勝負を着ける!
正面からの攻撃は防がれる、側面からの攻撃が1番だが
こちらの位置はバレてしまっているこの状況。
だが、向こうは利手を負傷、これは大きいと思うぞ。
と言っても、俺も足とか怪我してたり、割と不味いかも知れないが
今まで、伊達に大怪我はしていない、案外動けるからな。
大した痛みでも無いし、この程度なら問題無く行動が可能だ。
はは、今まで散々な目に遭ってきたが、その甲斐あってって奴だ。
今までの怪我は無駄じゃなかったと思いたい。
「ちぃ…接近戦もあそこまで出来るとは思わなかったわ」
「一応、戦闘は直に何度か見てるからな」
何度も戦場を経験しているからか、案外そう言った技術を覚えている。
見て覚えるという奴だな、と言っても、精度は悪いけどな。
さっきのあれも運良く成功しただけに過ぎない。
「…あぁ、そう、でもまぁ、さっきの攻撃で私にトドメを刺せなかったのは失敗ね」
「あぁ、大失敗だ、だが、手は考えるさ」
俺はすぐに自分の周囲に向って6発の弾丸を放った。
弾丸は6つとも木々に跳弾して、ミロルに向けて進む。
「く!」
背後から弾丸が何かに弾けたような音が響いた。
恐らくだがミロルが盾で俺の弾丸を防いだのだろう。
だが、防がれることくらい分かってた、大事なのはその後。
「あぐ!」
俺がまた狙っていたのは左腕、恐らく着弾したはずだ。
6方向からの弾丸を盾1つで防げるはずがないからな。
かといって、胴体には防弾着、だったら狙うのは腕しかない。
「う、ぐ、ぐぅ…く!」
「うぐぁ!」
んな! 爆発!? RPGをぶっ放しやがったか!
「あだ!」
く、くぅ…爆風に吹っ飛ばされて叩き付けられた…本当厄介な。
「へへ、行くわよ!」
そんな大声が聞こえたと思うと、正面から6回の銃声が響く。
「くぅ!」
しまった、左腕撃ってきたか、仕返しってか。
と言うか、そんな事言ってる場合じゃない!
「本当、無茶苦茶なのはお互い様だよな!」
少しめまいがするが、無理をして移動を開始し
別の木の裏に身を潜めた。
だが、位置はすぐにバレる事だろう。
左腕を撃たれたときの出血が止まってないからな。
その血を辿られたら、俺が何処に隠れたかなんてすぐだ。
「逃げられると思うな!」
「もう食らうかよ!」
RPGの銃声が聞こえると同時に身を乗り出し
1発だけ装弾していた弾丸をセキュリティシックスを放った。
弾丸はRPGの弾頭に着弾、爆発した。
「あり得ないわよね、本当に!」
「なぁ!」
そう呟いた後、3発の銃声、俺はすぐに身を潜めた。
木の周りの地面に弾丸が弾けた音が聞こえた。
「はぁ、はぁ、本当…危ないな」
そろそろ息切れしてきたな、いやまぁ、ここまで動けたんだし悪くないが。
「はぁ、はぁ、本当…訳が分からない程…はぁ、強いわね」
どうやら向こうも息切れしてきているみたいだな。
そんな事を考えながら、俺はリロードを始めた。
向こうはあの時みたいに激しく動けないだろうしな。
「でも…そろそろ決着を着けないとね、お互い限界でしょ?」
背後から枯れ葉を踏みつぶした音が聞こえてきた。
ゆっくりだが歩いてきているという証拠だろう。
どうやら、マジに勝負を着けようとしているみたいだな。
なら、こっちもやるしか無いだろうな。
「そうだな、そろそろ決着を着けるとするか」
とりあえずセキュリティシックスを構え直して
こっちも決着をつける準備を整えた。
「行くわよ!」
そう言った後に木の側面で小さな何かが落ちる音がした。
それが何だったかはすぐに理解できた。
「閃光!?」
