模擬戦闘
「さて、今日はクラブ強化日だと言う事で…
とりあえず、いつも通り適当に」
「リオ、あなたって、なんかその、とっさの時は異常に頭の回転速いくせに
こう言うときはなんか妙に適当というか、テンション低いわよね」
「いや、だって…指揮とか指示とかにが」
「どの口が言ってるの? 総指揮官」
ま、まぁ、確かに総指揮官してたけど…訓練とかはあまり主導でやってないし。
あの時の訓練は殆どがアルル達の指示で行なってたからな。
でも、今回は俺が訓練内容を考えないと行けないし…
それが非常に面倒くさい。
一応、講師はアルル達だから、そうそうたる顔ぶれだが
訓練内容に関しては、口は出さないと言ってたから俺が考えないと駄目って言うね。
「あー…じゃあ、なんだ、何かやりたい事とか」
「はい! 私と戦って!」
「…えー、何か無いか?」
「はい! 私と戦って!」
「えっと、基本何でも良いぞ」
「はい! 私と戦って!」
「……そうか、何もな」
「はい! 私とたたか」
「同じ事ばかり言うなよ!」
「聞えてないのかなって」
「聞えてるよ! テメェの馬鹿でかい声は! その上で流してるの!
なんでお前と戦わないと駄目なんだよ! 絶対参考にならねぇからな!」
「実戦を見せることで」
「先に釘を刺しただろうが! 俺達の組合は絶対に参考にならん!」
「いや、きっと参考になると思う!」
「俺とお前の組み合いを理解出来る奴はそう居ねぇよボケ!」
「何で~、良いじゃん良いじゃん、減るもんじゃないし」
「減るわ! 俺の体力とか色々と減るわ!」
「でも、フレイさんとリオさんの組み手ならちょっと見てみたいかも」
「止めなさい! あ、あの2人の組み手は本当に凄まじいから!
私達が見ても、絶対に理解できないわよ!」
「え!? 見たことあるの!?」
「う、うん、総合格闘部で…」
「どんな感じだった?」
「いや、何をしてるのかあまり理解できなかった」
「ほれ見ろ! 仮に理解できたとしても、どうやったの? とか聞かれて
お前答えられるのか?」
「無意識に身体が動きます!」
「感覚的にしか言えないだろ…絶対無理だ」
「まぁまぁ、見せてあげれば良いじゃん、こっちではやってないし」
「そりゃそうだ、こっちじゃ接近戦はそもそも殆ど使わない。
いざと言う時に必要な技術であるという事は間違いないが
基本的に遠方からの攻撃がメインだからな、接近戦は殆ど無い…
普通は、普通はな?」
「私、いっつも接近せ」
「だから、普通はって言っただろ!? お前は異常なんだ! 理解しろ!」
どうして弾丸を避けるのか分からない…いや、マジで化け物。
魔法とか無くっても、こいつの戦闘力とかいかれてるからな。
そりゃあ、戦争が終わった後もマナに戦いを教わってたし…
そして、練習台としていつも引っ張られてた。
うぅ、思い出すだけでもゾッとする、こいつと戦うのは真っ平だ。
武器があっても戦うのいやなのに、素手とか自殺行為だ。
だって、武器あっても避けるし、頭使わないと当りゃしない。
「本当、トロピカル女学園の破壊者って言われてるけど
実際、戦車よりも脅威だからね、この子」
「やっぱり破壊者なんだよなぁ、流石フレイ」
「ふふん♪」
「…まぁいいや、とりあえずミロル、相手してやって」
「はぁ!? いや、何言ってるの!? 馬鹿なの!? 死ぬわよ!?」
「いや、お前接近戦も強いし」
「ばっか! あの子と戦えるのあなただけでしょうが! 小さい時から!」
「ほ、ほら、お前らも成長したし、た、多少は」
「あの子も成長してるわよ!? あの子と一緒に育ったあなたしか相手にならないわ!」
「望んで一緒に育ったわけじゃないけど!? 強制だけど!?」
「で、でも、こ、ここまで言われると…み、見てみたい…リオ部長とフレイ先輩の戦い」
「は!?」
「ふっふっふ、さぁ、リオちゃん、観念するんだよ!」
「う、うぐぐ……うぅ、わ、分かったよ…仕方ない。
ただ、あれだぞ? それを見せるとしたら、俺はしばらく動けなくなるから
