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折角の休日は

「先生、今日も手伝いに来たぞ」

「あら、皆さん、来てくれたのですね」


ひまわりはいつの間にか孤児院から幼稚園に変った。

孤児が少なくなってきたことで、孤児院が不要になって来たからだ。

だが、まだ孤児を育てるためのスペースは残っている。

孤児が少なくなってきたとは言え、病気で親を亡くしてしまった子供は居る。

先生は、そんな子供達を保護し、育ててもいる。

国もひまわりを正式な孤児院とも認めている。

孤児を見付けた人が、国に相談し、国はその孤児をひまわりに預ける。

その様な形になっている。

孤児の子供達は他の子供達が母親に連れ帰って貰って

少しだけ寂しい思いをする…だが、それでも先生を慕っていた。

そして。


「わぁ! お姉ちゃん達!」

「俺達が来ると、すぐに飛びついてくるな」


子供達は全員、毎週のように手伝いに来ている俺達を慕ってくれている。

本当に嬉しい限りだ、だがまぁ、ウィンはあまり快く思って無いが。


「うぅ…私のお姉ちゃんなのに」

「お姉ちゃん、どうしたの?」

「あ、何でも無いよ」


でも、ウィンもここに来ると、妹からお姉ちゃんになる。

何だかんだで楽しんでいるのは間違いないだろう。

そして、今日は土曜日、大体の子供達は幼稚園には来ていない。

だがまぁ、親の仕事が忙しい家庭の子と、孤児は幼稚園に来ている。


「さて、今日はどうする?」

「かけっこ!」

「ははん、おいおい、中学生にかけっこを挑もうとは、また無謀な」

「よーし! お姉ちゃん、頑張っちゃうぞー!」

「ふ、フレイお姉ちゃん、速すぎるからなぁ…」

「でも、僕は負けないもん! ねぇ、フレイお姉ちゃん!」

「何か何かな?」

「僕が勝ったら結婚してね!」

「ふっふっふ、良いでしょう! お姉ちゃんに勝つことなど出来ないのだ!」

「よーし! 勝つぞ!」

「フレイ、調子に乗るなよ」

「これ、転かせたら面白いかしら」

「よーし、ドン!」


まぁ、フレイは加減など出来るタイプじゃないから

子供相手に容赦なく全力疾走だった。

フレイの全力は正直、スポーツ選手でも驚愕するほどの速さ。

ただの子供が追いつけるはずもない、が。


「あ! ぎゃぁああ!」


全力で走りすぎたフレイはその場で躓き、顔から地面にダイブした。

こりゃ痛い…足下を見ないからこんな事になるんだ。

そして、フレイはしばらくの間動かなかった、その間に子供達が近くに。


「ど、どうしよう」


フレイに勝負を仕掛けた男の子は少し困惑していたが。


「むむ! うりゃ! ゴール!」

「あぁあ!」


その子が到着してすぐにフレイは起き上がり、ゴールした。

一応、まだ結構距離があったのに、すぐにゴールだ。


「あぁ、大人げないわね」

「迷ってなかったらワンチャンいけたかもな、あれ」

「いや無理でしょ、あの速さだし」

