表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
237/294

作戦のイレギュラー

作戦決行の3日前、俺達はまず今回の偵察で知り得た情報を

スティール達と共有し、地図の模写も向こうでしてくれた。

作戦内容も細かく教えて、その話を兵士達にある程度伝えた。

小さな戦士達を全て呼びよせ、襲撃の準備も整った。

そして決行の日、エマとリリスさんをファストゲージに運んだ後

襲撃の準備も完璧に整った。


「これから、作戦を開始しようと思う」

(了解、襲撃のタイミングに合図をお願い)

「分かった、いくぞ」

「うん!」

「マナ、城付近から頼む」

「分かった」


俺達は最初に想定したルートで俺達は安全に城付近に接近が出来た。

その場でマナは魔法を発動し、城内と城付近の敵をうちしだした。

数は…結構なものだな、このままだと潜入は難しいだろうが。


「スティール、始めてくれ」

(了解、皆! いくわよ!)


俺達は城付近でミロルが用意してくれたステルスマントで身を隠した。

それから少しして、警笛が鳴り、兵士達が慌ただしく動き出す。

しかし、城内の兵士はあまり動いてないか。

城付近に待機していた奇妙な人形達のうち、2割程度が前線に向った。

予想よりも兵力が分散しないな。

でも、この隙に入るしか無いだろう。

時間が経てば恐らく城壁付近にいた人間の兵士達が撤退してくる。

そうなると警備が厳重になるから、潜入が困難になる。

なら、今、この瞬間に潜入するしか無いだろう。

城壁から城内への距離から考えて、人間の足なら

3時間以上は掛かると思う。

馬とかを使えば、もっと早く移動できるかも知れないから

理想は1時間で敵部隊を壊滅させ、中心を叩くことだな。


「よし、いくぞ!」

「うん!」


俺達はすぐに城内へ侵入した。

城壁付近の防衛は少なく、殆どが城内での防衛だった。

ちょっと違和感あるな、普通は侵入される前に叩きたいだろうに

まさか中で叩こうなんて…普通は思わないと思うが。

だが、敵の位置は分かってるから、潜入した方が動きやすいだろう。


「なんで防衛が甘かったのか分からない、だから、油断しないように動くぞ

 敵の位置が分かってるからって、油断して動いたら不味いだろうし」

「そうですね…あれ? なんか敵がこっち来てる?」

「なん…バレた? いや、だが俺達は窓も避け、完全な死角から入ったず」


距離もかなりあるはずだから、足音でバレたとも考えにくいし。

そもそもバレたのか? だが、こっちに来てると言うことは。


「リオちゃん! 上!」

「な!」


嘘だろ!? 天井をぶち破って人形共が!


