トラ達の戦い
とにかく全力で私達は敵を攻撃した。
敵の攻撃は私とウィングとの協力魔法で捌くことも出来た。
これ位の相手なら、リオが無理をしないでも勝てる!
そうだ、このまま私はリオを守りきるんだ!
「このまま守りきる! リオも、皆も! 全員で一緒に!」
「うん! 絶対に!」
「あ、み、皆! 避けて!」
「え?」
ウィングの焦った声が聞こえ、冷静に正面を見てみた、すると何で焦っているのか
それがすぐに分かった…あの鉄の塊その鉄の塊がこちらに穴が空いた棒を向けていた。
私は何度か見ていた、あそこから凄く大きな弾が飛んで来て、地面を抉っていたのを。
つまり今…わ、たし達は…何で!
「不味い!」
その穴が空いた棒が強く光ったと思うと、何か大きな塊が飛んできた。
でも、一瞬だ…本当に一瞬だけ、そんな物が見えた。
あぁ、なんで…リオちゃん、ごめんなさい…私はあなたとの約束を。
「くぅ!」
次の瞬間、私の目の前は真っ暗になった、何も考えることが出来なかった。
本当に真っ暗闇、何も見えない…自分が立っているのか、座っているのか、倒れているのか
その全部が分からない状態になっていた、何も見えず、言葉も発することが出来ない。
あぁ、私は死んだんだろう、きっとそうだ…リオちゃんにあんな事を言っておきながら
私は結局…誰も守れないで死んだ…ごめんなさい、皆、私のせいだ。
私が…意地を張って、あんな事を言ったからだ。
私が1番して欲しくないことを、私はリオちゃんにしてしまった。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…ごめん…なさい…
あ、れ? でも、もしも本当に死んじゃってたら、こんな風に物事を考える事なんて出来るの?
「……うぅ」
冷静になってその事に気が付いたとき、自分が生きているという事が分かった。
その他にも色々な感覚も…そして、私は自分の状況を理解できた、何かに押さえ込まれていると言う事。
それと地面に寝転がっていると言う事、そして、私を押さえ込んでる人の温かさを。
「……し、シルバー…?」
ゆっくりと目を開けてみると、目の前にあったのは銀色の髪の毛。
その髪の毛が誰の物かなんてすぐに分かった。
「と、トラさん…怪我は?」
「し、シルバー! 怪我を!」
シルバーは背中から血を出している、きっと私を庇ったときに!
「これ位…大丈夫ですわ、トラさんが無事で良かったですわ」
「でも!」
「私の心配は…良いです、今はフレイさん達の安否を…」
「無理しないで!」
「フレイさん達は…大丈夫ですか?」
私はすぐに顔を上げ、皆の状態を確認することにした。
フレイはマナに、ウィングはメルトに庇って貰っている。
だけど、マナとメルトはシルバーと同じ様に血を流している。
マナは左足から、メルトは右足から血を出している。
そんな…何でこんな!?
「あ、あぁ…」
「皆さんは…大丈夫…ですか?」
「フレイと…ウィングは大丈夫…だけど、メルトとマナが…」
「……あぁ、きっと皆さんも私と同じく…守ろうと」
「シルバー!」
「…トラさん、私たちを置いて…逃げてくださいませ」
シルバーの一言に私は唖然とした、自分達を見捨てて逃げろって!?
「何言ってるの!?」
「今の私たちを連れては…逃げられませんわ、ですが…皆様だけなら…」
「何馬鹿な事を言ってるの!? ねぇ!」
「私は…皆さんに死んで欲しくありませんわ…」
「折角自分の家を建て直したのに!? これからじゃん! 死んだら!」
「…私の夢は叶いましたわ…ですので、私は皆様の為に…命を捨てても
一切の…後悔も…心残りも…ありません…わ」
「ふざけないでよ! シルバー達に死なれても、私達はリオに顔向けできない!?」
こんなの…駄目だ…シルバー達を見捨てて逃げるなんて…出来ない!
でも、どうすれば良い? 私にはシルバー達を浮遊させて運ぶ力は無い。
フレイに頼んでも、きっと1人くらいしか運べない…だけど。
「ねぇ! マナ! 立ってよ! 逃げるんだ! 一緒に!」
「メルト…め、メルト…だ、駄目だよ…お願い…だから、立ってよ…ねぇ…」
「いいから…逃げて、この足じゃ、走れないから、君達に死なれちゃ、困るんだよ」
「フレイさん…大丈夫ですよ…私は死ぬつもりは無いんです。
でも、このまま一緒に居ては、全滅しますから…今は逃げてください…」
あ…あぁ…私が…私のせいで…皆が…こんな…
「……トラ…さん…急いで、逃げてください」
「だ、だめ…駄目だよ…」
私は…どうすれば良い? こんな時、リオならどうする?
