苦手な物
「は、はぁ、はぁ…も、もう滅茶苦茶な…
リオさん! ちゃんと手を洗ってくださいね!?
手を洗わないで色々と室内を歩かないでくださいね!?」
「んー、今ならちょっとだけ手を繋いでやっても良いぞ? 左手で」
「ひ、左手は…ゴキブリを掴んだ手!? も、勿論洗った後ですよね!?」
「いや、今だ、俺は気まぐれだからすぐに気が変わるぞ?」
へへ、流石にこれは応えるんじゃねぇの?
ゴキブリがかなり苦手みたいだし
そんなゴキブリを掴んだ左手を繋ごうとか出来ないだろ。
「…く、これは試練ですね!」
「いやまぁ」
「と言っても、躊躇いはありませんが!」
「うぉ! 何の躊躇も無く掴んで来やがった!?」
マジで!? かなり動揺していたから無理だと思ったのに!?
「ふふ、リオさん誤算でしたね、フランさんに出来て
私に出来ないと思っていたんですか?
私のリオさんへの愛はフランさんよりも高いのです!
例えゴキブリが口の中に入ってこようとも!
私ならば! リオさんのお胸を揉み揉みしました!」
「気持ち悪いんだよ!」
「ふふふ、これは自分で言ったことですよ?
今更逃げられません」
「ぐぬぬぅう!」
あ、侮ってた。こいつの変態度を侮っていた!
苦手な物程度で怯むほど、こいつはヤワじゃなかたった!
「ただまぁ、こうなってくるとリオさんが苦手な物が気になります」
「人の手に頬ずりしながら何言ってるんだよ」
「ゴキブリは平気、蜘蛛も平気、苦手な物はカボチャだけですか?」
「んー、ムカデは苦手だぞ? 後は蜂だな、あいつら攻撃してくるし」
「ほうほう、危害を加えてくる虫は苦手なんですね…しかしリオさん」
「何だよ、後、いい加減頬ずり止めろよ!」
「まぁまぁ、減る物じゃありませんし」
「減るわ! 俺の精神がすり減るわ!
と言うかちょっとって言っただろ!? もう離せよ!」
「私のちょっとはこんなんじゃありませんし~」
「俺が言ったって事は俺基準のちょっとだ! テメェの基準は知らん!」
「あぁ!」
ふぅ、ようやく手が自由になったぞ。
何かフレイに拘束されたり、アルルに捕まれたりと
正直散々だな。
「うぅ…今度のチャンスを待ちます!」
「もう来ねぇよ」
「はぁ…とりあえずお話しを戻しましょう」
「いや、その前にリオ」
「何だよ」
「手、洗ってきて?」
と、トラが真顔で…うへぇ、こりゃ断れない。
「……分かったよ」
あいつにあんな風に言われたら、流石にどうこう言えないな。
とりあえず俺はトラに言われたとおりに手を洗おうとした。
「もっと丁寧に! 石鹸も使って!」
「いや、そんなに細かく」
「言うとおりにして!」
「分かった! 分かったよ!」
うぅ…トラに監視されながら手を洗うことになるとは…
正直、あれは俺別に正しい判断だっただろ?
あれは掴まなかったら顔に引っ付かれてたし
かといって避けたら後ろにいたフレイが掴むだろから
俺が鷲掴みにするか、フレイが鷲掴みにするかの違いだし。
「はぁ…結局どっちかが掴んでたんだし結果は同じだろうに
むしろ俺が掴んだ方が良かったというのが事実だ」
「そうなのですの?」
「…フレイは捕えた獲物を見せびらかすぞ?」
「な!」
「ネコみたいだよな」
「だって、褒めて貰いたいもん!」
「いつも怒られてるのに、懲りないな」
「フレイさん、そんな事するんですね…」
「で、大体逃げられて相手の顔にゴキブリが引っ付く」
「……」
俺の言葉を聞いたフレイを除く全員は顔を真っ青にした。
多分、自分に見立てて想像したんだろうな。
「多分だけど、今回の場合だとマナが犠牲になってた」
「…り、リオさんが捕まえてくれて助かった…」
「何でいっつも怒られるんだろう…」
「お前が逃がすから…先生もゴキブリ嫌いなんだぞ?
