ミロルとの最終決戦
ミロルとの長い戦い、それに今度こそ決着を着ける。
「……ほら」
「は?」
何を思ったのか、ミミは俺に向ってリボルバーと弾丸が入ったガンベルトを投げた。
そのガンベルトにはグレネードと思われる道具も付いてある。
その後、ナイフが2本入ったナイフホルダーも投げられた。
「…何の真似だ?」
「対等に戦うためには必要だと思ってね
他にも欲しいメインウェポンがあったら出してあげる」
「…ったく、意味の分からないことを」
「ただ私はそれ以外にあなたに手を貸すことはしない
私の最大の魔法を使って、あなたと戦う、あなたもそうでしょ?」
「そうだな」
「物量的には私の方が有利、ハンデが欲しいなら言って」
「ハンデ? 不要だね」
「…そういうと思った、ほら、早く渡した物を着けて」
「…分かったよ」
俺はミミが投げたガンベルトとナイフホルダーを体に付けた。
そして、ガンベルトに入っているリボルバーを確認したとき
俺はその銃器に驚愕した。
「スタームルガー・セキュリティシックス…」
「あなたがよく使っていたリボルバーよ、作ってたのよ
いつの間にか消すことが出来ない唯一の銃器になったけど」
「消せない?」
「えぇ、恥ずかしながら、あなたとの思い出を忘れないために
私はこいつを召喚した、いや、最初に召喚できた銃がそいつだった。
案外、私が私のままでいられたのは、この銃のお陰だったのかもね。
後、この銃はその1挺しか作ってないのよ、大事な物だったから」
「へぇ、嬉しいねぇ、そんな風に思ってくれて」
「後、覚えてる? 私のこの銃」
ミミが見せたのはコルト・パイソンだった。
「私の相棒、よく使ったわ、名前を覚えた理由はあなただったけ
私はリボルバーは全部同じ物だと思ってたけど
あなたに言われてリボルバーの種類も知った。
そのお陰でリボルバーをより大好きになった。
まぁ、銃の種類とかは覚えられなかったけどね。
で、1番好きな銃がこいつ、理由はもうすでに何度か言ったわよね」
「あぁ、知ってるよ、好きなアニメに出てくるからだったか?」
「そうよ、1番好きなアニメの1番好きなキャラの相棒がこの銃
…何とも懐かしいわね、文字でのやり取りしか出来なかった私達。
それが今、容姿も変わって、お互い小さな子供、手には本物の銃。
今から命のやり取りをしようとしている状態なんだから」
「お前が退くなら追わないが?」
「1度も勝てなかった相手にこんな運命的な出会いをして
決着を着けないで逃げるわけがない、ユウさん…いや、リオ
白黒ハッキリつけましょう」
「…ミロル、そうだな、仕方ないか」
まぁ、ここまで来たらハッキリとした決着を着けたいよな。
1対1の本気の銃撃戦、これで3回目の戦いだ。
1度目はミロルの兵が邪魔に入り、2度目はフレイ達との共闘。
そして3度目…今度こそ正真正銘の1対1での銃撃戦。
戦場は市街地、立ち回りが試される戦場だ。
「一応あんたの残弾を教えておくわ
その銃、装弾数は分かってるだろうけど6発よ
ガンベルトにある弾丸は36発よ
一応、グレネードもあるわ、ただのグレネードは2つ
閃光も2つ、スモークも2つ、地雷はないわ」
「…なる程な、面白い」
「…それじゃあ、始めましょうか」
「あぁ、決着を着けてやる」
……沈黙だ、周囲は妙に静まりかえる。
いつでも銃は引き抜ける様に構え、いつでも動けるように体勢は低くする。
ゆっくりと大きく息を吹き出し、視線はずらさない。
一瞬の動きで一気に行動を開始する。
「…!」
ミロル俺と同じタイミングに弾を放った。
周囲からは馬鹿でかい銃声が響き渡る。
肝心の弾丸だが、俺達2人の弾丸は全然的外れに当たっていた。
俺の弾丸はミロルの左上、ミロルの弾丸は俺の右下に当たっていた。
この距離で外す? とっさの行動で狙いがズレたか。
だが、この一撃を境に俺達は一気に動き出した。
「そこ!」
「く!」
頬を弾丸が擦る、だが、擦っただけだ!
