先を考えて
「よし、それじゃあ5チームも居る訳だし
少しだけ連携の練習もしてみようか」
「連携?」
「あぁ、この5チームを更にちょっとした部隊にする。
人数分けは2対3となるかな。
連携をして対象の撃破を目指すという感じだ。
ハッキリ言うけど、そうでもしないと俺達には勝てないだろ?」
「た、確かに…」
なにぶん、俺のチームはメンバーが凄まじいからな。
ミロルのチームも実力は相当あるし。
他のチームは装弾も難しく、砲撃を当てるのも難しい。
ハンデがあるとは言え、勝率が著しく低いのは間違いない。
1チームだけでフリーフォーオールをしても
どう考えても俺達には勝てない。
だから、今回はチームデスマッチという形にする。
「だから、今回はフリーフォーオールじゃ無くチームデスマッチでやるぞ」
「…ふりーふぉーおーるとは? チームデスマッチは何となく分かりますけど」
「フリーフォーオールは自分達以外は全て敵の対決方式だ」
そうだよな、考えてみれば俺とミロル以外にこの単語は分からないか。
FPSの対戦方式で使う名称だし、ゲームに触れたことがない
こいつらにその単語を理解できるはずが無かった。
「たまーにリオさんってよく分からない単語を使いますよね」
「大体ミロルは理解してると思うが」
「まぁ、私は理解できるけど」
「ふーむ、リオさんとミロルさんの共通する点があるんでしょうね
見た目的にはあまり…出身国も違いますし」
「いや、意外と出身は同じ所よ?」
「そうだな、うん、同じ国だな」
「え!? …むむむ!」
うーん、流石にそろそろ言った方が良いのか? でも、この場で言うのもな。
だけど、向こうに行ったときに言う事も出来ないし。
とりあえずミロルにも相談して見るか。
「なぁ、ミロル…どうする? 言うべきか?」
「うーん…正直荒唐無稽だし、信じて貰えるか微妙よ?」
「だけどな、このまま不信感を抱かれても…後々面倒な気もするし」
「向こうでの単語を使わなければ良いと思うけど」
「つい出ちまうんだよ…」
「…まぁ、後で面倒になるよりはこの場で面倒事を処理した方が良いのかしら」
「だな、もしかしたらその事を聞けば、アルルも落ち着くかも知れないし」
「あぁ、あの暴走が落ち着けば相当楽よね、あなたとしては」
「そうだ、だからもう…言っちまうか」
「そうね…覚悟を決めましょう」
これであいつらがどんな反応をするか分からない。
もしかしたら、俺から離れて行くかも知れない。
それでも言わなきゃこいつらの為にはならないだろう。
このまま不信感を抱かれたら、いざと言う時に問題が生じかねない。
そのタイミングで問題が生じれば、最悪誰かが死ぬ。
この場で明かせば…ただ俺から離れるだけで済むんだから。
「…よし、じゃあ教えよう」
「お?」
「今まで隠してすまなかった、中々言うに言えなくてな。
お前らがどっかに行っちまうのが恐かったからだ。
でも、このまま不信感を抱かれて、戦場でバラバラになるよりは
この場でバラバラになった方が…お前らだって生き残れるから言う。
…俺とミロルは本来この世界の人間じゃ無い」
「…どういうことです?」
「私とリオは転生者って奴よ、こことは違う世界。
ここからして見れば私達の出身は異世界で
私達からして見れば、ここが異世界なの。
私達はその世界で1度死んで、この世界に生まれ変わった。
記憶を引き継いで、この世界の人間として生まれ変わったのよ」
「…異世界転生? そんな事があり得るんですか? 小説の中だけだと」
「何とも荒唐無稽なお話しですわね」
「でも、リオさんとミロルさんが言うなら事実なんだろうね
嘘なんて吐く必要の無い場面で嘘を吐く事はしないだろうし」
「うん…きっとそう」
「意外とすんなり受入れるんだな」
「ねぇねぇ、転生ってなーに?」
「生まれ変わったって事」
「そーなのかー、で? それがどうしたの?」
「リオ達が生まれ変わった人だって事」
「へー…それがどうしたの? 何で深刻そうに話してるの?」
「お前…馬鹿かよ」
「馬鹿じゃ無いし! ちょーっと理解できないだけだし!
