勝機を見つけ出せ
銃による総攻撃、一瞬だけでも油断したら蜂の巣状態。
状況は正直言って劣勢、だが、その劣勢の中で勝利をつかみ取る。
一瞬の勝機は必ず掴まないといけない。
「本当思うのだけど、あなた相手に中途半端な手は打てないわね
まるで全部読まれてるかのように対策されるのだから」
「案外中途半端が1番厄介だったりしてな」
中途半端な行動は相手が特に考えずに行なうとっさの行動の場合が多いからな。
それに準備も向こうはあまりしてこないだろう、そこも面倒な要因だ。
練りに練った作戦なら準備や布石が必要だからな。
だから、そこに気が付くことでどんな手を使ってくるか大体予想できる。
でも、中途半端な行動の場合はそう言ったヒントが落ちていないからな。
で、そこから予想することが出来なくなっちまう。
だが、中途半端はやっぱり行動が割れやすくてバレやすいけどな。
となると、1番厄介なのは練った作戦でも即席で中途半端な作戦よりも
とっさに相手が行なってくる行動かな。
「正直、あなた相手には練った作戦も中途半端も通りそうにないけどね」
「俺、臆病者な面もあるからな、最悪の事態を想定して動いてるのさ」
周りからは結構自己犠牲が激しいとか言われているけど
それは臆病者だから何だよな、臆病者だから
最悪の事態とかを考えて行動してしまうからな。
もしもあいつらに何かあったらとか考えてしまうからな。
臆病者だから、その最悪の事態を起さないために自分が動く。
その結果、自己犠牲が激しいと見られてしまうんだろうな。
「臆病者が私と1対1で戦う理由なんてあるの?
どうせあなたの事だし、私のあれが脅したのは分かってたんでしょ?」
「まぁな」
「じゃあ、なんで私と1対1で戦ってるの?」
「臆病の方向性が自己保身だけだと思うなよ?」
まぁ、直接的な理由では無いだけであって、実際は結局自分の為かもな。
あいつらに何かがと考えて、それを阻止しようとする理由は結局
あいつらを失いたくないという、自分勝手な理由でしかないだろう。
「…でも、疑問はあるわ、あの状態で戦えばあなた達は楽に勝ててたでしょうに」
確かにそうだよな、あの距離は普通にフレイの距離だった。
あそこまでの至近距離、もしも俺がフレイにあいつを攻撃しろと言えば
何の問題も無く決着が着いていたかも知れない。
だが、それをしなかった理由、それは単純な物だ。
「本当、訳が分からないわ!」
「おっとと」
危ない危ない、会話の最中に狙ってくるとは思わなかったな。
何とか建物に避難して攻撃は回避出来たんだけどな。
しかし、わざわざコルト・パイソンを使ってくるとはな。
大好きな軽機関銃で攻撃してくるのかと思ったんだがな。
「まぁ、理由は多分お前と同じだと思うぞ?」
「何? あなたも決着を着けたいの?」
「そっちじゃないな」
まぁ、決着を着けたいにはつけたいんだが、それよりも大きな理由だ。
「ただ、お前と戦うのが楽しかったからだ」
こいつとの戦いは素直に楽しいと感じるからな。
命を賭けた戦いだというのに、こいつとの戦いは本当に楽しい。
相手が考えてきた作戦に対し、どういう風に対処するか。
それで向こうがどう動くかとかそう言うのが楽しいと感じる。
「…へぇ、あなたもそう思ってたのね」
「あぁ、楽しいさ、命を賭けたやり取りなのに本当に楽しい」
本当、こいつとの戦いはどんな時でも楽しかった。
前まではゲームでの戦いしかしてなかったんだけどな。
何回も何回も戦って、相手の動きを予想できるようになった。
それは向こうも同じで、向こうだって対処してくる。
それを読んで、手立てを色々と変えて勝利を掴む。
前まではこれをゲームだけでやっていた。
ゲームだけで対決してたのに、今は実際の戦いだ。
命を賭けたやり取り、本来なら楽しめるはずもないだろうにな。
「不思議な物よね、こんな事、本当は楽しめるわけがないのに」
「普通は…でも、何でか楽しいんだよな」
「そうよね!」
「げ!」
俺が隠れている建物に対してまたRPGをぶっ放してきたか!