それなのにお前ゴキブリ引っ捕まえて
先生の所にわざわざ持っていって捕まえたーーー! とか
あげく逃がして先生の方にゴキブリが飛んで
顔にピタッとそりゃ怒るだろ」
「先生には怒られないもん! いつもリオちゃんに怒られるもん!」
「先生気絶してただろ!? 毎度毎度! 気絶する度に
その時の記憶がリセットされてたからまだよかった物を!
あれ覚えてたらお前先生にめっちゃ怒られるぞ!?
少なくとも5回!」
「5回!?」
「先生の顔に…5回ゴキブリが引っ付いて…」
「…顔に引っ付くって…絶対気絶します」
「でも、リオさんしか怒らなかったんですか?」
「トラはゴキブリ騒動の度に隠れるし、ウィングも逃げる。
他の奴らはそもそもフレイに対して文句は言わない。
ガキ大将みたいな感じだったからな。
いつも周りを振り回してたし。
「私、そんな事皆にはしないもん!」
よく言うぜ、自分が妙に力があるから周りを引きずり回してたのに。
こいつに悪気とかは全くなかったんだろうが迷惑極まりない。
「でも、リオちゃん以外にそんな事してないのに不思議だね」
「リオはひまわりでは先生の次に慕われてたから。
そのリオをいつも振り回してるフレイにはあまり文句は言えなかったのかも」
「ん? 俺ってそんなに慕われてたっけ?」
「ひまわりでお姉ちゃんと言えばリオだったでしょ?」
「……いやでもさ、俺より年上もいたのに何で俺がお姉ちゃん?」
「性格だと思うよ?」
「いや、俺の性格はお姉ちゃんと言うよりはお兄ちゃんだろ!」
「…リオちゃんは女の子じゃん」
「いや、せ、性格的にはお兄ちゃんの方が近いと」
「リオさんはお兄ちゃんと言うよりは兄貴~とかそう言う感じですよ」
「兄貴って…」
でも何故だろう、かなり甘美な響き! 兄貴って良いよね、格好いいし!
でもまぁ…見た目的に兄貴って感じじゃ無いけど。
「いやいや、やっぱり兄貴は変だ! お兄ちゃんだろ!
と言うか! お兄ちゃんと呼ばれた方が良い!
にーにとかでも良いぞ!」
「にーに? ねーねじゃないの?」
「…にーに」
うぃ、ウィンが早速…でもなんだろう、この異常な罪悪感は…
やっぱり無しだな、やっぱり普通に呼んで貰った方が良いな。
「ウィン、やっぱり普通に呼んでくれ」
「分かったよ、ねーね」
「そっちじゃ無い! 呼び方だ!」
「今まで通り、お姉ちゃんで良いの?
他の呼び方が良いなら、私はいつでも」
「それで良い、今まで通りお姉ちゃんで良い」
「分かった」
ウィンは素直だな…だから何か恐いというか罪悪感に苛まれるというか。
「はぁ、流石リオさんですね…して、リオさん」
「何だよ」
「苦手な物は何ですか?」
「最初の話に戻すのかよ…」
「えぇ、現状、カボチャくらいしか知りませんしね。
他には何かあります?」
「ゴーヤ、熱い物、炭酸、レバー、辛い物、犬、狼、噛む虫、変態馬鹿、怪力馬鹿」
「い、意外と多いんですね」
「その中でカボチャは突出して駄目だ、他は我慢すれば大丈夫だな。
ただ変態馬鹿と怪力馬鹿は我慢しても限界が来ることがあってだな」
「いやぁ、誰のことですかね~」
「怪力って何?」
「…はぁ、特に変態は限界が来る度にぶっ殺そうと思う。
今度は俺が前に食らった場所を狙って攻撃をしよう」
「リオさんが前に食らった場所ってここですよね!? 大事な場所ですよね!?」
「そうだな、今度はそこにウィンチェスターを抉り込む」
「中からですか?」
「外からだ!」
「駄目ですよ! ここは本来下が出入り口なのです!」
「よし分かった! 下からやってやる!
その後に引き金引いて全部ぶち抜いて殺す!」
「やだな! 冗談です! 冗談なのです!?
そのぶっとい狙撃銃は止めてください! 死にますよ!?
引き金を引く前に私が死にますよ!? 裂けますよ!?
中から愛と勇気が吹き出しますよ!?」
「関係ないね! ぶちのめす!」
「いやぁああ!」
「ちょっと待った! 暴走しすぎ!」
「み、ミロルさんのお陰で助かりました…私が真っ二つになるところでした」
「…まぁ、最初からするつもりは無いが、気持ち悪いし」
「酷くないですか!? 超清潔ですよ!? 不純物など一切ありませんよ!?
