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水練

「いやぁ! しかしリオさんって意外とノリが良いんですね!」

「うっせ!」

「リオは普段なんな風に言ってるけど、結構遊んでくれるからね」

「楽しかった! 勇者フレイ! あはは!」

「たまにはこう言うのも良いですわね」

「でもメア姫様、こう言う遊びは本来男の子がする物です」

「そうなんですの!?」


そうか、メア姫は男の子と触れ合うことがないから分からないのか。


「確かにそうね」

「えぇ、まぁ」

「ふ、フレイがやっていたから、女の子がする遊びだと!

 わ、私としたことが! な、なんとはしたない!」

「フレイがする事って、大体男の子がする事ですよ。

 虫取りに行ったり、チャンバラごっこしたり」

「最近は戦争ごっこをよくするよ!」

「戦争なんて、ごっこでしなくても飽きるほどするのに全く

 と言っても、あれは戦争ごっこと言うか、かくれんぼだが」

「潜入作戦!」

「かくれんぼだよ馬鹿たれ」

「追跡作戦!」

「鬼ごっこな」

「えっと、潜入逃走作戦!」

「隠れ鬼ごっこな」

「仲間救出作戦!」

「ケイドロだ」

「ケイドロとは?」

「逃走側と捜索側に別れてかくれんぼと鬼ごっこをする遊びだ。

 逃走側は制限時間が過ぎるまで1人でも逃げ切れれば勝ち。

 捜索側は制限時間が過ぎるまでに全員を捕まえれば勝ち。

 逃走側は捕まった仲間にタッチすることで解放することが出来る。

 だから、捜索側は最低1人見張りを用意しないと捕まえられないんだ」

「それは捜索側が不利では?」

「複数人でやるから、役割分担さえ出来れば十分だ。

 まぁ、子供の遊びに推奨したい遊びだな。

 これをやれば体も動かせるし、頭も使わないといけない。

 役割分担が必須なゲームだからな、子供の成長に良いと思うぞ。

 逃走側は仲間意識が付くだろから、どっちでも精神的成長も期待できる」

「ほぅほぅ、面白いですね」

「言っておくがやらないぞ? 大体フレイが居るんだから

 こいつを捕まえるなんて無理だ」

「リオちゃん! 私、仲間救出作戦で鬼になった記憶が無いよ!」

「お前が鬼だったら、誰も逃げられないだろうが、理解しろ」

「むぅ、なんでさ~」

「足が速いからだよ」

「でも捕まるもん! いつもリオちゃんに捕まるもん!」

「隠れてるお前にバレない様に近付いてるからな、そうしないと無理だ」

「は! だからいつも隠れてるときに捕まるんだ! じゃあ!

 ずっと走ってたら私捕まらない! やった! 今度は勝てるよ!」

「そうだな、スタミナ切れでぶっ倒れてるときに捕まえてやるよ」

「そうだ! ずっと走ってたら疲れるじゃん!」

「馬鹿だな」

「馬鹿」

「えっと…あはは」

「馬鹿じゃないし! 天才だし!」

「はいはい、そうだな、お前は天災だよ天災」

「えっへん!」

「あれ? 少しニュアンスが違う気がしたんですけど…」

「うぅ、な、なんにせよ今は海ですわ!」

「そうですね、海に行きましょう」


俺達は早速海へ向った。


「よし、行くか」

「リオさんストップ」

「なんだよ」

「えっと、その腰にあるのは?」

「浮き輪だよ、見て分かるだろ?」

「いえ、分かりますけど…なんで浮き輪?」

「泳げないって言っただろ? だから浮き輪で」

「…恥ずかしくありませんか? それ」

「いやまぁ、恥ずかしけど…」

「なら浮き輪無しで!」

「溺れるだろ!? くだらないところで死にたかねぇよ!」

「私達が居ますから!」

「いえ、アルルさん、あなたはお留守番です…リオさんの練習相手は

 メルトさんにお任せしましょう」

「何でですか!? り、リオさんは私の担当です!」

「邪な考えばかりをするじゃありませんか」

「大丈夫です! これは訓練です! 訓練は本気でしますよ!