俺は背後の建物の中に飛び込み、建物の中を移動する。
「待ちなさい!」
ミロルは俺に向けて銃の乱射を始めた、弾の感覚、銃声、弾丸から考えて
恐らくあいつが扱っているのは軽機関銃だ、背後を見れないから
どんな軽機関銃かまでは分からないんだけどな。
「ちぃ! 逃がさないわよ!」
俺はすぐに建物から飛び出し、近くにあった家の影に隠れた。
「…ち」
頬からしたたり落ちる血を拭い、自分の服で拭く。
血を拭い、払ったりすると自分の場所がその血で特定される可能性が出てくる。
単純に物量で劣る場合なら、ステルスによる攻撃が1番だ。
「……仕方ない」
そんな小声が聞こえたと思うと、俺がさっきまで隠れていた建物が爆発する。
恐らくだがランチャーを使ったんだろう。
グレネードは俺にも渡してる所から考えて
俺が持っている分と同じだけしか使わないつもりなんだろう。
だったら、ここでその1つを使うのは得策じゃないだろうしな。
「叫び声は聞こえない、外ね」
なる程な、無茶苦茶な確認方法だが良い手でもあるか。
もしも叫び声が聞こえれば室内、更に位置もある程度特定できる。
叫び声が聞こえないとすれば、屋外、その場から離れていると想定できる。
で、この建物から飛び出すことが出来る場所はこの家の裏。
「不味いか」
「そこね!」
「っとと!」
ち、少し動いただけでこっちに気が付いたか、厄介な。
あの観察能力はアルルに匹敵する感じか。
多分アルルの方が観察能力は高いんだろうけどな。
「待ちなさい!」
俺の場所が分かったからか、再び軽機関銃をこちらに向けて撃ってくる。
正確に精密に俺を狙ってくるのだから、どう避ければ当たらないかは
大体想像つく、それにここは建物が近場にいくつもある細道だ。
建物を障害物にしながら、何とか逃走、チャンスが来るまではこれしかない。
「逃げ足、大分早いじゃないの!」
「命は1つしか無いんだ、ゴリ押すよりも確実にだ!」
死ぬわけには行かないからな、約束もあるんだから。
必ず生き残る為にも確実に生き残る方法を考えて行動するしかない。
逃げ回ってばかりで少々情けなくはあるが、それは些細な問題に過ぎない。
大事なのは生き残る事、まぁ、こんな無謀な勝負を受けたのに
今更生き残る為に行動している、てのも妙な話だがな。
「まぁ、いつまでも逃げるのは情けないから、こうだ!」
俺は一瞬だけ背後を向き、近場の扉に跳弾させてミロルを狙った。
正面での弾丸では、ミロルが何度も放つ軽機関銃の弾に当たり
あいつに攻撃を加えることが出来ないだろうと判断したからだ。
だから跳弾により、この細い路地の側面からの攻撃を狙った。
「く!」
俺の狙い通り、跳弾した弾丸はミロルの軽機関銃を左側面から貫いた。
それにより、狙いは大きくズレて、ミロルの動きが止まってくれた。
完全に弾かれた軽機関銃の方を見ているから、俺からも視線は外れている。
その隙を見て、俺は近場の建物に飛び込み、身を潜ませる事にした。
「…まさか跳弾で私の軽機関銃を撃ち抜いてくるなんてね」
さっき一瞬後ろを見たときに持っていたのはRPDだったな。
やっぱり銃火器の名称をそこまで知ってるわけでは無いと言う感じかな。
「しかも、視界から外れた…だけど、隠れることが出来る場所は限られるわね
彼の近場にあった左右どちらかの建物、どっちか一方に隠れたのは間違いない。
私が目を離したのは一瞬、その一瞬で遠い場所に行けるわけがないわ。
それに私の軽機関銃は左方向から撃たれた。
となると、私は一瞬右方向を見たとなる。
だったら、彼が隠れる場所は左方向の建物!」
……流石の予想能力だな、正確に俺が取れる最善の一手を予想して来たか。
確かにその予想は的中している、実際、俺は1度左の建物に入った。
だが、意外と抜けてるな、その予想をする時間の間
何で俺が移動して居ないと考えたんだ?
「何処!? リオ! 出て来なさい! ここにいるのは分かってるわ!」
「…残念ながら出てないのはお前の方だ」
「外!? あぅ!」
俺はミロルが1人で色々と考えている間にミロルの背後から出て来ていた。
さっき俺が跳弾させた扉だ。
この扉は俺が隠れた建物から出ることが出来る箇所だった。
鍵もかかってなかったし、ミロルが移動を始め、少々離れた後に
この扉から外に出たから、あいつは俺が外に出たことに気が付けていなかった。
立て付けの良い建物で良かったよ、流石敵の本国の家だ、出来が違うね。
「ま、まさか…」
あいつは撃たれた左肩を押さえながら、こちらを見ている。
「まぁ、この建物の立て付けが良くて良かったよ
それと、お前がこの建物の扉に気が付けてなかったのも幸運だったかな」
「そうか、あの扉……なる程、ここに繋がってたのね」
「あぁ…で、どうする? もう一度俺が引き金を引けば決着だが」
俺は手に持っているセキュリティシックスの撃鉄を起こした。
これでいつでも撃てる、まぁ、ダブルアクションだから引き金を引けばそれで良いが。
でもまぁ、やっぱりどうせ撃つなら撃鉄を起して撃ちたいからな。
で、シリンダーに入っている弾丸は残り3発、相手を仕留めるには十分だ。
「……あまり私を、舐めないで!」
「何をする気か知らないが、待ってやらんぞ!」
俺はミロルの妙な動きに反応し、引き金を引いたが
俺の弾丸はミロルには当たらず、ミロルの前に現われた盾に防がれる。
「防弾シールドか!」
「そうよ! 私の魔法を舐めないで!」
更に防弾シールドの隙間からこちらに銃口を向けて攻撃を始めてきた。
つまり、あの防弾シールドは左手で持っていると予想できる。
左肩を撃ち抜かれている状態で左手で銃の乱射なんて出来るわけが無い。
反動で激痛が来る、だが、シールドなら持つ事は可能だろう。
シールドなら衝撃は最初の攻撃だけ、それに大きな盾だから
地面に接触しているから、あまり力を必要とはしないだろう。
「く! マジで便利な、い!」
く、マズった、足に食らった、まぁ、擦っただけだから動けるけど。
本当あいつの召喚バリエーションには驚かされるよ。
とにかく射線上から外れる事は出来たし問題は無いか。
足にちょっと食らったくらい、些細な問題でしかない。
「また逃がした…でも、今度こそ必ず」
防弾シールドを持っての移動は出来ないだろうし、持つ理由もないだろうな。
いつでも召喚できるし、手に持って移動するメリットは無い。
となると、あいつに攻撃を食らわすには不意打ちくらいしかないか。
やれやれ、どうするかな……色々と手立てを考えないと。




