VSミロル
どうするかな、何発物弾丸が壁に当たっているのが分かっている。
どのタイミングで攻勢を掛けるか…そこが重要だな。
「よし」
俺はH&K UMPを構え、フルバースト状態であるという事を確認し
残弾数を確認、うん、思った通り30発だな。
で、S&W M686は当然ながら残弾5発、何というか
こんな風に残弾を確認していると、どうも様になってて良いよな。
で、確認した後に銃を振って、シリンダーを元に戻す。
いやぁ、何というか、気分が良いね、マジのリボルバーを扱ってるのは。
「ほら! さっさと出て来なさいよ!」
「そんなに出て来て欲しいなら、出て行ってやるよ!」
俺はすぐに顔を出し、H&K UMPを構え、引き金を引いた。
「まさか!」
俺がこいつを持って居たことには気が付いてないかったのだろう。
ミロルは結構な動揺を見せ、少しだけ狙いがブレた。
ちゃんと相手を見ておかないと、こう言うときに動揺するからな。
「だったら!」
だが、ミロルもそうあっさりとやられてくれるほど甘くは無い。
ミロルが取った次の行動は、俺のHa&K UMPを消す事だった。
何だ、出来るんじゃ無いか、でもまぁ、その行動を使えるかもと想定はしていた。
だから、予備となる2挺の銃も召喚していたんだからな。
「そら!」
「く!」
俺はすぐにM1903A3を手に取り、ミロルが手に持っていたM4を狙撃した。
M4は俺の狙撃を受けて、すぐに左にはじけ飛び、弾道はズレた。
それを確認し、間髪入れず、もう一方のM110 SASSを手に取り、ミロルを狙い、引き金を引く。
「これでどうだ?」
「この!」
だが、ミロルは俺の銃撃を自身の前に戦車を召喚することにより防いだ。
まさかあんな短期間で戦車を召喚することが出来るとは。
「まだまだよ!」
「戦車とか冗談じゃ無い!」
「ほら、吹き飛びなさい!」
不味いぞ…この近距離で戦車! しかも完全に不意を突かれた!
だから、自分の手持ちには対物ライフルは出していない。
あんな短期間で戦車を召喚できるとは思っていなかったからだ。
戦車ほどの兵器を召喚するにはある程度のモーションが必要なのかと思っていた。
だが、そんな事は無く、ほぼノーモーションで召喚までの時間は殆ど経っていない!
しかもあいつ、もうすでに戦車の中に入っているし、砲塔もこちらに向いている!
「逝け!」
「うぉあ!」
戦車から大きな爆音、その砲塔は壁に直撃、仮拠点の正面は吹っ飛び
その付近にいた俺も結構な距離を吹き飛ばされた。
だが、案外破壊力は無く、爆風で吹き飛ばされても辛うじて体勢を整えることが出来た。
しかしだ、結構な重傷を負っている体ではこれ以上は動けそうに無い。
さっき体勢を整えようとしたときに足も強く捻ったし
それに腹から血も垂れてるような気がする…クソ、不味いな。
「くぅ!」
「これで障害物はもう無いわ、チェックメイトよ、リオ」
「おいおい、まだまだチェックの段階だろ? それによ、テメェは1人だ
それなのに俺にだけを集中なんて愚手にも程があるぞ?」
「は? 何を馬鹿な」
「前回は俺が孤軍奮闘、だが、今回は違うだろ? 今回はお前が1人だ」
俺達が会話をしてると、仮拠点の2階窓から小さな影が飛び出した。
その飛び出した小さな影は足を大きく振り上げ
「だっりゃぁあーー!!」
落下の勢いを乗せ、戦車を上から蹴り潰した。
「はぁ!?」
戦車は小さく爆発し、その中からミロルが何とか飛び出し、爆発を回避した。
「これで詰みなんじゃねーの? ミロル?」
だが、外に逃げ出せば、俺の銃口がこいつを狙う。
この状況を覆すのは大分難しいだろうよ。
「く!」
「完全に油断したな、この仮拠点で脅威なのは俺だけじゃ無い、少々俺にこだわりすぎたか?」
「へっへっへ、小さな戦士達で強いのはリオだけじゃ無いよ」
「……まさか、こんな子供に私の戦車が壊されるなんて」
「戦車程度の装甲でこの暴走戦車は止まらねぇよ、へ、戦車には戦車ってね」
「いえーい! 因みにリオちゃん、それ、褒めてる?」
「安心しろ、軽く貶してる」
「貶すって何? まぁいいや」
「クソ、こんな馬鹿な子供なんかに…私が作った戦車が…」
「さて、ミロル、その後ろに隠してる物を捨てろよな」
あいつはさっきっから不自然に手を後ろに回しているからな。
どう考えてもあの後ろに何かを隠し持っているだろう。
何でも召喚できるミロルだ、一瞬たりとも油断は出来ない。
「…そう、良いわよ、捨ててやるわ!」
「げ!」
ミロルが投げたのは爆破寸前であろうグレネードだった! 馬鹿か!?
あの距離でグレネード!? 自分も巻き込まれるぞ!
