2人だけの突撃
時間はあまりない、このままだとフェミー達の身が危うい。
相手は無効化魔法がある、2人だけでは厳しいだろう。
俺が敵側なら、フェミーが転移してきた場所に的を絞るかな。
だが、あいつは結構馬鹿だが、それは感情的になるからだ。
恐らく、逃げている最中に別ポイントに移動点を用意してるはず。
だから、時間はそれなりに稼げるとは思う。
向こうもそれを見越していたらどうしようも無いがな。
「移動に時間が掛かるな!」
「私が背負いまーす!」
「…分かったよ」
「はい! どうぞ」
「っと」
「よーし! いきます! しっかりと捕まってくださいね!」
「分かったよ! 急いでくれ!」
「はい!」
アルルは俺を背負って、かなりの速度で移動を開始した。
ちょっとした崖ならひとっ飛びで登るし
移動速度もかなりはある。
本当、こいつの身体能力は相当だな。
本当にただの人間なのか怪しいほどだな。
「とと、結構急ですね」
「一応、高めの山上だしな」
「少し激し目にいきますから、しっかりと捕まってくださいね!」
「分かった」
アルルの移動速度が更に上がった、素早く崖を降り
途中に生えてる木に足を乗せ、素早く下山をしている。
捕まってる俺の方が大変だと感じる程に素早い。
服とかもかなり汚れているが、特に気にも留めてはいないようだ。
ちょっと高い崖も軽く飛び降りて、一切怯むこと無く動きを再開する。
あれだな、サスケみたいだな、いや、サスケよりも難易度高そうだけど。
しかし、昔の俺だったら引っ付いてるだけでも一苦労だっただろうな。
でもまぁ、一応、それなりに身体も鍛えているし
昔みたいな虚弱体質でも無い、引っ付く程度なら余裕だし
動きが結構遅くなるだろうが、アルルに似た動きも出来る。
本当に成長を感じるよ…まぁ、フレイの相手をしてたらこうもなるけど。
「っとと、ほい、そりゃ」
「結構高い崖なのに随分と当たり前の様に降りるな」
「大丈夫ですよ、ちゃんと木に引っかけてますし」
「ふーん、そのロープみたいな奴か、いつの間に」
「投げました」
「気持ち悪いよお前、マジで人間かよ」
「人間です! っとと、よいしょ」
「握力とかなんぼだよ」
「華奢な女の子ですから100kg位かなーと」
「華奢な女の子が100とかあり得ないだろ、キモいよ
そもそも、女の子が100とか異常だろ」
「フレイさんなら行ってそうですけど」
「……否定が出来ないな」
本当にフレイの身体能力はいかれているからな。
子供とは思えないし…と言うか、子供であれって
将来どんな風になるんだろう。
まぁ、まず間違いなくスポーツ選手になるだろうな。
そうなったら…どうかな、現実世界なら金メダルは間違いないだろう。
「よしっと、そろそろ城壁付近に着きます!」
「早いな、猿かよ」
「猿って…酷いですねぇ」
「特に気にもして無さそうだけどな」
「リオさんになら大体何を言われても問題ありませんし」
「ほぅ、ちょっと前に、随分と抉れていなかったか?」
「いやまぁ…あ、あはは」
本当、こいつはメンタルが強いのかそうじゃ無いのか分かりゃしない。
「よし! 国に入りました! このまま城に向いましょう!」
「あぁ、天候には気を付けろよ」
「分かってます!」
国に入った後も、アルルの移動速度は変化しなかった。
結構距離があって、天候も滅茶苦茶だというのに
それを思わせないほどの速度で移動をしている。
それなりの距離を短い間に移動をし、もう城の付近に移動した。
ミロルが移動をして、1時間程度か…距離を考えると十分速い。
と言うか、異常な程に速い。
「よし、ありがとう! こっからは自分で行ける」
「分かりました」
「よし、いくぞ!」
「リオさんも結構な物ですよね、立った状態の私の背中から飛び降りるって」
「普通だろこれ位、良いから急ぐぞ!」
「分かりました!」
そのまま城に突入、あまり時間は無いし、迷ってる暇は無い。
「うーん、少し力が抜けた感じがするな」
「魔法を無効化されていると言う事でしょうか」
「そうだろうな…厄介な」
仕方ないとは言え、ちょっとだけ疲労を感じるのはいやだな。
ウィンチェスターの召喚を試してみたが、出て来ないし。
無効化されているというのは間違いないだろう。
となると、この場で頼りになるのは…
「…アルル、ちゃんと守れよ?」
「このメイドめにお任せくださいお嬢様ぁ!」
「お前みたいなメイド、こっちから願い下げだよ、変態」
「メイルさんと私、どっちが良いですか?」
「……その2つだと、ギリギリの差でお前だな」
「ふ、勝ちました」
「長く一緒にいるのにちょっと前にであった奴に
ギリギリで勝って嬉しいのか?」
「ダントツは無理なのは知ってますし!」
「…あっそ、とにかく守れよ、今の俺は正真正の華奢な幼女だし」
「リオさんが華奢?
あはは、ご冗談を上品にも見えませんし繊細にも見えません!」
「テメェもだよ、クソ変態」
「淑女です!」
「お前みたいな変態丸出しの淑女がいるか、女ならもう少しお淑やかに」
「リオさんがそれ言います? まぁ、私はワイルドなリオさん大好きです!」
「……俺は男だからな、中身男だからな」
「それなら余計に華奢じゃありませんね!」
「うっさい、良いからいくぞ」
「はい! …因みにリオさんの中身が男の子じゃなかったとしても
リオさんの怪我とかを考えてみると、華奢とはほど遠いと言いますか
どう考えてもワイルド野生児という方がそれっぽいです!
