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子供達との交流

子供達の相手をするのも中々にしんどいが

フレイはもうすでに完璧に馴染んでいる。

まるで昔から一緒に居たかのようにあいつは子供達に受入れられた。

流石フレイだな、こいつはすぐに周りと仲良くなれる。

何だかんだで親しみやすい性格だからな。


「子供達の相手はフレイに任せるかな」

「…待って」

「ん?」


俺が部屋から出ようとすると、前保護したサラという子供が話し掛けてきた。


「どうした? 俺に用か?」

「うん…これを渡そうと」

「…百合の花?」

「確かカサブランカって言う花」

「百合じゃ無いのか?」

「百合の一種だよ」

「お前花に詳しいのな」

「ううん、この花だけ…好きな花だから」

「ほぅ、で、それを何で俺に?」

「受け取って欲しいから…助けてくれたお礼」

「助けた? はん、俺はお前を怪我させたんだぜ?

 怪我させられたのに助けただと? 奇妙な事を言うな」

「私はそうは思ってない、あなたのお陰で私はここにいる。

 あそこに帰らないですむだけで、私には十分な救い」

「どんな場所だったんだ?」

「…暗い牢屋の中、ご飯もあまり良い物は食べられなかった。

 重宝されてたのは人形の魔法を扱う人達と

 12人の魔法使いだった」

「12? 11人じゃ無いのか?」

「え? 12人だったと…思うけど」

「…ふーむ、11人だと思うがな。

 その12人のうちの1人であろうシャンって奴が居るから、そいつに聞いてみてくれ」

「う、うん」


彼女は俺の言葉に従って、シャンにその事を話した。

シャンは彼女の質問にすぐに11人だと答えた。

必死に否定しているわけでは無いから、隠してるわけじゃ無い。

つまり、シャンは11人だと認識していて、彼女は12人だと勘違いしてる。

この場合、信頼できるのはシャンの11人だという回答だろう。

あいつはその11人の中の1人だ、あの子よりも間違いなく詳しいだろう。


「11人…じゃあ、あの子は誰?」

「…なら、お前を保護したときに目の前にいた3人の女の子の中に居たか?」

「誰? 私はあなた達に助けられた後、意識を失ってて」

「…そうか」


この子の意識があったら、あの子の正体が分かってたかもしれないのに。

結局、あの2人を動かしているであろうフェミーの正体は未だに謎だ。

ケースとケミーは11人の魔法使いの2人だというのは分かってる。

だが、あの子は誰だ? シャンはあの時、8人と言っていた。

フェミーが11人の魔法使いの1人なら7人だと言うはずだ。


「まぁ、この花はありがたく貰っておくよ、部屋に飾っとく」

「うん、ありがとう」

「それを言うのは俺の方だ、ありがとな、大事にするよ」

「……」


彼女は無言のまま微笑み、子供達の中へ入っていった。


「ふぅ、しかし花か、そんなもんを渡されるとは思わなかったね。

 どっちかと言えば、本来は渡す側だろうに」

「花を貰ったのは素直に喜べない?」

「今度はお前か、確か名前はメリルだっけ」

「うん、その通り」

「周りからはお姉ちゃんって呼ばれてたが

 歳を取ってたりするのか? 12歳とかそこら辺?」

「まぁ、そこら辺…13歳かな」

「13!? はぁ、中学生相当だな、そんな風には見えないがな」

「それはあなたも…あなたの年齢は?」

「そうだな、俺は9歳、今年で10だったかな」

「そんな風には見えないけど…それ位ならそろそろ」

「何だよ、そろそろって」

「いや、何でも無いけど…苦労すると思う」

「ふーん、まぁ良いけど…それで? 何の用事だ?」

「…あなた達の狙いが知りたくて」

「知ってどうする? お国に戻って教えるのか?」

「出来る訳がない、ここから逃げる事も出来ないだろうし

 そもそも、逃げても居場所は無いし、あんな場所に戻るくらいなら

 ここで過ごして死んだ方がマシだと思う」

「そんなにキツいのかよ」

「ここは幸せだからね、ご飯も美味しいし、周りとも遊べる。

 外に出るのもこの街から出さえしなければ自由に動ける。

 お金も貰えてるし、何の苦もない」

「お、お金貰えてるんだ」


そう言えば、アルル達の給料形態ってどうなってるんだ?

考えてみれば、俺はあいつらに金を払った記憶が無い。

俺達は…貰ってたっけ? ヤバい、記憶に無い。

だが、手渡しはされて無いと思う。

そもそも戦争で生き抜くことばかり考えてたからな。

金とかどうするのかなんて発想、今まで無かった。

家の食料やアイスは気づいたら補填されてたし

外に出てもアルルに言えば買ってくれてたからな。

自分で金を使って買い物をした記憶が無い。


「どうしたの? 少し顔色が悪いけど」

「いや、何でも無い」

「ふーん、まぁ良いけど、それで? 目的は何?」

「…まぁ、何だ、やりたいことをやってるだけだ。

 お前らを殺したら目覚めも悪いし、飯も不味くなるからな。

 俺はそれが嫌なんでね」

「それだけの理由で?」

「それを守るのがどれだけ難しいか分かるだろう?

