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嫌な現実

「…何であなたはここに残ったの?」

「お前が指名したからだろうが」


城に戻る道中、スティールは俺に対し、そんな疑問を投げかけた。

俺としては、こいつが指名してきたから残っただけなんだがな。


「あなたなら無理矢理押し通すことも出来た筈よ」

「そんな事したら、お互いの関係悪化に繋がるだろう?」

「もう、この国とあなたの国は対等じゃ無い、ミストラス王国は

 ファストゲージ国を吸収するんでしょ?」

「どうだかな、俺としては同盟の方向が良いとは思うな」

「何!」


俺の一言に対し、スティールは驚愕の声を上げ

すぐにこちらに振り向いてきた。

この行動に掛かった時間は1秒も無いかもな。

それだけこの発言はスティールにとっては衝撃的だったと言う事だろう。


「ど、どういうことよ! 何を言って!」

「さっきも言ったが、この国の民は恐らくお前らくらいにしか従わない

 それなら制圧しても面倒なだけ、だから、同盟という選択だ。

 まぁ、この選択が取られなかったとしても

 この国の指揮はお前に任せることになるだろうな」

「何でよ」

「お前以外には従わないだろうからな。

 同盟という選択以外を取った場合、お前にこの国の指揮を任せる。

 お前は上の指示を聞き、行動を遂行する、多少の融通も利くだろう。

 もしかしたら、ミストラル王国の大陸進出時に指揮を執って貰う事になるかもな」

「信用出来ないわ」

「信用しないでくれて結構、どうせただの予想と想像だ

 まぁ、そんな可能性があると言う事を頭に入れてくれれば良い」


この国民達をこいつ以外が統率するのは難しいだろう。

愛されている国家、そんな国家を別の国が統一なんて出来ないだろう。

出来るとしても、どう考えても圧政になる、そうなりゃ反乱は避けられないし

ここで反乱が発生したら、国全体の不安を募らせるからな。


「…本当に、あなたの言い回しはとてもじゃないけど子供とは思えないわ

 一体、何年間子供の姿なの?」

「さぁ、覚えてないな、でも、確か8歳? いや、9歳か?

 マジで良く覚えちゃいないな」

「は? それでも殆ど子供の年齢…でも、私にはそうとは思えない」

「と言うかだ、何年間子供の姿って…どういうことだ?」

「あぁ、魔法の事ね、私達はそこら辺調べてるからよく分かってるわ」

「教えてくれよ」

「……そうね、この戦争が終わったときに教えてあげる。

 と、まぁ、交渉材料にしたいところだけど、あなたには言っても問題無いか

 ここは私達の領土、あなたに伝えようと伝えまいと

 向こうにその事は伝わらない。向こうに事実が伝わるときは

 向こうがこちらの望む行動を取ったときなんだから」


確かにその通りだろう、俺が知り得た情報を

ミストラル王国に持ち帰るには、ファストゲージ国が望む行動を

ミストラル王国が取らないと意味が無いんだから。

もし取らなかったら、俺はここで殺されるだろうしな。

正直、1人でも生き残れそうな気はするがな。


「…でも、考えてみればあなた1人で私達くらい潰せそうよね」

「どうかな、試してみるか?」

「冗談はよしてよ、あなたが知りたい情報は開示するわ

 と言っても、そこまで詳しい事は知らないのだけどね」

「構わない、教えてくれ」

「えぇ、魔法使い、子供が生まれながら持ち得る力。

 でも、ね、考えてみなさい、魔法使いが生まれるのに

 何で魔法を使える大人がいないのかを」


確かにその通りだよな、魔法を使える子供がいるのに

魔法を使える大人には会ったことがない。

ミストラル王国にいたときは魔法を使える子供は

すぐに最前線に送られるから早死にすると考えていたが。

他国を制圧した後も、魔法を使える大人には遭遇していない。


「その理由は簡単よ、魔法使いは年月と共に魔法が使えなくなるから。

 そうね、私達が知ってる限りでは、殆どは10歳を迎えると使えなくなる」

「そうなのか…じゃあ、俺が仮に9歳とすれば、俺が魔法を使えるのはあと1年」


…ん? ちょっと待て、この違和感は何だ、俺は何でこんな違和感を覚えている?

