まさかの真相
魔法を無効化する魔法か、かなり厄介なのは間違いないかな。
「どうしたの? なんか迷ってるみたいだけど」
「あぁ、実はな」
俺はミロルに無効化魔法の事を細かく話してみた。
こいつにも色々と考えて貰った方が良いだろうしな。
「はぁ…無効化魔法ね、一定範囲の魔法の無効化…」
「あぁ、効果の程は分からないけどな。
一定範囲の魔法使いが使う魔法を無効化するのか
それとも一定範囲内に入った魔法その物を無効化するのか」
「後者だと相当厄介だってのは間違いないわね」
「あぁ、後者だった場合、俺の狙撃魔法で範囲外から狙撃しようと
魔法その物を無効化されているわけだから、弾丸も消されちまう」
こうなると有効的な攻撃手段が無くなっちまうんだよな。
この場合、この無効化魔法を撃破するには
メイルやクリークみたいな魔法も無く人外な人間くらいだろう。
魔法で強化されているわけじゃ無いから十分立ち回れるだろう。
その2人が動けないとすれば、アルル達に任せるほか無いかな。
まぁ、フレイでも多少は出来そうだが、流石に魔法無しでは
マナほどの実力は無いだろう。
魔法があったとしてもタイマンでフレイがマナに勝てるか怪しいけどな。
「なんかさ、思うんだけど」
「ん?」
「あなたってさ、転生者よね?」
「まぁ、そうだよ、転生者だけど」
「大体、転生者ってチート能力で暴れるイメージがあるのよ」
「なんで?」
「小説だと良くやるじゃん? 転生した主人公がクッソ強い魔法で無双するの」
「いや、俺小説読まないんだよな、そもそも読めない、長い字は苦手だ」
「ま、まぁ、それは良いけど…で、あなたは転生者よね」
「お前もな」
「まぁ、そうなんだけど…でも、転生者なのに魔法が…」
「おま! 狙撃魔法強いだろ!?」
「そりゃ強いわよ? それは認めるわよ?
でも、それはあなたが使っているからであって
魔法自体は大して圧倒的じゃ無いわ、殲滅力も無いし
攻撃力は絶大でも連続での攻撃は難しい。
接近戦に強いのもあなたの素のスペックが高いからであって
実際だと満足に当てる事は出来ない」
「いや、真ん中に捉えて引き金を引けば誰でも」
「真ん中に捉えるのが普通は難しいわよ、走りながら狙いを定めるなんて」
まぁ、確かに難しいと言えば難しいけども。
「だから、魔法が圧倒的というわけでは無い」
「いやさ、それは思ったけど」
「でも、あなたが撃破した相手って、魔法チートばっかよね
フランも元は敵対してたんでしょ?」
「あぁ、そうだな…確か5年前か、いやぁ、こう考えると長い付き合いだな」
「で、フランの魔法は確か催眠魔法」
「だな、あの時のフランの魔法はえげつなかった」
「それで次は私、私の魔法は召喚魔法」
「あぁ、何でも召喚出来てインチキだよな」
「そう、それは私も思うわ、でも、あなたは私を倒してる」
まぁ、あれはミロルが俺にセキュリティシックスを渡してくれたからだろうけど。
「で、今度の相手はコピー魔法に無効化魔法、チート魔法の筆頭クラスよ」
「他にも色々な魔法使いがいるだろうけどな」
「…あなた、転生者とは思えないくらいに苛烈な道を歩んでるわよね
コピー魔法に至っては経験までコピーできて
正攻法ではまず勝算が無いぶっ壊れ魔法。
しかも一定範囲でコピーするからより勝算は薄いし
複数コピーなんて冗談じゃ無いわ。
無効化魔法はその度合いが分からないからなんとも言えないけど
コピー魔法は完全チート魔法よ、でもあなたは勝ってる
魔法の質では圧倒的に向こうに分があるのに」
「…いやまぁ、確かに」
「本当、あなたって運が悪いわね」
「そりゃ犬に殺されるくらいだし」
そりゃあ運は悪いよな、よりにもよって最高に楽しみにしてた日で
楽しみにしてたゲームをやろうとしたときに犬に殺されるって。
そりゃ本当に運が悪い、しかも女ににっての転生だ、運は悪い。
本当にあのハゲめ、神のくせに嘘吐くなよ。
まぁ、髪の無い神だから神ってのはカツラだったのかもな。
「あのハゲ神…」
「い、一応、私にとっては恩人なんだけどね、その神様」
「あ? お前をこっちに連れてきたのもあのハゲか?」
「そうよ、あの後光が差してる神様よ」
「ハゲをこ神秘的に言ってもハゲだな」
「待って! 後光が差してるって言った方が良いわ! まだ!」
「ハゲはハゲだろ!」
「お、落ち着きなさい、そのハゲが居なかったらあなたの友達はいないのよ」
「…まぁ、そうだな、ハゲのお陰でお前にも会えたし
一応は感謝した方が良いのか、お互い本当の姿じゃ無いがな」
「…私は私よ、見た目が変わっても私は私であなたはあなたよ
インターネットでやり取りしてたときと似たような物でしょ?
