ちょっと理由を考えて
シールドを召喚できるというのは、こちらに取って大分不利なんだよな。
正面からの攻撃も防がれる、跳弾で狙うことも可能かも知れないが難しいだろう。
正面から攻撃するんだったら破壊力十分の対物ライフルを使えば良いが
人間に対してそいつは不味い、最悪ミロルがヤバいことになるし
場合によっては腕とかもげるぞ…だから使いたくは無い。
決定打を持っていても、決定打が強力すぎて使えない、少しもどかしいな。
「どうするかな」
俺は大通りに飛びだし、大通り付近の建物に身を潜め考えた。
ちょっと悪いとは思ったが、建物の中にある包帯を貰い
足に擦った傷の手当をした、多分位置はバレるだろうな。
血の跡とかあったし、でも、向こうもそんなに派手に動けないはずだ。
肩を撃ち抜かれている状態、出血も結構な物だったし手当もしたいだろう。
あの状態で俺を探して行動してくるとは思えないからな。
まぁ、見失う可能性はあるがあいつの動向が少しでも見れるようにと
わざわざ大通りに出たんだ、兵士達はこの近くにはもう殆どいないからな。
大半の兵士は城の方に移動して居る、だから目立っても問題は無い。
「はぁ」
俺はセキュリティシックスのシリンダーを出し、4発の弾丸を入れ替えた。
まぁ、空薬莢をここに放置でも何の問題も無いはずだからこの場所に落とす。
いやぁ、空薬莢が地面に落ちた時の金属音はやっぱり好きだな。
良いよなぁ、何か格好いいって言うかね、その音が連続で響くのも格好いい。
普段はボルトアクションだから、1回1回しか聞けないからな。
まぁ、それも格好いいと言えば格好いいんだが
やっぱり乱射とかしたときに連続で音がするのも格好いい。
背後から銃声と共に何度もしてたけどな。
「ふぅ、何か良いな」
そんでもって、シリンダーに1発1発と弾を装弾するのも気分が良い。
で、1発入れる度に小さな金属音が聞こえる。
何だかリロードしているという気分になれるな。
マグチェンジでは味わえないこの感じ、やっぱ良いよな。
はは、本当、こんな状況で何考えてるんだか。
本当、よく分からないよな、銃器に憧れて銃を使いたいと思ってた。
それが何かいきなり死んで、異世界で幼女になってしまって
それで銃を扱えるようになった、最初は嬉しかったけど
何処かで銃を恨んだりした事もあった、怯えたことも何度もあった。
でも、やっぱり俺は銃が好きなんだろうな。
この土壇場でこんな事を考えるくらいだからな。
「…やっぱ、これが最後だと考えると、どうしても変な事を考えるな」
と言うか、これが最後なんだよな、もしも勝つことが出来たとしてだ。
その…俺ってその後どうすれば良いのかねぇ? 本来は消えるつもりだったんだ。
放浪の旅って奴でもしようかなと、でも、あんな風に言われちゃ消えることも出来ないか。
…後、何か放浪の旅で思い出したが、アルルの両親って何処にいるんだ?
結局1回たりとも出会った記憶が無いんだよな、もう全部回ったのに。
案外、何処かですれ違いになって、家に戻ってたりな。
「はは、まぁ、あいつの両親の顔を見てみたいのもあるし
どうも、ますます死ねないな」
どんな両親なのか興味もある、ひとまず戦争が終わった後は
あいつの両親の姿でも見てみるか?
ま、一応は終わった後の目的も出来たわけだがな。
ただ、これだけだと何だかなって感じだ、他にも考えておかないとな。
将来の夢とか何かあったっけ、うん、兵士になる事だったっけか。
もう叶ってるじゃねーかよ! いや、あと1つあったぞ!
彼女作ってイチャイチャすること! 後、童貞卒業が……
無理じゃん! どっちも無理じゃん! 俺今女じゃん!