「ふっふっふ、これがお姉ちゃんの実力だ!」

「お、お姉ちゃん、だ、大丈夫? 顔が…」

「ん? あ、大丈夫だよ! これ位の怪我、お姉ちゃんは何度もしたからね!」

「そうなの!? どうして!?」

「はっはっは、君くらいの時に沢山戦ってたからね。

 でも、お姉ちゃよりも、あそこのお姉ちゃんの方が怪我がすごいんだよ?」

「え!?」

「俺に振るなよ」

「み、見たい見たい! 見せて!」

「子供って好奇心旺盛なんだから、そんな事を言ったら絶対に食い付くだろ」

「見せてあげても良いんじゃないの?」

「怪我なんて見せびらかせる物じゃないんだよ」

「見せて-!」


しかし、子供達は俺の傷痕を見たがってる。


「……うぅ、わ、分かったよ、見せるよ、ほら」

「わ、わぁ!」


俺は少しだけズボンを上げた。

そこには、最後の戦争で負傷した時の傷痕がある。

怪我は治っても、傷痕は完治しちゃ居ない。

体中、そんな物ばっかりだからな。

成長しても、同じ様に傷痕も大きくなるからな。

まぁ、別にコンプレックスとか、そう言うわけでも無いがな。


「別に見て良い物じゃないだろ?」

「お姉ちゃん、大変だったんだね」

「ん? まぁな」

「うん、僕、お姉ちゃんを守るよ!」

「安心しろ、お前みたいな子供に守って貰うほどに弱くないから」

「お姉ちゃんを守れるくらいに強くなるの!」

「それに、俺はもう守って貰う必要も無い。

 もう、全部終わったからな、大丈夫だ、俺が酷い怪我をする事は

 多分、もう無いから」

「そうなの? 大丈夫なの?」

「あぁ、大丈夫だよ」

「良かった! お姉ちゃんが痛い思いをするところは見たく無いから!」

「お前らの方が痛い思いするぞ、これからな。

 派手に転けたり、馬鹿みたいに遊んだりしてな。

 ま、それは大事な経験だから、派手にしろよ」

「怪我はしたくないよ…」

「だったら、怪我しないように頑張れよ、無理だろうけどな」

「うん!」


本当、子供って言うのは元気だねぇ。

しばらくの間、子供をやってたが、ここまで元気じゃなかったって。

と言っても、フレイは今と変らず、超元気だったけどな。


「じゃあ、次はどうする?」

「かくれんぼ!」

「はっはっは! お姉ちゃんはかくれんぼも得意なんだよ!」

「どの口が言ってるんだよ」

「えー! 私、隠れるの上手かったじゃん!」

「何処がだよ、頭隠して尻隠さずの良い例だろ、お前」

「むむ! そこまで言うならリオちゃん! 私と勝負だよ!」

「おぅ、良いぞ、で、勝負って事はなんか賭けるか?」

「うん! もし私が負けたら、私と結婚しても良いよ!」

「……いや、得意げに言うなよ、子供に言われたからなんだろうが…

 まぁいいや、で、俺が負けたら?」

「私と結婚するの!」

「……おい」

「さぁ、勝負だよ!」

「あ! コラ待て!」

「ちゃんと目を瞑らないと反則負けだよ!」

「こ、こいつ…!」


畜生、良いだろう、やってやろうじゃねぇか! 舐めやがって!


