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手順の確認

まぁ、散々な目には良く遭うが、大体思惑通りに事は運ぶ。

あの騒動の後、順調に人気は浮上してきている。

お金も結構貯まってきたし、情報もそこそこ仕入れてきている。

どうもエマが連れてきた女の子はこの都市の最高権力に近いらしい。

しかしだ、そんな事をあまりにも簡単に言うのは少し違和感だな。

最高権力に近い存在だというなら、頭もそれなりに良いだろうし

こんな危険な事はしないはず…ましてや、最近台頭してきた屋台の人間に。

可能性としては、この子は利用されてるだけの可能性はある。

俺はあまりそう言う手は好まないが、餌を撒いて食い付かせる、って感じで。

俺の予想通りなら、この子は囮って事になるのかもな。


「うん、順調だね!」

「そうですね」


今日もうどん屋の経営を終わらせ、あの家に戻った。

家の内装も順調に綺麗になり始めている。

今は資金源もあるし、家賃を払って住ませて貰っている。

流石に1ヶ月もの間、金も払わず住みっぱなしは無理だろう。


「そう言えば、もう1ヶ月ですね」

「あぁ」


1ヶ月も時間が経過しているわけだが、動きは無いな。

襲撃が来たと言う報告も向こうから来てはいない。

一応、無線機もあるし、何かあれば連絡が来るはずだからな。


「地図も殆ど完成してきたしな」


俺はうどん屋での仕事が終わった後、アルルと一緒に地図を書いていた。

仕入れという名目なら、周りを歩き回ってもあまり違和感が無いからな。

より良い場所で仕入れたいから色々と探している、とでも言っておけば

意識が高い料理屋さんなんだなと思われるだけだしな。

エマにはこの地図は迷わないように書いていると言っている。

エマから情報が漏れる可能性があるしな。


「残りは城内…でも、ここは難しいだろうな」


流石に城の中にまで入り込むのは困難だろう。

後は敵戦力と敵の防衛体制を確認して、機を見て始めようか。

問題は住民の避難をどうするかだな。

少し圧力を掛けるか? でも、警戒されるのは危険だ。

一応、攻撃時の手順はある程度定めているんだけどな。

まずは基本戦略として、小さな戦士達をここに移動させる。

スティール達と無線で連絡を取り合い、先に外から攻撃。

敵が外の相手を足止めしている間に、内側からの破壊を狙う。

前にやったような戦術だ、あの時、俺は奴隷として潜伏したけどな。

基本的にこの戦術が楽に突破が出来ると思う。

外に意識を集中している間に、内側から崩す。

外が鉄壁なら中から破壊するというのは基本戦術だろう。

普通は噂を流すなりして、中の結束にヒビを入れて壊す感じだろうけどな。

なんかそう言う手って陰湿で好きじゃ無いんだよなぁ。

そもそも、この街の結束は既にぼろぼろだろうし。

路頭に迷ってる人間が少し多すぎる気がする。

まぁ、この国で路頭に迷ってる住民の殆どはこっち側だ。

リリスさんと話あって、そう言う人達に食事を振る舞っているからな。

向こうも困ったことがあったら呼んでくれと言ってくれてる。

最初にそう言う人達にも料理を作って欲しいと言ったのはエマだけど。


「っと、一応、現状分かってる戦力も書き出すか」


人の戦力は500人、人形は10000、魔法使いの数は30。

現状分かってる戦力はこんな感じかな。

人の数が妙に少ないとは思うが、元々は潜入してくるかも知れない

相手が魔法使いかどうかを把握するために配置していると言う感じなんだろう。

戦闘は全て人形に任せるという感じかな。

実際、消費してもすぐに用意できるだろうからな、人形は。

で、戦争時、人の戦力はどう動くんだろうか。

人形の統括に動くのか、もしくは後ろでガタガタしてるのか。

それとも魔法使い達の護衛に動くのか…分からないな。


「後、違和感がある人形もいたっけ」


妙に器用に動く人形が城の近くにいたな、こいつらは警戒した方が良いだろう。

もしかしたら、ここにいる魔法使いがその人形を操ってるのかも知れない。

30人でどれだけ動かせるのか分からないけど、厄介なのは違いないだろう。

剣以外の武器も平然と扱ってきそうだし。


「…多分、この場に憑依魔法を使える魔法使いがいるだろう。

 30人の内、何人がその魔法使いかは知らないが」

「憑依魔法について色々と知るチャンスでもある、と言う訳ですね」

「そうだ、ただ人形の質は前よりも高いだろうというのは間違いない。

 距離があれば人形の精度が落ちると仮定すると

 至近距離だった場合、どれ程の精度で動けるか分からないからな。

 城近くの人形は器用に動いてたし、侮れない」

「はい、そうですね」


奇妙な動きをする奴とか違和感がある相手ってのは

大体警戒をして居た方が良いのは間違いないからな。

油断して接近したら大目玉を食らった、なんてよくあるし。

そもそも、決めつけての行動ってのは柔軟な行動を阻害する。

決めつけて動いた場合、相手がその想定の外側だったとき

確実に不意打ちを食らっちまうからな。

当然、酷い動揺も起るだろうから、ここで柔軟な対応が阻害される。

強いと想定して動いて、想定が外れた場合は拍子抜けするだけだしよ。


「それと、城付近にしかこの奇妙な人形を見ちゃいないから

 10000を操れるのは30人程度じゃ無理だって事かもな。

 実は30人の内、1人だけが操ってて、って可能性はあるが

 その場合はその1人を押さえれば戦力は激減すると言う事だ。

 防衛面ではその1人だけを守れば良いからプラスかも知れないが

 不意打ちや奇襲を仕掛けて仕留める事は可能だから

 1人だけというのは大きな弱点だろう」

「つまり?」

「どっちに転んでも俺達にプラスがあるって事かな。

 前者の場合は脅威となる魔法使いの数が少なくなる。

 30人の内、20人が憑依魔法だとすれば、奇襲を仕掛けた際に

 敵の戦力となる魔法使いは10人だけって事になる。

 後者だと1人を潰せば戦力を激減させることが出来る。

 1人なら俺の狙撃魔法で事足りるから、一気に戦力を減少させることも可能だ」

 

