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幼女に転生した腹いせに狙撃チートで戦場を荒らしてやる!  作者: オリオン
第3部、第6章、戦争後の長い息抜き?
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散々な夜

アルル達のお陰で大人数かくれんぼは無事終わった。

俺が隠れる側になった時、誰も俺を見付けてはくれなかった。

精々トラが良い線まで行っただけだったな。

ミロルも良い感じだったけど、トラの方が俺に近付いてた。

読みも良い感じだったしな、でも、結局見付からずってね。

だが、何処からかたまに視線は感じたけど…多分あれはアルルだろう。

あいつから隠れるのは本当に至難の業だな。


「さて、大人数かくれんぼも終わって、次はどうすっかな」


大人数かくれんぼが終わった後の夜…俺はそんなことを考えてた。

椅子に座り、羽根ペンを鼻と口の間に挟んで机に足を乗せて

全力で椅子を後ろに倒す。


「うーん」


明日の予定はどうするか、周りを少し見ても起きてるのは俺だけだ。

俺が色々と考え事をしている机の明かりだけが点いている。

何もすることが無いな…いや、正確にはあるんだ、正確には。


「書類整理…かなぁ」


でも、自分から書類整理を手伝うぞ、なんて言いたくないし

そうなると逃げ出せないというジレンマがある。

まぁ良いか、このまま放置しててもスティールが過労死するだけだろ。

いやぁ、書類整理ってのはなんというか大変だねぇ。


「こんな夜分遅くに起きてやがる不良少女にはお仕置きが必要でしょうかね」

「…な」


俺がそんな事を考えていると、扉がゆっくりと開き

そこにメイルが立っていた。

いや、馬鹿な…あいつは首都の方で作業をしてたんじゃ…

そんな奴が何でここに…


「…えっと、お前は首都の方で書類地獄の運送をしてたんじゃ」

「えぇ、まぁ、書類はまだまだありますし

 本来ならここに来る時間もありませんし、余裕も無いんですがねぇ」

「…それがなんで」

「ふふ、大体察しは付いてるんでしょう? 顔が真っ青ですよ」


……いや、確かに書類整理の手伝いをしてやろうかなとは少しだけ思った。

だが、よくよく考えてみると俺は書類とか大っ嫌いだし

そもそも長い字を読むだけでも苦行…それなのに整理とか絶対に無理だろと

今更だが思った。

なんでメイルが目の前に来て、そんな事を思ったのか。

それは簡単に分かった…あぁ、何となくこの後の事を察したからだろう。

未来予知みたいな感覚というか、予想というか…

いや、火を見るほどに明らかな展開だって事だ。

何せあの会話の時、もうすでにアルルが未来を予知してたから。


「書類整理、手伝ってくださいね?」


普段表情を変えないメイルが、滅茶苦茶生き生きとした笑顔を向けてきた。

いや待て! なんでこんなにまで楽しそうなんだ!?


「なんでそんなに楽しそうなんだよ!」

「だってほら、あなたがもがき苦しむ姿が容易に想像できまして」

「ふざけんなよ!? 俺はやらないからな!」

「拒否権…なんて物があるとでも? 確かにこの場に来たのが

 私ではなくスティール様ならその権限はあったかも知れません。

 あの方は自分の都合を押し付けることはしないような甘いお人です。

 でも、残念ながらあなたを迎えに来たのはこの私です。

 私が他人の都合等聞くような優しいメイドさんに見えますかね?」

「い、いや、まるで悪魔みたいなメイドだ。

 なんか角が生えてそうだな、真っ黒い翼とかも生えてそう。

 と言うか生えてるよ、滅茶苦茶禍々しい物が生えてるよ!」

「おやおやおや、それはそれは、では悪魔らしく子供を攫うとしましょうか」

「楽しそうに言ってんじゃねぇよ!」

「ふふふ、もがき苦しむあなたの姿、楽しみにしてますね?」

「おま! ちょ! 引っ張るばボケ! 無理矢理連れて行こうとするな!」


俺は連れ攫われそうになったが、ギリギリでドアノブを掴んで抵抗した。


「と言うか! こう言う役目はほら、アルルとかに!」

「流石にあなたの部下であるあの人達に任せるのはね。

 せめて対等な関係であるあなたに手伝わせますよ」

「馬鹿! 俺よりもほら! あいつらの方がスペック高いから!