訓練内容は自分達で考えて貰う事に」
「あ、訓練内容は私が考えるから安心して死んで頂戴」
「おま! 縁起でもねぇ事言うなよ! マジになってもおかしくないんだから!」
「ふっふっふ、さぁ、久し振りだね!」
「うぅ…」
もうやる気満々だし…いや、本当に勘弁して欲しい。
「ち、畜生…恨むぞ」
「場所は何処でする?」
「こっちの広場で良いだろ」
決戦のバトルフィールドはただの広場…汚れもしないから良いだろう。
「よーし、いくよ!」
「い、言っておくけど、手加減してく」
「手加減ってなーに?」
「大きくなっても頭脳は子供だな、クソッタレ!」
「それ!」
「ぬぉ!」
け、結構距離があったのに、すぐに間合いを詰めての一撃。
しかも、大体フレイの最初の一撃は軽い肩慣らしでしかない。
そして、もしこの攻撃を避けたとき、大きな隙があると。
「ふりゃ!」
「ち!」
すぐにこの2発目の膝撃ちで決着が着く。
感じで言えば、膝打ちが普通は正しいのかも知れないが。
こいつの一撃はもはや砲弾レベルだから、弾丸の撃ちで正しいだろう。
これを思いっきり受けちまったら、あっさりとダウンだ。
それを知ってる俺は、バク転と同時にフレイを蹴り上げる。
「痛!」
その一撃を受けたフレイは怯むが、実はそこまでダメージは無い。
フレイはいちいち反応が大袈裟で、軽いダメージでも大きい声を出す。
と言ってもこの一撃…素人が受ければ一撃で気絶するレベルなんだけど。
「ら!」
「へへ!」
足が地面に付くと同時に、地面を蹴り、一気にフレイへ追撃を仕掛ける。
だが、大したダメージがなかったフレイはすぐに体勢を整え
平然な顔で俺に攻撃を仕掛けてくる。
「っと」
「お、あぅ!」
カウンター攻撃、クロスカウンターという感じだな。
正直、フレイと力比べとか正気の沙汰じゃない。
これも見事フレイに入ったわけだが…まぁ、フレイだし。
「にゃはは!」
「おわ!」
フレイはすぐに左手を握りしめ、こちらに攻撃を仕掛けてくる。
俺はその攻撃を頬を擦らせるようにして躱し、肘打ちを入れる。
「およ?」
フレイは呆けた声を出し、後方に少しだけ仰け反った。
そして、すぐにこちらも間合いを取った。
「お、おぉ、結構痛いかも」
「は、初めてそんな事言ったな」
前に組み合ったときはそんな事はひと言も言わなかったし
こっちも結構食らってボロボロになってたからな。
「いひひ、いやぁ、リオちゃんくらいだよ、私とここまで戦えるの」
「うーん、大丈夫かな…」
「大丈夫だと思う…リオは結構…でも、汗が飛び散ってるリオ可愛い」
「おい、そこ替われ、お前がこいつの相手をしやがれ」
「無☆理、私がフレイと戦ったら1秒で倒れるよ」
「子供の頃でも殆ど耐えられなかったしな」
「もぅ! 私はリオちゃんと戦いたいの!」
「俺は出来れば戦いたくない」
「な、なんだと-! 楽しいじゃん!」
「楽しくねぇよ! ヒヤヒヤもんだって!」
「ふっふっふ、なら、ワクワクさせてあげるよ!」
「うぉ!」
フレイが走ってきて、飛び上がり、回し蹴りを仕掛けてくる。
俺はその攻撃をギリギリで回避、フレイ回し蹴りが少しだけ
前髪に当った…その髪の毛は切れる。
避けたときに残った髪の毛に当っただけだから5本くらいか。
しかし、蹴りが当っただけで髪の毛が切れるとか、恐すぎで
「それ!」
「うっそ!」
フレイは着地と同時にすぐにこちらに近づき、跳び蹴りを仕掛ける。
それもギリギリで回避することは成功した。
「へへ」
「い!」
が、フレイはすぐに俺の方に蹴りを仕掛けてくる。
その攻撃に俺は反応することは出来なかった…俺の頭の中では。
だが、身体は無意識に反応し、その攻撃を防いでいた。
「それ!」
「うぐぅ!」
右足での一撃を入れた後、今度はそのままの勢いで1回転し
更に、フレイがこちらを向いたときには、左足が高く振り上げられていた。
…正直、スカートでそれは駄目だろうと思う…なんで熊のパンツ?
