身体測定
あの怪我からしばらく経ち、身体測定の時間が来た。
俺の怪我はその間に無事完治、俺も参加できる。
と言うか、俺の怪我が完治するまで、俺達全員の身体測定を遅らせたようだ。
どうせなら、皆さんでやりましょうというアルルの考えらしい。
で、この国の身体測定は、体重、身長、運動能力を計ると言う
普通の学校とかの身体測定と似ている感じだった。
とりあえず、最初は身長や体重を測定することになった。
「それじゃあ、身体測定を始めます」
「ふーん…お前らがやるのか」
まぁ、少しは分かっていた事だが、あの5人が計測役か。
「私達以外の誰がやるんですか?」
「こう、医者とか看護婦さんがやってくれるのかと」
「その話はあったのですが、私達の中にはアルルさんがいますから」
「身体測定も私にお任せあれ」
医術以外にも色々と出来るんだな、まぁ、身体測定だし
高等技術とかいらないだろうから、問題は無いのかも知れないが。
「それじゃあ、身体測定を始めます」
「んー」
「…こ、こちらにどうぞ」
俺達を呼んだのは、何故かナース服を着ているノエだった。
…ノエ何であんな服を…まぁ、大体理由は分かるんだけどさ。
チラリとメルトの方を向くと、笑いをこらえているのが分かった。
やっぱりあいつだな。
「あ、あれ!? 何で誰もこの服を着てないんですか!?」
「ノエちゃん、その…それ、メルトさんに騙されてると」
「えぇ!? そ、そうなんですか!? メルト先輩!」
「ぷふふ、そ、そうだよ、やっぱり単純だね、ノエは
何回私に騙されてると思ってるの? そろそろ学習を、ぷふ」
「メルト先輩! 嘘言わないでくださいよぉ!」
「あはは、ごめんよー、と言っても反省はしてないけどね!」
「メルト先輩!」
ノエがメルトを捕まえようとしているが、メルトはノエを
当たり前の様に回避し、全然疲れている様子も無い。
超簡単で当たり前の様に回避している、流石はメルトだ。
ノエは必死に掴もうとしているが、全然とどいていない。
「はぁ、はぁ」
「遅いね、もう少し体力付けなって、私、一応病み上がりだよ?」
「うぅ、メルト先輩の体力は…おかしいですよぉ…」
「体力なら私も自信ある! メルト、勝負しよ?」
「え? い、いや、フレイさんと体力勝負はちょっと」
「なんで?」
「む、無理だからだよ!」
「えー?」
流石のメルトもフレイの無尽蔵の体力には恐れているらしい。
あいつがスタミナ切れを起したところを、俺は見たことないしな。
そんな無尽蔵な体力馬鹿を相手になんて出来ないか。
「はぁ、はぁ」
「あの…そろそろ始めますよ? 身体測定」
「そ、そうだな」
この状態を止めてくれたのはアルルだった。
これがかなり意外、アルルは基本暴走するポジションだって言うのに
今回ばかりは普通に振る舞ったな、予想外だぞ。
「じゃあ、身体測定します、最初はリオさんですね」
「分かった」
「では、測りますよ」
身長を測るなんて事、大分久々にやったな。
俺はこの中で1番小さいんだけど、どれ位の身重なのかね。
「…え? きゅ、95cm…」
「3桁行ってないのか? 俺って」
「そ、そうですね…3歳児くらいの身長です、7歳なのに」
「いくら何でも7歳でこの身長は不味いのでは無いのでは?」
「皆さん、5歳から全く変わってませんし、何か理由があったり」
「まだ分かりませんわ、リオさんの成長が遅い可能性が」
「うん、リオは私達の為に自分の分のご飯を渡してくれてたから」
「それが理由で成長が遅くなったんだと思う」
「だから、食いたくないから渡してたんだよ、ま、不味かったし」
「嘘ばっかり、先生の料理は美味しいってよく言ってた癖に~」
「ぐぅ…あ、あれだよ、俺は少食だったんだ!」
「今は沢山食べてる」
「うぐぅ…」
う、うぅ…まさかこいつらに論破されるなんて…なんと言う屈辱!
「だとしても、やはり95cmは異常だと思いますよ」
「そうですわね、ただ全員の身長を測って考えた方がよいのでは?
皆さんの身長が全体的に低い場合は流石に何かあると考えた方が」
「そうですね…あ、リオさん、次は体重です」
「お、おう」
今度は体重計に乗ってみる…しかし、身長95cmかぁ
かなり小さいとは思っていたが、まさかここまでとは。
しかもウィンよりも俺、身長低いんだぞ?
