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幼女に転生した腹いせに狙撃チートで戦場を荒らしてやる!  作者: オリオン
第3部、第2章、勝利後はのんびりと
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勝利宣言

「……リオ様、さっきから固まって、どうしたんですか?

 こんな粗大ゴミを見て黄昏れてたりしてます?」

「んな訳無いだろ、ただの道具が壊れたところで感情的にゃならねぇよ」


俺が考えていたことは1つ、アルトール国のガキ共の事だ。

これだけの人形を操るって事は1人だけでは無いのは明白だ。

攻撃を受け、動揺していたのも複数人がいたって証拠。

他にも人形達の動きも殆ど統一性が無かったしな。

最初から推測していたが、やはり複数人だと言う事は確定。

それだけの魔法使いをどうやって集めた?

この規模の魔法を操れる魔法使い。

憑依系の魔法なんて、ミストラル王国で戦ってたときは1人もいなかった。

似ている魔法はあった、トラの魔法の様な浮遊系魔法。

だが、この憑依系は浮遊系魔法よりも精密で扱い難いだろう。

それ程の魔法を操れるって事は、S~SSレベルの魔法使いか。

適性レベルS以上は相当レアなんじゃないか? それを複数集めるなんて。

しかもだ、適性レベルS以上は長生きできない、これだけ集めるのは困難じゃないか?

いや、案外2、3人で回しているのかも知れない。

でも、そんな少数であれほどの人形をあそこまで器用に動かせるか?