あぁ…特に生き残る理由がないというのは何か辛いな。
仕方ない、生き残る事が出来たらひまわりに帰ってのんびりするかな。
でもなぁ、先生達に迷惑になりそうだし、何処かに家建てて
そこでのんびり余生を過ごすとかの方が良いかな。
「…あ」
そんな事を考えていると、大通りにミロルの姿が見えた。
どうやら傷の手当てを終わらせて、俺を探している状態らしい。
いつ動くかな、攻撃のタイミングを見計らわないと。
下手なタイミングに動くとやられちまうからな。
冷静に考えて行動しろ、相手の動きを予想し、手を打て。
最も効果的な行動が最善とは限らない。
「……」
ミロルは周囲をきょろきょろと見回している。
俺が何処にいるかを探しているのだろうか。
それもあるだろうが、やっぱり俺を直接見付ける以外で
俺の位置をある程度予想したいのだろう。
例えばドアが開いてると言う感じのヘマとかな。
まぁ、そこは大丈夫だ、しっかりと扉は開けているさ。
何せ、ここら辺の扉、全体的に開いてるからな。
避難するときにドアを開けっ放しにして逃げたんだろう。
しかし、ミロルの奴、やっぱりすぐに分かる嘘を付いてたんだな。
予想通り、何処にもC4爆弾なんて設置してないじゃないか。
「…うーん」
あ、近くの家に入ったな、どうやらさっききょろきょろしてたのは
扉が閉まっている家を探していたと言う事か。
やっぱりそっちを見ていたと言うことだな。
と言っても、その内、俺の血の跡を発見されてこの場所は特定される。
結局は戦闘になる時間がちょっと遅れるだけか。
と言うか、あいつリボルバーあまり使わないよな。
最初の1発だけか、後は基本的に軽機関銃やランチャーで戦っている。
接近戦闘以外では使わないつもりかもな。
あいつが得意なのは接近戦闘だ、接近戦であいつが拳銃を扱ったときの
能力は正直俺よりも上だ、最初はボロボロの状態だったから勝てたが
万全の状態であいつと至近距離で撃ち合いだったら勝機は薄かっただろう。
接近されてはいけない、可能な限り俺の距離で戦わないと不味いからな。
「…あいつが背中を見せたときにやるか」
だから今、この距離で決着を着けないといけない。
俺はウィンチェスターを召喚し、機を伺うことにした。
どのタイミングで仕掛けるか、背後なら超集中状態を使えば可能だろう。
あいつが次に背中を見せたときに仕掛けるか?
…でも、それは何だか武士道精神に反するというか。
いやいや、遠距離戦闘をしてる地点で武士道精神もクソもないか。
元々スナイパーだからな、奇襲してなんぼって感じだよな。
「…次に入るな、そこで決めるか」
ミロルが反対側の家に入ろうとしているのが見えた。
さて、扉を開けようとしたタイミングに狙撃するか。
「……はぁ、やっぱり1軒1軒探すのは面倒ね」
俺が狙撃しようと少し身を乗り出したタイミングに
あいつは扉の前で立ち止まった。
まさか位置がバレたか? いや、こっちは見てない。
「……確かこんなのもあったわよね」
「げ!」
んな! AT4!? ちょっと待て! あいつまさか!
「面倒だし、まとめて吹っ飛ばす! どうせもう誰もいない!」
「おま!」
ヤバ! 反射的に声出ちまった!
「ふふ、そこね! 案外予想通りで嬉しいわ!」
「まず!」
あいつ、俺が静止すると言う事を想定してわざわざあんな大声で!
ったく! 色々とやることが無茶苦茶すぎるだろ!
しかも、こっちに向ってAT4ぶっ放してきやがったし!
「うおぉぉ!」
俺は急いで窓から飛び出した、背後に下がってもあの射線では
室内に着弾、爆発が発生し、結局巻き込まれて駄目だからな。
だったら逃げる事が出来るのは正面だけ!
「うぐぅ!」
ちぃ! な、何とか爆発は回避出来た。
だが、爆風に吹き飛ばされて結構な距離を飛ばされた。
でもよ、まだまだ反撃は出来る!
「そこを!」
「無茶苦茶しやがって!」
俺は空中で体勢を少しだけ整えて左腕の間から銃を構え
何とかミロルの方を狙った。
爆風に吹っ飛ばされてる状態だからこうするしか狙う方法がない!
ミロルもこちらを狙ってコルト・パイソンを構えた。
引き金は同時に引かれ、銃声も同時に響く。
弾丸はお互いに着弾することなど無く、俺の弾丸は
ミロルの右側に若干ズレ、足下に着弾した。
ミロルの弾丸は俺の右肩の服が破れた。
正確に構えていれば左肩を掠めるんだろうが
今回は無理矢理狙ったから、右肩に擦った感じか。
と言うか! それよりも問題なのは今の状況だ!
このままじゃ地面に墜落するか、正面の家に激突する!
正面には窓がある! だが、普通に考えると下に落ちて
壁に激突する! このままじゃ駄目だ! 何か手を考えて!