「嘘! なんで!」

「こ、この!」


フレイはすぐに人形へ向って攻撃を仕掛けた。

確実に当る速度、当る距離だ。


「へ!?」


だが、人形は首をあり得ない方向に曲げて攻撃を避けた。


「あ!」


同時に、剣での攻撃を仕掛けてくるが、フレイはそれをギリギリで距離を取り回避。


「は!?」


だけど、人形は腕を射出してきて、後方へ下がったフレイへ飛ばす。


「うぁ!」


フレイは少しだけ刃が腹に刺さったが、深く入る前にその刃を止める。


「い…」

「フレイ! 大丈夫か!?」

「う、うん、ちょっとだけだよ」


フレイの血が付いていたのは刃先のほんのちょっとだけ。

刃はそこまで深くは入っていない様子だった。


「よかった、あまり深くまでは行ってないみたいですね」

「うん、ちょっとした切り傷見たいな感じだよ」


よ、良かった…大丈夫そうだな。


「だが…こりゃ…」


フレイが無事なのは良かったんだが

首があり得ない方向に曲がった人形はそのままの格好でこっちに向ってくる。

右手はもう手首も無いのにだ、気持ち悪い。


「クソ! これは囲まれたら不味いな、逃げるぞ!」

「そうね! ひとまず威嚇射撃!」


M9を召喚しての攻撃を仕掛けたが、弾丸は当らなかった。

普通なら当るはずだ、当るはずの速度だ。

人間で弾丸が射出された後に回避なんて芸当は無理だろ。

一部の人外なら出来そうだが、普通は不可能だし

避ける方法も無い筈なんだが。


「な!」


人形は弾丸が当るはずだった場所をさっきと同じく

あり得ない方向に曲げることで回避…そして、崩れた。


「……く、崩れた? いや、どう言う…なんであり得ない動きを」

「再生能力があるわけじゃ無いから、こんな風に無理矢理避けると倒れるか。

 でも、それでもこっちに這いずってきてる…」

「こ、恐いよ…人の姿をしてるから、余計に恐い!」


人の姿をしている人形が、首を斜めに曲げて

両足がバキバキになった人間みたいにあり得ない方向へ曲げて

右肘が真上に跳ね上がり、左肘は肘の後ろ側、

本来、動かせるはずも無い方向に曲がりきり

肩まで気持ち悪くへちゃげ

それでも這いずりながらこっちに寄ってくるなんて…


完全にホラーだろ…気持ち悪すぎる!


「まさか…他の人形も!」

「ヤバいな、接触は避けないと、急いで移動するぞ!

 動いていない敵を目標にして!」

「なんで?」

「そこが間違いなく敵だからだよ、動いてる敵はこの人形だろ。

 動いてない奴にも人形はいる可能性があるが

 そいつは恐らく最終防衛…その近くに本命がいるのは間違いない!」

「わ、分かった!」


出来れば短期決戦…だが、こんな人形が相手じゃ、何処まで短縮できるか。

フレイの攻撃だって、あり得ない動きで回避されるし。

ミロルの弾丸も同じ様に回避することが出来る。

例え這いずった状態になっても、動きはそこそこ速く

恐らく拘束されれば脱出は困難だと予想できる。


「しょ、正面から来るよ!」

「違う方向から」

「後ろ! 天井が壊れました!」

「ち! 別ルートは壁を砕いて登場かよ」


…意味の分からない動きをする化け物から必死に逃げ回る。

その化け物は壁を砕いて登場したり、天井から登場したり。

これ、完全にホラゲーだな…あぁ、ゲームならまだ良いんだけど。

これは現実…ち、ホラゲーの状況に陥った人間が

どれ程恐い目に遭ってるか…実際体験して理解するはめになるとはね。

こりゃ、確かに恐いわ…ゲームの登場キャラがビビって叫び声上げるのも分かる。


「リオさん…これは」

「……メル! 魔道兵の手で殴れ!」

「分かったよ!」


メルが俺の指示で自分の手を魔道兵の手に変化させ、別ルートの人形を殴った。

どんな攻撃でも回避してしまう化け物を倒すなら、絶対に回避出来ない攻撃をする。

この狭い通路で魔道兵の手による攻撃なら完全に逃げ道を塞ぐことが出来る。

どんな攻撃をも回避する敵には、必中攻撃で対抗する!


「よし! 吹っ飛んだ!」

「流石にメルさんに魔法は避けられないって事ですね!」

「こっちもやるわよ、避けても避けても飛んで来る攻撃。

 しかも、避ければ避けるほどに弱っていくなら、これなんてどう?

 私のとっておきよM249! 派手に踊りなさい!

 踊って踊って、踊り疲れて這いずりな!」

「ミロル、変なテンションだな」

「あんなキモいもの見せられたんだから! トコトンまで潰してやるわ!」


M249の乱射、人形達はその弾丸を体の至る部分を曲げることで回避するが

再生能力の無い人形はすぐに体が戻らなくなり、地面に這いずることになった。

その這いずった人形に向けて銃を乱射したが、殆ど当らない。

それでも最終的には避ける事も出来なくなり、蜂の巣となった。


「じゅ、銃身が溶けたわ…」

「やり過ぎだろ」

「うっさい! 散々やられたんだから! 散々やり返す!