メルの魔道兵もそんなに複数体を操ってはいなかったしな。

1体1体を自身で召喚出来て、1体1体の戦闘能力が高かったからかも知れないが。

だが、精密性で言えばきっとこの人形達の方が上だろうし…はぁ、分からん。


「…どうやってるんだろうな」


仕方ない、仮に複数体の魔法使いが存在していると仮定して考えてみるか。

その場合、どうやってそこまで集めたんだろうな、同じ系統の魔法使いを。

複数体を精密に操れる憑依系魔法、少なくとも適性S以上は必要だと考える。

適性S以上が生まれる事は結構レアなんじゃ無いかと思うが

まぁ、俺達の周りにも結構いるから何とも言えないけどな。

だが、そんな俺達の中に同じ系統の魔法でS以上の魔法使いはいない。

精々、俺とミロルが似た系統と言うだけで、他は殆ど同系統ではない。


「……」

「ハッキリ言いますが、あなたみたいな小さな脳みそしかないお子様が

 色々と悩んでも何も出てこないでしょう?」

「お前、意味も無いのに煽るよな」

「煽ると言う行動に意味があると?」

「意味がある煽りは精神攻撃に繋がるぞ、相手の怒りを買って

 自分に執着させて殺すと言う手も取れる」

「まぁ、その様な物もあるのかも知れませんが、日常生活ではありません」

「ま、日常生活で相手を怒らせても意味ないし…じゃあ、なんで煽った」

「イラつく相手をからかって遊ぶためです」

「は、くだらねぇ理由だな」

「遊びに大義名分など必要ありません」

「それは否定しないが、人で遊ぶな」


全く、ま、実際今の状況で考えたところで結論は出ないからな。

あくまで推測しか出来ない。

その推測が正しいと判定する方法も無いからな。

と言っても、仮定の1つくらいは用意していた方が良いだろう。

…出来れば考えたくない可能性だが

敵国は狙い通りの魔法使いを作り出す手段を知っている。


「また暗い顔になりましたね、あなたみたいな子供にそんな表情は似合いませんよ

 馬鹿みたいに騒ぐ能天気があなたみたいな子供には丁度良いでしょう?」

「そんな子供、俺の知り合いには1人しかいねぇよ」


…まぁ、良いか、深刻に考えても馬鹿らしい。

攻略法は必ずある、同じ魔法を量産しているというなら

その魔法の弱点を見つけ出せば後にも通用するだろうからな。


「あんたら、人にさっさと行け、みたいなことを言っておきながら

 自分達は来ないって、どう言う事よ」

「スティール様!?」

「いや、俺達が行っても意味なくね?」

「テレビに出ろとは言わないわ、でも、せめて付いてきなさいよ」

「承知いたしました、ただいますぐに」

「じゃ、俺はこのまま」

「あんたも来なさいよ!」

「いや、面倒で、うぉ!」


スティールの指示を聞いたのか、メイルが俺を抱き上げた。


「こら! 離せ!」

「駄目です」

「こんのぉ!」


こう持ち上げられると抵抗しても抜け出すのは困難だ。

足が地面に付いてないから力も入りにくいし…

そもそも、こいつの怪力に対してそう簡単に抜け出せるわけがない。

いやぁ、アルルとかにもしょっちゅう抱き上げられたりするが…

うん、やっぱり子供の力だと抜け出すことは困難だよな…

フレイなら肘打ち叩き込めば抜け出せそうだが。

いや、抜け出すというか一撃で気絶させるだろうな、うん。


「だぁ! 離しやがれ!」

「無駄な抵抗は止めた方が良いですよ?」

「こ、この!」


うぅ、そ、そろそろしんどくなってきた、さ、流石に30分暴れるとしんどい。


「はぁ、はぁ」

「ようやく静まりましたか」

「何というか、どっちも体力化け物よね…30分も休まず暴れることが出来るとか

 で、メイルは30分間ずっと抱き上げてたし…表情1つ変えずに」

「こいつの…体力は…どうなってる…」

「私としては全身運動をあそこまで連続で出来るあなたの方が異常に感じますね」

「それを押さえてた奴が…何言ってんだ…」

「とりあえず付いたわ」

「クッソ…め、面倒くさい…」

「30分間暴れるのは面倒じゃないのに、付いてくるのが面倒って…」

「俺、人混み嫌いなんだよ…とびっきりのインドア派だぞ、この野郎」

「インドア派の体力じゃないでしょ」

「……あーっと」


…確かに子供の姿になってる今の方が高校生時代と比べると体力がある気がする。

いや、まぁ、うん、理由は分かる、理由は分かるんだ。

例え家にいてもフレイが俺を引きずり回すし。

アルルの変態行動に対して強烈な一撃を叩き込んだり。

フランとアルルから全力で逃げ回ってみたり。

部屋でのんびりしてるとあいつらが入ってきて無理矢理外に連れ出されて

強制的に遊びに付き合わされる…そりゃ、体力も付く。

元々、この姿の俺って病弱だった気がするんだけどな…

ひまわりにいた時は結構体調崩してたのにな。

1ヶ月に1度は体調不良だったし。


「…俺、元々はかなり病弱だったんだけどな、良く顔色が悪いって言われてたのに」

「全然信じられないわ、今のあなた、異常なくらい元気そうだし」

「……」


理由…は、多分…認めたくないが、あのアホのお陰だろう。

でだ、多分今頃くしゃみしてるぞ、俺の予想は良く当るんだ。

まぁ、当ったかどうかを判断する方法なんて無いけどな。




「くしゅん! は! きっとリオさんが私の噂を!」

「多分勘違いよ…てか、リオは大丈夫かしら、あれから連絡無いけど…

 死んで無いわよね、あいつ…あいつ、何度も死にかけてるし…

 いや、あいつが死にかける様な理由を作ったのは…私なんだけど…」

「リオさんは何度も死にかけてますよ、フランさんと戦った時だって

 何回死に掛けたことか」

「じゃあ、こ、今回も…最悪、もう死んでたり!」

「大丈夫だと思いますよ、私の予想では、ふふ、私の予想は良く当るんですよ?

