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合同合宿

しばらくの間のクラブはひたすらに訓練を行なった。

そして、ようやく戦闘訓練を本格的に行える。


「よーし、準備は整った、大会まで、後1ヶ月程度だ。

 と言う訳で、今回からは本格的に訓練をしていくぞ。

 一応言っておくが、訓練での怪我はくれぐれもしないようにな。

 さっきも言ったが、1ヶ月しか無い、怪我をすれば洒落にならないぞ!

 まぁ、あまり酷い怪我じゃ無けりゃ問題は無いかも知れないが

 怪我は出来ればしたくないだろ?

 まぁ、夏休みをエンジョイしたい奴は別に来なくて良いからな?

 部活に青春を掛けるのも良いが、自分本位でな。

 学生生活とか長いようで短いから、割と後悔するかも知れないからな」

「はい!」

「まぁ、ここに来てるお前らは青春を部活に賭けるんだろう? なら、全力でだ

 やるなら本気で!」

「はい!」

「と言う訳で、今回から早速合宿になるが、予定、大丈夫か?」

「問題ありません!」


まぁ、既にこの合宿の話はしたからな、ここにいる子達は合宿に最初から行くつもりだ。


「さて、合宿先はもう話したと思うが、改めて発表しよう。

 今回の合宿地点はファース地方で、合同訓練を行なう。

 本来なら、この大会直前での合同訓練というのは

 お互いに危険性が生じる、手の内が読まれるという可能性だ。

 だからこそ、あえての合宿となった。

 お互いの手の内を隠してでの戦いでどのような結果になるか、って言うな。

 向こうの部長であるフェミーにも許可は取ってるからな」


現在のトロピカル女学園で最のライバルとなるであろう相手がファース女学園。

大会まで残り1ヶ月の段階での合同訓練など無謀でしかない。

だが、お互いに探りを入れる、その練習には持って来いだろう。


「まぁ、お互いに実力を隠してでの訓練になるだろうが。

 ハッキリ言う、この合同訓練で大事なのは相手をどう探るかだ」


相手は手の内を隠してる、だから、その情報を何とか見つけ出す。

心理戦、正直この訓練は将来にもそれなりに役立つことだろう。

心理戦、読み合い、取引、将来、これは必須だろう。

相手にこっちの手の内を明かさないように相手の情報を探る。


「だがまぁ、騙し合いってのは無しだからな、嘘は駄目だぞ」

「はい!」


どの情報を掲示し、相手のどの情報を手に入れるか。

取捨選択というのは大事だ。


「さて、それじゃあ行くか、と言う訳でま…先生、お願いします」

「はい、お任せください」


何年も時間が経ったことで、車がこの世界にも登場した。

その礎になっているのはミロルが出した戦車だった。

だから、最初はキャタピラだったんだけど、今はタイヤになった。

でもまぁ、インフラはあまり整備されていないから

車で移動する人間はあまり居ない。

だがまぁ、今回みたいな大人数での移動では車を使っている。

その車の運転は全てアルル達だ…んで、俺達も一応は乗れる。

と言っても、乗れるのは俺、ミロルの2人だけなんだけどな。

だが、競技中は俺達2人以外も乗ることが出来るが

やっぱり運転が上手いのは俺達2人だけで、後は下手だったりする。

トラは結構良い線行ってるんだけど、まだまだって感じだ。


「それじゃあ、行こう」

「はい!」


俺達は全員アルルが運転する車に乗り、発射した。

車というか、もうバスだな、いやまぁ、バスも車も同じなのかもだけど。


「うーん! やっぱり車は良いね! 景色が流れていくよ!」

「でも、もう少し速く走れないのかな? 私が全力で走ったら追いつきそうだけど」

「それはあなたがおかしいのよ、フレイ」

「まぁ、アニメとか小説とかじゃ、追いつく奴結構居るけどな。

 それとまぁ、人によっては車より速く走れるんじゃね?

 と言っても、大体スタミナが切れてぶっ倒れるのがオチだが。

 だが、フレイはどうだろうな、こいつの底なしの体力ならいけるかも」

「否定できないのがすごいわね…」

「フレイ先輩はすごいですしね」


すごいを通り越してるように思えるがな。


「ふふん、私は戦況の壊し屋なのだ!」

「結構あっさり倒されてるけどな、そりゃぁ、あの弾幕の中突撃とか馬鹿だし」

「なぁ!」

「流石に弾幕を突破しようとするのは馬鹿だよな…」

「うぅ!」


結構そんな事をやらかすからな、ちょっとテンションが上がるとそうなる。

何か兵士やってたときよりも子供っぽくなってる気がするんだよなぁ。

まぁ、あの時はお互いの命がかかってたし、そりゃあ賢明にもなるか。

そんなこんなで、バスの中でのんびりと話しに花を咲かせた。

しばらくして海を渡り、ようやくファース地方が見えてくる。


「いやぁ、昔はあそこで色々とやったなぁ」

「今じゃ簡単には行けないからな」


本当、ウィンの転移魔法の有用性が良く分かったよ。


「お? あぁ、準備万端って事だな」


目をこらし良く港を見ると、そこにはファース女学園の部員達が待っていた。

その中心には両手を組み、こっちを見て笑っているフェミーの姿があった。

はん、面白いじゃないか、やる気満々って事だな。

そして、俺達は無事に港に着き、ファース女学園の生徒達と対面した。


「ようこそファース地方へ、歓迎するよ、我らがライバル様」

「面倒な言い草だな、フェミー、素直に久し振りだって言えば良いだろ?」

「久し振りって程久し振りじゃないしね、1年振り程度さ」


昨年の大会で会ってるからな、1年振りが丁度良いところか。


「ま、立ち話も何だしどうぞ、案内するよ…私達の学び舎をね。

 会ったことはあっても、学園までは見てないだろ?

