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正体不明の病

あの騒がしい日から1日が経過し

リサ姫が俺達の家を管理してくれると言う人財に話をして

了承して貰ったらしい。

誰が管理しているかは分からないけどな。

で、それから1週間が経過。

人財に会うこともなく俺達はファストゲージに戻った。

まぁ、リサ姫が話を着ける相手だし、信頼に足るだろう。

とにかく今は、次の戦闘の準備をしないとな。

…だが、運が悪いことに、俺達は季節外れの病にかかった。


「環境が変わったせいか? まさか同時に病気になるとはね」

「けほ、けほ…リオさん、ご、ごめんなさい」

「あまり喋るなよ…でも、やっぱり奇妙な物だな。

 なんでお前らまで病気になった? しかも同時に」

「分かりません…へ、変な物を食べたせいでしょうか…」

「…攻撃?」

「で、でも、リオさん達は無事でしょう?」

「あぁ…と言っても、今動けるのは俺、トラ、ウィングだけだが」


なんで俺達3人は無事で、他はぶっ倒れたんだろうな。

昨日食べた物は皆同じなのに…


「…とにかくだ、俺はその病気を探ってくる。

 ウィング、トラ、お前らはこいつらの看病を頼む」

「うん、分かった」

「気を付けてね」

「あぁ、転けて俺が怪我でもしたら看病する奴が増えて看病できる奴は減るからな

 それ位分かってるよ、お前らの世話にならないように気を付ける」


とりあえずはこの病気の正体を探ることが優先だろう。

まぁ、メイルかスティールに聞けば正体くらい分かるかも知れないし。


「スティール…メイル…と言うか、誰も居ないな」


…見張りも居ない、何だか妙な感じだな。

最初から奇妙な感じはあるが、見張りまでいないとは。

…とりあえず、スティールの部屋まで行ってみるか。


「スティール…」


と言うか、俺が簡単に姫様の部屋には入れるってどうなんだよ。

見張りは何してるんだ? 今日は随分とがら空きじゃないか。

流石にここまでスカスカだと気持ち悪いな…


「スティール…え?」


嫌な予感はしていたが…どうやら、その予感は的中らしい。


「ケホ…あ、あぁ、リオ…えっと、悪いけど今日は…ケホ!」

「おい! お前もか!?」

「…え? 私もってどう言う…」

「……アルル達もそんな病気になってるんだよ」

「なん…ゲホ!」

「えっと…ダメ元で聞いてみるが、お前はその病気に心当たりってあるのか?」

「あ、ある訳無いでしょ…ケホ! 私も…昨日から調子が悪くて…」

「見張りの兵士達が1人も居ない理由は?」

「何それ…ケホ! 聞いてない…わ」

「……明らかにおかしいな、ここまで来ると偶然には思えない。

 とにかく色々と情報を集めてくる! 状況確認だ!」


俺は急いで城中の部屋を探してみた。

結果、見張りの兵士は医務室で休んでいたり、自室で休んでいる。


「……なぁ、先生、その様子だとあんたも」

「…えぇ」


ミストラル王国から呼んだ兵士達も全員ぶっ倒れていた。

アルル達が掛かっているんだから、国は関係ないよな。

もしかしたら、城の中だけかも知れないと思い

俺は城から出て街中を軽く見てみたが…店は全部閉まっていた。

これはいよいよ持って偶然では無いな。


「リオ、お帰り、どうだった?」

「…全滅だ、多分俺達3人以外は全員病気に掛かってる」

「え!?」

「じゃあ、ケホ! これは…攻撃?」

「その可能性が高い、アルトール国は魔法国家。

 もしかしたら、魔法による攻撃かも知れない」

「ですが…それでは何故リオさん達は無事で?」

「そこが気掛かりなんだよな、なんで俺達3人だけ無事なんだか」

「…とにかくリオ、原因を探すしかない」

「そうなんだが…どうやってこんな真似をしているのか分からないだろ?