お互いにお互いの本当の姿を知らない、だからこそ、その心に惹かれた」
「おいおい、あのハゲの話から随分とロマンチックな話しに変わったな」
「お、女の子はロマンチックな物なのよ!」
いやぁ、なんか良いな、でも、これもあのハゲのお陰だと考えると
…なんか妙な気持ちになるけどな。
「まぁいいや、とりあえず俺の魔法がそこまでぶっ飛んでないのは多分あれだ
あのハゲの腹いせなんじゃねぇの? ハゲ呼ばわりされたからキレてって感じで
いやまぁ、確かに開幕ハゲハゲ言ったのは悪いかなーとは最近思い出したけど
正直、出てくるタイミングが悪すぎだろ、犬に殺されて可哀想だから転生って
そりゃ、滅茶苦茶荒んでる時にあんな風に言われたらイラッとすると言うか」
「まぁ…あ、あぁ、そうか!」
「ん?」
「いやね、私が転生した時の神様の言葉を思い出したわ」
「お?」
「確か…君は本当に運が良い、丁度気分悪いから転生させてあげるって」
「は? 普通気分が良いからだろうに」
「私もどう言う意味か聞いたのよ? そしたらちょっと不遜な奴が居てね
そいつが嫌な思いをするために色々と身体を細工したけど
下手に暴れられると困るから君を派遣しようかなって、って言ってたわ」
「え? か、身体を細工って…」
「そこが気になって聞いたら、女にしてめっちゃ美人にしてやったんだ、だって
女の子として、最高の体にもしてやったよとも言ってたわ。
それ以上は何か怖くて聞くのやめたけど」
「……あの、あの…あのハゲェェェ!!」
「いや、この相手が仮にあなただったしたら、将来…大変そうね」
「ふっざけんなよ! あのハゲ! 邪神じゃねぇかよ!」
「待って! 私に言っても何も変わらないわ!」
「何が女の子とイチャイチャしている状態で死にたかったと言ったんだ!
なんでだよ! それじゃあ男しかよってこねぇじゃん! 死んだ方がましだろ!
あのハゲ! そんなんだから毛根死んだんだろ! ぜってぇ許さねぇ!」
「落ち着きなさい! 文句を言ってもあの神様出て来ないわよ!?」
ぐぬぬぅぅ! あ、あの、あのハゲ! ハゲめ! あのハゲめ!
なんか今更だがやっぱりイラつくあのハゲ!
「リオさん、どうしたんですか? そんなハゲハゲ叫んで」
「アルル!? い、いや、何でも無い」
「まぁ、深くは追及しませんけど、ハゲハゲ言ったら怒りますよ?
気にしてる人は気にしてるんですから」
「そ、そうだな…うん、分かってる、後悔してるから」
「ん?」
「いやまぁ、ある意味では良かったのかも知れないけど。
あれが無けりゃ、お前とも出会えてないわけだし
運が良かったと言えばそうかも」
「…あれ!? 私今! ナチュラルに告白されてます!?