10歳で魔法が使えなくなる、その事の何処に違和感を覚えている。

それが事実だと受入れれば、それで良いはずなのに。

何故かこの事実を受入れる事が出来ない……考えろ、この違和感の正体を。


「……そうか、分かった!」


この違和感の正体、それはフランだ! 確かあいつはもうすでに10歳は越えている!

それでも、あいつは普通に魔法を使う!


「あいつは…フランは10歳でも魔法を使える…それはどういうことだ!?」

「10歳でも…まさか、あぁ、でも、あり得るのかしら…」

「何だよ、何かあるのか!?」

「……そうね、あなた達には少々キツい真実だけど、聞く?」

「…聞いてやるよ、言え!」

「そう…分かったわ、教えてあげる、魔法使いのもうひとつの性質。

 実はね、10歳を越えると魔力が無くなるから魔法が使えなくなる

 と言う訳じゃ無いわ、魔法が使えなくなる理由は魔力を制限するから」

「は?」

「こっちでは魔法は魔力の暴走だと考えられていてね。

 まぁ、殆どアルトール国の研究結果から知った情報なんだけどね」

「アルトール国は魔法に詳しいのか」

「えぇ、この国は魔法研究をかなりしていてね

 だから、魔法使いを見付けると拘束、研究って感じらしいわ

 私達は人体実験とか趣味じゃ無いし、危険すぎるからやってないから

 魔法についてはあまり研究が進んでいないの」

「そうなのか…でも、なんでお前らはアルトール国の研究成果を知っている?」

「過去は同盟してて、色々と情報交換しててね、でも、ある時にね。

 アルトール国は私達に攻撃を仕掛けてきたのよ、技術力は私達の方が勝ってたけど

 魔法に関しては圧倒的に無知だった。

 私の予想だと魔法を研究し続けた結果、私達を倒せる技術を知り得たのだと思うわ。

 現にそれで追い込まれているし」

「そうなのか」


魔法を研究し続けた国家か…なる程、かなり厄介だ。

何を見付けたのか知らねぇが、勘弁して欲しい。


「まぁ、話を続けましょう、魔法についてよね。

 アルトール国から知り得た情報はまぁ、3つ程度。

 1つはさっき言った通り、魔法は魔力の暴走だと言う事。

 1つは高すぎる適性を持つ子供は成長しないと言う事。

 そして…もう1つは…高すぎる適性を持つ子供は…早死にすると言う事」

「な!」

「適性で言えばSクラス以上ね、そういう子は成長をしないわ

 そして、早死にする、SSレベルもSレベルも共通にね」

「……ぐ、具体的には…何歳で死ぬんだ?」

「…聞いた話だと、体の年齢が18歳で死ぬらしいわ」

「18だと!?」


じゃあ…あいつらは残り9年で…どうすれば良い!


