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たまには

「しかし、リオさん」

「何だよ…」

「意外と欲求不満だったりするんですか?」

「そんな訳無いだろ!」

「ですが、確かリオさんは男の子だったんですよね?」

「あぁ、で、16くらいに死んで転生した」

「だとすれば、相当欲求不満なのでは?」

「そんな訳無いだろ」


いや、実際はかなり欲求不満だったりするんだけど。

自分でするのも、向こうだとやってたんだが。

この体になってからは1度だってやってない。

だって出来ないだろ、中身は男で外見は女の子だぞ?

しかも幼女だぞ? 幼子だぞ? 小っちゃい女の子だぞ?

自分の体だったとしても、罪悪感で出来やしねぇよ!


「ですが、あの本を食い入るように見てましたが」

「だ、だから! 情報収集だ! 情報収集!」

「1度ぱーっと解放した方が良いのでは!?」

「しねーよ! 出来るか!」

「私がお相手しますよ?」

「お前みたいな奴は願い下げだ!」

「ぐぬぬ…やはり現実はそう甘くありませんね。

 リオさんモチーフの小説ではすんなりと受入れてたのに!」

「お前、小説が現実と同じだと思うなよ」

「思ってはいませんけどね」

「だったら大人しく諦めろボケ」


本当にこいつは全く…しかし、うーん、いや、駄目だ、うん。

落ち着け…本能に身を任せては駄目だ。

俺は自分の理性で本能を抑えてやる!


「とりあえずだ、アルル」

「何でしょう?」

「この本…全部捨ててこい」


俺はベットの下に転がっていた本を全て引っ張り出した。

何で山のようにエロ本がここに収められているんだ?

隠す場所をもう少し考えた方が良いと思うが。

と言うか、何だか全体的に…小さい子の本が多いんだけど。

……で、だ、何だか…真新しい本が出て来たぞ?