「…く! もう、こうするしかない!」
俺はさっき銃を撃った時のちょっとした反動を利用して
バレットM99を召喚して、超集中状態を発動させる。
この状態だと短い時間を長い時間として経験できて
普通通りに動くことが出来る。
その間と反動を利用して体を捻り、背後を向いた。
「いけるか? いや、行け!」
そのままトリガーを引き、反動を利用して無理矢理窓に飛び込む。
「っしゃ!」
そして、何とか体勢を整えて、辛うじて大怪我は回避出来た。
でも、ガラスを破って、体勢を立て直すために地面に手もつけたせいで
ちょっと左腕を切っちまったが、ガラスは刺さってないから大丈夫そうか。
深い傷でもないし、大した問題ではないだろう。
「私が無茶苦茶すぎるって? あんたも相当でしょうが!」
大きな声だからハッキリ聞こえてくるな、まぁ、確かにその通りだが。
普通はこんな無茶苦茶、閃いても行動しないし行動出来ないだろうからな。
でもまぁ、それなりに修羅場を踏んできたから
とっさの判断も出来るようになったと言う感じかな。
本当、よく体勢を整えることが出来たな。
「まぁ、お前ほど無茶苦茶じゃねーさ」
「いや、平気で自分を危険に晒す地点で、私以上に無茶苦茶よ」
「いつもの事だ」
俺は急いで移動を開始した。
それとほぼ同時くらいに背後から爆音が響いた。
あいつ、俺が移動した後にあの場所にPT4を撃ったな。
「やっぱ、無茶苦茶するな」
普通はそんなにランチャーをぶっ放さないって。
人にぶっぱして直ったらグロテスクな物になるぞ。
案外、俺に当てる気は最初から無かったりな。
「そこ!」
「く!」
階段を飛び降りると、正面に外への出入り口があった。
そこにはミロルが立っており、こちらに向けて軽機関銃を放ってきた。
降りてくることが分かっていたようだな、そりゃそうか。
「仕方ない!」
俺はウィンチェスターを瞬時に召喚し、超集中状態を発動。
そして、跳弾を計算し、弾丸で弾道を変えた。
弾道が変わった景気感の弾丸は別の弾丸に接触し、弾道変化。
更に弾道を変化させたウィンチェスターの弾丸も別の弾に着弾
更に別の弾道を変えるという風にして、自身に当たる弾丸の弾道を変化させた。
そして、この行動を取ったことで
何故今までお互いの弾が当たらなかったか少し理解できた。
あれは俺とミロルが狙った箇所がほぼ同じだったから弾丸同士が接触し
弾道がズレていたんだ、だからあそこまで外れていたんだろう。
さっきの飛んだ時、当たらなかったのも同じ理由なんだろう。
だが、最初よりも狙った箇所がズレていたから微かに接触しただけで
弾道が僅かにズレただけだったから擦った。
まぁ、あくまで予想でしかないけどな。
「本当、あんたのそれ、エグいわよね!」
「滅茶苦茶な量の銃器を平気で扱えるお前と比べりゃまだまだだっての!」
「そうかしらね!」
軽機関銃を消したと思うと、コルト・パイソンを構えた!
マズった、これはヤバいんじゃないか!?
「今度こそ!」
2回の銃声が響き、2発の弾丸が放たれた。
この攻撃は何とか身を隠すことが出来たから良いんだが。
「まぁ、避けるでしょうね、それで良いのよ」
そう呟いた後、爆音が響き、部屋中に煙が充満した。
「この行動の意図、理解は出来るでしょう?」
「あぁ…これは普通に不味いな」
視界は完全にスモークで塞がれた。
この状態でミロルが軽機関銃で乱射を始める場合。
俺は弾が見えないから弾道計算が出来ない。
そうなりゃ、こっちは蜂の巣になるしか無いわけだ。
もちろん意図は理解してる、だったら、それを止める方法を考える。
「っと」
俺は腰に付いてた閃光を転がすように投げる。
その後、背後を向き、走り出した。
「く!」
閃光で向こうが目が眩んでる間に窓から飛び出した。
これで軽機関銃の乱射でやられる危険性はなくなっただろう。
「…やっぱり一筋縄じゃ行かないわね、リオ…でも、そうじゃないと!」
「お前もな、ミロル、もう少し楽に勝ちたいんだけどな」
「楽な勝利は勝利じゃないわ」
「確かに」
やっぱり勝負ってのは一方的な物よりも互角な物が良いよな。
ワンサイドゲームはあまり楽しくないからな。
確定された勝利はあまり面白くないんでね。
やっぱ劣勢から自分の力で逆転するのが最高に楽しいからな。




