最後の総攻撃
一斉攻撃が始まった、俺の合図と同時にミロルの攻撃が門を貫く。
そのまま、魔道兵が突入し、一気に突破口をぶち開いた。
フランの催眠魔法により、城門の見張りと防衛をしていた
兵士の意識を奪い、内側から壊滅させ、攻撃が不可能な状況に追い込む。
その間にフレイ達がウィングとトラの魔法で壁上に移動し、一気に蹂躙。
そこまで追い込まれたんだ、城壁の兵士達はすぐに撤退し
門を容易に突破することに成功した。
最大の防御である魔法使いが倒されたことで一気にガードが緩くなったな。
いや、当たり前ではあるんだが、あの子に結構依存していたみたいだしな。
強すぎる力を持っていると、どうしてもその力に依存する。
その結果、その最大の力が崩れたとき、一気に弱くなっちまう。
本来なら周りがその穴をカバーするんだが、カバー出来なくなるわけだ。
だから、こうもあっさりと制圧されちまってるって事だな。
(城門突破、報告は逐一した方が良いわよね?)
「あぁ、頼む、一応大体の戦況は把握しているが
負傷者や細かい詳細な部分の報告は欲しいからな」
(オーケー、現状は正面突破が成功して、このまま攻めれば勝算は高いって感じよ。
次に行動して欲しい目標があったら教えて頂戴。
何も指示が無ければ、ひとまずはフェミー達との合流を優先するわ)
「あぁ、それでかまわない、急いでくれ」
(了解、さっさと合流目指すわ、援護頼むわよ?)
「あぁ」
(…で、声が震えてるけど、大丈夫?)
「あぁ…大丈夫だ、さっきまで寒いところにいたから震えてただけだから」
(大丈夫?)
「余裕だって、アルルのお陰でなんとか…だから、気にしないでくれ」
(了解よ)
ミロル達は進軍を再開、まずはフェミー達の方へ移動を開始した。
「よし、こっちはこっちで援護を開始するぞ。
優先撃破対象の指示をくれ、お前からの指示が無い場合
俺はフェミー達の付近を狙撃するから」
「了解です、所でリオさん…熱くありません?」
「……超熱い」
さっきは恐ろしく寒かったが、今回は馬鹿みたいに熱くなっている。
本当に極端だ…風邪引いちまいそうだな、こうも環境が滅茶苦茶だと。
その内、作物とかも大変な事になるんじゃねーの?
どっちにしても、この環境は向こうにとってもマイナスだろう。
「出来れば短期決戦だが…うーん」
11人の魔法使いは残り4人、うち1人は無効化魔法、もう1人は洗脳魔法。
そして天候操作魔法と言った所か…後、魔法が分からないのは1人。
今回の場合、厄介なのは無効化魔法だが…さて、どうなるか。
「出来れば無効化魔法使いを排除したいところだが」
「しかし、ハッキリと場所は分かりませんね。
複数の魔法使いが集まっているのは4箇所。
うち、3箇所は地下、残り1箇所は先ほどの魔法使いですし」
「本当、運が良かったな」
その1箇所があの防壁を出してた魔法使いだったんだから。
あの子が上に居た理由は恐らくだが逃げる危険性が無いからだろう。
だから、あの子がここが良いと言った上層階にいたって感じかな。
「っと、よし、順調だな」
「このままではフレイさんが12秒後死亡します、援護を」
「ち! 分かった!」
俺はアルルの言葉を信じ、急いでフレイの方に照準を移した。
フレイの頭上には人形兵が移動しており、俺が発見すると同時に飛び降りる。
俺は超集中状態を発動させ、落下中の人形兵の頭を撃ち抜く。
「おわぁ!」
人形兵が落下した音に気付き、フレイが大声を上げた。
どうやら、完璧に人形兵には気付いていなかったようだ。
危ない危ない、あと少しで本当にフレイが死んじまうところだった。
流石アルル、こいつの観察眼は本当に侮れない。
「よし!」
「次はウィングさんです! 予想では32秒後!」
「分かった!」
急いでウィングの近くにいた人形兵を狙撃した。
休む暇はあまり無いと言ったところかな。
「今度はミロルさ…」
「どうした?」
