練習試合
今日で一気に最終回まで展開しようと思います!
学校は見て回ったな、それじゃあ、そろそろ目的地へ移動しようか。
「よし、全員見て回ったな、何かボロ出したりボロ出させたりしたか?」
「ボロを出した方の宣言はしますけど、出しちゃった方は絶対に宣言しませんよ」
「そりゃそうだ、誰も自分の失敗を発表なんてしたくないからな」
成功は発表したくなるが、成功の方は発表する機会があまりない。
だが、失敗の方は異常なくらいに発表する機会がある。
何というか、意味が分からないと言うか理不尽というか。
しかも、成功した方は大体良くやったな、程度なのに
失敗した方はこっぴどく怒られるからな、あーやこーや。
どうでも良い失敗なのに滅茶苦茶怒られたりもするし
人ってのはどうやら人の失敗を叱りつけ、優越感に浸りたいようだ。
成功した話を聞いても劣等感しか感じないだろうしな。
「まぁ、別に失敗も成功も発表する必要は無い。
後部長に報告すりゃ良いからな、全体で言うのもあれだろう。
さ、それじゃあ、本題に入るとしようか。
学園を見て回ったから、次は合宿場に移動しようか。
と言う訳でフェミー、案内頼むよ」
「かまわないよ、こっちだ」
俺達はフェミーの案内に従い、車に乗り、山奥へ移動した。
その奥には大分大きな旅館みたいな建物があった。
「さ、ここが合宿場だね、同一の建物内でしばらく過ごすことになってる」
「この人数でこのコテージか…足りるのか?」
「1部屋に5人位で寝泊まりすれば行けるよ」
「いや、俺達って少なくとも100人は居るぞ」
「20部屋だね」
「20部屋あるのかよ、しかも最低100人だし」
「20部屋はあるよ、この宿泊施設はファース地方で経営してるんだけど。
ここはほら、スポーツ戦争をする人専用だから、お客さんも居ない。
と言うか、私達が宿泊するから貸し切りだよ、部屋数は50部屋ある。
1つの部屋に5人なら余裕だよ、200人だろうと入る。
最悪の場合は1部屋に10人でも寝泊まりすれば良いじゃん」
「窮屈すぎるだろ、それ」
「まぁ、5人だね、で、顧問の人は3人部屋で寝泊まりすれば行けるよ」
「顧問の人と言っても、他人だったら一緒には無理だろう」
「そっちは大丈夫でしょ?」
まぁ、マナもメルトも同じ家で過ごしてるからな、別に同室でも問題は無いだろう。
「まぁ、こっちは大丈夫だろうが…」
「こっちも大丈夫だよ、ね、先生?」
「……はぁ」
ここまで俺達を連れてきてくれたのはメイルだった。
メイルはスティールの指示でファース女学園のスポーツ戦争部の顧問をしている。
スティールの指示は基本絶対遵守であるメイルは断ることが出来なかったようだ。
「ま、知らない仲ではありませんしね」
「そうだけど、あまり交流はないと…」
「私は良くあるよ、結構戦ってるからね」
「では、今日もやりますか? メルトさん。
それとも今日は特別にリオ様が私と戦ってみます?」
「冗談きついぜ…お前みたいな化け物とやり合うなんてごめんだね」
「これは残念、どれ程の実力に化けているか楽しみでしたのに」
完全に馬鹿にしてる…こいつの実力なら当然だけど。
メルトを超える実力を持っていると言うのは凄まじい。
だったら、アルルなら勝ち目とかあるのか?
いや、無理か…アルルは読み合いが得意なタイプだからな。
メイルは読み合いも出来るし、臨機応変な動きも得意だ。
流石のアルルでも手も足も出ないだろう。
技術面でアルルはかなり劣っているんだから。
「まぁ、そう言う事だから大丈夫だよ、で、私達はここを拠点に動くんだ。
訓練時間は相談した結果6時間、だったよね」
「あぁ、そうだ、10時から初めて16時に終わる計算になるな」
「朝が大分遅いとは思うけど、まぁ、交流タイムだ。
今回の合宿で主に鍛えるのは取引スキルだからな。
戦闘訓練も行なうが、主な目的は取引、やり取り、読み合いだ。
交流の間にお互い読みあって貰うと言うことだよ。
だが、戦闘訓練中も当然読み合いの場になる。
適度に手を抜き、戦術を見抜かれないように立ち回るのがメインだ」
「今回の合宿は情報交換なんて甘っちょろい物じゃない。
情報の奪い合いだ、戦争とか関係なく、そのやり取りは重要だろうからね」
「本当、お前が言うと嫌味っぽいよな、情報の奪い合いとか。
お前の場合、有無も言わず情報を奪ってたのに」
「今は魔法がないからさ、でも、情報の奪い合いは得意だ」
「ほぅ、一方的に奪われたのに言うじゃねぇか」
「あれは私達からして見ればどうでも良い情報なのさ。
あまり調子には乗らない方が良い、本命は見せないよ」
「どうでも良い情報が勝敗には大きく関わってくるんだぜ?
例えば誕生日でも勝敗に大きく関わる場合があるんだからな」
パソコンとかでのパスワードで誕生日を使うケースはたまにある。
だから、誕生日を知っていれば、その誕生日をパスで入力。
コンピューターのロックを解除しての情報奪取も出来る。
意外と侮れない物だ、些細な情報って言うのは。
「…ふふ、そうかそうか、だったらこっちも些細な情報を奪っていくよ」
「奪えるかな? こう言うやり取り、俺は結構得意だぜ?」
「ふふふ、吠え面をかかせてあげるよ」
「それはどっちかな、へ、楽しみだよ」
「…部長達は仲が悪いんですか?」
「いや、あれはむしろ仲が良いよ、リオちゃんの表情見てよ、楽しそうじゃん
「あ、ほ、本当ですね…向こうの部長さんも楽しそうです」
仲が良い悪いかで聞かれると、仲は良い類いに入るだろう。
お互いを意識しているライバル関係に近い。
こう言う関係にある奴はこいつを含めて2人だけだからな。
「さ、楽しませて貰うよ」
「あぁ、そうだな」
「お前らのダンス」
「君達のダンス」
まさか同時に同じ事を言うとは思わなかった。
へ、さぁ、少しだけ楽しくなってきたぞ、こう言うの良いよな!
