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幼女に転生した腹いせに狙撃チートで戦場を荒らしてやる!  作者: オリオン
第3部、第6章、戦争後の長い息抜き?
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限界を超えた徹夜

……えっと、銃器研究の…追加予算か。


「あぁ…ちょっと見てくる」

「あ、お願い、研究の追加予算の奴ね」

「あぁ…まぁ、一応知っておきたいし、ちょっと抜けるぞ」


あぁ、もう2日か、いや、まだ2日か。

書類はまだまだ山のように残ってる。

一応、昨日スティールには風呂入って寝て貰ったけど

その影響でちょっと遅れが生じた。

はぁ…状況を知ろうなんて行為は無駄な時間ではあるがな。

でも、やっぱりどんな感じなのか興味はある。


「えっと、追加予算の件ですか!?」

「あぁ…そうだよ、スティールに指示を貰って来た」


俺が書類整理をしてるというのは言わない方が良いかも知れないからな。

とりあえず今はスティールに指示されたという事にしておこう。


「あ、わ、分かりました…えっと、目に酷い隈が出来てますけど…

 後、髪の毛もボサボサですが、何かあったんですか?」

「あ、いや、気にしないでくれ…」


お姫様とその協力者がずっと徹夜してるなんて知られたくないしな。


「はぁ…では、えっと…こちらです」


俺は対応をしてくれた女の研究員に案内して貰った。

一応、俺の対応をしてくれるのはこの女の子だったが

入ってみると中には男の人も沢山居た。

結構怪我をして居る人が多いな…まぁ、武器の研究だしな。

ちょっと失敗したら大怪我は仕方ないだろう。


「えっと、これが最新型の銃でし…え?」

「んぁ? どうした? 俺の腹を見て…あ」


あぁ、これか、ちょっと服が変な事になって腹が見えてた。

多分、この人が見たのは俺の腹にある大きな怪我なんだろう。

わざわざ姿勢を低くして俺に銃を渡そうとしてくれたからな。

立ったままだったら見えやしないだろうが、姿勢が低けりゃ見えるか。


「……あの、その…怪我は?」

「ん? 戦争で怪我をしただけだよ」

「……大丈夫、なんですか?」

「大丈夫だから生きてるんだよ」


服を直して、彼女が俺の方に差し出していた最新型の銃を持った。

うん、まぁまぁ重たいな、と言っても、俺もそれなりに鍛えてる。

これ位の重さなら割と簡単に持てる。

M95とかの対物ライフルだって扱うんだし当然だけど。


「……」

「なぁ、これは弾が入ってるのか?」

「……」

「おい、聞いてるのか?」

「へ? あ、す、すみません…」

「俺の怪我がそんなに珍しかったか?」

「あ、いえ……その…」

「それとも、こんな子供がこんな怪我をしているのが応えたか?」

「……はい」

「そりゃ、俺は戦争に出る兵士なんだし、体中怪我だらけなのは当然だ。

 俺だけじゃなく、他の兵士だってそうだろうな、ま、ほかの兵士達は

 俺みたいな怪我じゃなく、切り傷だらけなんだろう」

「…兵士の皆さんはそんなに傷付いてるのに、私たちは」

「お前らはその兵士達の怪我を少しでも減らすために武器を作ってるんだろ?」

「……」

「武器ってのはやっぱり重要でな、質の悪い装備じゃ兵士は死ぬ。

 逆に質の良い装備なら生き残る確率は上がる。

 装備は兵士達の大事な相棒で恩人なんだよ。

 まぁ、武器を恩人って言うのはちょっと違うけどな。

 だから、お前らは必死に質の良い装備を作ってくれりゃ良い」


とりあえず、俺は弾が入っているかどうかを確認した。

武器に弾は入って居ない。

まぁ、当たり前だろうけどな、危ないし。


「…ありがとうございます」

「あ? なんで礼を言う? まぁいいや、この銃、1発撃ちたいんだが」

「あ、はい」


俺は弾を受け取り、案山子が用意されている部屋に移動した。

ひとまずは普段通りに銃を構え、狙い、引き金を引く。


「…あ」


弾丸は左上にズレ、弾丸が案山子に当ることはなかった。


「ふーん、こう言う癖ね」