 今回みたいな試みはお互い初めてだしね」

「そうだな」


俺達はファース女学園の生徒達に案内され、ファース女学園に移動した。

そこは本来の合宿地点ではないが、まぁ、一応見る分には良いだろう。


「ここが私達の学び舎だよ、他の子達はどうする? 一緒に回る?

 それともペアを組ませて個別で回ってみる? 方針的にそっちの方が良いでしょ?」

「そうだな、組み合わせはどうする?」

「部長同士、副部長同士は確定として、他は適当にって感じかな」

「ランダムねぇ、ま、別に良いか」


部員達は全員ペアを組み、個別での見回りが始まった。

これはお互いの読み合いをする為だからな。

向こうの意思を感じ取って、向こうが隠したい事を読み解く。

逆にファース女学園側は上手く隠し事をして情報を奪われないようにする必要がある。

中途半端な隠し事ならすぐにバレるからな。


「さて、じゃ、俺達は何処を回る? そっちに任せるよ」

「おやおや、探りたい所に誘導したりはしないのかな?」

「…そうだな、じゃぁ戦車を見たいかな」

「ふーん、君は戦車の情報を知りたいんだね、良いよ」


向こうは最初から俺が探りたい所を素直に言うとは思ってないだろう。

そりゃそうだ、最初は様子見、その考え方はあってる。


「さ、これが戦車だよ、車内以外は見てもかまわないよ」

「ふーん」


俺はしばらくの間戦車を見て回った…そして理解した。

どうやら、去年より操縦の腕は上がってるようだな。

傷痕から考えて、練習量も相当な物だろう。

そして、砲塔の損傷…その手入れ箇所を考えて、まだまだ発展途上かな。

どうやら、左への旋回が苦手みたいだ、じゃあ、そこが弱点になるかな。

でも、こっちの戦車は右への旋回が苦手と、お互いをカバーしようとしてるのかね。

そんで、キャタピラの損傷、傷痕も見て…急発進が多いのかな。

だが、こっちはあまり急発進を多用していない。

やっぱりお互いの得意分野が違うみたいだな。


「…ほぅほぅ、なる程ね」

「戦車の外を見て何が分かるんだい?」

「……まぁ、一応は分かるんだ、あれだな、右への旋回が苦手なのか?」

「へぇ、苦手な方向が分かるんだね、こりゃ驚いた」


うん、全機が苦手だとは言ってない、ここが嘘のようで嘘じゃない言葉だ。

ここで全機が苦手だったと言えば、それはハッキリとした嘘になる。

それは流儀に反するような事だ、部長である俺やこいつがそれをしては駄目だ。

俺の方も全機が苦手だとは言ってない、これは相手に誤認させる狙いがある。


「それで? 次は?」

「あぁ、知りたい事は全部分かったから別に大丈夫だ」

「な! まさか!」

「そう、最初に俺が知りたいところを案内して貰ったんだ」

「こりゃやられた…あの流れで最初に1番知りたいところを言うとは。

 まぁ、こっちとしてもそれがバレようとどうでも良い事なんだけど」

「そうだと良いな」

「うぅ、君が何かを言うと、全てに何か裏がありそうで恐いよ」


相手を不安にさせてみるのも、結構重要な手ではある。

戦術だな、特に部長を不安にさせる事が出来たってのは大きい。


「はぁ、恐い恐い、君と普段通りで会話をするのは別に良いけど

 こうやって敵に回してる時の君は本当に恐ろしいよ」

「安心しろ、敵じゃないから、ライバルだから」

「そう言えばそうだったね、敵はいない、敵は必要無いってね」

「敵味方は関係無しにお互いに高めあおうってな」


スポーツ戦争は敵もなく、共に楽しむための競技。

戦争という物騒な単語ではあるが、戦争という悲劇の歴史を

これ以上繰り返さず、そして忘れないために作られた競技だからな。

敵味方という物騒なそれは似合わない…でもまぁ、つい敵とか言っちゃうのはわかる。

俺も無意識に言いそうだし、と言うか、言ってたかも知れないし。


「それじゃあ、後は私が案内したいところを案内しよう」

「そうしてくれ」


俺達2人は読み会いもなく、のんびりと学園を巡った。

結構センスが良い学校だな、お嬢様学校見たいな感じだ。

そりゃな、ファース地方はかなり賑わっているからな。

魔法が制限され、科学技術がメインに台頭してくる状態だし。

まぁ、ミストラル地方もそこら辺、活発になってきてるけどな。


「しかし今更なんだけどフェミー」

「取ったの?」

「お前さんのお父さん、まだ魔法の研究してるんだっけ」

「そうだよ、魔法の有用性を生かそうとね」

「…でも、あんな事があったのに良いのか?」

「父さんはもうあんな事はしない、それは自信を持って言える。

 それにほら、魔法が使える状態で寿命も成長も普通に出来れば大きいでしょ?

 魔法使いを救う方法は確立された、でも、魔法の有用性は大きいからね。

 もし方法が分かれば絶対に世界に大きな改革を起せるからね」

「そりゃそうだが…お前は良いのか?」

「うん、散々な目には遭ったけど、それでも私はこうして無事なんだから」


こいつの父さんが出来る罪滅ぼしはきっとそれだろう。

牢獄にぶち込まれるよりは罪滅ぼしが出来るだろうな。

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