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初日の休憩

本来はもう少し進むはずだったが、状況が状況だし休むしか無いよな。

それにしてもだ、まさか外で寝る事になるなんてな。

風邪引かなきゃ良いけど・・・・でも、あいつと同じ空間で眠るのは嫌だ。


「リオさん、テントは張りましたから入ってください」

「あー、分かった」


とりあえずテント内で足を休めるとするかな。

流石にこの状態で立ちっぱなしとかしんどすぎるし。


「はぁ、ゆっくり休めるな」

「そうですね…それにしても、どうしてクッションがあるんですか?」

「確かにな」

「質の良い眠りは長旅では絶対に必須ですからね

 リラックスして休める空間は非常に大事です」

「あー、そう、じゃあ俺はリラックスして休める空間が無いんだな」


こいつが居る地点でリラックスして休めるわけが無いからな。

こんな危険生物が近場に居たら絶対にストレスしか来ないし。


「テントの中で休めば大丈夫ですよ、ちゃんと柔らかいクッションに

 ふかふかの寝袋、暖かいお風呂、ただご飯が不味いところは我慢してください

 あ、でも、今の時間ならまだ私が食料を集めて料理しますから

 今日のご飯は美味しいですよ」

「いや、お前の存在がストレスだ」

「あう! 相変わらず手厳しい! でも、良い!」

「うぜぇ」


つい口に出てしまった、はぁ、もう少し自重してくれればな。


「リオさんはアルルさんが嫌いなんですか?」

「あぁ、大嫌いだ」

「相変わらず容赦ないですよね、ハッキリ言いすぎですよ」

「ハッキリ言っても直さない間抜けに遠回しに言っても理解すら出来ないだろう?」

「リオさんの一切容赦ない言葉が私を襲います」

「嫌なら直せ」

「ふふ、これは私の性です、どう足掻いても直りませんよ

 でも大丈夫ですリオさんだけなので」

「……もう嫌なんだが」


どう言おうとこいつは直らないな…もう駄目かも知れない。


「さて、それでは食料を集めてきますから、ゆっくりと休んでくださいね」

「あぁ、分かった」


アルルがテントから出て、不思議と少しだけ安心出来た。

さてと、これで少しの間は安心してゆっくり出来るかな。


「はぁ、これで安心出来るな」

「なんであそこまであの人の事を嫌ってるんですか?」

「…まぁ、お前は知らないままで良い」

「へ?」


あそこまであいつの醜態を見たって言うのに

どうして嫌っているのか分からないところから考えて

この子はまだ変態とかそう言う存在のことを知らないんだろうな。

なら、このままで良いだろう、その方が一緒に行動しやすいだろうからな。


「あぁ、そうだ、話は変わるが、どうしてお前は兵士になったんだ?