 まぁ、リオさんの事限定ですけどね」

「信用出来ると?」

「信用するしないはミロルさん次第です

 と言うか、激しく心配してるのはミロルさんとノエ位ですよ」

「……何であんたら、そんなに余裕なのよ」

「リオちゃんなら大丈夫だって!」

「何でこんなに冷静なのか…」






「くちゅん! あー、風邪引いたか?」

「…何か、可愛いくしゃみね」

「詰っただけだ!」

「いやまぁ、別に良いんだけど、まぁ、あなたみたいな見た目なら

 そのくしゃみの方が良いんじゃ無い? 可愛いわよ」

「くしゃみに可愛いも何もあるかよ、くしゃみはくしゃみだ」

「いやでも、あなたみたいな子供がへっくしょいん、なんてくしゃみをしたら

 かなりシュールじゃない? おっさん臭いし」

「お姫様がそんなおっさん臭いくしゃみの真似事をするなよ」

「何よ! 真似くらい良いでしょ!? 実際してないんだから! 

 私のくしゃみはお淑やかなのよ、しゅん、位なのよ!?」

「スティール様、嘘はよろしくないかと」

「黙ってなさい!」

「実際はどんなくしゃみなんだ?」

「ぶえっくしょいん、です」

「メイル! あ、あんた!」

「ぷ、ぷく! へっくしょいんよりもおっさんだ…ぷく」

「ごらぁあ! 笑うな喋るな忘れなさい!」

「因みにお部屋にいる時です、そこ以外だと、しゅん、ですよ」

「へ、部屋にいるときが、い、1番自然なんだし、こ、こいつの自然って

 お、おっさんって事だろ」

「忘れなさい! 頭を壁に埋まるくらいの勢いでぶつけて忘れなさい!」

「それは死ぬだろ!」


ま、まぁ、な、何かスティールの意外な面を知った気がする。


「はは! 笑った笑った! しかしメイル、お前が俺の質問に答えるとは意外だ」

「私もスティール様をからかうのは好きです」

「忠臣なのに?」

「ぐぬぅ…め、メイルは、私にとっては忠実な部下であり大事な友人なのよ

 これでもお互い小さい頃からの仲でね。

 その頃は私も小さいお姫様、メイルはメイドの娘で、小さい頃からメイドしてたの」

「最初はスティール様は仕えるべき方で、友人になろうとは考えていませんでしたが」

「私、小さい頃って結構寂しがり屋でね、周りに同い年位の女の子も居なかったの

 だから寂しくて、同い年くらいの女の子なら誰でも良いから話をしたかったのよ

 そして、身近にいた同い年の女の子はメイルだけだった」

「まだ覚えてますよ、スティール様が私に初めて話し掛けてくれた言葉

 確か、そこのメイド、私とお話しする権利をあげるわ! でしたね」

「く! そ、その頃は若かったのよ!」

「今はおばさんか?」

「はぁ!? 何言ってんのよ! まだまだぴっちぴちの16歳よ!」

「正確には17歳です」

「気持ち的には16なのよ! 1ヶ月しか経ってないし!」

「年齢とかどうでも良いのに、変な所で意地を張るな」

「あんたも女の子なんだから、年齢は気になるでしょ!?」

「いや、全然」

「ま、まぁ、まだ…3歳くらいだし、そんな物なのかしら」

「俺は9歳だ」

「…あえ? ま、魔法の影響で3歳で成長止まってたりするの?」

「5歳で止まってる」

「……嘘でしょ」

「嘘じゃない、5歳だ」

「…5歳の身長じゃないわよ」

「気にしてるんだからそこは言うなよ!」

「背が低い分には…女の子的には問題無いんじゃ…ほら、小さい方が可愛いって聞くし」

「気にしてるんだよ! 俺は!」


せめて…せめてウィンよりは身長が欲しかった!


「うぅ…この身長、妹にも負けてるんだぞ?」

「嘘! 妹に負けてるの!?」

「仕方ないだろ! あいつも俺も5歳で成長が止まってるんだから!」

「……その、えっと…ドンマイ」

「ざまぁありませんね」

「チビで悪かったな畜生め!」

「悪くないわよ、うん、でも、不思議な物ね、妹よりも背が低いって

 妹は早く寝てたのにあなたは寝るのが遅かったとか?」

「知らね」

「え? 妹の方が沢山外で遊んでたとか?」

「知らない」

「…い、妹の方が沢山食べてたとか?」

「知らない、全く知らない」

「な、何で自分の妹の事を知らないのよ、姉として失格じゃない?