2発目を装弾し、さっきのズレを計算して狙い、引き金を引いた。

だが、今度は思った以上に左上には上がらず、案山子の手に当っただけ。


「…安定しないな」


次も同じ様に照準を動かし、引き金を引く。

今度は右上…上に上がるという点は共通しているが

左上か右上か、どっちに上がるかは分からない。


「うーん」


やっぱり弾丸の形状があまりよろしくないという感じだな。

火縄銃の様な丸形の弾丸、だから風の切り方がよろしくない。

貫通能力もあまり高くないから、恐らく鎧を貫通するのは難しいだろう。

案山子に与えた損傷から考えてみて、鎧は壊せないからな。

下手したら人体を貫通させることも難しいかも知れない。


「ど、どうでしょうか…もう少し予算があれば」

「駄目だな、そもそも根本が間違ってる」

「…ですよね、私たちもそれは分かってるんです。

 攻撃力も低いし、正確性もあまり無い。

 ですが、予算もそろそろ厳しくなってきましたし」

「確かに銃の生産は優先度が非常に高い。

 遠方からの攻撃に突出しているしな。

 矢のように雨のように降らすことは出来ないが

 射線内の相手ならほぼ確実に撃ち抜けるからな」

「では」

「だが、このままでは駄目だ。

 確かに複数体を相手する上なら十分に実用性はある。

 だが、相手は人形、これじゃあ、人形は倒せない。

 つまり、このままだとただ重いだけのガラクタだ」

「…すみません」

「ひとまずは貫通能力、弾丸の攻撃力を上げることを優先しろ。

 今の所の最優先項目は攻撃力だというのは間違いない」

「分かりました」

「弾丸の先端を鋭利に尖らせるんだ、貫通能力が上がる」

「はい…それは試しているんですけど、中々に…」

「型を用意すれば少しは鋭利な弾丸を用意できるんじゃねぇか?」

「なる程、確かに型を用意すれば、少しは…

 ありがとうございます、参考にしますね!」

「もう一つは精度だが…まぁ、あれだ、難しいとは思うけど

 お前らってジャイロ効果って知ってるか?」

「ジャイロ効果?」

「あぁ、ちょっと待てよ」


即席のコマを用意してみて、床で回してみた。

まぁ、即席だからちょっと自信ないけど、少しは回るだろう。


「これは?」

「これがジャイロ効果、これが回ることでバランスが取れる。

 でも、回ってないとジャイロ効果は発揮されずにあっさり倒れる」

「……」

「この効果を弾丸に付与することが出来れば

 少しは精度も上がるんじゃね?」

「ジャイロ効果…でも、どうすれば」

「渦巻き状の溝を銃口に用意したらどうだ?」


銃の弾丸はこれで真っ直ぐ飛んでいく。

高速で回転し、バランスを維持することで真っ直ぐに飛ぶ。

だから、仮に弾丸を掴んだり出来ても、摩擦熱で手が大火傷だ。

仮に弾丸を斬ったとしても、弾丸は真っ直ぐには切れない。

まぁ、正直、本来なら知っておく必要も無い知識だ。

そんなの多少ミリタリーを調べてないと知らないことだろう。

一般人がリボルバーの弱点や強い点を知らない様にな。


「難しそうですね…」

「まぁ、難しいだろうが、頑張って見てくれ」

「はい」

「予算の方は承認を出しておこう、最優先項目だし」

「あ、ありがとうございます!」


この助言で少しは銃の研究が進んでくれれば良いな。


「よし、それじゃあ俺は帰る」

「はい、本日はお忙しい中でご足労感謝します」

「頑張ってくれよ、他の研究員達にも言っといてくれ」

「はい! ありがとうございました!」


俺は急いで城に戻り、研究の追加予算を承認して書類の整理を再開した。

正直、言い気晴らしにはなった、缶詰状態って死ぬ前は当たり前だったが

何故か転生した後だと缶詰状態が非常にしんどいと感じる。

きっとあれだな、長いことフレイとかに振り回されて

外に引っ張り回されてたりしてたから、缶詰とは無縁だったからだな。


「ふぅ…よし、あと少しだな。

 5日は掛かると思ったが、2日と半日で終わるとはな」

「そうね、いやぁ、あなたが来てくれて本当に助かったわ。

 私1人だとほぼ間違いなく10日は掛かってたし」

「あはは、いや、大丈夫だろ、ま、このまま終わらせるか」