 魔法の適性があったからか?」

「どうしてそんな事を?」

「少し気になったからな、言ってくれるか?」

「…私は魔法の能力があって

 お父さんとお母さんみたいになりたかったから兵士になったんです」


そうか、両親が兵士だから結構礼儀正しいんだな、忠誠心も凄いし。

やっぱり子供は親に似るんだな…例外はいるが。


「そうか、で? 兵士になった感想はどうだったんだ?」

「楽しかったから辛かった、さっきまで笑ってた人が

 いきなり動かなくなったんですよ

 ほんの1度斬られただけで動かなくなって

 いきなり頭から血を出して倒れたり」

「あ、頭から?」

「はい、良くしてくれていた隊長さんでした、その人がいきなり死んで」


…俺が狙撃した指揮官か兵士かのどちらかか。

なら、俺はこいつに憎まれてもおかしくない状況だと言う事か。

でも、こいつは気が付いていない、顔が見えてないからな。


「確かに皆、私の魔法を馬鹿にしてましたけど

 その代わり色々と教えてくれてました

 戦い方とかを、でも、初めての実戦で死んしまって

 私を庇って死んだ人もいました

 私は将来強くなるって、そう言って…

 私がこうやって生きてるのも、そんな人達のお陰です

 ただ、私もいきなり何かが当たったと思ったら寝ちゃって」


戦争では犠牲は付きものだが

こうやって相手国の兵士から話を聞くと決心が鈍るな。

俺は戦争で誰かの大切な人を殺してるんだから

でも、それは同時に俺が大切な人を守る為だ。

鈍るな俺、俺は家族を守る為に戦うんだ、例え誰かの家族を奪おうと。


「…1つ良いか?」

「なんですか?」

「もし、お前の大切な人を奪った奴が分かったらどうするんだ?」

「殺します」

「即答か」

「はい、殺します、絶対に殺す」


…これは、バレたら終わりだな、はぁ、安心出来る空間が無いな。

何だかんだで、この空間も安心出来ないのか

はは、アルルがいなくなったせいで逆に危険になるとは。


「そうか、やっぱり復讐するんだな」

「そうですよ、復讐します…それじゃあ、今度は私から質問します」

「どうぞ」

「何故あなたは兵士に?」

「家族を守る為だ、大切な家族を守る為にな」

「そうなんですか、格好いいなぁ、私にもそんな目標が欲しいです

 私はお父さんとお母さんを追いかけるために兵士になったから」

「じゃあ、自分がやりたいことを出してみろ

 それがお前がこれから生きていくための道しるべになる」

「私が今やりたいことはあの人達の敵を取ることです」


復讐の為に生きていくのか…まぁ、俺に止める権利は無いな。

なんせ、俺がその復讐の対象だ

でも、俺も死にたくは無いし黙っておこう。


「まずは私達の家を奪った敵を殺します

 そしてあの人達を殺した人を探して殺す」

「敵討ちの相手は分かってないのにか?」

「はい、それでもやります、一生を賭けて追いかけ続けて、殺して見せます

 でも、今は確実に分かってる敵国を潰すことに全てを賭けてみます

 その為にはあなたを、ミストラル国を利用します」

「それを本人に言うのか?」

「お互い様です、えっと、確かこう言うのを

 うぃんうぃんって言うらしいですよ?」

「誰からそんな言葉を?」

「死んだ私の隊長さんです」


はぁ、聞かなきゃ良かった、そもそも兵士になった理由を聞かなければ

こんな無駄に重たい気持ちにならなくって良かっただろうに。


「そうか、いい人だったんだな」

「はい、そうです」


あーうー、何だかここにいるのが辛くなってしまった。


「リオさん、ある程度食料を確保できましたよ」

「アルル!?」


おぉ! なんか良いタイミングに戻ってきたぞ! 


「そ、そうか、それで、どれ位取れた?」

「1日分です、えっと、近くに居た猪のお肉と

 食べられる野草と、かなり多かったです、いやぁ、流石は森の中ですよね」

「そうだな・…まぁ、その、なんだ、マル」

「なんですか?」

「兵士って奴は結構辛いよな、仲間が死んだり、相手を殺したり」

「そうですね」

「でも、皆きっと信念があってだ、ただ快楽で相手を殺してる奴は居ない

 俺は家族を守る為に、ある奴は国を守る為に、ある奴は友を守る為に

 所詮は言い訳だが、こう言う信念が無けりゃ道は迷うし戦場で悩んで死ぬ

 お前もしっかりと道を作って歩いて行った方が良い…所詮、言い訳なんだけどな」

「……」


こいつにそんな事を言うって、どうなんだろうな

免罪でもしようって言うのかね。

でも、言っておきたかった

復讐だけで生きていったらそれを達成した時、こいつは道を失うからな。


「え? どうしたんですか? なんか暗いですね

 駄目ですよリラックスしないと疲れが取れなければ死にますからね

 それと、大切なのは今ですからね、未来を見ても不確定だし

 過去を見ても変わりませんし」

「良いじゃないか、昔を見ても、後悔しても」

「後悔するだけでは意味ないですって、その過去を踏み台にして

 最高の今を常に作らないと、そうしないと昔の後悔はただの足枷ですからね」

「…アルルさん」

「はい、暗い雰囲気はお終いです、美味しいご飯を作りますね!」


アルルって、実は2重人格なんじゃ無いのか? 

普段と雰囲気が違いすぎるっての。

これで変態な所が無ければ俺もこいつを心の底から信頼できそうなんだけどな。

変態な所が無ければ! 変態な所が無ければ!