あ! 返事は勿論イェスです! さぁ! 今すぐレットカーペットの上を!」
「してねぇよ! 誰がお前なんぞとレットカーペットの上を歩くか!」
「ふははは! リオさん! 甘いのです! 私はもうすでに!
リオさんと一緒にレットカーペットの上を歩んでいるのです!」
「な!」
「城を歩く度に一緒にレットカーペットの上を歩いてますからね!」
「ただの屁理屈じゃねぇか!」
「発想1つなのです! 屁理屈を屁理屈としか言えない人間は!
想像力が足りず! とんちが効かない脳筋なのです!」
「とんち1つで道理が通るかボケ! 何一つ納得できなきゃただの屁理屈だよ!」
「…なんか本当、あなたって忙しいわね」
「大体こいつが悪い!」
殆どアルルのせいで散々な目に遭ってる!
と言うか、アルルくらいしか俺を苦労させる奴は
「リオちゃん!」
「フレイ? どうした?」
「遊ぶの!」
「え? ま!」
やっぱりこいつも居たぁ!
「あだぁ!」
「よーし! 今日は探検に行こう!」
「ま、待てフレイ…お前は本当に狙ったかのようなタイミングに湧いてくるな」
「何が?」
「なんでお前は大体アルルとセットで出てくるんだよ」
「アルルの後に付いてきてるから」
「なんで!?」
「アルルが一緒に居たら不意打ちできるからね!」
「不意打ちするなよ!」
「不意打ちしないと抵抗するじゃん」
「そりゃ抵抗するわ!」
「まぁまぁ! そんなのは良いから遊ぼう! 他の子供達も居るんだよ!
今日は皆と街で遊ぶんだ! 今日は何をするんだったかな? ごっこだったっけ」
「……街で鬼ごっこなんてすんなよ、迷惑だろ?」
「え? でもさぁ」
「一緒に遊んでやるから、だから訓練場でやってくれ。
あ、俺達の訓練場内だぞ」
「リオちゃんが一緒に遊んでくれるなら何処でもいいや!」
「…はぁ」
仕方なくフレイ達と遊ぶ事になった。
遊ぶメンバーは前に拘束した子供達60人相当と
前回拘束した憑依魔法使い達。
そしてフレイ、トラ、ウィング、ウィンとマルと俺。
魔法は禁止だから、マルが参加しても大丈夫だとは言え
誰にもバレないように使う事も出来るだろうが
まぁ、そんな事はしないだろう。
「場所はこの訓練場内! かくれんぼをするよ!」
「鬼は何人?」
「えっと、リオちゃん、何人くらいが良い?」
「俺に聞くのかよ…まぁ、そうだな…訓練場の広さと人数から考えて
そうだな…訓練場は結構広いし、10人位だな」
「結構多いね」
「この広さだからな、数えるのも300位にしろ
移動に時間も掛かるし、制限時間はどうする?
まぁ、1時間って所か、時間になったら銃声で合図をしよう」
「おぉ! …でもリオちゃん、探すよって伝えるときはどうするの?」
「同じ様に俺が銃声で合図してやろう」
「おぉ! 流石リオちゃん!」
「……リオ、待って」
「…え? な、なんだ?」
「視線を逸らさないで」
「……ソラシテナイヨ?」
「リオ、それは遠回しに自分は参加しないって言ってるって事でしょ」
「ち、バレたか、流石トラだな」
「もぅ! 一緒に遊ぶの!」
「分かったよ! 分かった! ちょっと待ってろ」
俺はさっさとミロルの所に移動して、空砲の弾丸を貰った。
その弾丸をセキュリティシックスに装弾、これで良いだろう。
「ほら、こいつを使え、銃口は自分に向けるなよ。
引き金を引くときは耳をふさいだ方が良いと思うぞ」
「おぉ!」
「で、しれっとお前も参加するんだな、ミロル」
「まぁね、なんか楽しそうだし」
「子供の遊びだぞ?」
「まぁほら、訓練って感じでやりゃ良いのよ」
「確かに俺達はかくれんぼはするけどな」
このかくれんぼと違って命懸けだがな。
「あはは! 人数は多い方が良いしね! よーし! やろう!」
「おー!」
…まさかかくれんぼをする事になるとはな。




