ネタへ向って全力疾走
…可愛い、ウィング可愛い、可愛い、可愛い。
「あの、お姉ちゃん? どうしたの?」
「…私の妹は可愛い」
「お姉ちゃんも可愛いよ」
「…ふふふ」
あ、鼻血出て来た、私の妹本当に可愛い。
やっぱりここは楽園、そう思う。
リオも可愛い、妹も可愛い、ウィンも可愛い、可愛い子が沢山いる。
でも、やっぱり私の妹が1番可愛い、間違いない。
でも、リオも可愛い…どっちも可愛い、むふふ。
「何だか暴走してますね…」
「予想以上だね、これは」
「可愛い」
「えっと…そ、そんなに抱きしめないでも…」
良い匂いがする…でも、何だか考えてみると、私はお姉ちゃんらしくない。
私は子供達の中では1番お姉さん…なのに皆リオばかり頼る。
分かる、リオは頭も良いし、可愛いし格好いい。
皆が集まるのは分かる、でも、年上の私にも頼って欲しい。
「……」
「お姉ちゃん?」
「ねぇ、ウィング」
「どうしたの?」
「私…お姉ちゃんっぽくない?」
「そんな事無いよ、お姉ちゃんはお姉ちゃん」
「…でも、皆私を頼らない、私が1番年上なのに
皆私じゃ無くてリオにばかり頼る…何とかして頼って欲しい」
「し、仕方ないんじゃないかな、リオちゃんは頭も良いし
格好よくて優しいし、凄く頼りになるもん。皆リオちゃんに頼るのは仕方ないよ」
「でも、私は1番年上…頼って貰いたい」
「…えっとさ、怒らないで聞いて欲しいんだけど」
「何?」
「フランは周りをいつも追いかけ回してるから、皆が近寄り難いんじゃないかな?」
「……」
そ、そうなんだろうか、追いかけ回されるのっていやなの?
「後は服装がね、暗いし何処か近寄りがたいんだと思うよ」
「暗い?」
「真っ黒ですからね」
「…イヤリングとか駄目?」
「耳飾りは良いと思いますけど…何か不良っぽいね」
「穴は開いてない」
私が付けているイヤリングはあまり派手じゃ無いと思ってた。
それともミサンガだろうか、でも、ミサンガにはお願いをしてる。
ウィングが私を姉として好きになって欲しいという願いと
リオが私の物になりますようにって願い…外したら叶わない。
それともネックレス? パールだし明るいと思うけど。
「……何が駄目? ネックレス? ミサンガ?」
「どっちもそれっぽく無いとは思いますけど…やっぱり全体ですね。
だって、上下共に真っ黒ですし」
「…そこが変?」
「まぁ、近寄りがたいですね」
…服装が駄目なんだろうか、でも、黒と白以外は殆ど来たことが無い。
リオ達に出会う前も黒色が好きで良く着てたけど
黒以外は着てなかった、今は白も着てたり軍服の緑も着てた。
だけど、それ以外は着たことが無い。
そこがおかしいんだろうか、好きな色を着ているけど…
でも、考えてみれば私もリオに好きな服以外を着せてる。
やっぱり周りが好きな服装を着た方が良いのかも知れない。
「……ねぇ、ウィング」
「何?」
「私に似合いそうな服…選んで」
「お姉ちゃんに?」
「うん」
ウィングになら任せることが出来る。
それに、ウィングが気に入ってくれる服装なら何でも良い。
「えっと…ちょっと待ってね」
ウィングはすぐに自分の部屋に移動した。
もしかして、自分の服を貸してくれるのかも知れない。
「……」
「帰ってきませんね」
「迷ってるのかも知れない」
「…お姉ちゃん、お待たせ」
しばらく待っていると、ウィングが可愛らしい服を持って走ってきた。
「それは?」
「私の部屋には似合いそうな服が無かったから、リオの服を借りてきた」
「え!? リオさんの部屋にそんな可愛い服が!?」
「意外だね…」
「…見た目は寝間着っぽいけど、フードがある」
「うん、後、怒らないで欲しいんだけど。
実はこれ、お姉ちゃんに似合いそうとかそう言うのじゃ無くて
着てみて欲しいから持ってきた感じで…だから、似合わないかもだけど」
「あなたが着てみて欲しいというなら着る!」
「ほ、本当!? ありがとう!」
……凄くピンクだ、可愛いのは可愛いけど、私に似合うとは思えない。
でも、ウィングが着て欲しいって言うなら私は喜んで着よう。
「…似合う?」
「うん! 可愛いよお姉ちゃん!」
「雰囲気が大分変わったね、今までよりも近寄りやすい気がするよ」
「そうですね」
「…恥ずかしい」
恥ずかしいからフードを被って顔を隠した。
「耳も生えてるんですね、この服」
「え?」
「アルルだね、間違いない、当然と言えば当然だけど。
リオさんがこんな服を持ってるとは思えないし」
「…この服を着ている…リオ」
……この服を着て首輪を着けてるリオが出て来た、可愛い!