 あの人形みたいに遠隔操作系の魔法だとすれば手の打ち様がない。

 敵国の安全圏内からの攻撃ならな…まぁ、その可能性は低いが」

「なんでそう言いきれるの?」

「安全圏内から出来る攻撃なら、今更仕掛ける必要が無いからだ。

 それなら、いつどんな時でもこの魔法を使えたはずだしな。

 わざわざ今まで封印していた理由が分からない。

 大きな魔力を使うからだと仮定しても

 スティールがこの攻撃への対処方が分からないってのはおかしい。

 こんな規模の攻撃だ、1度受けて対処が出来ていなければ全滅は避けれない。

 だが、今まで無事だったと言う事は受けたことが無かったと言う事。

 遠隔攻撃が可能なら、最初に首都であるここを狙うだろうからな」

「つまり?」

「つまりこの魔法は潜入しての魔法だと考えられる」

「じゃあ!」

「多分…この国の何処かに元凶が居る…探し出すぞ。

 マルの魔法は使えないから情報を集めるしかない。

 出来るだけバレないように動いて情報を集めるなんて

 かなり面倒だけど……後、そうだな、ウィングにはスティールの護衛を頼む」

「スティールさんの?」

「あぁ、もしかしたらスティールを狙ってくるかも知れないからな。

 だがその前に、なんとかスティールを移動させて、国王の部屋に連れて行こう。

 どっちを狙ってくるか分からないしな」

「分かった!」

「スティールの移動は俺達3人でするぞ」

「うん」


俺達3人はスティールの部屋まで移動して事情を話した。


「わ、分かったわ…」

「お、おい、大丈夫なのか? 立てる?」

「まぁ…何とかね…」

「スティール…様…どちらへ?」

「メイルさんは大丈夫なの?」

「いやぁ、見た目からして大丈夫じゃないだろうな、今にも死にそうだ」

「…はぁ、はぁ…私が病如き…に…はぁ、はぁ」

「少しは動けるんだな…無茶なのは分かるが手伝ってくれるか?」

「…良いでしょう…ケホ!」


メイルには無茶をさせるが、なんとか国王の部屋まで連れてこられた。


「はぁ…はぁ…」

「料理の世話はウィングに任せようと思うけど、大丈夫か?」

「うん、大丈夫」

「わた…しが…」

「それ以上動いたらヤバいだろ、身の回りの世話はウィングに頼んでくれ。

 俺達はこの病の元凶を探り当てるから」

「……申し訳ないわ」

「よし、トラ行くぞ。

 可能な限り行動を悟られないように動く」

「分かった」


問題は多々ある、状況がかなり不味いというのは間違いない。

動けるのは俺達3人だけだからな

だから、情報を集める最も効率的な手段である聞き込みは出来ず

自分達の目と足で探すしかない。

たった2人でこの広いファストゲージ国を全て探るなんてな。


「…トラ」

「何?」

「お前はどっちを捜索する? ここか向こうか」

「向こうって言うのは、前に制圧した?」

「あぁ、あっちの状況を探る手段がないからな。

 ち、こんな事になるなら無線機を置いてくればよかった」

「…じゃあ、私は向こうを捜索する。

 私の魔法なら使い方次第で移動が楽になるかも知れないから」

「分かった、じゃあ向こうは頼む」

「うん」

「なんとか無線機を持って行かせたいけど…ミロルは動けないし」

「ケホ、だ、だったらこれを」


スティールがファストゲージ国で作ったであろう無線機を俺達に渡してくれた。


「前も連絡してきたでしょ? これでも大丈夫でしょ? ケホ」

「ありがとうよ、じゃあトラ、これを」

「分かった、じゃあ行ってくる」

「あぁ」


…トラがファストゲージ王都から出て行くところを見送った後

俺も捜索を開始することにした。

可能な限りバレないように動く…あまり派手に動いたら俺が動けることがバレちまう。

ひとまずは城壁の上から周りを見てみるか。


「……んー」


俺はスコープだけを召喚し、町中を城壁の上から観察を始めた。

ここなら相手が意識しない限り見付かりはしないだろう。