 邪な考えはありません!」

「…本当ですわね?」

「本当です!」

「ならばもし、変な事をしようとしたら」

「その時は完全拘束していただいても構いませんとも!」

「二言はありませんわね?」

「勿論です!」

「…では、そう言うことですので、リオさん」

「…わ、分かったよ」


うぅ、やっぱり練習しないと駄目なのか、しかも相手はアルル。

いやまぁ、多分大丈夫だと思うけど…あそこまで言ったし。


「ではリオさん」

「はぁ…わ、分かったよ、練習すれば良いんだろ?」

「えぇ、いざと言う時に泳げないと色々と不便ですからね

 最初は海水での訓練ですが、その内淡水での水練も必要ですね」

「何でだよ」

「淡水と海水ではやはり違いますからね、どちらも泳げるようにならないと」

「面倒くせぇ」

「ミストラル王国には確かに大きな川などは少ないですけど

 向こうの大陸には何があるか分かりません。

 もしもの時が出来ない時にもしもの時が来たら遅いのです」

「わ、分かったよ…練習するって」

「はい! では練習です! 私の手を握ってくださいね」

「……」

「な、なんで躊躇うんですか!?」

「いやだってなぁ…なんか汚い液体とか付いてそう」

「付いてませんよそんなの! と言うか何の事ですか!?」

「ほら、涎とか」

「付いてませんよ! 仮についてたとしても既に洗ってますって!」

「付いてたことあるのか?」

「まぁ、朝起きたら涎が…って事はありましたけど」

「汚ね!」

「リオさんだって涎垂らして寝てたことあるじゃ無いですか!」

「あるの!?」

「えぇ、まぁ気付いたら拭いてましたけど」

「なんて事だ…」

「まぁ、その寝顔も無防備で可愛かったです、むひゅひゅ」

「アルルさん、なにやら妙な気配を感じて」

「な、何でも無いです! さ、さぁリオさん! 練習しましょう!」

「あ、あぁ」


い、勢いで海まで引っ張られてしまった。


「あ、アルル、は、離すなよ!?」


も、もう足がしたまで付かない…せ、背が低いからだな!

こ、これでもしアルルが手を離したらどうなるんだ!?

溺れる? 溺れるよな? やっぱり恐い!


「何をですか?」

「手だよ! 離したら! あ、あれだからな! あれしちゃうからな!」

「かなり動揺してますね」


うぅ、や、やっぱりこう言うのは慣れない、ぞ、ゾッとする。

なんか足が付かないって落ち着かないな…

もしも空を飛ぶ道具とかがあったらこんな感覚なんだろうか。

だとしたら、空なんて飛ぶもんじゃねぇな、は、ハラハラして景色なんて見れない。

今だって、ただ海水とアルルの手しか見てないし。


「しかし、リオさんが私の手を強く握るって、何だか新鮮です」

「黙れ! い、良いから離すな!」

「離そうとしてもリオさんが握ってますから無理ですよ」

「うぅ! なんでフレイとかはこれが平気なんだよ…」

「ほらほらリオさん、力を抜いてください」

「う…うぅ」

「抜いてくださいよ、むしろ強くなってますけど?」

「こ、ここ、こんな場面で力を抜けるかよ…」

「でも、力を抜かないと浮きませんよ?」

「無理無理!」

「……力を抜いてくださいよ? 少しだけ強行策をとりますよ」

「にゃ! にゃにをする気だ!」

「それ!」

「バカバカ! 手を離すなぁあ! うあぁああ!」

「れ、冷静になってください、そうすれば泳げますから!」

「無理だぁ! は、はぁ、はぁ…」

「あ! り、リオさんが私に抱きついて! ふ、少し興奮しますが

 落ち着け私、これは訓練なのです。

 と言うか、このヘブンを維持するためにも我を忘れてはいけません」

「はぁ、はぁ…や、やっぱり泳ぐなんて無理だって…アルル、戻ろう」

「な、泣き顔のリオさんが上目遣いで私にお願いを!

 な、なんと強烈な…鼻血が…駄目です! このままでは

 シルバーさんに完全拘束されてしまう! そうなれば!

 このヘブンが消えてしまう! 自分を保つのです!

 あ、でも、自分を保つと暴走する未来しか見えないから

 ここは偽りの自分を前面に出さねば!