「く!」
次の瞬間、何故奴があんな危険を冒してまでグレネードを投げたのか分かった。
奴が投げたのは閃光弾、閃光弾なら自分の近くで投げても
自分にダメージと言う事は無いだろう、視界が奪われるだけだ。
目を瞑れば視界を失うことを避ける事も出来るだろう。
だが、俺達からして見れば、これは致命的だ、奴はすぐに軽機関銃を召喚し
周囲に乱射すれば俺達に攻撃を加えることが出来るだろう。
だが、俺達はそういう訳にはいかない、俺の狙撃は視界が奪われれば機能しない。
フレイの攻撃だって、視界が塞がれてしまうと困難だ。
「め、目がぁ! 眩しー!」
フレイの叫び声が聞こえる。
俺は何とか視線をずらし、目を覆った上で瞑り閃光を防いではいるが
フレイにそんな反応は出来なかったのだろう。
「フレイ…」
俺は少しだけ片目を開け、フレイの状況を確認した。
フレイは自分の目を両手で押さえ、叫び声を上げて走り回ってる。
「あだ!」
その時、フレイとは違う叫び声が聞こえた。
その悲鳴が誰の物かはすぐ分かる、どうやら走り回るフレイにミロルが激突されたみたいだ。
「こ、この!」
向こうは視界が開けたのか、激突されたフレイに向けてM16を向けている。
このままだとフレイが不味いぞ!
「まずはあなたから!」
ミロルの指先が引き金を引こうとした瞬間、ミロルの眼前に剣の盾の様な物が現われ
ミロルの凶弾からフレイを守った。
「嘘!?」
「フレイ! リオ! 何してるの!?」
「ナイスだ! トラ! ウィング!」
ミロルの放った弾丸は彼女の眼前に現われた剣の傘に弾かれ
フレイには1発たりとも当たらなかった。
まぁ、あと少しで剣に弾かれた弾丸が俺に当たるところだったけどさ。
やっぱり傘状だと周囲に結構な危険が及ぶよな、こうアンテナ見たいな形状なら
あまり被害とか拡大しないだろうけど、反射的にあの形状を再現するのは無理だろう。
「冗談じゃ無い…まさか、私の攻撃がことごとくあしらわれるなんて…」
「ふぅ、俺達がここまで揃ってるんだ、そう簡単に崩せないぞ」
「…これが小さな戦士達…たった4人に私が追い込まれるなんて…
…リオに追い込まれるならまだ良い、まだ納得できるわ
でも、こんな子供達に追い込まれるなんて…」
「さぁミロル、降伏しろ、別にお前はテメェの国に残る理由はないだろ?」
「言ったでしょ? 私は国民達の為に戦うのよ、戦って戦って
憎い人間を殺して、褒められて…だから戦う、その為に私は戦うのよ
私を散々もてあそんできた奴を殺して褒められる…この世界は私にとっては楽園
だからこそ、私はあなたを殺す…それが、私の!」
「だから国民を爆撃したのか!? 殺したいから!?
何の罪も無い国民を!? テメェを褒めてた国民を!?
用済みになったらさよならか!? えぇ! おい!」
「ば、爆撃? な、何の事?」
「は?」
ま、まさか…あの爆発はこいつがやったわけじゃ無いのか?
だが、あの爆弾はこいつの物…
もしかして、用途も聞かされずあの爆弾を作ったのか?
可能性はあるかも知れ無い、自分勝手な国王だろうからな。
自分のやりたいことをわざわざ兵士に告げないという可能性だって十分ある。
「そんな…そんな事…国王は1度も…」
「…ミロル、改めて言うぞ、お前があの爆弾を用途も知らず作ったというならな
大人しく降伏しろ、俺はお前とやってると
どうも昔一緒にゲームやってたミミが出てくるんだ
だから、出来れば戦いたくは無い」
「…な、なんで私のオンラインネームをあんたが」
「は?」
ど、どういうことだ? 何で…何が…何でこいつがあいつのオンラインネームを?
そもそも、なんで反応できる?
「…わ、私のフレンドは…コウさんだけ…」
「……何でお前が俺のオンラインネームを?」
「「……」」
…まさか…まさかこいつは…
「ま…さか…あなたが…」
「……」
「く! あ、あり得ない!…そんな訳…そんな訳ない! く! そんな訳!」
「お、おい!」
彼女はバイクを召喚し、それに乗り、凄い速度でぶっ飛ばして逃げだした。
「リオちゃん! お、追わないの!?」
「……」
「リオちゃん!」
「リオ! 何とか言って!」
「リオちゃん…どうしたの? 何だか」
「……な、何でも無い…あ、あいつは…追わなくて良い、もう狙えない」
「え? あ、うん」
…そんな馬鹿な、なんであの子が…この世界にいるんだ?
あ、あの子も、し、死んだのか? な、何でだ? あんなに明るい子だったのに
何があったんだ? 何であんな危険思考をするようになっちまったんだ?
何だよ、憎い人間を殺してって…散々もてあそんできた奴? 何なんだよ。
何であの子がこんな戦争しかない世界を楽園なんて言ったんだ?
あぁ、クソ! 頭の中が疑問で一杯だ…何で、何で…何で何で何で!
クソ! さっぱり分からない! 頭を回転させればさせるほど疑問が深まる!
……クソ! 何なんだよ…何なんだよ!
「り、リオちゃん…ほ、本当に大丈夫?」
「だ、大丈夫だ…」
「リオ、無理しないで、立てる?」
「あぁ、うぐ!」
「リオ!」
疑問で頭がいっぱいで足を酷く捻っていたことを忘れてた…
「リオ、とにかくアルルに見て貰おう、どうすれば良い?」
「じゃあ、肩を貸してくれ」
「うん」
俺はトラ達に協力して貰い、仮拠点のアルルがいる場所にまで移動した。
だが、その道中でも、俺の頭の中は考え事で一杯だった。
一気に色んな事実が出てきたせいで、頭の整理が追い付かない。
何で、どうしての繰り返し、クソ! あのハゲ神め!
訳の分からないことばかりしやがってよ!
どんだけ人をからかえば気がすむんだよ!