いやぁ、私はリオさんならワイルドでも野生児でも好きですがね!」
「黙れ変態! 良いから急げよ! 時間無いって言ってんだろうが!」
「振ってきたのリオさんじゃないですか」
「誰があの冗談からこんな長話になると予想できる?」
「私が介入すれば、リオさん関連のお話しならばどんな話しでも長話に!」
「良いから急げって! もう俺が区切るしかないだろうが!」
「はい、分かりましたお嬢様ぁ!」
「はぁ、もう良いよ、お嬢様でも若様でも」
「若様とは1度だって言ってませんけど~」
「中身男だし」
「ふふふ、分かりましたお嬢様ぁ!」
「もう良いよ」
このまま変な話をしている暇は無いな。
とにかく、このまま急いで地下の方へ移動をしよう。
ターゲットが何処にいるかは大体把握できているからな。
「しかし、もう的は絞れないけどな」
「そうみたいですね」
どうやら、マルの魔法も効果が無いみたいだ。
つまり、この中では外からの魔法も効果が消えるようだ。
……と言っても、ミロルから渡されたこいつだけは消えちゃいないけどな。
弾丸も…と言っても、消えてないのは中に入ってる弾丸だけだが。
「だがまぁ、場所は分かるな」
「はい、もう確認できてますしね、地下へ行きましょう」
俺達は急いで地下への階段を捜索した。
しかしながら、流石にこの広さ、すぐには見付けることが出来ない。
だが、争いの痕跡を辿れば、ミロル達の場所は想定できる。
「このまま痕跡を辿りましょう」
「あぁ、最初からそのつもりだ」
まずは地下に向うよりもミロル達と合流する方が先だろう。
ミロル達と合流することさえ出来れば、お互いにカバーし合える。
そうすりゃあ、この魔法が使えない状況に置いても立ち回れるはず。
世話係達もあまり多くはないから、全員をカバーするのは難しいだろう。
この戦力が少ない状況でアルルという存在は大きいからな。
色々な理由で俺達は合流するべきだろう。
「よし、こっちだ!」
「しかし、こっちにも痕跡が…」
「…だが、こっちの方がミロル達っぽいが」
「じゃあ、こっちは…」
……ミロル達じゃないとすれば、こっちの方はフェミー達か?
だが、何故別行動を…とにかくこっちに行ってみるか。
「多分、ミロル達の方は大丈夫だろう、こっちに行くぞ」
「はい…でも、人形兵達の損傷が」
「切断されてるからな、だからミロル達じゃないとは思うが」
あいつらの中で剣とかが得意なのはメルトだろう。
後は基本格闘が得意だし、フレイとかも格闘だからな。
なら、損傷はヘコんだり、砕けたりだろうが、こっちは切断ばかり。
「…とにかくこっちに行ってみるか」
俺達は切断されてる痕跡の方に進んでいった。
奥へ進めば進むほど、損傷している人形は増えている。
そして、その奥に立っていたのは。
「…あらあら、こちらにいらしたんですか
残念ですが、ミロル様達は反対ですよ
あなたなら、どっちがミロル様達かくらい、分かるかと思いましたが」
「……メイル、お前だったのか」
そこにはいくつもの剣を携えているメイルが立っていた。
剣だけではなく、ナイフや鈍器、そして銃器を背負っていた。
ナイフは体中にしのばせている。
両手には直刀、その直刀は刃こぼれが激しかった。
だが、剣の形状から考えて、奪い取った剣だろう。
「なんか…お前の背中、威圧感半端ないな」
「そうですね、相手が人間だった場合、返り血がすごそうです」
「私は命令とあらば、例えそれが子供であったとしても排除しますよ。
勿論、あなた達も例外ではありません…
後、戦ってる私には関わらない方がよろしいかと」
メイルの正面から、更に人形兵達が突撃してきた。
「…巻き込まれても、責任は取りませんよ?」
その人形達の方を見て、メイルは狂気混じりの笑みを浮かべる。
そして、足下に転がってる人形を蹴り砕き、一気に人形達に接近した。
瞬時にその二刀を投げ、2体の人形を撃破する。
同時にナイフを用意し、同じく投げた。
そのナイフも直撃、一気に接近し、人形達の武器を奪い、すぐに次を撃破した。
飛びかかって来た人形に対しては、銃器でぶち抜き、撃破をする。
なんというか、まるで倒されるビジョンが見えない程に圧倒的だ。
「…さぁ、これで分かったでしょう? 私は心配いりませんよ。
伊達にファストゲージ最強の兵士とは言われていません」
「…みたいだな、本当に化け物染みてる」
「あはは…格が違いますね」
「では、行ってください役立たず、こっちは私が抑えておきますよ」
「この状態だと、否定できないな…じゃ、頼んだぞ? メイドさん」
「私はあなたのメイドではありませんので、勘違いしたら殺しますよ?」
「お前が言うとマジに聞えるから恐いな…まぁ、頼んだよ」
「えぇ、一応、上司の命令には従ってやりますよ」
こっちはなんの心配も無さそうだな、急いでミロル達の方に行くか。