俺の目の前が真っ白になる。
閃光を向こうが切ってくるとは思わなかったな。
「ここで、え?」
だが、俺の方も閃光を使い、自身の近くに落としていたため
向こうも閃光を受けたらしい。
「く、くぅ!」
少しずつだが視界も戻ってきた、ひとまずは距離を取らないといけないだろう。
「よし」
ある程度視界が戻ってきた、俺はすぐに移動を始めて、近場の岩陰に身を潜めた。
「この……」
向こうはすぐに俺の位置が分かったようだ。
まぁ、出血もあるし、足跡とかつけないように動いたわけじゃないからな。
本当、あいつの観察能力も凄まじいと思うよ。
「岩の裏ね…だったら」
あ、あれは、グレネードか? ちぃ、やる気だな。
だが、こっちも黙ってやられるわけにはいかないしな。
「これでどう!?」
「こっちもやるよ!」
俺とミロルは同時にグレネードを投擲した。
そして、こっちはセキュリティシックスを構え
ミロルが投げたグレネードに銃弾を当てる。
爆発する可能性はあるそうだが、グレネードって案外爆発しないんだよな。
グレネードに穴が開く程度で、爆発はしない。
作品によっては銃で跳ね返す事もあるからな。
「くぅ!」
ミロルも同じ様にこちらが投げたグレネードを銃弾で弾く。
そんな間にグレネードは爆発、周囲に破片が飛び散る。
「ちぃ!」
俺達2人は同じ様に物陰に隠れることで破片を回避した。
「「そこ!」」
爆発から少し経って、同時に身を乗り出し、お互いを狙った。
その時の弾丸は正面衝突、空中で潰れた。
本当妙なくらいに弾丸同士が激突するな。
ことごとく狙う位置が同じなんだろう。
「「まだまだ!」」
同じく3発同時に弾丸を放った、これでお互いの弾丸は残り1発。
もう、この1発で勝負を着けるしかないだろう。
いちいちリロードする暇は無いだろうからな。
この1発で勝負を決めるしかない!
「「これで!」」
俺は銃を両手で構え直し、確実にミロルの方を狙った。
ミロルの方も同じく、構え直してきた。
向こうも一撃で勝負を決めるつもりらしい。
いつでも銃を召喚できるのに、あくまでコルト・パイソンでトドメをさすつもりか。
だったら、こっちもこれでトドメをさしてやる。
「「終わらせる!」」
同時に銃声が響く、お互いに弾丸は空中で衝突する。
でも、これは狙っていること、ここは跳弾で仕留め
「んな!」
くぅ…弾丸が…当ててきた!? そうか、向こうも跳弾で!
ここで跳弾を使ってくるって言う賭けを!
「あぐ!」
同じく向こうもこちらの弾丸が入った。
入った場所は俺は右足、ミロルは横腹だった。
丁度防弾着の隙間を狙ったつもりだったが…どうだ?
「く…うぅ…」
まさか、まだ動けたりするのか? 向こうはゆっくりと弾丸を込めている。
それを見て、こちらも同じく弾丸を込めた。
ここでウィンチェスターを召喚すれば倒せるかも知れない。
だが、向こうも同じく別の銃を召喚すれば攻撃が出来る。
でも、向こうはそれをしていない、あくまでコルト・パイソンで最後を決めようとしてる。
だったらよ、俺も同じ様にこいつで締めるしかないだろ!
「今度…こそ!」
「決着を着けてやる!」
お互いほぼ同時に弾をリロード、お互い同時に構えるところまで行った。
「あ…く」
だが、ミロルの方は銃を構えることが出来ずにその場に落とす。
その後、ゆっくりと膝をつき、その場にぶっ倒れた。
…やっぱり相当無茶してた様だな、横腹から出血もしてる。
つまり、俺の弾丸は防弾着には当たらず、あいつに当たったと言う事か。
一応致命傷は避けたつもりだが、大丈夫か?
