把握し合う。
そうすれば、周囲に潜みながらの攻撃をするであろう
ファース女学園への対策になるだろう。
この布陣は殲滅作戦の場合に行なう作戦だ。
「これは殲滅作戦の場合の布陣だぞ。
戦車も投入できるから、戦車部隊は左右に配置だ」
左右に配置をする事で、そこからの奇襲を為にくくすると言う狙いだ。
まぁ、何処から攻めてきたとしても、この布陣なら対処出来るだろうがな。
「まぁ、これはあくまでファース女学園対策だからな」
「えぇ、分かってるわ」
普段の戦法は夏期合宿で披露した布陣だからな。
まぁ、対戦校によって布陣は変えるんだけど。
ファース女学園の場合はさっきの布陣で行なう。
で、ミストラル女学園相手には3方突破布陣だ。
2方に10人編成の部隊を配置し、中央に20人、防衛に20人を当てる。
本命は人数が多い20人で、左右に配置した10人は敵地を包囲するように展開する。
ミストラル女学園の戦術は防衛特化型の戦術だからな。
ミストラル女学園を指揮しているマオは主に防衛戦術を得意としていた。
だから防衛特化型の戦術を行なってきている。
その防衛戦術の粘り強さは凄まじく、半端な面子なら突破される。
恐らくだが、ファース女学園がミストラル女学園と戦ったら
かなり苦戦すると予想できるかな。
前大会は俺達トロピカル女学園とミストラル女学園が当たり
俺達が攻撃特化型の布陣を展開し、突破したがな。
その時の功労者はフレイで、突撃してから防衛布陣を滅茶苦茶にして
その間に一気に攻撃を仕掛け、突破すると言う事で攻略した。
今回はフレイ対策を行なってくるだろうから、そこを対策した。
前大会は基本布陣からの攻撃だったから結構苦労し、フレイが大暴れした。
だから、今回は対策をし、この布陣を用意したというわけだ。
現状、警戒しないと行けないのはミストラル女学園、ファース女学園だからな。
「よし、改めておさらいをしよう」
俺は部員達に今回の話をして、布陣の再確認を行なった。
そして、本番までの間は布陣の確認と展開方法の練習を軽くした。
「…よし、やることはやったな」
そして、俺達は大会へ挑む事になった。
まずは第1回戦、対戦校はバラード女学園。
ミリターク国を制圧した後、降伏した国の学園だった。
この学園は全体的に経験不足が多い。
戦争を主に行なってきた国家では無かったためか
監督も戦術、戦略に強い訳では無かった。
魔法で成長しない子供達もいたようだが、その子供達は殆ど戦っていない。
だから、経験不足、だからこそ、簡単に裏を取れて制圧が出来た。
しかも、今回のルールは運が悪いことに奪還作戦だった。
その為、敵の部長はあっさり限界を迎え、俺達の勝利となった。
尋問特化の国と当った場合、このルールはすぐに決着が着くな。
そして、第2回戦で当った国はマルス女学園。
この高校は攻撃特化型の攻めを得意としている。
「よし、今回の作戦は後方からの不意打ちだ」
「はい!」
マルス女学園はかなりの攻撃特化型の攻めを行なう。
だが、正面突破ばかりを重視してしまうため
防衛の面ではかなり弱いし、不意打ちにも非常に弱い。
だから、後方を取ることで、容易に撃破が出来た。
確かに今回のルールは殲滅戦で攻撃が重要ではあったが
流石にここまで極端な攻めを仕掛けたらこうなる。
前回はミストラル女学園と衝突し、敗北してたな。
攻撃特化型と防御特化型だからな、防御特化の方が有利だった訳だ。
まぁ、経験値もミストラル女学園の方が上だし、仕方ないけどな。
「…あぁ、そうなったか」
そして俺達の2回戦目の間だ、別の場所でも当然大会があった。
その中で最も気になったカードがミストラル女学園とファース女学園。
この大会でどんな戦いがあったかに興味もあり、試合内容を確認した。
結果から言うと、勝利したのはファース女学園だった。
戦いの内容はかなり激しい戦いだったようだがな。
まずはファース女学園は俺達と夏期合宿で戦った戦術で挑んだようだった。