姉としてどうだよ…威厳が無いぞ…
くぅ、せめてウィンよりは身長が欲しかった…
「じゅ、13.9kgこれまた3歳児程度の体重です」
「軽いな、よくこれで反動に耐えられるよなぁ」
やはり魔法の力なのだろう、実際の銃火器なら耐えられるわけが無い。
バレットM82の重量は確か13kg程だったから、普通なら持てない。
この体重でそれを持って動くことも出来るのも魔法の力だな。
「…やはりおかしいですね、まぁ、リオさん凄く軽いのですが」
「当たり前の様に俺を抱き上げるんじゃ無い、蹴るぞ」
「すみませんでした」
ふぅ、全くアルルのアホめ、さも当たり前の様に人を持ち上げるなよ。
「…では、次はフレイさんです」
「よーし、測って!」
「はい、行きますよ、えっと…101cm、4歳児ほどの身長ですね」
「お? リオちゃんより大きいんだね!」
「それは測らなくても分かるだろう、思いっきり俺のが低い」
「そうかな?」
「あぁ、でも得意げになるなよ、俺達この中で1番背が低い部類だ」
俺達4人以外のメンバーは大分背が高いからな、俺達はかなり背が低い。
理由は……分からないけど。
「えっと、次に体重は…15.6kgですね、これも4歳児ほどです」
「私、7歳なんだけどなぁ」
「俺も7歳で3歳児程度だぞ、文句垂れるな」
その後、全員分の身体測定の結果分かった体重と身長は
トラ、身長99cm、体重15.3kg、ウィング、身長97cm、体重14.7kg
マル、身長107cm、体重17.7kg、フラン、身長106cm、体重16.7kg
メル、身長108cm、体重18.7kg、ウィン、身長101cm、体重17.1kgだった。
俺達4人は特別背が低いが、それよりも重要な事としては
全員の身長が似たり寄ったりだと言う事だ。
俺達4人が特別背が低くても、そこまで大きな差は無い。
10歳であるはずフランが5歳であるはずのウィンと同等だ。
これは流石におかしい。
「…おかしいですね、まるで5歳の段階で成長が止まっているようです」
「えぇ、皆様の身長は基本的に5歳の平均値ですわね」
「リオさん達はかなり低いですけど…」
「リオさん達の背が低い理由は少々は分かってます
ただ、あそこまでは普通はあり得ません」
「えっと、えっと…つまり、皆さんは5歳の段階で成長が止まってる?」
「そう考えるのが無難かと」
5歳の段階で成長が止まるだと? いや、何かそんな気はしてたけど。
メア姫はガンガン成長しているのに、俺達は変わらない。
7歳だと言うのに、5歳から一切背が高くなっているという感覚も無い。
2年間、滅茶苦茶飯も食って、しっかり睡眠も取っていたはずなのにだ。
普通ならもっと背が伸びても良いはずだ、だが、全く背が伸びない。
「何故5歳の段階で成長が止まっているのでしょうか」
「それが分からないから悩んでいるのですわ」
「…少し、他の子供達にも協力して貰いましょう」
「どうするのですか?」
「いえ、少し身体測定の結果を貰うのですよ」
アルルがすぐに部屋から飛び出した。
何をしたいのかは分からないが、何も走って移動することは無かったんじゃ…
それからしばらく時間が経って、アルルが息を荒くして帰ってきた。
「も、貰って…はぁ、き、来ました…」
「全力で走り回ったのですか?」
「えぇ、あまり時間を掛けたくなくて、はぁ、はぁ、は、はい」
俺達の身体測定は遅れていたからか、もうすでに全体の身体測定は終わっていた。
だから、アルルが持ってきている紙には全員の名前がズラリと並ぶ。
一応、兵士だけでは無く、ミストラル本国の7歳児の身長が書いてあるそうだ。
これなら7歳児の平均身長とかが分かるか。
「……うーん、やはり平均身長より皆様は異常な程に背が低いですわね」
「そうなのか…まさか、そこまで背が低いとは」
「…魔法を扱う子供達にもこれと言って異常な数値などは無いですね
まぁ、リオさん達を含めて7人しかこの時は居ませんでしたし」
「3人しか居ないよな」
つまりは俺達の同期だな、あいつらは普通に成長しているのか。
だから、魔法が問題では無いのか、じゃあ、何処に差がある?
「うーん…やはりこの3人だけで判断は難しいですね」
「そうですわね」
「よし、兵士の皆さん全員分を集めてきます」
「何でだ?」
「私の予想では多分魔法が原因だと思いますからね
そこくらいしかリオさん達は他の皆さんと違いがありませんし」
まぁ、成長が止まっているのが俺だけだというのなら
俺が転生者だからと言う理由を考えつくかも知れないが。
そういう訳じゃ無いんだよな、フレイ達は転生者じゃ無い。
だと言うのに、俺と同じ様に5歳程度で成長が止まっている。
俺の背が低いのは、あまり飯を食わなかったからと
毎晩先生が疲れて寝てる間に、皿を洗ってみたり
体が弱くて、あまり運動が出来なかったからとか。
いや、まぁ、毎度フレイに振り回されたお陰で
いつの間にか体が弱いのは解決していたけど。
後は…病気になりやすかったから?
まぁ、ここに来てからは殆ど体調不良は無くなったけど。
その代わり怪我が増えたが。
「うーむ…確かに魔法くらいしか無いか」
俺が低い理由は色々と考えることは出来るが
フレイ達の背が低いのは魔法しか考えられないよな。
でも、同期の3人は普通に成長している、何でだろうか。
魔法が理由なら、あの3人も成長はしないだろうに。
くぅ、分からないな。
「うーん…」
「謎が多いですわね」
「はい、と言うか、アルル先輩、もう居ませんね」
「まぁ、あいつはすぐに行動するからな」
それから少しして、アルルが子供の兵士達全員分の測定結果を持って
帰ってきた。
「うーん…あ、本当に一部ですが異常に背の低い方がいらっしゃいます!」
「お?」
「人数は少ないですが…」
人数は少ないが、確かに異常に背が低い子供が何人かいた。
どうやら、そいつらが俺達と同じ境遇の子供らしい。
で、その背の低いメンバーの中にマオの名前もある。
ふーむ、あいつはどう考えても俺よりも年上なんだよな。
それなのに身長は俺よりは高いとはいえ、マル達と同じほど。
つまり、5歳児の平均程度の身長だと言う事だ。
「…では、マオさんにお話しを聞きに行きましょう」
「だな」
一応、マオに心当たりがあるかを聞く事になった。
あいつに心当たりがあれば良いんだけどな。