とか、そんな疑問を頭の中で抱いていると、フレイの強烈なかかと落としが来る。
それも、身体が無意識に反応し、防いだことで難を逃れた。
で、俺はその勢いを利用し、若干後方に下がりフレイの連続攻撃を避けた。
「あはは、やっぱりすごいね、リオちゃん!」
「うお!」
着地と同時にフレイは再び俺の方に接近。
そして、俺のサマーソルトを真似ての攻撃を仕掛けてきた。
その攻撃に驚きながら、若干後方に下がる。
「ん、ほりゃ!」
「むぐ!」
だが、フレイはサマーソルトを中途半端で止め
地面を手で押し、こちらに股を開いての飛びつき。
そして、顔に足を使って引っ付いてきた。
「これで、どうだ!」
「むぐぁ!」
その状態で身体を捻り、俺を地面に叩き付け様とする。
このままだと不味い…だが、身体はやはり無意識に動いた。
フレイの足をがっちりと掴み、無理矢理フレイの足を振り払う。
その時の勢いで少し飛ばされたが、体勢を立て直し着地した。
「へぇ、し、死ぬかと思った」
「うぅ、まさか逃げられるなんて!」
「と言うかフレイ! お前は馬鹿か! なんて技使いやがる!
恥じらいを持ちやがれ! 自分がスカートって自覚あるのかぁ!?」
「あ、そう言えば私、スカートだった」
「ここ学校だぞ…そりゃスカートだろ…」
「リオ、それをあなたが言うの? あなたもスカートよ?」
「下に履いてる、スカートとか気持ち悪いし」
「なら、フレイも同じ様にしてるんじゃ無いの?」
「いや、あいつは」
「履いてないんだよ-」
「スカートをたくし上げるな! わざわざ見せるな! 恥じらいを知れ!
あぁ、もうマナ! なんでこいつにそう言う事を教えない!」
「うん! ちゃんと教わってるよ? だから、リオちゃん達以外にはこんな事は」
「してるだろ!? ここ、学校! 周り後輩や先輩が見てる!」
「女の子同士だし大丈夫だよ」
「そう言う問題じゃねぇよ!」
もうなんか…もうなんか…心配だ、何処までも心配だ。
出来の悪い妹を持ったら、こんな気持ちになるんだな…
実際に居る妹は出来が良いからこんな気持ちにはならないけど。
「もう…なんか…」
「……」
「さぁ、再開しよう!」
「い、いや、ストップ周り見ろ、唖然としてるから
「お? あ、本当だ、ポカーンとしてる、どうしたの?」
「い、いや、その…何だか何をしてるのか分からなくなって」
「え? そう?」
「わ、私もギリギリで見えるレベルだし…一般人には分からないわよ、これは」
「と、言う訳だから、今回は止めよう」
「えー! まだ決着が着いてな」
「ほ、ほら、これ以上はね、時間掛かるし」
「いやでもさ」
「フレイ、我慢も大事だよ」
「う…うん」
「あ、あはは…恐ろしい…」
「本当、私達って、こんな人達と戦ってた経験があるってすごいね」
…ふ、ふぅ…な、なんとかなった…はぁ、た、助かったよ、本当…
もう訓練の本番前にこの疲労は…勘弁して欲しい。