出来れば後者の方がこっちとしてはありがたいのは間違いないけどな。

1人を押さえれば戦力を激減させることが出来るんだから。

前者は戦闘になる魔法使いが少ないと言うだけで、危険ではある。

後者なら安全地帯から一撃必中も夢じゃ無いからな。

気絶させることが出来れば人形は動けなくなるだろうし。

問題は跳弾が使えないという事だが、何とかするしか無いだろう。


「攻撃手順はある程度固まったが、決行はいつにするかな」

「リオさん、私思うんです」

「ん?」

「攻撃するなら、攻撃準備を整えた後に

 あの偉いとか言う女の子を拉致すれば有利になると思いますけど。

 仮にそれが罠だったとしても、拉致と同時に攻撃を始めれば問題は」

「まぁ、その子の料理に睡眠薬でも用意して飲ませれば、とは思うが。

 お前なら分かるだろうとは思うが」

「えぇ、リリスちゃんがそんな事を許可する訳ありませんよね

 言ってみただけです」

「あの人は根っからの料理人だからな、料理を戦争に利用する

 なんて事、許可するはずも無いだろうし、俺も何か嫌だ。

 そう言うのって、完全に悪役じゃん?」

「確かにそうですね」

「まぁ、俺は正義の味方であるつもりは無いけどさ。

 悪事ってのに手を染めたくないしな。

 あいつらの見本になりたいわけだからよ」

「そうですね、えぇ、その通りです」


何人も、もうすでに殺っちまってて、俺の手なんてクソ汚ぇけどさ。

それでも、越えたくない一線ってのはあるからな。

確かに最小の犠牲で最大の結果を出すにはそれが1番なんだろうけどさ。

その手はやっぱり俺のプライドが許さない。


「さて、話が逸れたな、決行の日時を考えないと」

「1番攻撃が効果的だと言える日は…この日ですね」

「店の定休日にしてる日だな、流石にその日じゃ無いと違和感あるか」

「えぇ、今日から1週間後、問題はその短期間で

 ファストゲージ国が兵力を整えることが出来るかどうか、ですね」

「そこはスティールの力量次第だな、とりあえず報告はしておこう」


俺はミロルから渡されている無線機を取り出してスティールへ連絡した。

結構時間は遅いけど、大丈夫か? 寝てたりしないかな。


(…あい、こちら…スティー…ル)

「…えっと、リオだけど」

(あぁ、リオ? え? 何? なん…)

「もしかして、眠い?」

(そりゃ眠いわよ! なんで3日間も徹夜しないといけないのよ!

 書類多すぎ……はぁ、よりにもよって、今滞ってた書類が届くなんて…

 どうせなら、もう少し早く)

(スティール様、追加の書類が届きましたわ)

(はぁ!? まだ半分も終わってないわよ!? てか多! 

 最初よりも多いとかどうなってんのよ!)

(兵力増強、病の流行、敵の襲撃に子供達の大量保護、

 しばらくの間、警戒も強化されていて、書類の搬送も滞り

 それが3日前に解除で、その分が一気に来ました。

 急を要する書類等はありませんのでゆっくりと)

(ゆっくりとしてたらこの書類は片付かないでしょ!?

 もう! なんでこんな…はぁ)

「えっと、そっちはかなり忙しいみたいだな」

(あぁ、そうだそうだ、なんの連絡?)

「…非常に伝えにくいが、攻撃開始日をこっちで決めて」

(なぁ!)

「えっと…1週間後なんだけど」

(1週間後!?)

「えっと、そっちが厳しいなら延期するけど」

(い、いや、な、何とかするわ…あまり長く滞在すると

 そっちはかなり危険だろうし…)

「声から生気が…」

(眠いだけよ…ま、まぁ、分かったわ、なんとか間に合わせる)

「あぁ…キツかったら連絡してくれ」

(分かったわ…)


…なんか、随分とタイミングが悪かったみたいだな。

大丈夫か? スティール、また病気にならなきゃ良いけど。

もし今度病気に掛かったとしたら、それは魔法じゃ無いから

治すのに相当苦労するだろうけど…大丈夫だと良いが。


「向こうは大変みたいですね」

「あぁ、そうだな」

「そして、私の予想ですけど」

「ん?」

「多分、この戦闘が終わったら、リオさんも手伝わされます」

「な、なんで?」

「メイルさんがあなたもやってください、とか言ってくると予想します」

「あ、あり得そうで恐い…その場合、勿論お前も手伝ってくれるよな?」

「うーん、どうでしょう、流石に私に任せるのは向こうとしてもいやでしょうし」

「ぐぬぬ…ま、まぁ、まだ決まったことじゃないし、そもそも

 今は生き残る事を優先に考えるべきだから、この話は後だ」

「そうですね」


……少し不安だけど、多分大丈夫だよな…あはは。

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