表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
235/294

いつぞやの思い出

…なんか、結局勢いに飲まれてこの服を着せられてしまった。

なんで猫耳? いやさ、確かに可愛いよ? 可愛いのは認めるよ?

でも、なんで俺がそれを着てるんだよ。

俺は見る専なんだよ、なんで着る事に…

後、この肉球手袋? スゲー使い辛いんだけど。

これは手袋として機能してるのか? してないよな。

精々鍋を持つときくらいにしか使えないだろ?

その唯一の使い道だって最悪ぶちまける位に使いにくいってのにさ。


「なんというか、あなたって勢いに弱いわよね」

「お前まで手を組んでやって来たからだろ!?」

「可愛い! 可愛いです! さっすがリオさん!」

「うんうん、似合ってるよ、髪の毛の色とパーカーの色もピッタリだ」

「そりゃそうだよ、だって私が選んだんだから!」

「アルルは本当にリオちゃんの事が好きなんだね。

 確かに可愛いし素直だし、好きになるのは分かるけどさ」

「リオさんの魅力はそこだけじゃ無いんだよ」

「へぇ、それは気になるね」

「だけど、リリスちゃんにそれを見せるわけにはいかないんだけどね」

「なんで?」

「危ないから」

「え?」

「リリスちゃん、少し忘れてるかも知れないけど、私達はこれでも兵士だよ?」

「あ…」


わざわざリリスさんの耳元で呟いたな。

それは近くにいるエマに聞かせないためだろう。


「だけど、そんな風には」

「普段からピリピリしてたらやってられないからね」

「確かにね」

「まぁ、この話はここまでにしよっか。

 そう言えば、元々はエマちゃんの服を買おうって所からだったね」

「そうだよ、それなのに何で俺がこんな服を着ることに!」

「あー、ぷにぷにしてる!」

「手袋が欲しいならやるぞ? 俺は必要無いし」

「本当!?」

「いや、待ってエマちゃん、それは誰かが付けてるから凄くぷにぷしてるけど

 誰も付けてなかったら、あまりぷにぷにしないから。

 ぷにぷにしたいならリオさんの手でやった方が良いよ」

「そうなの? じゃあこのまま、ぷにぷに」

「なんでこんな」


…それから30分間もの間、エマはぷにぷにと肉球手袋を触った。

なんでこの子はこんなにも長いこと同じ事を繰り返して飽きないんだ?


「……ぷ、ぷにぷに」

「あー? なんでお前まで?」


何故かウィンまで参加してきた…両手が使えないって。


「多分嫉妬したんでしょうね、姉が独占されてるから」

「いや、ぷにぷにしてるだけだが、と言うか俺の体の一部でも無いし」

「猫とかがもし30分間も肉球を触られたらどんな気分なのかしら」

「しらね、掌を30分間触られてるのと同じ感覚なんじゃね?」

「あぁ、猫からして見ればそんな感じなのかもね」


肉球を触っている立場からして見れば癒やされるんだろうけどな。


「で? 俺はいつまでこうして棒立ちしてれば良いんだ?

 ただ立ってるだけって地味に疲れるんだけど」

「2人が満足するまででしょうね、いや、正確には多分1人だけど」

「ぷにぷに」

「肉球を押す度にぷにぷに言うのは何でだよ」

「気分でしょ」

「ふーん、いやまぁ、何となくそんな気はしてたけどさ」


本当にこのまま1時間くらいぷにぷに触られるんじゃねーの?