 お前も不味い飯を食って、寝苦しい場所で寝起きしてたんだろ?」

「……そうだね、考えてみればそうだった、気付かせてくれてありがとう」

「何言ってるんだ、俺は俺の考えを言っただけ、ただそれだけだ」


例えウィンが作った、あまり上手く出来てない料理でも

俺はその料理はスゲー美味いと感じるし

そう思えるのは、きっと後悔が無いからだ。

いや、後悔はしていたな、踏み越えてるからのほうがしっくりくるか。

まぁ何にせよ、俺は美味い飯を食べてのんびり眠れればそれで良い。

いや、寝るときはのんびりとはほど遠いか、でも、幸せには感じるよ。


「ありがとうね、スッキリしたよ、何だかあなたの事が好きになりそう」

「そりゃ良かった、嫌われるよりはマシだな

 ま、元気そうで安心したよ、怪我をさせちまった奴らも元気そうだしな」

「そう言えば、謝って回ってたね」

「怪我させたら謝るだろ、仕方ないとは言えな

 とりあえずだ、お前らは戦争のことは忘れて仲良く遊んでてくれ。

 今まで出来なかったんだ、出来る様になったなら全力でな。

 本来、子供の仕事なんざ遊ぶ事だからよ」

「…皆に行っておくよ、気にしてくれてありがとう」

「お前らが戦意を取り戻したら面倒だから言っただけだ。

 まぁ楽しんでろ、その間に俺達が終わらせるから」

「あなた達は遊ばなくて良いの? 戦争を忘れて、ただの子供として」

「俺達は…そうだな、最高に楽しんで遊ぶために、そう言うのは後に取っておくんだ。

 少なくとも俺はやること全部やった後にグータラした方が良いって思ってるからな

 最高を味わうためにも今は我慢だ」

「……本当に強いんだね」

「強いわけじゃない、何処までもわがままで自分勝手なだけだ」


最高に幸せ気分に浸りたいからな。

誰からかに与えられた幸せでは無く、自分の力でつかみ取った幸せ。

そんな物をこの戦争ばかりの国で求めるのは、本当にわがままだ。

そもそも、幸せを掴むという地点でこの世界じゃ最高の贅沢だろう。

だが、俺はそれが欲しい。最高の幸せを自分の手でつかみ取りたい。

与えられた幸せだけじゃ満足できないから

自分の力で自分が求める物を手に入れようとしてる。

全く、とんでもないわがまま野郎だよ。

だが、俺はそれで良い。わがままにならなきゃ欲しい物は手に入らないしな。


「それじゃあな、また会うだろうが、ひとまずは今生の別れかも知れないし」

「恐いことを言わないで、そこはまたねって言ってくれた方が私は嬉しいよ」

「…じゃあな」

「またね、どんなになっても、私はあなたに会いに行ってやるから」

「出来れば来ないで欲しいね」

「私もわがままだからね、あなたになんと言われようとも、きっと」

「あっそ、じゃあお前が来ないようにこっちからたまに会いに行かないと駄目か。

 分かったよ、またな。

 今度会うときに、お前がまだ俺に興味を抱いたままである事を祈るよ」


俺はさっさとその場を後にした。

本当、周りから慕われてるだけあって、かなり頭が良いタイプだな。

子供だって言うのが不思議に感じるくらいに頭が良い奴だ。


「…さてと、アルル」

「はいはいっと」

「やっぱりちょっと呼んだら出てくるな」

「まぁ、私はいつでもリオさんの隣に居ますし」

「恐いんだけど? ストーカー女」

「護衛ですよ、護衛。

 そもそも前まで敵だった子供達に会いに行くって言われて

 一緒に行かない方がおかしいですよ、心配ですし」

「そうか、じゃあ、会話の内容聞いてた?」

「えぇ、そりゃもうバッチリと」

「…はぁ、そうか、じゃあその会話で疑問に思ったんだけど」

「はい?」

「給料って…払ってたっけ」

「あぁ、そこはご安心ください、ちゃんと頂いてますよ。

 今は小さな戦士達の活動資金から毎月」

「…そうなのか?」

「えぇ、管理はシルバーさんがしています。

 私も一応は管理を任されている立場ではありますが

 私の場合は活動資金の使用方針、つまりリオさんの指示に従い

 その指示を遂行するために使用してます」

「…俺が欲し言っていった物を買ってたりするが、あれも?」

「あれはリオさんに給付されてるお金からですよ。

 その管理も私がしてますし」

「そうなのか!?」

「えぇ、皆さんに給付されているお金は全て管理してます。

 リオさんは…そうですね、残高は1000は行ってますよ」

「そんなに!?」

「隊長ですし、4年間、殆ど使用してませんからね。

 そう言えば、前もお金の話をしたような?」

「覚えてねぇよ」

「まぁ、リオさんは結構そこら辺気にして無さそうですしね」


だってなぁ、今まで給料という概念がすっぽ抜けてたくらいだからな。

死ぬ前もバイトとかをしてたわけじゃないし、そこら辺に執着は無い。


「じゃあ、服とかは?」

「あれは私の自腹ですよ!」

「そうなのか? 俺の服を買うのに」

「リオさんに着て欲しい服を買うわけですから! 私が払います!