「よし、もう良いな!」

「もう良いよ!」


と言うか、しれっと他の子供達も参加したのか。

とりあえず、さっきのもう良いよの声で何処に居るかは全員理解した。

と言う訳で、特に山場も無く、すぐに全員を見付けた。


「そんなぁ! 全く迷ってないなんて!」

「声で全部分かるし」

「何それ恐い! 全員の場所が分かるって事!?」

「声が何処から聞えてくるかを考えりゃすぐだぜ

 俺にかくれんぼで挑んだのは失敗だったな。

 鬼側だったとしても、隠れる側だったとしても」

「リオさんって、何だかんだで異常な能力ですよね」

「そうね…で、アルル、お店は?」

「今日は定休日ですよ」

「そうなの?」

「えぇ、と言うか、土日は休みです」

「普通、土日がかき入れ時だと思うんだけど」

「2人だけですし、多少は…」

「かといって、なんで土日なのよ」

「土日じゃないと、私はリオさん達と交流できませんし

 リリスちゃんも皆さんと交流できませんし」

「そう言えば、リリスさんも来てたわね、何処?」

「カナンさんとお料理作ってます」

「流石料理人ね、で、あなたは良いの?」

「私は皆さんと遊ぶ方担当ですよ」

「あ、っそ」

「アルルお姉さん! いつものあれやって!」

「良いでしょう、行きますよ、えい!」


アルルは子供達にマジックを見せてたりする。

何故マジック? と思ったが、本人曰く応用らしい。

なんの応用かというと、ストーカー技術の応用。

相手の意思の外にどうすれば移動できるかを研究したそうだ。

くだらないところに全力なのがあいつだ。

だがまぁ、そのお陰で俺は相当の警戒心が手に入ったわけだが。

よっぽどの潜伏スキルじゃないと、俺の耳と目からは逃れられない。


「わぁ! すごいすごい!」

「今度は、ここから、はい!」

「ど、何処から出て来たの!?」

「ふふふ、次はこうです」

「えぇ! どうなってるの!? 教えて-!」

「駄目ですよ~、ちゃんと見抜いてくださいね」

「絶対どうしてるのか見付ける!」


アルルはよくあるマジック道具を完全にバレないように使っている。

お金に針を通すマジックだが、これは小さな穴がある。

そこをバレないように刺して、貫いた風に見せる。

本物のお金とその穴があるお金を一瞬の間で替えてこのマジックをする。

俺は一応、何をしているのか分かるんだけど、かなりギリギリだ。


「さぁ、どうでした? 分かりましたか~?」

「ま、全く分からなかった…」


まぁ、子供に見抜くのは困難というか、不可能だろうな。

あいつ、ことごとく子供達の視線をかいくぐってやってたから。

相手の意思が向かない場所を正確に狙うのは化け物だ。


「本当、お前戦争が終わった後も異常な程に能力高いな」

「リオさんが言います? その様子だと、私の手品、分かったんですよね?」

「まぁ、見るだけなら」

「えー! わ、分かったの!? どうなってたの!?」

「そうだな、あいつはあのお金以外に、穴が開いてるお金を持ってたんだ。

 そして、最初に見せた後、お金を投げたよな、あの時に穴があるお金を出して

 投げたお金はキャッチすると同時に握る。

 そして、こっちにありますよと言って、穴があるお金の方に注目させた。

 その間に、握ったお金を隠して、穴が開いてるお金に針を通しただけだ」

「えー!!」


そんな動作を一瞬で出来るんだから驚きだよな。

手先は器用だし、相手の意思を奪うのも得意だと言うことだ。

しかもこれはアルルが行なう手品で1番分かりやすい手品だからな。

少しだけ注意の向け方を変えるだけで分かる、簡単な手品だ。


「ふふ、やってみます?」

「うん!」


子供達はアルルから手品道具を渡されて、同じ様にしようと頑張るが出来ない。


「…アルルねーちゃんは無駄な所で能力高いね」

「イル、少しくらいお姉ちゃんを褒めても良いんだよ…?」

「やだ」

「私の妹は、何故ウィンさんの様に従順ではないのでしょうか」

「お前の私生活が散々だからだろ」

「リオさんに迫るのが駄目なのですか?」

「うん、気持ち悪い、リオねーちゃんに変な事しないで」

「あれ? これってもしかして、私の妹もリオさんに心酔してる?

 あはは! やっぱり姉妹なんだね!」

「止めて! アルルねーちゃん! 抱きしめないで!」

「…恥ずかしいだけなんじゃね? あれ」

「素直になれないのよ、多分…姉とは正反対ね」

「お姉ちゃん、ご飯が出来たって」

「あぁ、そうか、もうそんな時間か…よし、子供達、ご飯だぞ!」

「はーい!」

「えー! やだやだ! まだ遊ぶの-!」

「おいフレイ、お前が駄々をこねるな、お姉さんだろうが」

「いやだよ! 折角楽しくなってきたんだから!」

「駄目だって! 速く行くぞ!」

「やだー!」

「こ、このぉ!」

「…リオさんだけですよね、フレイさんと力比べできるの」

「えぇ、私達だったら簡単に負けるからね」

「まだ遊ぶー!」

「この! わがまま…言うな! ほ、本当に、お、お前は!

 もう中学生だろうが! お姉さんらしく、しやがれやぁ!」

「やだー! 遊ぶー!」

「お前ぇ! なんで俺がテメェの世話をしないと行けないんだよぉ!」

「あ、あぁあ!」

「勝ったわ! まさか勝つなんて!」

「はぁ、はぁ、はぁ、は、速く…」

「いやだ!」

「…フレイの方は一切呼吸が乱れてないわね」

「滑っただけですね、あれ」

「ご飯だよ! 飯食え!」

「うぅ! わ、分かったよぅ…」


はぁ、やっと大人しく飯を食いに行ってくれた。

本当、中学生になっても子供のままなんだから…やれやれ。

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