守るべき場所
相手が何度も連続で攻撃を仕掛けてこようとも
俺達4人の防衛力の前ではほぼ無意味だろう。
だが、油断するとさっきみたいに抜かれそうになる。
そこは気を付けないといけない、失敗したら、あの場所は終わる。
それだけは避けないといけない、もしもひまわりが制圧されてしまえば
俺達の今までの戦いは無意味になってしまうのだから。
「絶対に行かせるか! 何度来ても、私が倒すんだから!」
「うん、守る」
ひまわりの防衛は結構問題無さそうだ、だが、問題は1つある。
その問題は城の内部だ、中は近衛部隊が防衛してくれているだろうから
国王様の防衛は問題無いだろう、そう判断しているからこそ
今回は防衛力が皆無であり、俺達に取って重要な場所である
ひまわりの防衛に自分達の戦力を割き。
防衛力が不十分であるだろうトロピカル地方にも戦力を割り当てた。
だが、もしも国王を防衛している近衛部隊の数が少なかった不味い。
この戦いの敗北条件は3つ、国王を殺られるか姫様達を殺られるか
ひまわりが制圧された場合の3つだ。
だが、俺達の勝利条件は裏切り者の部隊から戦意を完全に奪うこと。
本当に厳しい勝利条件、敗北条件は簡単に取られそうなのにな。
しかも、今現在、俺達が動員できる戦力は国王を防衛している近衛部隊と
俺達、小さな戦士達の僅か13名のメンバー。
対して敵の戦力は不明だが、推測1000は越えているだろう。
戦力差は一目で分かる程、絶望的に開いている。
「体力が持つか?」
しかも、俺達はその後、リ・アース国の総攻撃にも参加することになるだろうし。
これから、殆ど休めないかもな、ま、最終決戦で休む暇は無いか。
さて、俺達に出来る事は…そうだな、短期的にひまわりの攻撃部隊を殲滅。
その後、すぐに城内に侵入して敵部隊を殲滅することか。
問題としては、城内の戦闘になる場合、俺が不利だと言う事だ。
俺の狙撃魔法は遠距離に非常に特化している反面
接近戦では大分弱体化してしまう、何とか誤魔化して戦ってはいるが
城内という限定された範囲、奇襲できる場所も多い場合は圧倒的に不利だ。
かといって、仮にひまわりの攻撃部隊を殲滅した後にひまわりを守らない
なんてのは危険すぎる、誰が敵か分かりにくい状況では不味い。
だから、動けるのはほんの数人…はぁ、本当キツい条件だな。
「あぁ、もう! 頭痛い!」
「どうしました?」
「はぁ、この後の事を考えると、頭が痛くなっちまってな」
「ひまわりの敵を殲滅した後ですか?」
「そうだ、その後、俺達は城内の敵を殲滅しないといけないだろ?
その時にこっちの戦力をどう別けるかで悩んでるんだ」
「ふふ、大丈夫ですよ、リオさん、私、接近戦出来ますから」
「相手はお前と同じ訓練を受けた兵士、お前が相手より勝っていたとしても
すぐに相手を倒すことは出来ないだろう?」
「いえ、行けます! …多分」
「はぁ、不安だ」
まぁ、今はあいつらの殲滅をしないと話しにならないか。
後の事を考えるよりも、まずは目の前の問題に対処しないとな。
と言っても、もうそろそろ敵のひまわり攻撃部隊の数も減ってきてるが。
「クソ! 強すぎる! 俺達は100はいるのに、何故4人程度に押されている!?」
「殲滅力が強すぎるんだ! フレイの攻撃で何人も兵士は巻き込まれ!
トラの攻撃は範囲が広い! あの2人を突破しても、リオの攻撃で何人もがすぐに倒れ!
それを突破出来た少数も、奥にいるウィングに倒される、隙を生じない三段構え!
それを僅か4人で形成しているんだ! たかが5歳程度の子供達が!」
「あり得ない、そんなの…よほど強力な統一者がいないと出来るわけが無い!
この場所にリオはいない、見えない死神は姿を見せていない!
奴が統一している訳ではないなら、一体何が奴らを統率している!」
そろそろ敵攻撃部隊も動揺の色を隠せなくなってきているようだな。
何度も波状攻撃を仕掛けても、俺達僅か4人に何度もあしらわれている。
見た目は5歳程度の4人の子供なのに、大の大人が100人掛かりでも倒せない。
そうなっちまうと、大人のプライドはズタズタだろう?