「えぇ、ラストルパートよ!」

「ラストスパートは後もう少し待った方が良いですよ?」

「……知らないわ! 聞きたくない!」

「いやぁ、私も出来れば伝えたくはないんですけどね

 新しい書類、到着しました」

「その笑顔止めて!」

「因みに量は今までの書類の3倍です」

「はぁあ!?」

「待って! 3倍!? 10日は掛かるわよ!?」

「まぁ、頑張ってください」

「メイルも手伝ってよ!」

「手伝いたいのは山々なのですが、私はただのメイド。

 そんな権力ありません。

 後、そう言うのは苦手でして」

「それは俺もなんだけど…」

「ほら、あなたは権力あるでしょう? 頑張ってください」

「子供にこんな鬼畜をやらせるな!」

「あなたのような子供が居ますか?」


滅茶苦茶笑顔でそう返された…嫌確かに居ないだろうけども!


「ぐぬぬぅう!」

「まぁ、文句を言っても書類はなくなりませんよ?

 むしろ文句を言い続けてたら書類が増えますよ? 良いんですか?

 増えますよ? 文句を言ってる間に少し少し増えますよ?」

「分かったよ! やれば良いんだろやれば!」

「なんか本当…楽しんでるわね、あなた…私の時はそこまでだったのに」

「流石にスティール様が苦しんでいる姿を楽しめはしませんよ」

「俺なら良いってのか!?」

「はい」

「笑顔で答えるな!」


クソ…完全に楽しんでやがる、こいつは本当に俺の事が嫌いなんだな。


「頑張ってください」

「くっそぉ!」




結局、その書類が無くなることはなかった。

そりゃそうだ、だって文句を言っても意味は無いし

あいつが言うとおり、文句を言ってるだけじゃ書類ばかりが増える。

時間はどんな時だって流れるんだ。

何もしてない、何も考えてない間も時間は消費される。

何もせず、のんびりと過していても、何も作らなくても時間はただ流れる。

そして、気付いた時には後悔する…あのまま文句を言ってても

結局俺は後悔するだけだっただろう。

ドンドン山積みになっていく書類を目の当たりにして。


「…まぁ、なんとか…今は…セーフだが…」


メイルに言われたとおり、俺とスティールはひたすらに書類を処理した。

必死に…一心不乱に、だが、ただ判子を押すだけじゃ駄目ってのも厄介だ。

その書類になんの意図があるかを考えたり確認したりしないといけない。


「あ、後…少しね…後…少し…」

「どうも」

「メイルのバーカ!」

「何でですか!?」

「この悪魔! 運び屋! 大魔王!」

「なんで私こんなに嫌われてるんですか!? 酷くないですか! スティール様!」

「あなたなんか知らないわ!」

「待ってください! こ、今回は新しい書類を運んできたわけじゃありません!

 ただ経過確認で来ただけです!」

「え? あ、そ、そうなの!? もう書類無い!?」

「えっと…」

「目を逸らさないで!」

「ま、まぁ、今の書類の量よりは少ないですよ?

 10分の1くらいです」

「本当!?」

「でもあるんだな」

「まぁ、そこは仕方ないかと」

「えぇい! もうさっさと持ってきなさい! すぐに終わらせてやるわ!」

「では…少々お待ちを」

「やってやるわ! ここまで来たら! 今日終わらせる!」

「い、いや、この残ってる書類を処理して、1日寝てから…」

「甘ったれないで! ここまで来たら今終わらせるべきよ!」

「もう10徹! 死ぬわボケ!」

「大丈夫よ! あと1日くらい!」

「人間の限界は11日なんだよぉ!」

「なら大丈夫よ! まだ10日よ! たかが!」

「何処がだぁ!」


結局…その日も徹夜…もう死ぬ…マジ死ぬ…目の前が霞む。

あぁ、なんか…前もこんな状態になった記憶が…

その時はマジに死に掛けてたけど…

まぁ良い、よ、ようやく終わったんだ、早く帰ろう…うぅ、もう…限界…






「リオさん…お城の真ん中でそんな格好で寝たら変質者に襲われますよ?

 まぁ、ここの兵士さん達なら大丈夫でしょうけどね」

「…………」

「完全に寝てますね…お疲れ様です、リオさん」

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