ちぃ、建物が崩壊しそうだな。
どう考えても飛び出したところを狙ってくるだろう。
どの方向からかはちょっと考えれば分かるけどな。
俺はセキュリティシックスを構えて崩壊する建物から飛び出した。
「やっぱ、無茶苦茶するな」
「そうでもしないと勝てないからね」
俺は建物から飛び出すと同時にミロルに向けてセキュリティシックスを構えた。
当然と言えば当然なのだが、ミロルの方ももうすでに俺に狙いを定めていた。
本当、こいつは俺が今まで戦ってきた奴の誰よりも純粋に強い。
フランも相当だったが、あれは魔法の暴走によるもの。
あのクソ野郎も結構厄介だったが、あれは所詮人質を取っての戦い。
あれが無けりゃ、倒すことも容易だっただろう。
だが、ミロルは自分の魔法を完全に制御しているし
人質も1人も取ってはいない、本当に強いよ。
そして、今まで戦ってきたどんな敵よりも、戦っていて楽しい。
「本当、お前は俺が今まで戦ってきた奴の中で1番強いよ」
「えぇ、私もそうよ、あなたは私の前に出て来た敵の中で最も強い」
「「そして、戦っていて1番楽しい」」
嬉しいね、向こうも同じ様に感じてくれていたなんてさ。
「1番強い相手なんて、普通は楽しむ余裕は無いはずなのにな」
「それでも楽しいのよ!」
引き金は同時に引かれ、今まで通り、お互いには当たらなかった。
この冷静に相手を狙っているこの状況で外すことはあり得ない。
つまり、今までと同じ様に空中で弾丸同士が接触した。
やはり同じ場所を狙っていたと言う事だな。
「……外れた? あぁ、そうか、弾丸同士が接触したのね」
「普通はあり得ないんだろうが、もうすでに何度も起こった事だな」
「本当、面白いわ、あなたと戦うのは!」
「確かに!」
2発目、今度は弾丸同士は空中で正面衝突したようで
潰れた弾丸が射線上に現われ、地面に落ちた。
若干だが俺の方に近かったところから考えて
向こうの方がほんの少し、1秒以下の誤差で早かったのだろう。
やっぱり早撃ちは向こうの方が早いか。
「射線は完全に同じか」
「そうね!」
3発目の銃声、今度は射線は外れた、だが、違うことは1つ。
「え!?」
今度の銃弾はミロルの右腕にあったたと言う事だった。
これは狙っていたことだった、ミロルの弾丸に自分の弾丸を当て
壁に跳弾させ、ミロルに当てる方法だ。
弾道が似たようになるから、俺にもミロルの弾丸が当たる可能性はあったが
ミロルの弾丸が跳弾す左の壁には丁度出っ張りがあった。
そこに弾丸が当たり、弾道が変わるから使えた行動だ。
「本当…無茶苦茶よね!」
「またか!」
だが、軽機関銃でこちらへ攻撃を始めた。
折角攻撃のチャンスだったのに、不味いな。
とにかく逃げるしかない。
俺はすぐに右の建物に飛び込んだ。
「ち!」
だが、結構な近距離だったため、弾を完全に回避は出来ず
こちらも左手を撃ち抜かれてしまった。
超痛いな…だ、だが、この程度の痛みは散々経験した。
だが、ちょっとこのままだと不味いかな、時間稼がないと。
「待ちなさ、んな!」
背後からミロルの声が聞こえて来ると同時に爆発音が響いた。
グレネードだ、逃走する時間を稼ぐために俺が置いたグレネード。
流石の不意打ちだ、盾とかで防ぐ余裕も無かっただろうな。
しかし、死んで無けりゃあ良いけど。
「…くぅ、やってくれるわね」
とりあえず、距離を取らないと駄目だ。
あいつは至近距離ではヤバいくらいの戦闘能力を誇る。
接近戦は出来る限り避けた方が良いだろう。
「よし」
俺はある程度距離を取った後、薬局の様な建物に身を潜めた。
ここなら包帯とかもあるから止血が出来るだろう。
ひとまずは怪我を手当てしないと、場所が割れちまうからな。
「いてて…本当、やってくれるな」
とりあえず怪我の手当は出来た。
アルルのアホに治療方法を教えて貰って助かったよ。
そういう知識には妙に助けられるんだよな。
まぁ、包帯くらい教わらなくても巻けるんだけど。
「ふぅ、弾が貫通してて助かった」
もしも貫通してなかったら結構面倒くさいからな。
「さてと、あいつが何処にいるか特定して」
俺がそんな事を呟いたタイミングに爆音が響いた。
そして、俺が身を潜めている薬局の向かいの建物が崩落した。
ま、まさかあいつ…ちょっと無茶苦茶しすぎだろ!
「ここではなかったのね、じゃあ、次はそこ」
爆音が聞こえ、嫌な予感がした俺はさっさと薬局の裏口から飛び出した。
その後、俺がさっきまで隠れていた薬局の方から爆音が響き
薬局は一瞬の間に崩壊した、爆破解体でもこんなに早く壊れないんじゃね?
「くぅ、爆風ヤバいな」
一応障害物に隠れていたから爆風に吹っ飛ばされたりはしなかったが
相当な勢いだった、障害物から身を出してたら吹っ飛ばされてたかもしれない。
ヤバいな、あいつここら辺を廃墟にするつもりか?
「次は」
「ちぃ!」
俺は急いで隠れている建物から飛び出した。
「見付けた!」
「出て来たんだよ! 無茶苦茶しすぎだ!」
「確実な方法がこれなのよ!」
「おわ!」
今度はAKー47を召喚してきて、こちらに向けて攻撃をしてきた。
俺は建物に身を隠しながら射線上に入らないように移動した。
だが、ある程度の距離を逃げたが、それより先に建物がないことに気が付く。
こうなったら!
「何!?」
「軍の配備に邪魔だからって国がぶっ壊したのよ、チェックメイトね、リオ」
トドメはコルト・パイソンで決める気か?
でも、チェックメイトは気が早いんじゃないか?
「建物が見えないことくらい、少し見れば分かるさ」
「スモーク!? まさか!」
コルト・パイソンで決めようとしたのが失敗だったな。
もしも軽機関銃でやろうとするなら攻撃出来ただろうに。
「この!」
スモークが吹き出し、少しだけ時間が経った後、銃の射撃音が聞こえた。
連続で放っているところから考えてフルオートだな。
で、弾丸の数から考えて軽機関銃かな。
だが、スモークの向こう側で撃ってきているから当たっているかは分かってないだろう。
現に当たってないけどな、俺は身を隠せるだけの大きさがある瓦礫に隠れている。
「リオ…何処に…」
「ここだ!」
「く!」
銃声が止んだタイミングに姿を見せ、攻撃を仕掛けた。
俺が放った弾丸はミロルの胸部を確実に捉えた。