でも、やっぱり分からないな-、生まれ変わるって何か変なの?
私、本で読んだことあるよ! 死んだら生まれ変わるって!
それは普通なんじゃ無いのかな?」
「お前! 本とか読めたのか!?」
「そこで驚かないでよ!」
いやぁ、まさかフレイが本を読めるほどに頭がよくなってたとは。
予想外だ、結構馬鹿だと思っていたけど、意外と勉強できるんだな。
「まぁ、確かに何の問題もありませんね!」
「因みに俺は生まれ変わる前は男だった」
「な!」
「今はこんな姿だが、生まれ変わる前は男で中身も男のままだ」
「あぁ、だから私とお風呂に入ったときに鼻血を」
「え? なにそれ引くわー」
「色々と見るの初めてだったんだよ! 仕方ないだろ!?
シルバーみたいな美人の裸を見て興奮しねぇ男は居ねぇ!」
「あら、美人だなんて嬉しいですわ」
「私の時は鼻血を出さなかった気が」
「お前は変態だし」
「酷い! まぁ、良いんですけど」
「と言う訳だから、アルル、俺はお前が好むような奴じゃ無いから
その変態行為を止めて欲しいんだけど?」
「え? 何言ってるんですか? 私はリオさんの全てが好きなのです!
中身が男だろうとオカマだろうとオナベだろうと! 私はリオさんが大好きです!
例えどんな風になろうとも私はリオさんを一生愛し続けるのです!
中身が男でも! 私はその中身に惚れているのですから!
は! いやでも、中身が男のリオさんに惚れていると言う事は!
これは健全な恋愛感情なのでは! と言う事は告白しても問題無い!
そう! これは健全な感情なのです! だからリオさんと結婚しても
法律的にも何の問題も無い! 中身が男の人なんですからね!
と言う訳でリオさん! 結婚してくださいお願いします!」
「するかぁ! 何かむしろ悪化したぞ!」
「流石アルル…一切動じないわね」
「予想外の反応過ぎて怖ーよ!」
す、少しは動揺するかと思ったが、一切動揺の色が無い!
むしろ悪化するという事態になったとは!
「何か少しは落ち着くかと思ったのにむしろ悪化とは」
「私を甘く見ないで欲しいですね!」
「もうお前の変態レベルを侮ったりはしねぇ」
「まぁ、アルルはこんな感じだけど、他はどうなの?
流石に異世界から来た、なんて急に言われて受入れられるとは思わないけど」
「私としては何の問題もありませんわ、例え異世界から来ようとも
私はリオさんを深く知っていますわ。ミロルさんはあまり知りませんが
リオさんが信頼しているというのなら、私はリオさんを信用します
なので、今更信頼に影響はありません」
「リオ基準ね、何かへこむわ」
「ミロルさんの事はあまり知りませんからね。
しかし、リオさんの事はよく知っていますわ
我々の為に命を賭けるような方を信用出来ないはずもありません」
「…いや、あれはほら、邪魔だったからで…」
「頬を赤らめて否定しても説得力はありませんわよ」
「可愛いですリオさん! もっと顔を真っ赤にしましょう!