 と言うか! やった後もキモいわこいつら!」

「再生能力が無かったのが救いだな。

 これでもし吸血鬼とかだったら恐ろしい事になってた」

「足を曲げてもすぐに治ってまた避けるとか勝てる気がしないわ」

「爆弾を使うしか無いな、と言うか、こいつら爆弾使えば」

「爆弾ってトラウマだから…出来れば使いたくないのよ」


そう言えばそうだったな…デリカシーの無い事を聞いちまった。


「悪い、でも、これで逃げ道は出来た、急ぐぞ!」

「うん!」


多分、近付かれても同じ様に滅茶苦茶な動きで攻撃を貰う事になるだろう。

本当に厄介極まりない相手だ、こんな人形を使うなんて。


「リオさん、こんな訳の分からない相手に対処出来るってヤバいですね」

「こっちも色々とヤバいからな、面子が」

「そうですわね、私達は一般人枠ですわ」

「普通にヤバい奴らが何言ってるんだよ」


あの4人が一般人だったら色々とヤバいだろう。

どんな一般人だよ、戦闘もこなせて家事も完璧な一般人って。


「メル、階段を登ったら魔道兵を配置してくれ、階段からの人形を止める!」

「分かったよ!」


俺の指示通り、階段を登り切った直後に魔道兵を展開してくれた。

俺達の後をおってきていた人形達は魔道兵の足止めを食らい

俺達への追撃を止めた…人形達はひたすらに魔道兵へ攻撃を仕掛けている。

この事から、この人形達の狙いは俺達では無いと言う事が分かった。

正確には俺達もその狙いの中に入っていることは違いないが

最優先項目では無いと言う事は間違いない…人形達の狙いは俺達では無く

侵入者だと言う事だ、侵入者を排除するために動いている。

だから、魔道兵は侵入者と分類され、人形達が攻撃を仕掛けている。


「魔道兵にばかり攻撃してる…って言うことは、あの人形…」

「トラの予想通り、あの人形は誰かが直接操ってるわけじゃ無い

 あの人形は命令を絶対に遂行しようとする遠隔操作型の人形だ」


多分あの気持ち悪い動きをしたのも攻撃を食らうなという命令を実行したから。


「遠隔操作の人形?」

「あぁ、他の人形と違うのはそこだろう」


今までの人形は精神的衝撃に弱かったからな。

と言う事は、その人形達には確かに意思があったと言う事だ。

子供達が操って居る人形…子供達と感覚を共有した人形。

だから精神的な衝撃を受けたとき、人形達は動揺した。

俺はそれを理解していたから、あの魔法を仮に憑依魔法としたんだ。

憑依、一体化する魔法、だから精神的な動揺に弱い。

だがその代わり、その場に居る大人達の指示通りに動ける。

憑依魔法のメリットとデメリットはそこだろう。

メリットは戦闘経験が少ない子供達が大人達の指示で精密に動けること。

デメリットは精神的に弱い子供達が操って居るから、精神的衝撃に弱いこと。俺はそのデメリットを利用して、何度か人形達を退けていた。

だが、今回のこの人形達は命令で動くタイプの人形。

だから、どんな衝撃的な攻撃を食らわせても精神的動揺は与えられない。


「確かにあの遠隔操作型の人形は厄介だが、デメリットはある」

「柔軟な対処が出来ないと言うことですね」

「そうだ」


確実に指示された命令に従うが、柔軟性が決定的に足りないのがあの人形だ。

メリットはどんな手段でも命令を遂行するという点。

体を破壊したりしてでも命令は意地でも遂行する。

だが、そのメリットは同時に弱点となる。

どんな命令でも遂行しようとするんだから優先順位を付けられない。

今回の魔道兵への攻撃もそうだ。

柔軟な行動が可能なら、魔道兵をなんとかすり抜けて俺達への攻撃を目指すべきだ。

だが、あの人形はただの機械だ、そんなとっさの判断は出来ない。

指示を寄り細かくすれば可能かも知れないが

恐らく指示できる数に限りがあるのだろう。

例えば指示できる数は3つしか無い、とかな。

1つは絶対に侵入者を排除せよ。

1つは攻撃には絶対に当るな。

もう1つは必ず相手へ攻撃を当てろ、とかね。

あの時、フレイへ無理矢理攻撃を当てようとしたし、回避も異常。

侵入者への反応速度もヤバかったし、この3つがあるのは間違いないだろう。


「でも、これはチャンスですね、今のうちに目的地へ」

「あぁ、急ごう!」


正確すぎたり従順すぎたりするのも考え物だな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