テンション上がるぜ! くく、楽しみだ!
「それじゃあ、早速始めようか、最初のルールは…そうだな。
お互いの単純な実力が試される殲滅戦でもするか?」
「そうだね、それが良いよ、スタートはこっちだよ」
「あぁ、分かった」
フェミーに案内され、お互いのスタート位置を教えて貰った。
そして、軽い殲滅戦を開始する。
今回、銃器の制限という物を設けてみた。
今回の制限はハンドガンのみ使用という物だ。
その代わり、ダメージがあれば1発アウトだ。
つまり、一撃必殺のルール、公式戦ではそう言うのは無いんだが
今回は特別ルール、ハウスルールだな。
流石にハンドガンのみだと気絶まで持っていくのが難しいからな。
「さてと、装弾も良し、攻撃準備も完了済み。
陣形は問題ありっと、普段の陣形じゃないからな」
「流石に普段通りの陣形では攻めないのね」
「あぁ、あまり意味は無いと思うがな」
こう言う、殲滅戦はどうせ最終的には陣形も崩れるってもんだ。
そこまで陣形が重要であると言うルールでもないしな。
で、今回は50対50の殲滅戦だし、余計に陣形は崩れる。
基本的に臨機応変な対応が求められる人数だからな。
一応、全員揃ってるときは60位で戦う訳だが。
「それじゃあ、始めるとするか50対50、気合い入れて行くぞ!」
「おー!」
「…格闘戦は無し?」
「無しだ、銃だけ使え」
「はーい」
こいつが格闘戦をしたら、向こうが怪我しちまうかも知れないし。
いや、手加減が上手いから怪我はしないかも知れないが
フェミーにルールを確認したときに格闘戦は無しだとハッキリ言っていた。
間違いなくフレイ対策だな、接近戦が多発するこの状況。
接近戦では無類の力を誇るフレイだ、ハンドガンの射程なら
まず間違いなくフレイの方が先に相手を倒せてしまう。
多少の距離があろうと、瞬時に間合いを詰めての攻撃だからな。
それに、この場は山の中、木々が沢山ある状況だ。
フレイはこう言った場面ではより能力が増す。
特に相手が銃器だった場合はもはや勝算などないほどに強い。
その圧倒的な素早さと戦闘センスで木々を素早く壁にして接近し
一瞬の間に相手の銃を弾き飛ばし、すぐに無力化が出来てしまう。
アサルトライフルを使っても結局は同じ事だけどな。
そいつを無効化するにはこちらも接近術を鍛え上げる。
もしくはフレイの動きを完全に熟知し、動きを先読みするしかない。
でもまぁ、例え武器しか使えないという状況だったとしても
フレイの事だ、確実に相手を仕留められる距離まで接近して撃つだろう。
ハンドガンのみでもフレイを完全に無効化は出来ないだろうな。
「流石メインアタッカーだよ、ここまで警戒されるんだからな」
「ふふーん、で? 警戒って何が?」
「いや、分かるだろ? このルールは完全にお前を押さえるためのルールだ」
「そうなんだ、意味ないと思うけどな-」
「それは俺も思う」
「だって、山の中で私に攻撃を当てられるのはリオちゃんくらいだし」
「賭けの要素が大きいけどな」
フレイがこう来るかもと予想して引き金を引くんだからな。
フレイが予想から外れた動きをすれば、俺もフレイを狙えない。
こいつの実力はそれ程にまで圧倒的で正直相手にしたくない。
接近戦でも銃撃戦でもこいつとだけは戦いたくないな。
「その代わり、平原だとめっちゃ弱いがな」
「さ、流石に何人もで同時に撃たれたら避けられないよ、障害物も無かったら」
「あったら全部倒せるけどね、みたいな物言いだな」
「うん、全部倒せるよ? 特にここみたいに木が沢山あったらね
だって、上下に左右、全方向に立体的に動けるんだから」
「本当、お前だけは敵に回したくないよ」
普通はそんな事は出来ないのだろうが、こいつの場合は
簡単に木の上に登ったり、降りたりができる。
これを知ってるのは俺達位だ、公式戦でこれは見せない。
何せ、公式戦では基本的にエリアが分かれているからな。
こいつの性格上、得意な場所で陣取って待機はしないだろう。
だから、どうしても不利な平原とかに出て、それで負けることが多い。
まぁ、不利な地形に出ても、相手を平均で10人は道連れに出来るから文句はないが。
「お、合図だ」
俺達が会話をしている間に、チャイムが鳴り響いた。
これは開始の合図…それじゃ、始めるとしようかな。
「あまり全力は出さないようにしろよな。
相手はこっちの手の内を見ようとしているんだから。
フレイも左右への行動は許可するが、上下には動くな」
「え? 負けちゃうかもだよ?」
「それで良い、これは所詮練習、負けても良いから全部は見せるな。
それじゃあ、始めよう、向こうも手の内は見せてこないだろうが
可能な限り探るように努力しろ、さぁ、スタートだ!」
練習試合、向こうの手の内を何処まで明かせるかが勝負だな。