「分かりました、ではすぐに捨てに」

「待てアルル」

「はい?」

「1人にしないでくれ」

「え!? デレました!?」

「違う……これ、もしかしたら…誰か居るかも知れない」

「え?」


流石に長らく放置されていた建物にある本…それが真新しいのは不自然だし。

大体、冷静に考えてみればエロ本を隠していて、家を捨てるって言うなら

全部燃やすか持って帰るよな? それがこんなに放置されてるのはおかしい。

で、冷静になって観察してみると…一箇所、あのクローゼット。

あのクローゼットも結構埃まみれ何だけど…開閉口が少し奇妙だ。

何でちょっとだけ埃が落ちてるんだろうか…


「…あ、アルル」

「えっと…まさか想定もしてませんでしたけど」

「……ちょっと近くに来てくれ、護れよ?」

「はい……」


俺は恐る恐るクローゼットの扉を開けようと手を伸ばした。


「うがぁああ!」

「っとと! せりゃ!」


扉を開け様とする瞬間に扉が強く開かれ

中から若いヤンキーみたいな男が飛び出してくる。

男は最初に俺の方に飛びかかってきたが、それはアルルが止めてくれて

そのまま一本背負いで男を叩き付ける。


「いだ!」

「…ふぅ、まさか人が潜んでいたなんて」

「く、クソ! お前さえ居なけりゃ!」

「あれ? 私が居なければどうしたと?」

「あのガキが本を見てるときに引き込んで! それで!」

「うへぇ、あの間、見られてたのか…ん? じゃあアルルは最初から?」

「あ、はい、そうですね、リオさんが本を見付けたときには居ました」

「おま!」

「畜生がぁ!」


い、意外と危機的状況だったんだな、俺って…

まさか、偶然にもアルルに救われるとは。

いやまぁ、結構偶然あいつに救われることは多いけどさ。


「勘の良いガキは嫌いだ! クソが!」

「何の騒ぎ…ん? 知らない人だね」

「ちょっと諸事情がありましてね…ひとまず何処かに拘束しておきましょう」

「離せ!」

「おっとと、抵抗しても無駄ですよ? あまり力もありませんしね」

「この女ぁ!」


今更思うんだけど、もしもアルルに胸があったら、あの男、幸せだったろうな。

完全に当ってるはずだし…アルルのお粗末なお胸では当って無いけど。

もしくは当ってても気付かないのか…流石アルルだな。


「はい、とりあえずここに拘束しておきましょう」

「クソ! 離せぇ!」

「うーん、騒がれたりすると掃除が…寝不足にもなっちゃうかも」

「じゃあ、睡眠薬でも飲ませます? 強力なのを」

「なんでそんな物を持っている?」

「睡眠薬は相手を無力化するには丁度良いでしょう? 特製ですよ」

「や、止めろ!」

「うるさいとご近所迷惑ですよ-、と言っても、ここら辺に他に家はありませんが」

「うぐ!」


アルルの奴が何処からか取り出した注射器で男の腕を刺した。

直接体内に睡眠薬ってヤバくね? でも、アルルならそこら辺熟知してるだろうし。

大丈夫なんだろうけど。


「はい、お休みなさいです」

「ねぇアルル、さっさと家から出せば良かったんじゃないかな?」

「いやぁ、流石に情報とかが漏れると、私達は不利になりますからね。

 ひとまずこうなってしまったら、後日対処しないと」

「だな、ひとまず1夜の間過ごして、ウィンの魔法発動条件を揃えて

 フランを呼んできて貰おうか」

「それが良いと思います」

「…そう言えば、あのエマはどうしたんだ?」

「もう寝ちゃったよ、ウィンちゃんもミロルちゃんも寝てる。

 起きてるのは私達3人だけだよ。

 子供はもう眠る時間だしね」


そうか、もう眠ったのか…ウィン達は分かるが、ミロルまで眠ったのは意外だな。

今回の呼び込みで疲れたのかも知れないな。


「と言う訳でリオちゃん」

「あ、はい」

「君もう寝た方が良いよ? 掃除は私達2人でやっとくからさ」

「あ、いえ、大丈夫です、俺はまだこれ位」


逆に俺は全然眠くないんだよな、殆ど何もしちゃいないし。


「無理しちゃ駄目だよ? ちゃんと寝ないと」

「いえ、本当に大丈夫ですよ、夜更かしにはなれてますし

 たまに夜通しで何かすることも」

「駄目駄目、小さな子がそんな夜更かししちゃぁ。

 背も伸びなくなるよ? 後、お肌も荒れるし、胸も大きくならないよ?」

「いえ、背が伸びないのは半ば諦めてますし、肌はどうでも良いです。

 胸とかむしろ大きくならない方が」

「駄目、健康に悪いよ」

「いや、だから」


うぅ、グイグイ来るな、母親みたいだ。


「リオさん、大人しく休んでください。

 実は私がリオさんが掃除してるベットルームに行った理由って

 リオさんにそろそろ休んでくださいって伝えに行こうとしたからですし」

「いや、大丈夫だって、割とマジで」

「これまた強情だね、普段はどうやって寝かしつけてるの?」

「普段はお香を焚いて眠って貰ってます」

「お香? そんなのあったか?」

「はい、リラックスさせる効果があるお香ですね」