「なんでそんな事を言うのに、お前は変態なんだよ」

「それはですね、私がこの性格が大好きだからです」

「…変態な自分が好きってどうなんだよ」

「あ、違います違います、ただ隠すのが嫌いなだけですよ、全部本当の私です

 リオさんの前でこうなのも本当の私ですし

 フレイさん達と一緒に居る私も本当の私

 メルトさん達と一緒に居るときの私も本当の私

 だから嫌いな相手には全力で嫌そうな顔をします」


…隠して欲しい、せめて俺に対する態度だけでも隠して欲しい!

いや、内心変態でも怖いけど、堂々としているのも怖いっての。

理想的なのは直して貰う事なんだけど、こいつには無理らしいし。


「あ、そう言えば思ったんですけど、マルさん

 リオさんと会話できるくらいになったんですね」

「はい、少しだけ優しい人だって分かったから」

「まさか、俺は優しい奴じゃ無いっての」

「いえ、優しい人です、私を心配してくれたり

 話を聞いてくれたり死んだお兄さん達みたいです」

「止めろっての」

「でも」

「やめ! むぐ!」


俺が大きな声で叫ぼうとすると

その動きを察知したのかアルルが俺の口を塞いだ。

凄く泥臭いし、なんか血の臭いと獣臭がぁ!


「むがぁあ!」

「すぐに怒鳴っちゃうのはリオさんの悪いところです

 この子は心臓弱いんですから」

「むぐぅぅあぁあ!!」


くっせぇ! なんか血と泥と獣の臭いが混ざって超くせぇ!


「あ、臭いますか? やっぱり手を洗ってないといけませんね」

「はぁ、はぁ、こ、ここ、この、ケホ! ケホ!」


あのおぞましい臭いから解放されたけど、まだくせぇ! 超くせぇ!

臭いがぁ! 臭いが鼻に! 鼻についたぁ!

と言うか! なんか、なんか口の中もジャリジャリする!


「くっせぇ!! ぺっぺ! あぁ! 口の中に泥が!」

「あはは、いやぁ、手を洗おうとしたら

 リオさんが怒鳴りそうだったんで塞いだんです」

「こ、この! この! 少しは考えて、あぁあ! くっせぇ!」


鼻に臭いが付いたせいで、俺はしばらくの間その場で悶え苦しむことになった。

畜生! 何てドジ女だ! 何で洗っても無い手で俺の口を押えやがったんだよぉ!

せめて洗ってろよぉ! もう、しばらくの間は肉も泥も良いわ。


「あー、もうやだ」

「あはは、すみませんね」

「このクソ女め」

「クソ女ですか、変態女とどっちの方がレベルが上なんでしょう」

「クソ女の方が嫌いランクは上だぞ、この馬鹿」

「今まで以上に嫌われちゃいました!? やっぱり臭いはキツいんですね」

「当然だろうがぁ!」

「すみませんね」

「じゃかしゃぁ!」

「あ、はい、ご飯出来ましたよ」


もう、こいつ嫌だ…あ、ご飯は美味しいな。

臭いもあまり無いし、やっぱり調理法で変わるもんなんだな。

そして、その日の夜、寝る時間だが。


「…蚊が」


なんか外で寝ようとすると蚊がたかってきて眠れねぇ。

やっぱり外で寝るのはキツいのか、だが、あの空間で寝るのはな…ん?


「リオさん、テントで寝てください」

「嫌だ」

「大丈夫ですよ、私はテントで寝ませんから」

「は?」

「私が代わりに外で寝ます、それならリオさんも眠れますよね」

「…俺がただのわがままで外で寝てるのに、どうしてだ?」

「私なんかよりもリオさんに何かあったら困りますからね」


…アルルの奴、全くさ

どうしてこいつは変態な時はクソなのにそれ以外は優しいかね。


「…はぁ、分かったよ」

「はい、それでは」

「ただ、アルル、お前もテントで寝てくれ」

「え? どうしてですか?」

「…お前に何かあっても困るんだよ」

「-!! リオさーん! 優しいです! 大好きです!」

「止めろやぁ! 抱きしめるなぁ!」

「うふ、うふ、うふふ~!」

「クソ!」


結局、俺、アルル、マルはテントで寝る事になった。

アルルはその間、終始最高にテンションが高くて気持ちが悪い。

でも、何かあったら困るからな…仕方ない、我慢するか。

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