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訓練の準備

「え、えっと、そ、それじゃあ、練習を始めるが…

 あっと、俺は少し休むから…ミロル、頼む」

「へばったの?」

「あの組み合い見ただろうが、疲れるに決ってる」

「体力無いわね」

「いや、体力というよりかは…腕だな」


フレイの攻撃を何度か防いだせいで、腕が痛い。


「と言うかよ、そんなに言うなら、お前がフレイと戦えよ」

「え゛!?」

「そうすりゃ分かるから、俺の体力があるのか無いのかとか。

 俺の耐久性に難があるかどうだとか」

「い、いや、私はほら」

「1度もフレイとやり合ってないんだし、1度くらい良いんじゃねーの?

 副部長さんよ」

「……ふ、フレイもほら、さっきの戦いで疲れてるだろうし」

「ん? 疲れてないよ? 全くもって疲れてない。

 ちょっとした準備運動なのだ! って、言えるほどにまで

 体力があるわけじゃ無いけどね、リオちゃんと本気で戦って

 そんな準備運動とかで済むわけ無いしね。

 あはは、まぁ、他の子達は準備運動にすらならないけど」

「部長、自覚してください、あんなの普通一撃食らったら気絶します」

「それは思いっきり受ければだよ、防げば良いじゃん」

「無理です! 一瞬で間合いを詰めて、目にも止まらない拳を防ぐとか!

 出来る訳ありませんよ!」

「…え? でも、最初のあれはただのお試しで」

「お試しだけで無理ですよ! 私達には!」


そりゃあ、あの攻撃、実際かなり速いし、慣れていても対処が難しい。

一瞬で間合いを詰めるだけじゃなく、あれ軌道も変えられると言うね。

本当、あいつと打ち合うのだけはごめんだ…


「まぁ、そう言う事だ副部長、ほら、あいつも元気だし、やってこい」

「……ご、ごめんなさい、もう舐めた口はきかないから許して頂戴」

「プライド無いな…でも、俺が許そうと、向こうは」

「よーし、ミロルちゃんと戦うのは初めてだし、楽しみだなぁ!」

「絶対に待ってくれないぞ? 止めてもくれない、意地でも来るぜ、あいつは」

「……う、うぅ…い、良いでしょう…ちょ、ちょっとだけ、ちょっとだけよ!

 30秒程度相手になるわ!」

「30秒? 短いね」

「ほ、ほら、練習時間も迫ってるし!」

「ほーい、OK、30秒だね」

「……ミロル」

「何よ」

「墓穴掘ったな」

「へ?」

「それじゃあ、30秒しかないし、すぐに始めよう!

 時間があるなら、最初は軽く肩慣らしからだけど。

 30秒しかないなら、最初から全力でいかないとね!」

「…え? 何これやだこれ…まさかこれ…」

「うん、フレイは普段はスロースターターでな。

 最初は肩慣らしでかなり手を抜いて戦うんだ。

 俺以外相手なら…でも、時間が無いと最初からぶっ飛ばす」

「え? え、あ、ま!」

「それ!」

「あ! ぶふぅー!」


時間が無いと聞いたフレイは、すぐに行動を開始した。

一瞬の間に間合いを詰めて、確実な一撃をミロルに叩き込む。

最初の肩慣らしでも、慣れてない奴は対処すら出来ないのがフレイの拳。

そんな奴相手に、慣れるどころか完全初見で戦って

よりにもよって最初からぶっ飛ばしてるフレイと戦うとは無謀極まりない。

格闘技の達人だろうと、この攻撃は防げないだろう。

あのアルルでも相手にならないからな、今のフレイは…

シルバーだって手も足も出ないままに敗れちまうほどの実力になってる。

対処出来るのは、フレイに技を教えたり、一緒に訓練をしているマナか

その技の実験台にさせられたり、強引に訓練に巻き込まれてる俺くらいだ。


「み、ミロル先輩!」

「ありゃ、弱っちいね」

「い、いや…は、ハッキリ…言うわ…あなたが…異常なのよ…」

「おぉ! 私の本気を受けて気絶しなかったのはミロルちゃんで3人目だよ!」

「そ、そう…ま、全く嬉しくない…め、名誉…ガク」

「自分で言うなよ」

「いや…ノリ的に…」

「そんな事が言える程度には元気だって事だな。

 まぁ良い、これで分かっただろ? 俺が弱いんじゃない、フレイが異常なんだ」

「えぇ…そして…あなたも異常だと言うことを…改めて理解したわ…

 客観から見たら、わ、割と捌けそうだったのに…主観だと…ぜ、全然違うわね…」

「そりゃぁな、フレイの攻撃はことごとく相手の死角に入っての攻撃だ。

 客観から見りゃあ、そりゃ多少は見れるが

 主観ってなると見えないんだぜ? 上手く視界の外に入るからな」

「相手が何処を見ているかを確認して、その相手が見ている場所から

 見えない場所から近付いて攻撃をするんだよ、格闘術の基本。

 本来は暗殺向きの戦い方だってマナから教わったよ。

 死角に入って、一瞬で急所を刺し、確実に屠る技。

 カウンター技も教わったよ、捌き、急所を突く技。

 でも、リオちゃんには全部捌かれるんだけどね」

「身体が無意識に反応した、身の危険を感じて」

「……もう、なんか……余計に化け物染みたわね…あんたら…

 魔法があったときより…絶対強いわよ…」

「否定は出来ないな」

「私は絶対に強いって断言できるよ! 

 ふっふっふ、そもそも、強くなってないと困るからね!

 皆を守るために頑張って強くなったんだから!」

「守る必要がなくなった後もって、す、すごい覚悟ね…」

「あんな目にはもう遭いたくないからさ!」

「必要無いのに…あ、俺は巻き込まれただけだから。

 フレイみたいに不動の決意があるわけじゃ無いぞ?