 書類とかそこら辺の整理ならあいつらの方が圧倒的に上だから!

 金銭管理とかそこら辺はあいつら完璧だから!」

「だ・め・で・す」

「止めろぉ!」

「しかし粘りますね、無駄に体力はあるという事ですか。

 でも、あなた如きの筋力で私の力に勝てるとでも?

 ちょっと力を入れれば」


メイルが少しだけ力を入れただけで俺の手はあっさりとドアノブから離れた。


「あぁああ! なんで誰も起きねぇんだぁ!」

「本来、子供はおねむの時間ですからね」

「だが、ミロルは…あ!」


俺達の寝室の扉が開き、ミロルが顔を覗かせた。

そして、白いスケッチブックの様な用紙を取りだし、開いたら

そこには頑張ってね、と、書いてあった。


「おま!」


因みにこの字は元々予想してたから改めて仕込んでたのよ。

あ、皆にはちゃんと事情を話しておくから安心して頂戴ね。

まぁ、色々と大変だろうけど頑張りなさい。

意外と3徹とか余裕でしょ? 下手したら5徹とかも。


「ミロル! テメェ! くだらねぇ仕込みしてんな!

 と言うか! 無駄に字が綺麗だな畜生! つか助けろよ!」


ありがと、あ、それと最後に、私たちの犠牲になってきてね。

…いや、なんか違うわね、あぁ、そうだそうだ、感動的なお別れって感じで

私たちの犠牲になってくれてありがとうね、あなたの事は一生忘れないわ。

いや、でも意外と忘れるかも知れないけど、せめて晩ご飯までは覚えておくわ。


「ふざけんなぁあ!」

「おやおや、あなたの大親友もあなたの門出を祝っているようですね。

 では行きましょう、事情はあの子が話してくれるようですし」

「絶対に嫌だぁああ!!」




…抵抗も虚しく、俺はメイルに抱きかかえられたままで馬車にぶち込まれ

強制的に首都の方まで移動させられてしまった。

そして、死刑執行を向かえるような気持ちになっちまった。

なんでさ…その、運ぶときに手を後ろに拘束して…首輪まで着けやがって。


「うーん、何だか奴隷って感じですね、お似合い…ですよ?」

「お前! マジでお前! お前は俺をなんだと思ってるんだよ!

 ふざけんなよ! 俺は奴隷じゃないぞ!? 一応立場的には

 お前らよりも上の立場なんだぞ!? 分かってんのか!?」

「まぁ、確かにあなたの一言で関係がぶっ壊れる可能性はありますでしょう

 でもほら、あなたってあれでしょ? 裏切るつもりは毛頭無いのでしょう?」

「無駄な信頼を寄せやがって! 

 と言うか! だからって何をしても良いとでも!」

「因みに首輪は絶対に逃がさないって意思表示です」

「クソがぁ!」


確かに! 確かに俺は1度! 奴隷の変装をした事はある! 

滅茶苦茶屈辱的だったが! 1度だけある!

だが! なんでもう一度こんな目に遭わなきゃなんねぇんだよぉ!


「スティール様、入りますよ」

「…ふぁい」


スティールの部屋から非常に弱々しい返事が返ってきた。

今にも信じまいそうなほどに弱々しい声。

俺もそんな風になっちまうのかと思うと…ゾッとする。

と言うか、震えが…やっぱり無理だ!


「やっぱ無理! 俺は逃げ、ぐぇ!」

「逃がしませんよ?」

「ケホケホ! 首が! 首がぁ!」

「首輪が付いてますし~? 逃げられるわけがありませんでしょう?