でも、何だか背徳感が凄い…は! ナナ見たいな表情を!
涎が可愛い! 可愛い! 可愛い! だ、駄目、落ち着いて私!
こんな事を考えたら駄目、涎出てくる…むしろ私が犬っぽくなってしまう!
この格好を今しているのは私、涎は不味い!
「お姉ちゃん?」
「な、何でも無い…」
こ、堪えることが出来た、何とかお姉ちゃんとしての威厳は保てた。
危ない危ない…ははは、冷静になれば何とかなる。
「…よし、皆に見せてくる」
「そうだね、でも、ミロル達は外出したって聞いたよ」
「…なら、リオに見せてくる」
「リオちゃん…起きてるのかな?」
「行ってみたら分かると思いますよ」
「ん、見せに行く」
リオが寝ている病室はここかな、大丈夫だと良いけど。
「見舞いに来た」
「んぁ…あぁ悪いな…って、なんだよお前その格好」
「似合う?」
「イメチェンしすぎだろ、冒険するにしてもそれは流石に」
「私は似合っていると思いますわ」
「あ、シルバー」
「可愛いね! その服!」
「ありがとう…」
「似合ってると思います」
「…似合ってるか? 目立ちすぎというか、イメチェンしすぎというか
と言うか、良くそんな服を持ってたな、予想外だ」
「…リオの部屋にあったって」
「何で俺の部屋にそんな服があるんだよ!? と言うか、何で俺の部屋に入った!」
「ご、ごめん…」
「は? 何でウィングが謝るんだよ」
「この服、ウィングが見付けてきたの」
「…そ、そうなのか? す、すまないな
えっと…怒ってないから泣きそうな顔をするなよ」
「ごめん」
ウィングには優しい、うん、ウィングは可愛いから仕方ない。
いや、考えてみれば私とフレイとアルル以外には優しい気がする。
フレイには怒ることはあるけど、優しくないわけじゃ無いし
キツく当ってるの、私とアルルの2人だけじゃ?