「…いえ、終わりました」
ミロルは不意打ちを受けたはずだが、その人形兵を片手で排除した。
そして、排除と同時にMP5を召喚し、正面の10体を撃破する。
弾丸が切れ、手に持っていたMP5を投げ、飛びかかってくる魔道兵にダメージ。
同時にベレッタを召喚し、飛びかかってきた魔道兵の排除を行なった。
弾丸が切れ、リロードをしようとしたときに人形兵が接近。
だが、一瞬の間に人形兵の体中に剣が突き刺さる。
屋根上からの人形兵には弾丸がぶち抜かれた。
「屋上からも人形が落下って事は…」
俺の援護射撃があったことには気付いたようだが
俺を見付けることは出来ちゃ居ない。
しかし、ミロルは満足げに笑った後、
両手にセキュリティシックスを召喚した。
「まぁ良いわ、ありがとうね」
向こうは俺が自分の言葉を聞いていると信じて小さく呟いた。
そして、正面から突撃してくる人形達に両手のセキュリティシックスを構える。
ニッコリと悪い笑みを浮かべ、引き金を引いた。
「ミロルの方は大丈夫だな」
「次はケースさんが危険です、1分ほどで」
「分かった!」
俺はアルルの指示に従い、最優先殲滅対象を狙い、排除をした。
最優先殲滅対象がいない場合は、危険分子の排除だ。
飛びかかるであろう火の粉を先に排除するという形かな。
危険な事態なんて出来れば起こって欲しくないしよ。
「しかしなぁ、この弾丸が着弾点で爆発したら強いのに」
「いやリオさん、それは恐いです、ただでさえ恐ろしい魔法なのに
そこに殲滅力を追加してしまったら、かなりのバランスブレイカーです」
「戦争にバランスもクソもあるかよ、向こうだって大概チートだろうが」
と言うか、むしろ向こうの方がかなりぶっ壊れてる気がする。
無効化魔法に指定爆破魔法にコピー魔法とか…言いだしたら足りないくらいだ。
その点、俺達なんて可愛いもんだぜ、言ってしまえば俺の狙撃魔法も
ミロルの魔法も召喚魔法だし、1番の実力者が召喚魔法だからな。
もうすでにアンバランスだ、よく戦えるよ本当。
「ま、まぁ、確かに向こうの方が色々とぶっ壊れてますしね」
「だから、少しくらい強くなっても良いだろ」
「十分強いじゃないですか」
「まぁ、大体はお前らのお陰だし」
今回だってアルルのお陰で最優先殲滅対象を排除してるわけだ。
アルルがいなかったら、もうすでに何人もの犠牲者が出てる。
ミストラル王国は何だかんだで一般の兵士が優秀と言う事だろう。
いやまぁ、アルルとかそこら辺がぶっ壊れてるだけだろうがな。
「いやぁ、嬉しいです」
「ちゃんと信頼してるんだから、成果を残してくれよ」
「任せてください」
俺はそのまま狙撃を続行した、最優先殲滅対象は出て来なかったし良かった。
ミロル達はそのまま進行を続けている、そろそろ合流だな。
「よし、俺達も合流しよう」
「はい、城内に入らないとどうしようもありませんしね」
「あぁ、地下の敵は狙撃できないからな」
この位置から狙撃できるのは街の対象だけだろう。
ミロル達が城内に侵入したら、すぐに下層に移動するだろう。
だがまぁ、問題が無いわけじゃ無いんだけどな。
城内に潜入すれば、ほぼ確実に無効化魔法の対象になる。
そうなれば、俺達魔法使い組は無力だ。
まぁ、フレイとかなら例え身体強化魔法が無くても
ただの人形兵程度なら圧倒できそうだけどな。
あいつ、いつの間にか格闘技術が凄まじいことになってるし
更に素の状態でも相当な怪力だ、本当にいかれてるほどにな。
あの華奢な身体の何処にあれほどの怪力があるのやら。
「まぁ、移動の前に…水をくれ」
「あ、はい、熱いですからね、ここは、はい」
「……あれ? 俺の水筒は?」
「もう空ですよ?」
「……お前は自分の分は飲んでないか?」
「まさかぁ、この暑さですよ? 飲まないはずがありませんって」
「……え、えっと」
「ふふふ、その滝のような汗、よっぽど暑かったんですよね?