そもそも私は医療を専攻していたのですから、そこら辺もちゃんと分かってます。
ちゃんと毎日毎日適切に洗い、異臭など一切ありません! 嗅いでみます!?」
「嗅ぐか気持ち悪い!」
「でも、男子的には」
「あいつのだけはノーセンキュー!」
確かに…確かに男的には嬉しい申し出かも知れない!
見た目も可愛らしいし、実際かなり清潔だ。
髪の毛だって毎日手入れされてるし、肌のつやも凄まじい。
肌は健康的な黄金色。スタイルも胸以外は抜群だし
料理の腕も素晴らしい、更には料理の栄養バランスもピカイチ。
掃除もノエ程じゃないが、一般の主婦よりもハイスペック。
性格も一途で多分一生尽くしてくれるタイプ。
確かにだ理想的な女子ではある。
理想的な女子ではあるんだが…変態なんだよ!
「確かにこいつが理想的な女子であるという事は認めよう!
スタイルも胸以外は抜群だし! 顔も良いからな!」
「嬉しいんですけど、胸以外って…いえ、実際胸はありませんけど」
「だが! 変態だ! どんなに素晴らしいビジュアルでも変態なんだよ!
こんな変態女はノーセンキューだ!」
「ごめふぁ!」
「後、俺はDカップ位が好きだし」
「ごふぁ! と、届かない…私ではリオさんの理想に届かない!」
「足下にすら来てないからな」
「くぅ! 何で大きいのが好きなんですか!?
あ! まさか! 母親のお胸が恋しいとかそう言う!」
「違うわボケ!」
「くぅ…しかも、Dと言うと、シルバーさんのサイズ!」
「まぁ、確かにそれ位ですけど」
「でも、シルバーだけ大きい位で、後は全体通して小さいわよね」
シルバーのDカップがこのメンバーの中では最高だからな。
いやぁ、アニメとかには異常な位大きいキャラがいるが
現実の異世界って、案外こんな感じなのか。
「見た感じ、アルルはA、メルトもA…アルルと同じには見えないけど」
「ぐふぁ!」
「で、マナはBカップって所かしら」
「あ、合ってます」
「私も…胸のサイズって見ただけで分かるもんなんだね」
「で、その私が言うわ、アルル、あんた多分Aより小さいわ」
「死刑宣告!」
「多分AAね」
「なぁあ!」
「因みに私はAAAカップ、子供だから当然だけど」
「子供で大きいわけ無いしな」
「…リオはどうなの?」
「あぁ? 知らねぇよサイズなんて」
「興味無いの? 自分の事でしょ?」
「自分の事だから興味無いんだよ」
「…私は興味あるのだけど」
「何でだよ」
「だって、フレイがちょっとあるみたいな事言ってたじゃない?」
「あー?」
「だったら、どれ程の物か気になるのが人の性よ!
いや! 女の性!」
「知るかボケ!」
「さぁ! 測らせなさい!」
「お前なんかキャラが変になってるぞ!?」
「だって、よくあるじゃ無いの! こう言うシチュエーション!」
「と言うか、前は駄目だとか言ってたじゃないか!」
「気になったのよ! 大丈夫! 先端は触らないわ!」
「大丈夫じゃねぇよ! 来るなぁ!」
「でも、美少女アニメとかで女の子同士が風呂場でもみ合うって
何かよくあるじゃ無いの、それと同じのりで」
「ふざっけんなぁ! 来るなぁ!」
「あ! じゃあ、私がまた捕まえるよ!」
「止めろぉぉお!」
しかし、結局逃げ切ることが出来ず、フレイに捕まり
ミロルに揉まれた…結果、俺のカップサイズはAAAだと。
でも、あと少しでAAカップらしい…なんだよその能力。
「これは、絶対にアルルより大きくなるわね!」
「ぐふぁぁあ!」
「本当に揉むか普通!?」
「まぁまぁ、日常の一コマって感じで良いじゃ無いの」
「俺がよくねぇよ!」
「でもほら、何事も経験って言うでしょ?
多分、これからこんな経験するでしょうし」
「するかよ! してたまるか!」
「いや、男相手とかじゃ無くて、女の子相手によ」
「どっちも嫌だっての!」
畜生…何かもう散々だよ…はぁ。