防御特化型であるミストラル女学園に半端な攻めを仕掛けたわけだ。
だから、前半はミストラル女学園の方が優勢だったようだ。
だが後半戦、このタイミングでフェミーが戦術を変えた。
正面を突破する方法を選び、戦車などを投入し仕掛けた。
圧倒的な速度で正面を突破するという手を選んだフェミー。
状況はかなり不利だったようだが、ギリギリの所で牢屋を開けることが出来た。
そこから一気に内側からミストラル女学園を蹂躙し、辛うじて勝利出来た。
最後はフェミーとマオの2人が生き残ったようで、木々の中での攻防戦を仕掛けた。
マオはサポート型であり、あまり1対1の戦いでは実力を発揮できず
フェミーがギリギリ勝利することが出来た。
中々に白熱し、ギリギリの戦いだったな、見てるだけで面白かった。
いやぁ、この白熱の試合を肉眼で見られて良かったよ
前大会の優勝校で良かったって感じだな。
「…よし、準決勝か」
次は準決勝、俺達の相手に選ばれたのはエリバード女学園
ここは攻守共に安定した実力を持っている。
その中で得意なのは奇襲作戦、流石にファース女学園程では無いが
結構危険で、かなり強力な女学園だ。
「ここは基本布陣で行こうか」
「はい」
俺達は少し弄った基本布陣を展開し、迎え撃つ事にした。
と言っても、今回のルールは制圧作戦。
だから、防衛を為ながらの展開を行なう事にした。
1度やられたら救助されないと復活できないからな。
特に中央は何も無い平原にフラッグが用意されている。
だから、周りから狙われ放題だ。
しかしながら、ここを制圧しない限り勝利は無い。
俺は狙撃銃を構え、森のギリギリから敵陣を狙う事にした。
この制圧作戦も戦車の使用が許可されているため
フラッグの制圧に戦車を利用するというのが基本ではある。
あ、来た来た。
「良いね、掛かったかな」
戦車はすぐにフラッグの制圧に移動したが、そこには対戦車地雷を仕掛けた。
だから、その地雷を踏み、戦車は大破する。
そう、向こうから見て、障害物になる場所で大破し、動かなくなったんだ。
「よし! 今だ!」
「はい!」
俺達はすぐに戦車を盾にしてフラッグを制圧した。
戦車を失ったことであちらはかなり動揺し、士気が明らかに低下したのが分かった。
俺達はその波に乗り、一気に敵フラッグの制圧まで挑んだ。
向こうもかなり動揺しながらも攻撃を仕掛けてくる。
だが、攻撃はあまり当らず、そのまま一気にフラッグを奪取。
そのまま時間まで防衛し、俺達の勝利となった。
「よし! 次は準決勝だ!」
「…やはり、お強いですわね」
「あぁ、部長さんか、そっちも中々に踏ん張ったよ。
でも、不用意に戦車を突撃させたのは失敗だな」
「はい、身に染みましたわ、やはりあなた方の方がいつも一枚上手ですわね」
「大丈夫だ、お前らも強くなれるだろう、精神面を鍛えておいた方が良いぞ。
戦術も重要だが、不利な展開で戦闘能力が低下したら元も子もないからな」
「はい、肝に銘じておきますわ」
そして、俺達は決勝戦まで挑む段階まで来た。
今回はその前夜祭みたいな感じで、全員で過ごすことにした。
「…ふぅ、今回も無事に決勝戦まで行けたわね」
「あぁ、だが、1番の問題がそこだ」
「そうですね、油断しないようにしないと」
「まぁ、今は楽しんだ方が良いよ、と言う事でほら、お料理」
「ありがとうございます!」
「うぅ、り、リオさん! 料理が! お、お手伝いをお願いします!」
「はぁ、分かったよ、人数分を2人で用意とか絶対に無理だっての」
「あはは、そうですね」
俺はアルルと一緒に料理を為、人数分の料理を作った。
何だかんだで、俺も料理の腕が上がったような気がする。
たまにアルルやリリスさんに教わってたりするからな。
いつの間にか成長出来てたって事か。
まぁ、決勝戦前夜、俺達はのんびりと身体を休め
決勝戦への覚悟を決めた。
ファース女学園、絶対に勝ってやる!




