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明らかな動揺

「リオさん、大丈夫ですか? まさか無理してるんじゃ?」

「え? い、いや、何でも無い」


・・・・足が震えていたのか、駄目だな、こんなんで動揺してたら。

落ち着け、精神統一をしろ、大丈夫だ、問題は無い。

落ち着けば良いんだ、動揺をしなければ良いんだ、大丈夫だ、バレたりはしない。


「何だか、リオさん少し様子が」

「何でも無いっての!」

「ひぃ!」

「そ、そんなに怒鳴らなくても」

「す、すまない」


うぐぅ、やっぱりかなり動揺しているな・・・・落ち着かないと。


「と、とにかく進むぞ」

「あ、はい」


俺は動揺を隠しきれずに、そのまま敵基地の方向へと進んでいった。

冷静に、冷静に周囲を観察しながら進まないといけないな。


「ねぇ、大丈夫なの?」

「な!」


俺が前を見ていると、後ろから肩を掴まれた。

後ろを振り向くと、そこにはマルが立っていた。

正直、その様子を見て、反射的にゾッとしてしまった俺がいる。


「そんなに驚かないでくださいよ」


・・・・はぁ、もう少し落ち着かないとな。


「そうですね・・・・そろそろ休みましょうか」

「・・・・すまんな」


仕方ない、今日はもう休む事にしよう。

動揺をしすぎている、こう言うときに強行するのは良くないからな。


「はぁ」


休む事を決定して、準備が終わった、俺はその後に1人で木にもたれ、星を見ている。

綺麗な星空なんだが、何故だか何処か濁っているような、そんな奇妙な感覚だ。

実際にそんな事は無いんだろうが、それでも、そんな風に見えてしまう。


「どうして濁ってるように見えるんだか」


多分、濁って見えるのは俺が後ろめたい気持ちだからなんだろう。

でも、例え濁っているように見えたとしても、空に見える星は綺麗だ。

どんだけ濁ろうと綺麗に見える星か・・・・羨ましい。


「・・・・・・」


俺はそんなことを思いなら、ただひたすらに星を見ることをした。

少し、手も伸ばしてみたりもした、まぁ、分かりきってる事だが手なんざ届かない。

そりゃな、宇宙なんて言う超遠い場所にあるんだ、届くわけが無い。


「リオさん、お星様に手を伸ばすなんて可愛いですね」

「・・・・いつからそこに?」

「さっきです」

「そうか」

「ふふ、リオさん、いつかお星様に手が届けば良いですね」

「馬鹿言え、届くわけが無いだろう、どんだけ欲しいと思っても手に入らない物はあるんだ」


例えば、友だったりな・・・・いや、それはちょっと違うか、それに手が届かなかったのは前世だ。

いいや、それも違うかな、前世では友なんざ求めちゃいなかったか、ただゲームをしてればよかった。

ただ、ネットで何処かの誰かが残した言葉を追っていればそれで良かったんだから。


「そうですよね、だったら自分にある物を数えるしか無いでしょうか」

「どういうことだ?」

「自分の大切な物を見れば良いんですよ、あなたが持ってる何かは、他の誰かが

 欲しいと思っても手に入れることが出来なかった物のかも知れません

 どれもこれも、何処かの誰からしてみればお星様みたいに輝いてるのかも知れませんよ?」

「その星だって、手に入れちまえばただのでかい球体さ」


星なんて、近寄って見てしまえばただのでかい丸い球体だ。

どんな物も、手に入れない方が良いのかも知れない。

ただ、憧れて手を伸ばしてる間の方がそれを1番美しく見る方法だ。


「え!? そうなんですか!?」

「あ、知らなかったのか? 星はただのでかい球体だ」

「もう、リオさん、変な事を言いますね、そんなわけ無いじゃないですか」


そうか、ここじゃ宇宙の観察なんてしてないんだよな、そりゃあ知らないわけだ。

でも、このままの方が良いかも知れない、俺みたいに荒んだ考えを持つ奴が減るんだから。


「とにかくですよ、そんな夢の無い事を言わないでください」

「戦争しかしてない世界だ、そんな所で夢なんざ持ってる暇は無いんじゃないか?」

「リオさん、夢を忘れてしまえば腐りますよ? 夢が無いのは自分の目標が無いのと同じ様な物です」

「どんな時でも夢を忘れるなと? 難しい事を言う」

「だって、自分の夢が無いと、ただの機械ですよ、指示されたことをやるだけなんて。

 因みに! 私の夢はリオさんと一緒に平和で静かな場所でのんびりすることです!」


何でこいつの夢に俺が入らないといけないんだよ。


「はん! テメェがいる限り静かな空間なんて出来やしねぇよバーカ」

「うふふ~、私の夢を否定しませんね、少し嬉しいです」

「誰かの夢を否定するほど野暮じゃ無いっての」

「因みに、リオさんはどんな夢ですか?」


俺の夢ねぇ、考えたことも無いが、そうだな・・・・俺の夢は。


「そうだな、お前が大人しくなることかな?」

「それはとても難しい夢ですね」

「お前が少しくらい協力してくれれば叶う夢だぞ?」

「私が静かになる時はリオさんが居なくなるときですから

 でも、そんな事にはなりませんよ、なんせ私が意地でも守りますから」

「はぁ、テメェが自重すれば良いだけの話だろう?」

「無理です」

「ブレねぇ奴」


俺の夢か、こいつにはああ言ったが、俺の夢・・・・それは多分、あいつらとのんびりと過すことかな。

先生達と、あの馬鹿達と、そんな事が出来るとは思えないが目指してみるか。

しかし、前までの夢ってなんだっけ? なんか忘れてしまったな。


「さて、リオさん、ここにいては風邪を引きますよ、テントで休んでください」

「・・・・いや、俺はもうしばらくここで濁った星を見てる」

「濁った星? 何処がですか?」

「星空は濁って・・・・あれ?」


おかしいな、さっきまで濁ってた様に見えてたが、全然濁ってない?