 あ、それとお料理の食材とかは活動資金から使ってますのでご安心を」

「…そ、そうか」

「因みに、私はリオさんの為に色々な道具を買っています!

 勿論全て私の自腹なのです! あ、貯金はちゃんとしてますよ?

 リオさんとの将来のために!」

「馬鹿な幻想を夢見るな」

「因みに私のお給料の内、8割はリオさんの為に使ってます」

「8割!? と言うか、そこまでいくと残り2割が気になるんだが!?」

「勿論貯金ですよ! あ、これもリオさんとの未来のためだと考えるなら

 10割でしょうか!」

「他に使い道無いのかよ!」

「無いですね~、私は今に満足してますからね!

 お金なんて満足するために使うんですから!

 お金が何よりも大事、なんて言葉を聞いたことがありますが

 そもそもお金は物と交換するための対価なので

 お金が最も大事となれば集めるだけで満足するだけで

 お金がお金として機能しないと思うのが私の考えです!

 ここでお金を使って物と交換した場合、それはお金が最も好きでは無く

 お金を使うときに使うために集めてるだけで、お金が最も大事ではないのです!

 お金は幸せを掴むために使うのが普通なのです!

 ですので、私はリオさんとの幸せを続けるためにお金を使います!

 そして私はお金で買えない物は沢山あると考えるタイプなのです!

 特にリオさんの心とかお金でどうにかなる物じゃありませんし!」

「人の心がそう簡単に動くかよ」

「それが案外簡単に動くんですよ、リオさんや皆さんは動かないでしょうけど」

「お前は?」

「動くわけ無いじゃ無いですか! 私が動くのはリオさん関係のみです!

 可愛い格好でリオさんに何かおねだりされたら動きます!」

「するかよ!」

「それは分かりますよ~」


全く…はぁ、でもアルル達にも給料がちゃんと行き渡ってるって知って安心したよ。

そこら辺はしっかりしてないと大変だからな。


「それでリオさん」

「んー?」

「早速ですが活動資金、どう使いますか?」

「何でだよ」

「お金の話になったので、ちょっと活動資金が溢れてきてますし」

「どれだけ溢れてんの?」

「億は行ってますね」

「…マジか!」

「最高戦力になる部隊ですから、活動資金も多いんですよ。

 でも、現状の施設でも事足りる程、皆さんハイスペックですから。

 正直、このまま億を超える資金を私達が確保したままだと

 経済にも若干の歪みが生じますから、使って欲しいと。

 マオさんは資金を寄付してた感じだったらしいです」

「じゃあ、それで良いだろ」

「流石に全部寄付って言うのは…」

「そもそもミストラル王国はあまり工業が発達してないからな。

 ミロルの魔法で少しブースとしてる感じだけど。

 それが無ければ戦国時代の前期くらいの技術力しかなくね?

 鉄製の装備を一式作る技術がある程度だし」

「戦国時代?」

「あー、いや、気にしないでくれ」


で、ファストゲージは…そうだな、戦国時代後期くらいかな?

一応不安定ではあるが、銃もあるしな。

だが、それは戦争面だけであって。

そこ以外は江戸時代とか通り越して明治近いけど。

無線機もあるし、テレビもある。

車は無いけど似たような移動手段も出来てるみたいだし。

その内、ゲームとか作ってくれねぇかな。

本当、色々と発展の方向性が変なんだよな。

ミストラル王国はあまり発展してないはずなのに紙の技術は発展してる。

だから、小説も置いてあるし…漫画は無いけど。


「やっぱり世界が違うと発展の方向性も違うんだな」

「えっと、それで何か方法ってありますか?」

「……そうだな、銃器が欲しい」

「それはミロルさんが」

「そうだな、本当に欲しい物が中々出て来ないな。

 大規模訓練場も用意してあるし。

 …じゃあ、子供達を保護できる孤児院を作ってくれ」

「孤児院を?」

「あぁ、まだ孤児も多いしな、後は学校だな。

 子供達に色々と教える為の学校」

「それは活動に関係あるのですか?

 私としては構わないのですけど」

「そうだな、じゃあ、次期の戦士達を育成する為にって名目にしてくれ」

「その言い方だと」

「勿論、それは本当の理由じゃ無い、ただ場を作ってやりたいだけだ」

「ハッキリ言いますね」

「お前なら心配ないと思ってな」

「…はい、分かりました、その様にしますね。

 書類等に書いて、それを送っておきます」

「でも、どうやって送るんだ?」

「ウィンさんに手伝って貰いますよ」

「あぁ、それが1番だな、じゃ、頼むよ」

「はい! お任せください!」


他にも訓練施設とかも考えた方が良いかな。

やっぱりこう言うのを考えないと行けない立場って面倒だな。

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