その間、ずーっと棒立ち? それって地味に足が痛そうだ。

いやさ、結構訓練してるから問題は無いだろうけど。

と言うか、今日も客の相手をしててずっと立ってたんだよな。


「うふふ、満足」

「あぁ、やっと満足したか」


これから1時間くらいずっとぷにられると思ったけど、割と早かったな。

で、エマが止めたらウィンも止めてくれた。


「ふぅ、これで楽になる」

「もう少し続けても良かったと思うんだけどね」

「俺が疲れるだろ?」

「そうね」


全く関心無さそうだな。


「いやぁ、何だか良い物が見れた気がします」

「うっとりすんな」

「えっと、相当話が脱線したけど、服はどうするのかな?」

「それはエマちゃん次第だと思うよ。

 リオさんの服を貰うのも良いし、自分で選んで買うのも良いし

 ねぇ、エマちゃん、どっちが良い?」

「えっと…リオちゃんの服を貰う方が良い」

「あぁ、その方が安上がりだし良いだろう

 アルルの事だ、無駄に沢山の種類を持ってきてるんだろうし」

「確かに沢山持ってきてはいますけど…

 でも、リオさんが良いと言うなら」

「そもそも、その服ってお前が自分の金で買ったもんだろう?」

「はい、でもリオさんの為に買ってきた服なんで

 リオさんがこうしろと言うならそうしますよ」

「そっか、じゃあ、ある程度をエマに渡した後。

 全部売ってこい」

「それは断ります」


いやまぁ、分かってた返事なんだけどな。

もしかしたらって考えて言ってみただけだからな。


「それじゃあ、エマちゃん、こっちだよ」

「うん!」


アルルがエマと一緒に部屋に向った。


「どんな服を着てくるのかしら、意外と今のあなたと同じ様な服装だったり」

「この服装はないだろ…なんで猫耳パーカーチョイスだよ」

「えい」

「ウィン、なんでフードを被せた」

「フードを被ったらどんな感じなのかなって」

「ちょっと装飾として耳が付いてるだけだろ」

「いえ、可愛らしい顔も描いてるわよ、三毛猫ね」

「マジかよ」


あまりハッキリと見てなかったから分からなかったけど顔が描いてるのか。

完全に子ども用の服装だな、大人が着るとか恥ずかしいだろう。

可愛らしい系の女の子とかなら違和感ないのかも知れないけど。

いや、でもそんなのを着る女の子ってあざといな。


「全く、変なパーカーも売ってるもんだ」

「可愛いと思うけど?」

「お姉ちゃん、フード脱ぐんだね」

「そりゃな、邪魔くさいし違和感凄いし」

「その手のパーカーってフードが最大の武器なのにね」

「ねぇ、お姉ちゃん、もう一度肉球手袋をして

 今度はフードも被ってよ」

「何でだよ」

「どんな感じか見てみたくて…」

「それは私も見てみたいわね、ほれほれ」

「俺は着せ替え人形じゃ無いんだよ」

「分かってるわ、着せ替え人間でしょ?」

「なんか着せ替え人形よりもエグい響きだが!?」

「うん、自分で言って思ったわ、まぁ、人形でも人間でも良いからほれほれ」

「あぁもう! 分かったよ!」


仕方なく2人に言われたとおりフードを被り肉球手袋を付けた。


「これで良いか?」

「うーん、ムスッとした顔がなんか猫っぽいわね」

「なんだよそれ」

「こう、手を前に出して垂らしてみなさいよ」

「何でだ?」

「猫っぽいじゃん」

「猫が手を前に垂らす動作って、あまりみないけどな

 アニメとか漫画だと猫っ娘とかは良くやってるけど」

「猫が自分の顔をなぞるときにその手になるわね、あれは痒いからしてるのか

 毛繕いの意味があるのか良く分からないけど」

「ふーん、あまり猫をマジマジと見たこと無いから分からなかった」

「まぁ、それは良いからやってみなさいよ、ほれほれ」

「なんでそんな事をしないといけないんだよ」

「その場のノリって大事でしょ? ほら、やってくれたら何かしてあげるから」

「何かってなんだよ何かって」

「ねー、ウィンちゃんもみたいわよね?」

「は、はい、少し見たい…かも」

「……」


うぅ、なんでウィンまで少し見たいとか言うかな。

仕方ない、ちょっとやってみてみるか…だが、凄く恥ずかしい。


「うぃ、ウィンが見たいって言うならやってやるけど…超はずい」

「ほらほら~」

「…リオ、その格好は!」


部屋から出て来たフランが俺の格好をみて固まった。


「お、お前まで来たのかよ…」

「何をするの!? く! なんで私、眠いからって部屋に!

 こんな事になってるのに不覚!」

「えっと、猫のポーズをして貰おうと思って」

「猫!? 早く早く! 早くみ、みみ、見せて!」

「フランまで…うぅ、分かったよ、こ、これで良いか?」


超恥ずかしい…こんなの自分からやる奴は良く出来るな。

普通なら恥ずかしくて出来ないだろ…うぅ。


「可愛い! 可愛い! 可愛い!」

「それでリオだにゃん、とか」

「言わねぇよ!? しかもなんかこれ…前にアルルを直すときに

 フレイ達とノリでやった気がするんだよ…なんかはずい」

「ウィングも!?」

「そうだな、ウィングもやった」

「なんで私を呼んでくれなかった!?」

「いやほら、フレイの奴の気まぐれでやってたし計画性も無かったから」

「く! 猫耳のウィング! ニャーニャー言ってるウィングとリオ!