恐らく術者は国の全員動けないと考えているはずだ。

それだけでも俺という存在は意識の外に出るだろう。

仮に視界に入ったとしても端っこに入るだけなら意識は届かない。

城壁の上なんて全員動けないと考えているなら見たりもしないだろうしな。

まぁ、問題は相手が子供だと言う事だろうが。

大人ならあり得ないを認識する事が出来ないと聞く。

だが、あり得ないを受入れる子供ならバレる可能性はある。

だから、可能な限り見付からないように動こうか。


「……一応、伏せて周りを見てみるかな」


しかし、本当に人っ子1人居ないな。

……ん? 人影? えっと…あれが術者か?

いや、でも…他にもいくつか人影が見えるぞ。

動ける人間は俺達3人だけだと思ったが、他にも居たのか。

でも、聞き込みは出来ないかな。

あの中に術者が居る可能性もあるし

それに動いているのは子供ばかり、状況把握は出来ないだろう。

だが、子供? 子供が術の外側に居るとは思えない。

だってそれだとフレイ達が病にかかっている筈が無い。


「…ひとまずは観察するしかないのか」


もしかしたら動いている子供達に特徴があるのかも知れない。

そこをなんとか見つけ出す事が出来れば対策も可能かも知れない。

子供にあって、大人にない特徴…俺達にあってフレイ達にない特徴。

動いてる子供達と俺達の違いは魔法だろうが

それだと俺達3人が動けるのがおかしいし、そもそも大人は魔法を使えない。

家系か? 家系に関係があったりするのか?

だけど、外に出ている子供達は皆カゴを持っている。

子供がカゴを持って外出する理由はおつかいしかないだろう。

小さな子供がおつかいと言う事は大人が動けないという証拠。

つまり家系は関係ないか…ち! 面倒くさいな!

そもそもウィンが動けずに俺が動けるんだから家系関係ないだろ!

何考えてるんだよ俺…ち、同じ特徴を見付けるのが難しすぎて

変な事ばかり考えちまう…れ、冷静になれ。


「クソ」


フレイ達が動いているなら、特徴を見付け出すのは簡単なのに。

フレイ達が動けないというのが何よりも不思議な所だ。

もしもフレイ達が動けるなら、同一の特徴なんて1つしか無い。

それは子供だと言う事…子供は動ける。

それなら対象は大人だけだと分かる。

だが、フレイ達も動けない…じゃあ何なんだよ!

魔法使いと大人のみって考えた場合、俺達3人が異物になる!

俺達も魔法使いだからな…だが動ける。


「……くぅ、あ、ち、日が暮れてきたか」


考えるだけで1日過ごしたって言うのかよ。

観察もしてたが、やっぱり同一の特徴は分からなかった。

どれだけ考えても俺達が邪魔になった。

何で俺達だけが動ける? 何か共通点があるのか?

どれだけ考えても出て来ない。

もしかしたら、俺が意識していない特徴か?

俺が気にもしていない特徴…考えても気付けない特徴。

…いや、分からない。

必死に考えても出て来ないぞ…クソ、ひとまず今日は切り上げよう。

とりあえず紙に今回得て考えた情報を書き記してみた方が良いか。

その文を後で読んだら何か気付くかも知れないしな。


「……はぁ、ん」


俺が城に戻り、紙に今回の情報をある程度まとめた後

無線機がなった、トラだな。


「トラか?」

(うん)

「そっちはどうだった?」

(…こっちは誰1人として病を患ってない)

「じゃあ、この病気はこの王都だけで蔓延しているのか。

 ひとまずお前はそっちの国民や兵士達にこっちの事情を話してくれ。

 出来ればこっちには来ないように説得も頼む」

(分かった)


…俺はひとまず紙に新しい一言を書き足した。

この攻撃は王都のみで行なわれている。

術者が王都に潜伏している可能性がより濃厚になった。

不幸中の幸いという奴だ。

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