「…リオ」
「んだよ」
「何だか私とアルルには厳しい、何で?」
「言わなきゃ分からないか?」
「……あ、追いかけ回してるから」
「そうだよ、変態共」
「私はアルルほど酷くない」
「同列だろ」
…そこまで酷いのかな? そんな自覚は全くないけど
もしかして、追われるの嫌い? でも、考えてみれば私は追われた事無いから
分からないだけかもしれない。
「…それでも私はリオを追いかけ回す!」
「だからいやなんだよ! お前は!」
「ぶれませんわね」
やっぱりリオと話をするのは楽しい気がする。
不思議な感じだ。
でも、リオが大丈夫そうで安心した。
「あー…昨日は酷い目に遭ったわ」
「俺もだ」
「私は楽しかった」
メンバー分けで各々特別な体験をしたようだった。
俺の場合は特別な体験じゃ無く、いつも通りの体験だがな。
だが、周りの話を聞くのは割と楽しかった。
「しかしまぁ、ミロルが激辛ラーメン食って
昇天しそうになった話は面白かったぜ」
「人の災難を笑い話にしないで」
「笑うだろ、あんなの」
話を思い出しただけで頬が緩み、笑みがこぼれるくらいに面白い話だ。
そんな馬鹿みたいな話しが実際あるとは思わなかった。
メイド喫茶ってのも面白いもんだな、ネタに全力疾走とか。
「冥土ラーメンとかメイドが冥土に送ってやるとか、思い出すだけで笑いが」
「笑うな! 散々だったのよ!? あんたも食べれば分かるわ! 冥土ラーメン!」
「ぷぷ、メイドさんに食べさせて貰わないとなぁ」
「……良いでしょう、食べさせてあげます」
「んぁ?」
扉の方を向いてみると、そこにはメイルが立っている。
えっと、手元にあるのは何だ? 何か色合いがヤバいんだけど。
真っ赤なんだけど、いや、そもそも何でこいつがここにいる。
「め、メイル…何でそこに…手元にあるのは一体…」
「冥土ラーメンです、特性ですよ」
「それは良い! 何でそんな物を用意してるんだ!?」
「昨日のお話を聞きましてね、それならと用意したまでです」
「待て! 妙に準備が良くないか!?」
「特性ですよ?」
「余計いやだっての! 食わないからな! 俺は辛いの苦手なんだよ!」
「くく、グッジョブよメイドさん、あいつを冥土に送って!」
「了解です」
「食わねぇぞ!」
「逃がさないわよ! 散々馬鹿にして! あなたも経験しなさい!」
「激辛ラーメンとか誰が食うか!」
「そもそも、こう言うのはあなたのキャラでしょ!?」
「いつから俺がリアクション芸人になったよ!」
「問答無用! 逃がすかぁ!」
ミロルが指を鳴らすと、手元に大きめの銃が出て来た。
何する気だ!? そんなの食らったら本当の意味で冥土行きだぞ!
「ちょ! おま!」
「そら!」
「網!? うわぁ!」
なん! あの銃の中身網なのか!? ネット銃って奴!?
こいつの魔法何でもありだな!
「こ、こいつ!」
「ふふ、逃げられないでしょ」
「では、メイドが冥土に送ってあげます」
「いや待て! 無理! 食えない死ぬ!」
「さぁ、お口を開けなさい」
誰が開けるか! 何か匂いだけでも痛いんだけど!?
口なんて開けたらヤバい! 大変な事になる! 死ぬ! マジで死ぬ!
「あら、お口を開けませんね」
誰が開けるか誰が! 俺は死にたくないんだっての!
「…だったら、これでどうかしら?」
ミロルの奴、今度は何をする気だ? 道具も何も出してないが。
「ふふふ、こんな話を知ってる? 女の子って男の子よりも敏感なのよ」
何がだよ…あ、あっち系の話し? それは聞いたことがある気がする。
でも、それが今、このタイミングで何の意味が。
「私の考えだけど、女の子ってくすぐりにめっぽう弱いの
例えあなたが前、くすぐりに強かったとしても、今はどうかしらね?」
「……!」
あ、ヤバい奴だこれ…不味い! 不味いぞ! どうするこれ!
逃げる事は困難だし、抵抗するのも難しい!
くすぐり攻撃って苦手だし、弱いんだよ!
「んー! んー!」
「体をくねらせて逃げようとしても無駄よ! あなたは網の中なんだから!」
不味い逃げられない! 色んな意味で不味い!
「さぁ、捕まえたわよ、足の裏をくすぐってやるわ!」
「むぐぐぅうう!」
うわぁああ! ヤバい! くすぐったい! 凄くくすぐったい!
でも、あ、足先なら抵抗できるし!
「ちぃ! ジタバタと!」
「むふふ、何だか楽しそうですねぇ」
アルル! こいつまで参戦してきやがった!
「ならば私は腋をコチョコチョします」
「むぐぅうあううぅう!」
無理無理無理! くすぐったい! 死ぬほどくすぐったい!
無理だって! 何かスゲーくすぐったい!
くすぐり攻撃とか男の時は受けたこと無いけども!
くすぐったい! 無理無理! ま、不味い不味い不味い!