 それに、さっきは確かフレイ達と言ったって事は他の2人も!

 猫耳! 猫耳だった! ニャーニャー言ってたのかも!」

「ま、まぁ、言ってたな、うん…」

「く! なんで! なんで私はその場に居なかったんだぁ!」

「ま、まぁ、1度やったことがあるなら問題無いでしょ? ほらほら」

「言わない! 絶対に言わない!」

「お願い! わ、私に救いを与えると思って!」

「言わない! 絶対に言わない! 4人でやった時だって恥ずかしかったんだ! 

 ひ、1人の時に言えるわけが無いだろ!?」

「もぅ、分かったわよ、それならその格好で後ろを向いて見なさい」

「んぁ? 後ろを向いてどうし」


……後ろを振り向くと、目の前に完全に硬直しているアルルが立っていた。

アルルの服を掴んでいる手がゆっくりと離れ、地面に柔らかく落下した。


「リオしゃーん!」

「にゃぁああ!」

「うへへうへへ! にゃぁああって! うへへへへ!」

「ばっかおめ! 止めろぉ!」

「あなたってよくにゃぁあああって奇声上げるわよね

 正直、その格好とその手のポーズならピッタリよ」

「謀ったな! ミロル!」

「ふふ、全て私の思惑通りよ、あなたなら特に何も考えずに

 背後を向くと予想していたわ。

 そして、アルルが発狂してあなたを抱き上げることも。

 あなたがそのアルルの動きに驚いてその奇声を上げることも

 全て私の計算通り、ふふふ、いや、違うわね、ここはこう言うわ!

 計画通りと」


ミロルが明らかに邪悪な笑みでそんな言葉を俺に向けて呟いた。

こいつぅ! む、無駄なところで策士しやがって!


「なんでここでそんな策士の真似事をするんだぁ!」

「決まってるじゃない、面白いからよ!」

「人をおもちゃみたいに扱うんじゃねぇよ!」

「あぁ、リオさん可愛い! リオさん可愛い!

 いやぁ! 前も同じポーズを見ましたけど

 今回は服装と肉球手袋も相まって超可愛い!

 だけど、前回は前回でフレイさん達もいましたから

 フレイさん達の可愛い補正も相当ありました!

 だけど、やはりリオさん1人でも圧倒的可愛さ!

 本気の時はかなり抜け目ない性格なのに

 こう言う普段の時はかなり抜けてるところもまた可愛い!

 ミロルさんに謀れて踊らされちゃってるのも可愛いです!

 本気の時とそうじゃ無いときのギャップ可愛い!」

「離せぇ! い、いい加減にしろよ! 気持ち悪い言葉羅列しやがって!」

「本当に思うわ、マジの時はかなり抜け目ないのに」

「待てアルル! 今フレイさん達もと! 前にも見た様な風に言ったな!」

「見ました! リオさん達が4人で耳を付けてにゃーと!」

「き、貴様ぁ! よ、よくも! よくもぉ!」

「ふふふ、いやぁ、シルバーさんに無理矢理帝王学を叩き込まれて大変でしたが

 あんな光景を見られるなら、非常に有意義でした! お預けのご褒美ですね!」

「ちょっとシルバーに帝王学を教えて貰ってくる」

「長い間お預けを食らいますよ? 長くリオさん達と接触できなくなりますよ?」

「な! まさかあの時の!」

「はい! あの時です!」

「ぐぬぬ! 猫耳リオやウィングがにゃーって言う所を見たい!

 でも、お預けは! お預けは! なんて困難な道のり!」

「良いから離せやぁ!」

「……いやぁ、リオちゃんはモテモテだねぇ。

 でも、実際可愛らしいし、弄りたくなるのは分かるけどさ」

「分からないでください!」


うぅ…なんで服の話からこんな事になったんだよぉ!

と言うか! 俺って戦場でも日常でも散々な目に遭いすぎだろうがぁ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