確かに、さっきまで濁ってたはずなのに。


「ほら、やっぱり疲れているんですよ、大人しく付いてきてください」

「止めろって! 俺はしばらくここに!」

「もう、子供みたいにわがまま言わないでくださいよ」

「一応、5歳児なんだけど」

「あぁ、そうでしたね、だったらわがままを言う子供を征服するのがお姉さんの役目ですね」

「え? 征服? おま! 何いって、のわぁ! 抱き上げるなぁ!」


アルルの奴は不意に俺をお姫様だっこしてきた、なんかむかつく!


「うふふ~、軽いです~、とても軽いです~、この心地よい重さ! ジタバタする無駄な抵抗感!

 いやぁ、良いですねぇ~、最高ですね~、うふふ~」

「舐めんなぼけぇ!」

「あぴゃー!」


俺はお姫様だっこをされている体勢でアルルの左手を支えにして顔を思いっきり蹴った。

俺の蹴りは無事にアルルの右頬に直撃、結構な手応えだ。

しかし、アンバランスな場所でそんな事をすれば当然ながらバランスを崩すよな。


「あ、やっべ!」

「はい」

「おぉ!?」


バランスを崩し、危うく前の方に落下しそうになった時に、大きな手が俺の背中を支えてくれた。


「もう、暴れちゃ駄目ですよ? フレイさん辺りならバク宙して着地しそうですけど

 リオさんはそう言う鍛錬してないんですから、大怪我しますよ?」

「うっせぇ! お前がこんな事しなきゃ良いんだよ!」


俺は再びアルルの手を支えにして、後転しながらこいつの顔を蹴った。


「あぁ、容赦ない!」

「っと」


そして、そのままの勢いで1回転して着地することに成功した。

うん、どうやら結構身体能力はある様だ、少しホッとした。

なんせ、あいつに出来て俺に出来なかったら舐められそうだし・・・・もうすでに舐められてるが。


「リオさんって本当に容赦ありませんよね、私が死んじゃったらどうするんですか?」

「お前がこの程度で死ぬわけ無いだろ? もう少し自分の無駄な生命力を自覚しろ」

「あれ? これは褒められてるんでしょうか? それとも貶されてるんでしょうか?」

「両方だ」

「つまり、褒められてはいるんですね! 嬉しいです!」


本当にポジティブな奴だ、少しくらい後ろ向きに考えて欲しい。


「しかし、抵抗しますね、仕方ありません! こうしてやりますよ!」

「な、なんだぁ!」


今度は後ろから抱き上げられた! 腕も掴まれてるしこれじゃあ攻撃出来ないじゃ無いか!


「こらぁ! 離せこらぁ!」

「離しませんよ、強引にしないと逃げちゃいますからね」

「だぁ! 俺は1人になりたいんだよ!」

「駄目ですよ、あんな場所で1人でいたら風邪を引きますからね」

「うるさーい! 俺がどうなろうとお前には関係ないだろう!」

「いやだなぁ、リオさんに何かあったら、私泣きますよ? 涙ボロボロですよ?

 そもそもです、リオさんが風邪を引いたら足止め食らいますよ?」

「そう言えば、そうだな」


忘れてた、そう言えば今は遠征中か、俺が風邪なんか引いたら足止めを食らうか。

無理して進んで酷くなったら大変だろうし。


「そ、そうだな」

「そうです、と言うわけで大人しくしてくださいね」

「分かったよ、分かったから下ろせ、1人で歩けるっての」

「はい」


そう言って、アルルは俺を下ろす・・・・と思ったらすぐに正面に回ってきて

俺をもう一度正面から抱き直した。


「何してんだよ!」

「いやぁ、あの状態だとしんどいかなって」

「降ろせってんだよ!」

「あぁ、また殴られましたぁ~!」


最近、こいつの遠慮無くなってきた気がする。


「はぁ、全く」

「いやぁ、痛いですよ」

「どうしたんですか?」

「いや、何でも無い」

「あ、リオさん・・・・その、だ、大丈夫? 体調悪いんじゃ?」

「いや、大丈夫だ」

「良かった・・・・あ、そ、その、敬語の方がやっぱり良いですかね?」

「いや、どっちでも良い」

「じゃ、じゃあ! こ、今度から敬語を止めて話す!」


どうしていきなり敬語をやめようとしたんだろうか、一応聞いてみるか。


「どうして敬語をやめようとしたんだ?」

「その・・・・えっと、怒らないで聞いてくれる?」

「まぁ、怒りゃしないけど」

「実は・・・・最初に思ったよりも、その、怖い人じゃ無いって分かったから」

「え?」

「すぐに疲れちゃったり、アルルさんに振り回されてたから」


あぁ、そんな姿を見たから、俺は怖い奴じゃ無いって思ったのか。


「だから・・・・と、友達になれるかもって、思って」

「・・・・そうかい、なれれば良いな」

「うん」


この何も知らない笑顔を見てると、また罪悪感が襲ってくる。

・・・・しかし、これで余計にバレちゃいけなくなったわけだ。

なんせ、もしバレたらこいつに絶望を与えることになるんだから。

それだけは避けないといけない、それだけはな。

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