 大事な妹に興味を持たないなんて」

「……知らないんだよ、俺はあいつの事を、あいつも俺の事をよく知らないし」

「何で? 仲が悪かったとか?」

「どうかな、仲は良い方だと思うぞ? 結構抱きついてきたりするし」

「じゃあ、何で…」

「……俺、捨て子でね」

「あ…」


……この状況でこんなことを言うのは、ちょっと躊躇ったが。

このままだと何処までも追及されそうだし。


「ご、ごめんなさい、私」

「言っておくけど、俺は落ち込んでもいないし後悔もしていない。

 自分の境遇を可哀想だとは思わないし、むしろ幸せとも感じてる。

 俺がここにいるのは捨てられたからなんだ。

 俺があいつらのために必死になれるのは捨てられたからなんだ。

 俺が帰りたい場所を手に入れたのは、捨てられたからなんだ」

「……」

「奇妙だろ? 帰る場所を失ったはずなのに帰る場所を手に入れてるなんて。

 当然、俺も奇妙だと思うさ、でも、これが現実だ。

 人の縁ってのは奇妙な物だろう?」

「…そうね、こう言うのを運命って言うのかしら」

「違うね、運命は関係ない、良いか? 俺が拾われたのは

 俺を拾ってくれた先生が、捨てられた子供達を助けたいと願って

 必死に行動したから拾って貰えたんだ。

 先生が運命に身を任せて行動したわけじゃない。

 先生は自分の信念に、自分の願いを叶える為に行動したんだ。

 その間に運命は介入しない、行動した結果、俺が拾って貰えたんだ。

 運命なんてのは所詮良いわけだ、全て自分の行動なんだよ

 ま、そんな先生に俺が拾って貰えたのは…偶然だったとしか言えないかな」


ガキの俺に行動をする事は出来ないからな。

全部親に任せて動くことしか出来やしない。

あのクソ親の行動が正しいとも思えないからな。

だから、俺が拾って貰えたのは偶然、としか言えない。


「長くなったな、つまりだ、俺は捨てられた事を悲しんでたりはしないんだ。

 だから、お前は謝らなくても良い。

 無駄に優しいお前の事だ、俺の傷口を抉ったと勘違いしてるんだろ?

 安心しろ、お前は俺の傷口を抉る所か触れてすらいない」

「…強いのね、本当に子供とは思えないわ」

「子供ってのは案外精神が強いんだ、あいつらは殆どの事を

 前向きに考える事が出来る。子供達に取って過去はどうでも良いのかもな。

 大事なのは多分、今、どれだけ楽しいか、それだけなんだろう。

 大人にはなりたくないもんだ、人は大人になる程後悔する生き物になるんだから

 それも、何の糧にもならない後悔ばかり、くだらない」

「ふ、子供のあなたが大人を語るんですか?」

「…確かにな、子供の小さな脳みそで大人の複雑な事情は分からないか」

「それでも、今の言葉、私の胸を抉ったわ」

「後悔したくないなら後悔しないように最善の手を取れば良いだけですよ

 それで駄目なら、別の手を考えれば良いだけのことです。

 ま、命を賭けて戦う私達には関係の無い話ですけどね。

 戦場における私達の行動理念は1つ、生き残る事なんですから」

「殺した奴の事を考えたりは?」

「しません、するわけが無いじゃないですか。

 私にとって、敵を屠る事は食事をする事と大差ないのですから」


何か、こいつが言うと恐いな。


「ま、こんな暗い話は後にしましょうか、今は勝利宣言ですね」

「…そうね、私は私がやるべき事をするわ。

 国民達の幸せを守ることが、私のやるべき事なんだから」


スティールによる勝利宣言がファストゲージ中に響いたとき。

街は歓喜の渦にのまれ、影が差していた人々の心に光りを灯した。

蝋燭の火と同じ程に弱々しく頼りない勝利だが

その火は暗闇でくすぶってた民達には十分過ぎる程に明るい光だった。

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