 ふふ、リオさん、そんな表情でおねだりしても駄目ですよ。

 これは訓練なのですよ、リオさんの為なのですよ」

「無理だって! こう、段階とかあるだろ!? いきなりこれは!」

「時間があまりないことくらい分かりますよね?

 多少無理でも練習するしかないのですよ」

「俺を引き剥がさないでくれよ! 溺れちゃうだろ!?」

「大丈夫ですよ、私が居ますから、ほら」

「離すな! 離さないで! 溺れる!」

「ほら」

「わぁあああ!」


溺れるぅ! 無理溺れる! やっぱり泳ぐなんて無理だぁ!


「しかし、リオさん程の身体能力なら泳ぐくらい容易でしょうに」

「無理な物は、がぶ、無理!」

「リオさんが溺れる理由は間違いなく海への恐怖でしょうね。

 恐怖を克服してください、死にはしませんよ。

 私が居るんですから、ほら、恐怖を我が物にするのです」

「無理!」

「克服出来なければ溺れて死ぬだけですよ? ほら」

「た、助けて!」

「いえいえ、私は限界ギリギリまで助けませんよ?

 抱きついても良いんですよ? ここまで泳いでこれるならね」

「ある、ぶふぁ! おま!」

「リオちゃん、大変そうだね」

「と言うか、あれは本当にアルルなのかしら、性格全然違うわ」

「無理矢理押さえ込んでますわね」

「ぶふぁ!」

「ほら、克服しないと死んじゃいますよ?」

「この! ぶふぁ! いい加減、ばふぁ!」

「苦しそうですね、でも、今だからまだ良いんですよ?

 もしも実戦でそんな状態になれば、間違いなく死にますからね」

「ふぁ! ぶく!」

「冷静になってください、冷静な行動は得意でしょ? リオさん」


う…うぅ、く、苦しい! 息が! ど、どうすれば良い!?

アルルはまだ助けに来る様子はないし…と言うか、本当にアルルなのか!?

なんか異様にSっ気があるんだけど…本当にアルル!?

こ、このままだと溺れる! 溺死してしまう!

ど、どうすれば水に浮ける!? そうだ、力を抜けば…

でも、力を抜いたらより沈みそうな気がするけど…

だが、アルルは力を抜けという…お、落ち着け俺、深呼吸…出来るかよ!

あぁもう! 冷静に冷静に冷静に…落ち着け、冷静になれ。


「……は、はぅ」

「おっと、浮けましたね」

「な、なんとか…浮けた」

「ようやく1段階ですか、その感覚を忘れないように」

「あ、アルル、なんかお前らしくないな…」

「そうですか? まぁ良いじゃ無いですか、次は泳ぎ方を練習しますよ

 私の手を握ってください」

「うぅ…」

「おっと、さっきまで手を握ってくれと言っていたのに

 克服して手助けは不要になりました? それなら私は砂浜の方で」

「わ、分かったよ…」

「はい、よろしい」


うぅ、な、なんかやりにくい…でも、練習の指摘は的確だ。

お陰で結構すんなりと泳ぎ方をマスター出来た。

もうすでに夕暮れだけど、泳げなかった俺が

1日で泳ぎ方をマスターしたって言うなら早いほうだろう。


「はい、今日はお終いです、やはり飲み込みが早いですね」

「…まぁ、お前の教え方が上手かったのもあるけど」

「そうですか」


俺とアルルは海から出た。

なんか、最初以外はずっと練習だった気がする。


「アルルさん、お疲れ様で、うわ!」

「し、シルバーさん! 私の顔を殴ってください!」

「な、何でですの!?」

「私はリオさんになんと酷い事を! うわぁああ!」

「…え、えっと」

「さぁ! 殴ってください!」

「いえ、それはリオさんに頼めばよろしいかと」

「わ、分かりました! リオさん! 私を殴ってください!」

「何でだよ!」

「リオさんに対し、あんな態度を!」

「…えっとだな、結果として俺は泳げるようになったんだ。

 お前は気に病むことは無い。

 むしろ感謝してるんだ、ありがとうな、練習に付き合ってくれて」

「リオさん! やっぱりリオさん最高ですぅ!」

「だが! 抱きしめて良いとは言ってない!」

「やっぱり殴るんですね~!!」


ったく、本当にすぐに調子に乗るんだから。

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