「はぁ、はぁ…ふぅ…」
痛む足を引きずりながら、ゆっくりとミロルの方に近づいた。
ミロルは必死に指先を動かそうとしているが
限界なのだろう、殆ど動かせていない。
「……ミロル、この勝負…俺の勝ちだな」
「ふ…ふふ…ま、また…負けた訳ね…あなたに…本当に大きな…壁よ
私も必死にやって来たけど、何度やっても勝てない。
でも…悪くない気分よ…何だか、アニメのライバル同士みたい。
あなたが主人公で…私はあなたのライバル。
…あなたに会って、生き方が変わって…越えようとしても越えられない。
良いわ、こう言う…関係…私、大好き…」
確かにアニメのライバル関係みたいな感じだよな。
そんな相手、普通なら出会える訳がないんだ。
お互いを高めるための大きな存在。
ライバルなんて…出会えるだけで奇跡だろう。
「その内…お前がナンバーワンだ、とかいったり…」
「…はぁ、案外余裕そうだな」
こんな状態でそんな事が言えるのか、結構余裕そうだな。
「…ふふ、色々と言いたくなるのよ、こんな状況じゃ
今まで…考えてたこととか…全部言いたくなるのよ…
今、この状態で…言うのは何だけど…ありがとう」
「はぁ?」
「私に…生きる希望をくれたのも、私に目標をくれたのも
私が…ただの殺戮者にならなかったのも…全部、あなたのお陰だから」
「あぁ? 本当そのなりで訳のわからない事を言うな。
ほら、さっさと手当でもしてろ、お前の力なら
手当くらい出来るんじゃねぇの?」
「……大丈夫よ、弾丸…あまり入ってないから」
ミロルは自分の服を少しだけめくり、怪我の状態を見せた。
防弾着に当たり、少しだけ貫通している状況だ。
「それなのにぶっ倒れたのか?」
「少し出血が酷くて…限界だったのよ」
「じゃあ、さっさと包帯でも巻きやがれ」
「……またあなたに攻撃をするかも知れないのよ?
今の私にトドメをさした方が良いんじゃ無いの?」
「お前は負けを認めた、勝負を着けたいから戦ってたお前が
負けを認めたのに俺に攻撃するとは思えない。
それは正々堂々とした勝負じゃないからな」
「…ふふ、まぁ…そうね」
「ほら、早く手当てしやがれ」
「……分かったわ」
ミロルは包帯を召喚し、自分の怪我の手当を始めた。
これだけ動けるんだ、結構平気そうだよな。
でもまぁ、2人ともフラフラなのは間違いない。
「…ん」
「お?」
自分の手当をしてすぐ、今度は俺の手当を始めた。
「何だ? 俺の手当までするのか?」
「…まぁね、私だけ手当は不平等だし」
「敵同士だぞ? そんな事して大丈夫なのか?」
「あんたも私を助けたでしょ? 今更何言ってるんだか」
「まぁ、そうかな」
ミロルはゆっくりと俺の手当を進めてくれた。
本当にさっきまで殺し合ってたとは思えないよな。
「…本当、奇妙な縁よね、私達」
「そうかもな」
「お互い1度死んで、同じ世界に生まれ変わった、妙な奇跡よね」
「お前もあの禿げに?」
「禿げ? まぁ、確かに禿げてたけど…まぁ、そうね、死んだら来たわ
哀れみ掛けられちゃった」
「俺は怒らせたんだけどな」
「な、なんで?」
「いや、怒りのあまり悪口言ったら怒らせた」
「悪口言うとか…」
「いや、その…機嫌が最悪だったから…」
最悪の機嫌であの神様来たからな、機嫌悪いと暴走するからな、俺は。
「全く…感情的になりすぎたら駄目でしょうに」
「返す言葉もございません」
俺達は木にもたれ掛かりながら、さっきまで敵同士だったとは思えないような
間抜けな会話を続けた…本当、妙な物だよな。
「でもよ、ミロル…俺がお前に何か与えたとか言ってたがあれは何だ?
あのお礼の理由もよく分からないしよ」
「……知りたい? 恥ずかしいんだけど」
「いや、まぁ、言いたくなければ良いけど、まぁ、知りたいと言えば知りたいかな」
「…じゃあ、話すわね、その理由」