そう言えば、アルルに部屋に連れて行かれたときは

大体良い匂いがしてた様な気がする。

もしかして、あれか? わざわざ部屋にお香を仕込んでたのか、あいつ。


「お前、わざわざそんな」

「健康には良いですよ? ちゃんとそこら辺は考えて配合してますから。

 リラックスして眠ることが出来るのは大事でしょ?」

「ふーん…でも、俺はまだ眠くないし」

「駄目です、寝てください」

「抱き上げるな!」

「眠らないというなら、リオさんが眠るまで添い寝をしますよ?」

「それは嫌だ」

「なら眠ってください、今日はお香を用意できてませんから」

「うぅ…わ、分かったよ、で、何処で眠りゃ良いんだ?」

「掃除が終わってる部屋がありますので、そこで」

「はいはい」


アルルに案内されてその部屋に移動したが…ミロル達も同じ場所で寝てるな。


「…1人で眠りたいんだけど」

「ここしか無いので諦めてください」

「…はぁ、仕方ない、ウィンの隣で寝るか」


流石にミロルの隣で眠るのは恥ずかしいからな。

でも、ウィンの隣なら大丈夫だ。

ウィンは俺の妹だからな、別になんともない。


「はぁ、まさか眠くも無いのに眠れと言われるなんてな」

「では、お掃除をしてきますね」

「はいはい」

「…お姉ちゃん」

「うぇ…いきなり抱きついてくるとは」

「あはは、ウィンさんはリオさんの事が大好きなんでしょうね。

 心なしかさっきよりも表情が楽そうです。

 きっとリオさんが隣に来たから安心したんでしょう」

「姉冥利に尽きるな、ったく」

「お姉ちゃん…良い匂いで温かい…うふふ」

「良い匂いって…はぁ」

「あぁ、私もその間に入りたいですけど…姉妹の中を斬り裂くのは駄目ですね。

 それではお掃除に行ってきます、あまり物音を立てないようにしますので

 グッスリとおやすみなさい」

「はいはい、さっさと行けよ」

「では」


…アルルが移動したか、しかし、何だか温かい気がするな。

人肌の温もりってのは、割と程よくね眠りやすいかも知れない。

ウィンはあまり力があるわけじゃ無いから苦しくも無いしな。

たまーにフレイも同じ様に抱きついて眠る事もあるが。

あの時は正直地獄だからな、絞め殺される気分だ。

ちょっと力が強すぎるんだよ、あいつは。

手加減も下手だしな…しかし、フレイは何であんなに怪力なんだろう。

子供とは思えないくらいに力もあるからな。

身体強化魔法も使わずにあの怪力ってのは相当だろ。

そりゃあ、マナとかが苛烈な訓練をしているのかも知れないけど。

それでもあそこまでってのは凄まじい。


「……あいつの両親って、誰なんだろうな」


親の事は信頼してなかった、自分の両親もクズだったし

ウィングの母親だって畜生だった。

だが、トラのお母さんは本当に優しい母親だった。

だとしたら…フレイの両親はどうなんだろう。

あいつの両親だけ、未だに名前も姿も見たことが無い。

トラのお母さんに会ってから、少しだけ大人に対する考えも変わったせいか

もしかしたら、フレイの両親もフレイを捨てた仕方ない理由があったのかも知れない。

……もしそうなら、今ならきっとやり直せるだろう。

だけど、トラのお母さんみたいにやり直せない理由があるのかも知れない。

そう言う場合はこっちからアプローチを掛けないと。

……今度、先生にフレイの両親の話を聞いてみよう。

きっと話してくれるだろう。

話してくれなければ、フレイの両親も屑だったって事か。

出来れば、話してくれることを願おう。


「……ウィン」


そんな事を考えながら、ウィンの方を向いたせいかな。

何だかウィンの事が愛おしく感じてしまった。

幸せそうな寝顔…それはきっと、俺が一緒にいるからなんだろう。

自惚れかも知れないけど、姉何だから、少しくらいはそう言う風に思っても良いだろ?


「柔らかいほっぺだな」


世界一可愛い俺の大事な妹。

死ぬ前に妹に憧れていたからこんな風に思うのか。

いや、違うな…ただ単に俺はウィンの事を大事にしてるだけだ。

ウィンの事を守りたいだけだ…この幸せな笑顔を守りたいだけだ。

この温かい場所を守りたいだけだ。


「俺、頑張るからな、お前の為に」


そんな事を言っても、眠ってるウィンには聞こえないだろう。

あぁ、聞こえていないと分かっているからこんな事が言えるんだ。

こんな事、起きてるこいつに言えるわけが無い。


「大事にするから、俺だけは…お前を絶対に裏切らないから」


ウィンの背中に手を回し、同じ様に抱きしめた。

僅かな体温が掌から伝わってくる。

ウィンの小さな呼吸もしっかりと聞こえる。

……何だか暖かい気分になる、先生に手を伸ばして貰ったときと同じ様に。

今はこの温もりに身を任せるのも良いだろう。

おやすみ、ウィン…明日から忙しくなるだろうから、今はゆっくり休もうか。

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