その表情でアルル、結婚しよう、とか言ってくれれば私は!」
「黙れっての!」
「ごふぁ! ふふ、強烈ですね」
「少しくらい反省した方が良いと思いますわよ、アルルさん」
「反省することなど無いので問題ありません!」
「大ありだっての! 反省しろ! 縛るぞ!」
「よろしくお願いします!」
「マジファッキュー!」
もうやだこいつ、どうしようも無いと言うか、手の打ち用が無い。
「ま、まぁ、私も別に気にはしてないよ、うん」
「私もです…」
「私も問題ありません!」
「ねーねー、結局転生したって言うの、何か駄目な所があるの?」
「あまり関係ないと思うから気にしないで良いと思う」
「私も大丈夫」
「私も大丈夫だよ、お姉ちゃん! でも、お兄ちゃんの方が良いのかな?」
「お姉ちゃんでもお兄ちゃんでも好きに呼んでくれ…後フレイ、抱きつくな
わざわざこんなに近付いて質問するなよ。返答はトラがしてくれただろうが」
「私も大丈夫」
「うん、気にしないよ、何であれ恩人である事に変わりは無いから」
「私も大丈夫、むしろアルルが言った通り私の感情が間違いじゃ無いことが分かった。
私とリオが結婚しても何の問題も無い! 結婚するのは私! アルルじゃ無い!
アルルとリオじゃ年齢が離れすぎてる! 私とリオなら問題無い!」
「リオさんは私の物なのです! いえ、皆の物なのです!」
「俺は誰の物でもねぇよ! 俺は俺だ! 物じゃねぇ!」
「何というか、いらない心配だったようね、誰も何の動揺も無いわ」
「まぁ、付き合いが長いですからね、皆さん。
マーシャさんが少し心配ですけど」
「大丈夫、何だったとしても、私はリオさんとミロルさんに付いていきます!
絶対に付いていきます!」
マーシャはまだ少し盲目状態に感じるな。
あまり憧れを見過ぎていると何処かでつまずきかねない。
だから、こいつはまだ少し恐いところがある。
でもまぁ、ミロルが一緒にいるなら大丈夫か。
「なる程、問題は無さそうですわね」
「盲目的過ぎるがな…」
「しかし、リオさんの中身が男と言う事は
やはり私達は一緒にお風呂等には入らない方が良いのでしょうか」
「あぁ、その方が」
「駄目です! 皆で温泉に行くこともあります!
その時にリオさんだけ男湯、と言うのは危険すぎるのです!
リオさんが野蛮な男共に襲われて大変な事になったら!」
「何処にこんなガキに欲情する変態がいるんだよ!」
「何を言っているのですかリオさん! 前に襲われそうになったこと忘れましたか!?
そう! 男は野獣! 穴があれば誰でもよいのです!」
「んな訳無いだろ!? 俺は中身男だ! それ位分かる!
道徳感情くらい持ってるよ! 子供に手を出すとかあり得ない!」
「しかし! 世の中にはロリコンもいるのです!
もしかしたら温泉に行って、小さな女の子が来ないかな~
とか、そんな邪なことを考えてる男が居るかも知れません!」
「いねぇよ! 仮にいたとしても、手は出さねぇだろ!」
「しかしリオさん、銭湯はあまりお客さんがいません。
もしも1人だけいる男湯のお客様がロリコンだったらどうするのですか!?
襲われますよ!?」
「んな奴いねぇよ馬鹿か!」
「可能性はあります! なので一緒に女湯に入るためにも!
リオさんは私達と一緒にお風呂に入って、女の人の裸になれるべきです!」
「やだよ! 俺は1人で風呂に入るんだ!」
「駄目ですー!」
「抱きしめるなぁ!」
「これも練習なのです! 女の人になれる!」
「お前みたいなペチャパイが練習台になるかよ!」
「ごふぁぁ!」
や、やっと離してくれた…やっぱり胸の話には弱いらしいな。
はぁ、しかし焦ったな、まさかここまで暴走してくるとは。
しかしだ、そんな変態が温泉に来るわけないし
そもそも温泉は殆ど行かないんだ、いらない心配だろう。
「…しかしですよリオさん、やはり女の人の裸には…慣れるべきです」
「何でだよ」
「だって! リオさんが成長したときはどうするのですか!?