動揺も隠せないだろう、だから不安定な意思の上に立ってる奴らは弱い。
その点、俺達の目的は不安定ではなく、確定的な物、それも全員が同じ物を見てる。
「ひ、ひまわりだ…奴らはきっとこの場所を守るという意思で団結している!」
「ただの子供に、そんな強い意志が生まれる訳がない!」
それが生まれるんだよな、俺達4人はこの場所に救われた。
それに、俺達は子供だ、馬鹿みたいに1つの事をがむしゃらに頑張ることが出来る。
基本的に子供は飽きっぽいが、1つ、絶対にやりたいと考えたことに対しては
何処までもがむしゃらにやり続けることが出来る。
プロのスポーツ選手の大体が楽しいと感じたそのスポーツを子供の頃から
ずっとひたすらに続けてプロになっている様に。
俺達4人は1つ、この場所を守るという意思を貫いている。
すぐに揺らぐ程度の思いしか持ててないあの馬鹿兵士共には分かりゃしないさ。
「すぐに裏切るお前らには分からないだけ、子供を甘く見ないで」
「絶対守るもんね、皆と一緒に、私達の帰る家は壊させないんだから」
「絶対に大丈夫、私達なら出来る、だって…皆いるから」
「ぐ、ぐぅ! あ、侮っていた…こいつらの強さを…」
「く、くぅ! ガキに…負ける訳にはいかない! 意地でも負けるか!
全員で一気に攻め込めば、勝てる! 行くぞ! 大人の力を見せてやる!」
大人の力と言いつつ、ただの数の暴力でしか無いがな。
子供4人に対して、何十人同時に攻めて、仮に勝ったとして
それで大人の力だとか言えるのかねぇ?
まぁ、例え数の暴力でせめてこようとも、負けることはない。
むしろ同時に攻め込むのは、この状態では愚手でしかない。
フレイの怪力で複数の敵を巻き込むことが出来ると言うのに
同時に攻め込んでも、被害が拡大するだけだ。
他にも自分達で間合いを詰めているわけだから
トラの範囲攻撃に全体が入る。
殲滅力に長けているメンバーに総攻撃は賢い判断とは言えないな。
どうやら、大分焦っている様だ、いや、動揺がピークに達したのか?
「うおぉおお!」
「数で来ても意味ないもんね!」
フレイは突撃してきた兵士の攻撃を回避した後に、その兵士の足を取り。
振り回すことで周りの敵兵を倒し、投げ飛ばして更に被害を拡大させた。
まぁ、怪力馬鹿のフレイなら可能な攻撃だ…しかしなぁ、やっぱり不思議だ。
いくら何でも敵の行動が馬鹿すぎる気がする…流石にアホではないはず。
だからきっと、何かしらの考えがあっての行動だと思われる。
例えば自分達を陽動とし、別働隊を動かしているとか。
……ふむ、可能性はあるか?
「お姉ちゃん! 帰ったよ!」
「お、ウィンか軍団長はどう言ってた?」
「えっと、承知した、こちらも移動の早い兵をそちらに向わせる。
しかし、距離が距離だ、時間がかかるだろう。
殲滅するか何とか持ちこたえろって言ってた」
移動が早くても相当な距離だろうし、下手したら勝負付いてるかな。
正直今みたいな火急を要する状況なら殲滅の方が可能性が高いか。
まぁ良い、報告が完了したと分かっただけで収獲ではある。
さて、それにウィンが帰還してきてくれたのは素直に嬉しくはある。
「ウィン、城の方に移動するぞ」
「え? でも、あそこは危ないんじゃ」
「ここからだと狙えない場所があるんだ、可能性は潰さないとな」
「え?」
「リオさん、城に向うのであれば、最初に私を送ってください
そうすれば、周囲の安全確保が可能ですし」
「じゃあ、頼む、一応こっちもまだ少し攻撃していたいし、安全確保は頼んだ」
「はい」
アルルを城に向わせての周辺安全確保、安全を確保しないと面倒だしな。
その間、俺は敵の動向の確認と攻撃を行なう。
安全確保にどれだけの時間がかかるかは知らないが、出来る事はある。
大体の動きに目星を付けることが出来れば狙うとき楽だからな。
しかし、少し時間が経っても動きはない、杞憂か?