「どうすれば良いんだ!?」

「流石に…そこまでは分からないわ

 さっきも言ったけど、全てアルトール国から知った情報」

「じゃあ、アルトール国から聞き出せば良いんだな」

「え、えぇ…それが1番でしょうけど…それは」

「分かった、全力で協力してやる、意地でも情報はつかみ取る」

「さっきまでと雰囲気が違うわね…でも、絶望とは違うわ。

 その表情、まるで何かを決意したような表情」

「……まぁ、俺も長生きはしたいからな」

「その発言、少し違和感があるわ、命を平然と賭けるようなあなたが

 自分の命に対してそこまで執着するとは…ちょっと思えないわ」

「それはお前の勘違いだ、俺は保身的な人間でね。

 流石に約束された死に対しては全力なんだ」

「……やっぱり、違和感があるわ」

「関係ないだろう、とにかく俺にもハッキリとした戦う理由が出来た。

 この戦い、意地でも勝たにゃならない。

 ハッキリ言うぞ、俺はお前らを利用する」

「構わないわ、その利用の先にあるのが勝利なら、私は何も言わない」


必ず突き止めねぇとならねぇ、あの馬鹿共に死んで貰っちゃ困る。

この戦いは必ず勝たないといけない。

時間はまだまだ十分あるが、呆けてたら9年なんぞすぐだ。

必ず…突き止める、あいつらには平穏にのんびり過ごして欲しい。


「だが、行動するにしてもまずは兵力を揃えねぇと駄目か」

「そうね、せめてあなた達の兵が来るまでは動けないわ

 あ、そうだ、あなたは私の親戚という事にしておくから」

「王族の親戚なんてすぐにバレて」

「死んだわ、私達王家の人間以外はね」

「……その、すまない」

「だから、死んだあの人達と協力するのよ。

 死んでしまった英雄達の生き残り。

 きっと国民達は喜ぶわ」

「英雄か」

「えぇ、国の為に命を捨てた王族、英雄よ」


その英雄の生き残りか、やれやれ。


「設定では死ぬ直前に生まれた唯一の生き残り、と言う事にしておくわ」

「そうかい」

「私が集めた士官達にもそう言う設定で動くようにって指示をするわ」

「分かった」


その後、俺はスティールの言った通り、英雄の生き残りと言う事になり

城に住まわして貰えるようになった。

しかし、随分と思い切った行動を取ったな、これは目立つぞ。


「しかしな、目立つ立場にしてくれたもんだ」

「行動がバレないように尽くしているわ」

「諜報員も恐いが、もうひとつ、お前にはデメリットが生じた」

「何よ」

「お前、俺をこんな立場にしたら殺せないだろ」

「殺す気なんて毛頭無いわよ、もしもあなた達の国が裏切ったら

 あなたにも一緒に死んで貰おうと思っていただけなんだから」

「ま、必然的にそうなるよな」

「私があなたを引き留めた理由は人質としてだけじゃ無く

 兵力として引き留めたような物だからね、最悪の場合が来ない事を祈るわ」

「最悪の場合が来ても、1回の襲撃くらいなら潰せるぞ」

「本当に出来そうだから恐いわ、とまぁ、それはさておき

 あなたは一応、王家の人間だと言う設定なんだから

 衣服や立ち振る舞い位は王族に似せて欲しいわね」

「……立ち振る舞いだけで良い?」

「衣服も変えて」

「じゃあ、臨戦時のお前みたいな格好で良いか?」

「良いわけ無いでしょ」

「……じゃあ、俺はずっと引きこもるから」

「あなたにも仕事は手伝って貰わないと駄目なのよ!」

「部屋に書類とかくれれば、それで…」

「駄目よ! 仕事は公の場でしなさい!

 プライベートと仕事は分けるは当然でしょ?」

「……いや、本当マジで勘弁して欲しいんだけど」

「駄目よ、衣服は用意させるから、明日から用意した衣服でお願いね

 あなたのお手伝い役として、メイドも付けてあげるわ

 あ、その子も信用のおけるメイドだから大丈夫よ。

 後、その子にあなたの衣服管理を任せるから、大事にしなさいよね」

「いや待ってくれ! ちょ、ま!」


俺の言葉を無視して、スティールはそのまま部屋から出て行ってしまった…

え? どうしよう、マジでどうしよう、え? ヤバい、これはヤバい!

アルルがいないのがせめてもの救いだとは言え、これは不味い!

待て待て、なんで俺がそんな服を着ないといけない!?

おかしい! 色々とおかしいぞ! 2回目…いや、何度もあった気がするが!

て言うか、何で俺は2回も王族の真似事をしないといけないんだよ!

こっちに来てまだ9年だぞ!? カルピス原液くらい濃いじゃねぇか!

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