「ぐぐ、ぐぐぅうぅう!」
「コチョコチョしてるの? じゃあ私は横腹をコチョコチョする!」
フレイまで来た! 待って! それどころじゃない! 遊びじゃないこれ!
俺の命が掛かってるんだけど!? 待って、足の上に座らないでくれ!
これじゃあ、足をジタバタさせてミロルの攻撃を回避出来ねぇ!
「チャンスね! 抵抗できないわ!」
「むぐあううあうぅうぅ!」
「あはは! 我慢してる!」
「ま、く、あ、あは、あひゃひゃ! マジま! あははは!」
「はい」
「むがぁあああ!」
辛い辛い辛い! 辛い! 火が出る口から火が出る辛い!
「水、あはは! 待っ、あは、から! うがぁあああ!」
「あはは! リオちゃん面白い!」
「むふふ、もっと行きますよ!」
「うがぁああああああぁああぁあ! 辛いあは! もう、あひゃぁああ!!」
「か、辛さとくすぐりのダブル攻撃…こりゃ、私の時の何百倍もキツいわね」
「お、お姉ちゃん! 水! 水を持ってきた!」
「みじゅうぅう!」
「はい、今、あ、暴れない、あ」
「にゃぁああ! 冷てぇ!! あは、から、うみゃぁあああ!」
「……えっと、何か本気でごめんなさい」
「私も何だか後悔してきました、ここまで散々なことになるとは」
「あはは! リオちゃん面白ーい!」
「うふふ~、あぁ、天国です」
「お姉ちゃん! 待ってて、今すぐ次を持ってくるから!」
「も、もうだ、だ、あはぁあああああ!」
この地獄から解放されたのは、それから30分経った後だった。
水は3回ぶっかけられたし、くすぐりの手が一切休まることも無かった。
辛みが収まることも無いし…地獄だった。
「う…あぅ…」
「り、リオさんが痙攣してます」
「いや、そりゃ30分もくすぐられてたらこうなるわよ」
「3回も水を掛けられてましたしね」
「しかも30分間横腹と腋をくすぐられて…そりゃこうもなるわ」
「か…かりゃい…みじゅぅ…」
「あ、まだ辛いの残ってたんですね」
「水を飲めてないしね、しかし弱々しいわ」
「はぁ、だ、だりぇのせいだと…いいかりゃ、みじゅ…くりぇ…しにゅぅぅ…」
「ご、ごめんね、お姉ちゃん、はい」
「うぁ…あ、にゃぅあ!」
「またこぼしたわね」
「痙攣してますからね、水を貰ってもこぼすでしょう」
「うぅ…み、みじゅぅ」
「大丈夫ですよ、予備は用意してます、はい、口を開けてください」
「あー」
「リオさんが素直に私に従った! こ、これは!」
「いいかりゃ、みじゅぅ…」
「あ、はい、そうですね」
あ、あぁ、よ、ようやく水が…ぅ、辛さが少し引いた。
「あ、ありがとう…うへぇ…」
「ふふ、私の中にリオさんをもっといじめたいという衝動が!」
「お前…殺すぞ」
「うふふ~、そんな呆けた表情で言われても~、恐くもなんともないのです~」
「こ、このぉ…」
「あはは! かなり弱々しいですねぇ、うふふ~、しかもこの体勢ですよ~?
リオさんを押し倒してコチョコチョすることくらい余裕です~」
「ぐぬぅ…」
「あはは、魔法も使えないみたいですねぇ~、これは襲い放題!」
「や、止めろぉ…」
「うへへうへへ、あ、涎が、うへへへ」
「止めなさい」
「あだ!」
あ、み、ミロルが止めてくれた、た、助かった。
「いや、本当リオは散々ね…何かごめんなさい」
「まぁ、良いけど…うぅ、また口が辛くなってきた」
「あたた、今更ですけどリオさん」
「何だよ」
「水で濡れたからか透けて見えてます」
「ん-?」
「と言うか、今気付い、ぶふぁ!」
目の前のアルルが鼻血を噴き出し、地面にぶっ倒れた。
……着替えてこよう、もう…散々だ。