「お姉ちゃん、安全確保できたって」
「よし、分かった」
例え杞憂だったとしても、城の方面を確保したら狙撃が楽だ。
今、ひまわりは城の近くにあるから、良く相手の動きも見られる。
問題は敵地の近くで狙撃を行なうわけだから
敵にバレると攻撃される危険性が高い事か。
それでもこの場所から見えないところでひまわりに攻撃が加わったりしたら
…そう考えると、危険な場所だろうと、意地でもやらなきゃならない。
「よし、アルル、周囲の状況は?」
「そうですね、この部屋には敵は来ていない様子です」
「よし、そいつは良い」
俺は一応持ってきていたワルサーP38とMP443
ベレッタARX160を再確認した。
本当はスタームルガー・セキュリティシックスを使いたかったが
無かったんだよな、あの銃、俺はINWでいつも使ってたのに。
っと、中身を確認しないと。
…よし、弾丸は入ってる、マガジンも十分手持ちにある。
ただちょっとARX160は扱いにくいかもな。
「ほれ」
「おわ!」
俺はARX160をアルルの方に投げた。
アルルは反射的にそいつをキャッチすることに成功する。
「後、マガジンな、5個はあるぞ、ほい」
俺はARX160のマガジン5つを連続してアルルに向けて投げた。
今回ARX160のマガジン弾数は30発、物によっては
100発入るマガジンもあるが、今回あるのは軽量なこいつだけだ。
こいつを奪った兵士が持っていたマガジンもこれしかなかったしな。
「と、と、と、と、っとと」
連続して投げたマガジンを、少しだけあたふたしながらキャッチした。
その後、マガジンをひとまず軍服のポッケに突っ込んだ後に
俺が渡した銃を不思議そうに見ている。
「あ、あの、リオさん…私はその…銃の扱いは」
「そいつはフルバースト、連射が出来るタイプの銃だ
いくら銃を撃つのが下手なお前でも何発かは当たるだろうよ。
1つのマガジンにある弾数は30発、お前に渡したマガジンは5つ
既にそいつに付いてるマガジンと合わせれば、残弾数は180発だ。
射撃モードの切り替えはここで行なう、この長マルが1つしか無い場所に
こいつを合わせた場合はシングル、2つ書いてる場所に合わせたときはバースト
1度引き金を引くと、3発弾丸が放たれる、で、3つ書いてるのがフルバースト
引き金を引いている間、ずっと弾丸が放たれるんだ」
「へ、へぇ」
「まぁ、ばらまくだけならSMGが良いかも知れないが、こいつは狙うことが出来る。
一応、練習には使えるんじゃないか? 弾丸は多分殺傷能力があるから
基本は足を狙え、色々と話を聞き出さないと行けないしな」
「あ、はい」
「それと基本はシングルで合わせろ、当たらないと思ったらフルバーストだ。
それと、こいつはベレッタM92と違って、サイトが付いてる、ドットサイトだ。
この赤丸を相手に合わせて引き金を引け、それで当たる」
「ふむふむ」
「ただサイレンサーが付いてないから、基本は使うなよ?
敵にバレた場合、あるいは不意打ちを食らって不味い時には使え。
その時以外は俺が狙撃銃で敵を無力化して進む、バレるのは面倒だからな」
「分かりました」
「よし、それじゃあ、行くか」
俺はワルサーP38を構えて移動することにした。
狙撃銃で移動となると、不意を受けたときに反応できないからな。
接近戦が不意に発生したとき、すぐに攻撃が出来るようにハンドガンで移動。
こちらが敵を発見し、撃破が必要だった場合にはサイレンサー付きの狙撃銃で攻撃。
こんな感じでやっていかないと、最悪を想定して動かないとな。
まぁ、マガジンは両方5個あるし、大丈夫だろう。
「あの、リオさん」
「何だ?」
「この道具、どう持つのが良いんでしょうか?」
「俺が狙撃銃を持ってる時みたいに持ってろ」
「了解しました!」
そう言えば、ARの構え方教えてなかったな、ま、こいつは良く俺を見てるし
狙撃銃の持ち方でと言えば大体分かるだろうしな。
よし、それじゃあ、さっさと狙撃ポイントに移動して
攻撃を再開しないとな、あまり時間は掛けられないぞ。