 ほら、諦めて部屋にどうぞ」

「締まる締まる! 首が! 首がぁ! 首輪を引っ張るなぁ!」

「ほらほら」

「分かった! 諦めて入るから! 入るから! 首輪を引っ張るなぁ!」


結局抵抗は断念してしまい、スティールの部屋に投げ込まれた。


「…あ、新しい書類じゃ…ないの?」


目に酷い隈があるスティールが俺の方を見た。

姫様とは思えない程、髪の毛はボサボサになってるし

目付きも非常に弱々しいと言うか、捨てられた犬みたいな目をしてる。

服も滅茶苦茶乱れてて、今にも死にそうだ。

本来なら服が乱れてるお姫様とかエロいのかも知れないが

今のスティールからは色気の欠片も無い。

と言うか、可愛いとかを感じるよりも先に可哀想という感情が…


「新しい手を用意しました」

「え? なんでリオが…」

「こいつに少し書類をやって貰いましょう」

「は? でもほら…この書類地獄よ? 可愛そうじゃないの…

 辛いわよ? 5日は絶対に眠れないわよ? お風呂も入れないだろうし

 食事も満足に取れないし…服を着替える余裕だって…

 そんな苦行を小さなリオに任せるのは…可哀想というか…」

「そうそうそう! 無理無理! 俺には無理だ!

 だってほら、俺って書類の整理とか得意じゃねぇし!」


チャンスだと思った、スティールは俺の助けを求めちゃいない!

いや! 求めてるのかも知れないが、俺の事を心配してくれている!

今なら! 今この瞬間なら! スティールの命令ならメイルは絶対に聞く!

だから、今のうちに駄々をこねていれば俺はこの場から逃げられる!


「しかし、スティール様、1人では5日所か10日は掛かるかと。

 時間が掛かれば掛かるほど次の書類は来るでしょうし、このままだと」

「だ、大丈夫よ…わ、私はお姫様なの…お父様がお仕事を出来ないなら

 む、娘である私が…それをこなすべきなのよ。

 だ、誰かの力を借りなくても、わ、私はやり遂げてやるわ。

 この辛さを味わうのは…まぁ、私だけで良いわ……だ、大丈夫よ」

「……」


…だ、駄々を…駄々をこねれば…に、逃げられる…筈で。


「……では、良いのですか? 1人で出来るのですか?

 あなたの役目を手伝えるのは、恐らくリオだけだと思うのですが」

「だ、大丈夫よ」


……う、うぅ…うぅうぅ! お、俺はしょ、書類の整理は苦手で…

だから、逃げて…う、うぐぅう!


「そうですか、では」

「ま、待ったぁ! 分かったよ! やるよ! やってやるよ!」

「え? でも…」

「そうですよ? スティール様は大丈夫だと言っているんですよ?

 さっきまであんなに駄々をこねていたじゃないですか」

「流石に! あんな事を言われて引き下がれるかよ! やってやらぁ!

 ご、5徹とか余裕だし! 全然問題無いね!」

「で、でも…しんどいわよ? ずっと座ったままで書類と向き合うのよ?

 色々な文字を読んで…それで」

「だ、大丈夫だ! やってやる! やってやるぞ!」

「……本当に良いの? 助けて貰っても」

「勿論だよ! やってやる! やってやる! なんとか5日で終わらせるぞ!」

「ふふふ」

「ありがとう…所でリオ、その首輪は? そんな趣味なの?」

「これはどっちかというとメイルの趣味だよ!」

「絶対に逃がさないという意思表示です」

「は、はぁ…メイル、やり過ぎたら駄目よ?」

「心得てます」

「嘘吐け!」


うぅ…あぁもう、ここまで来たら決心を固めるしかない!

しょ、書類だろうがなんだろうが! 全部相手してやんよ!

相手がなんだろうと! やってやんよ!

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