 フレイが強引に巻き込んできたから、仕方なく強くなっただけで」

「もうなんか…あんたらすごいわ」


まぁ、そんなこんなで余興は終わってと。

とりあえず、ミロルがダウンしてるから俺が考えないと。


「はぁ…さて、余興が過ぎたな、それじゃあ、訓練を始めようか。

 では、ルールを復唱しよう」

「はい!」


スポーツ戦争は訓練をする時も本戦時もルールを復唱する。

これはあくまでスポーツ、ルールが存在し、それを必ず守らねばならない。

ルールが風化してしまえば、スポーツ戦争が戦争に逆戻りする可能性がある。

だから、このルールの復唱は必ず行なわなければならない行為だ。


「1つ、訓練時および試合では必ず模擬弾、模擬刀を使用すること。

 実弾の使用は決して許されない行為である。

 1つ、これは戦争ではなくスポーツである!

 いかなる時も、その事を忘れてはならない。

 1つ、訓練でも試合でも必ずこのルールを復唱する。

 1つ、相手の命を奪う事は決してしてはならない。

 1つ、意識を失った相手に攻撃を行なってはならない。

 1つ、競技による私怨などは決して残さない。

 これはスポーツであり、正々堂々と勝負をした結果である。

 1つ、防護服の下には衣服を纏うこと。

 1つ、信頼を崩しかねない行為を行なってはならない。

 例えばスパイ行為等を行なう事は許されない。

 噂を利用しての扇動も許可しない。

 1つ、尋問等で相手の身体を傷付けたりはしてはならない。

 1つ、全員、楽しんで競技に挑む事。

 スポーツ戦争において、敵という存在は1人も居ない。

 対戦を行なうときも、対戦相手は敵ではなく共に励む学友である。

 その事を決して忘れず、お互い悔いの無い戦いを行う様に! 以上」


ルールの復唱が終わった、他にも細かいルールはあるが

必ず復唱しないといけないルールはこの10個だ。


「忘れるなよ! 大事な事だ! どれだけ戦うのが苦手でも

 どれだけ実力があろうとも、このルールだけは決して忘れるな!

 このルールを覚えようとしない、大事に思わない者は

 そもそもこの競技をやる資格は無いと言う事を理解しろ!」

「はい!」

「よし! それじゃあ、今日もやるぞ! 防護服を着ろ!」

「はい!」


少しの間だ時間を空け、全員が防護服を着て戻ってきた。


「よし、じゃあ、今日はまず、武器の手入れだな、毎日ちゃんとしろよ

 大事な事だからな、一緒に戦う相棒だからよ、大事にしないとな」

「はい!」


トロピカル女学園では、俺の判断で毎日クラブ開始前に武器の手入れをする。

大事な相棒だからな、戦場で戦ってきたからそう言うのは良く分かってる。

俺の場合は魔法での狙撃銃だが、それでも手入れはしてたからな。

魔法は思い込みとかの影響が出るというのはミロルの例で分かってた。

だから、俺の狙撃銃は魔法でも摩耗するんじゃないかと考えて手入れはしていた。

今は偽物だけど本物の銃だからな、人を殺せない、人を生かす銃。

いんや、人を楽しませる為の銃だ、今の相棒達はそんな銃だ。


「……ふふ」


俺の相棒はウィンチェスター…魔法で召還した銃じゃないがな。

そして、セキュリティシックス、こいつはミロルから渡された銃だ。

結局、ミロルの魔法が消えた後もこいつだけは残った。

他の物はミロルの魔法が消えたと同時に一気に消えたが

このセキュリティシックスだけは最後まで消えることがなかった。

今はこいつを改造して、殺傷能力の無い、人を楽しませる銃に変えた。

…人を殺す銃から…いや、違うな、こいつは最初から人を生かす為の銃だ。

俺のウィンチェスターだってそうだった、何度か奪ったが

それでも、俺の相棒達は人を生かすための銃だったんだから。

だが、人を楽しませると言う事は無かった、ま、それは今の姿だ。


「っと」

「ねぇ、リオ」

「ん?」

「いや、ほら…私が渡した銃を今でも使ってくれてありがとうね」

「お前から貰った大事な銃だ、ちゃんと使うよ、当然だろ?

 こんな最高の銃、捨てるとか勿体無いを通り越してバツが当るぜ」

「そう言って貰えて嬉しいわ…本当に嬉しいわ。

 破壊しか出来なかった私の魔法が…今じゃ人を楽しませてるなんてね。

 そんな風に私の魔法がなれたのは、間違いなくあなたのお陰よ」

「達、が抜けてるぞ? 俺1人でどうこうできるかっての。

 そして、お前の魔法がそうなれたのは、お前の力も当然ある。

 お前が居なけりゃ、戦争はどうなってた? 多分、終結しちゃ居ない。

 俺達も全滅してた可能性だってあったんだから、だから、お前の力もあるんだよ」

「…ありがとう、本当、あなたって格好いい事、平然と言っちゃうんだから」

「惚れても良いぞ?」

「な!」

「はは、冗談冗談」

「も、もう!」


やっぱり、身体が女である俺はミロルを幸せには出来ない。

ミロルの事はずっと好きだし、付き合いたいとも思ってる。

でも、俺のわがままでこいつを不幸にはしたくないからな。

きっと…ミロルには好きな人が出来て、その人が幸せにしてくれる。

…祈ってるよ、良い奴と巡り会ってくれるように。


「よしっと、とりあえず武器の手入れは出来たな」

「そ、そうね…」

「じゃ、やるぞ」

「えぇ」


さて、練習を始めようか、今回も1位を目指さないと駄目だからな。

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