さぁ、飲んでください!」
「お、お前の飲みくさしを飲むのか…」
「間接キッスです!」
「ぐ、ぐぐぅ…ま、迷ってる暇は無いか。
あまり時間を掛ける訳にも…よ、よし、意を決して飲むぞ!」
「うふふ~」
「くぅ…むぐ」
そりゃぁ、中身は当然お茶なんだけど…
「一応、水分補給にはばっちりのお水です。
しかし、塩分はありません、流石に汗は殆どかかないと思ってましたし」
「まぁ、こんな事態になるとは思わないよな」
「汗を舐めますか?」
「殺すぞ?」
「すみません! でも、割とありですよ?」
「うっさい! 死んだ方がましだボケ! さぁ、いくぞ! ほら!」
「はい、あ、私も飲みますね! うへへうへへ、リオさんと間接キッスです!」
「うっさい! 飲むなら早く飲め! 時間はあまりないんだよ!」
「冗談ですよ、それとリオさん、汗すごくて服が透けそうですが」
「透けるか! 軍服だぞこれ! しかも厚着してるんだよ!」
「ほ、本来なら寒い時期ですからね、でも、何故脱がないんですか?」
「脱ぐ余裕が無かったからだよ、早く行くぞ!」
「はい!」
ち、やっぱり環境が滅茶苦茶って言うのは本当に勘弁して欲しい。
とにかく、俺達はさっさとミロル達と合流するために移動を始めた。
ミロル達は既にフェミー達と合流しているようだ。
後は俺達の合流を待つだけという感じか。
(リオ、ケミーと合流したわ、でも、フェミーとケースの姿が無い)
「何でだよ!?」
(フェミーとケースは…)
「捕まったのか!?」
(いや、先に城内に突入した、私は惹きつけ役でね。
派手に暴れてたの…2人は城内に潜入という感じかな)
「でも、なんで潜入を?」
(私達が完全に勝つためにはバレないように移動して、子供達を解放しないと。
正面から戦ってもまず勝てないから、先に内側を崩そうという感じ
私は複数体相手にしても問題無いし、派手な攻撃も出来るから
城外で陽動してたの、城内に侵入すると魔法が無効化されるしね)
「やっぱり城内に入ると魔法は無効化されるのか、て言うか
さっきの狙撃時にケースの姿は見えたが…あぁ、そうか」
(うん、転移魔法で移動したの、あの攻撃の後にね)
「て言うか、俺達が来ていることが分かってたなら、待てば良かったんじゃないか?」
(フェミーが焦ってるの…自分達でケリを付けるって)
「…あいつ」
確かにあの真実を知れば、焦るのは分かるが…確実性を選べば良いのに。
とにかく急いで城内に侵入し、フェミー達を保護しないと!
「とにかく、急いでフェミー達と合流するぞ!」
(そうね、急ぐわ!)
「俺は後から合流するから、お前達は急いでくれ!」
(本来なら、あなたが合流した後に攻め込みたかったけど仕方ないわね
このままだと時間が無いし)
「あぁ、頼む」
(任せて頂戴、いくわよ!)
(フェミーを…止めて)
(最初から、そのつもりよ!)