流石に成長しても男湯に行くと言うのは不可能! 無理です!
それに! リオさんの外見は女の子! 成長した自分の体を見て
興奮のあまり動けなくなってしまう可能性もあるのです!」
「ねぇよ! いや、無いとは言い切れないけど…」
「そうでしょ! なので女の人の裸に慣れるためにも!
私達と一緒にお風呂に入るべきなのです!」
「いやそれは!」
「しかし、アルルさんの言葉にも一理ありますわね
リオさんは中身が男でも外見的には女の子。
将来のことを考えれば、女の子に慣れていた方が良いですわ」
「何でシルバーまで!? そもそも男である俺に裸を見られるのは!
お前ら的にもいやだろ!? そうだろ!?」
「私は全然問題ありませんよ! むしろ見てください!」
「黙れ!」
「私は恥ずかしくはありますが、リオさんならば問題はありませんわ
見た目も女の子ですからね、大丈夫ですわ」
「私もだね、流石に男の子に見られるのは恥ずかしいけど
シルバーが言うとおり、リオさんは見た目女の子だから」
「私達が恥ずかしい思いをしてリオさんの将来を護れるなら大丈夫です」
「私も…いや、でもやっぱり恥ずかしい気が…だけど…うーん…」
「忠誠心ぱないわね」
「でもアルル、今更だけど、私達小さい子達が一緒にはいればそれで良いと思う」
「何でですか!?」
「だって、同じに成長するんだから、ゆっくりとならせることが出来る。
いきなり大人の裸を見せるのは間違い…あ、でもアルルなら大丈夫
だって、胸が無いもん」
「げふ! ふ、フランさんまで…しかし、それで一緒に入れるというなら!
小さなおっぱいも悪くありませんね!」
「いや、入らないぞ?」
「私の唯一の特権が!」
「ねーねー、男の子ってどういうこと? リオちゃんは女の子じゃん」
「フレイ、お前話聞いてたか?」
「うん! てんせいしゃ? 何だっけ? よく分からないけど!」
「で、転生する前は男だったの、俺、記憶がそのままだから中身も男なの」
「……どういうこと? リオちゃんは女の子じゃん」
「いや、外見は女でも中身は男って事」
「…女の子じゃ無いの?」
「違ーう! 男なの! 中身は男なの!」
「んー? よく分かんないや」
もう駄目だな、フレイに説明しても理解して貰えないか。
「とにかく女の子に慣れて貰うためにも
リオさんは私達と一緒にお風呂に入るべきなのです!」
「だから!」
「ゆっくり慣らしていった方が良い、だから、私達が一緒に入れば問題無い」
「駄目ですよ! 小さい子しか居ないと言う事は大人のレディに慣れる事が!」
「アルルは胸が無いから大人のレディには見えない」
「ごふぁう!」
「…とりあえず、先の事も考えると一緒にお風呂に入った方が良いと思いますわ」
「なんでシルバーまでその流れなんだよ…」
「慣れると言う事は大事ですわよ、受入れるためにも」
「だから…はぁ、もう何言っても駄目な気がする」
「よく分かってるじゃ無いの、この流れ、絶対誰も引かないわよ」
「ねぇねぇ、一緒にお風呂に入れば良いだけなのに、なんでそんなに喧嘩してるの?」
「だから! もう良いよ…はぁ」
諦めよう…フレイに理解して貰うのもあいつらの提案から逃げるのも
これは絶対に不可能なパターンだ…どうしようもないや。
「まぁ…この話はこれでお終いにしよう…お前らの好きにしてくれれば良い」
「了解ですますはい!」
「…で、話を戻すけど…チーム分け…しようや」
「…ん? あ、そう言えばそうでしたね」
「忘れんなよ」
とりあえずチーム分けの結果、第1チームと第3チームになり
第2、第4、第5チームに分かれた。
ここまでたどり着くのがかなり長かった気がする。