リオならこの状況をどう切り抜ける? リオは絶対にシルバー達を見捨てない。
見捨てないでこの状況を切り抜けるには…あの動いてる鉄の塊を壊す事が出来れば。
だけど、私達3人ではあの動いてる鉄の塊を壊すことは困難だ。
リオなら壊すことが出来るかも知れないけど、私達だけで壊すには…
「うぅ…マナ…起きてよぉ! 死んじゃうよ!」
そうだ、フレイなら壊すことが出来るかも知れない!
フレイの怪力なら、あの鉄の塊を壊して、この状況を切り抜けられるかも!
でも、ここからあの鉄の塊までかなり距離がある気がする。
正面から走っていったら、狙い撃ち、フレイにもしもの事が起こってしまったら
私達はあの鉄の塊を壊す手段を完全に失うことになってしまう。
そうなったら、私達の全滅は間違いない。
でも、やらないと私達に勝ち目は無いだろうし、どう頑張っても全滅だ。
だったら一か八かの勝負を仕掛けるしか無い、何とかあの鉄の塊の注意を
惹きつける方法とかは無いだろうか、例えば、何か別の脅威を見せるとか。
…駄目だ、分からない…私達3人の魔法だと注意を惹きつける方法が無い。
敵の弾を防いでいた時みたいにウィングの剣を傘のようにして走る方法。
あれをやっても、あの威力だし多分壊されてしまう。
「と、トラちゃん! どうするの!?」
「え?」
「こ、このままだと私達…皆…」
私がこんな事を考えている間に鉄の塊はこっちに鉄の棒を改めて向けてきた。
どうしよう、どうすれば良いの? どうしたら…あれを…
「……どうすれば」
私がそんな事を考えていると、鉄の棒の先端が光った。
あ、もう駄目だ…私が…私のせいだ…私がもっと早く判断してたら
そうすれば…皆、助かったかも知れないのに。
「いやぁあーー!!」
私達が目を瞑って悲鳴を上げると、近くの方で大きな爆発音が聞こえた。
その時の勢いか、少し私達は強風に包まれる。
その後、目を開けてみると、私達の少し前に大きな穴が空いている。
外れたんだ、つまりあの大きな鉄の塊は正確に私達を撃ち抜けるわけじゃ無い。
だったら、ある程度左右に動きながら走れば近寄れるかも知れない!
「ふ、フレイ! ウィング! ジグザグ進んであの塊に近付く!」
「なんで!? 危ないよ!」
「正確に当てられないみたいだし、あまり連続で撃つことも出来ないみたいだ!
だったら、ジグザグ進めば近寄れる! 近寄ることが出来ればフレイが壊すことが出来る!」
「絶対に危ないけど…やるしか無い!」
「う、うん!」
「ウィング、私達は正面以外に壁を作って進む、そうしないと他の兵士に攻撃されちゃう
だから、剣を何本も出して、私がそれを操るから」
「分かった!」
ウィングは私の言った通りに沢山の剣を出してくれた、私はそれを操り
自分達の正面の斜め2箇所に小さな傘状の壁を作る。
これなら弾丸が飛んできても防げるし、自由に動かすことが出来る。
「行くよ!」
「うん!」
私達はジグザグに走ることであの鉄の棒に完全に狙われることを避けて進むことに成功した。
鉄の棒は私達を追うように左右に振られ、狙いを定めることが出来てないようだった。
私の予想通りだ、このまま近付いて、フレイがあの鉄の塊を壊すことが出来れば勝ち!
「うわ!」
でも、向こうは完全に狙いを定めていない状況でも攻撃をしてくる。
だけど、やっぱり1発1発の間には時間が空いている、だから、私の予想通りだと分かった。
あの攻撃は連続では出来ない、だから、1発撃った後、少しの間は正面に向って走る。
10秒位の間隔が空いたらまたジグザグに走る、これで近寄れる!
「このまま行けば勝てる!」
そのままの移動方法で私達はゆっくりとだけど、確実に鉄の塊の方に走っていった。
だけど、ここで予想外の事が起こる。
「うわぁ!」
正面から何発の弾が飛んできた、あの鉄の棒から放たれた物じゃ無い。
私は何とか正面に壁を作ってその弾を防いだ。
だけど、問題しか無い、このままだと動けない、動けないと言う事は
あの鉄の棒に完璧に狙われると言う事。
そうなったら…わ、私達は…こ、ここまで来たのに!
ここまで来たのに! この攻撃が止まってくれないと、私達は!
「ほえ?」
私が焦っていると、金属に金属が強く当たるような音が聞こえた。
それと同時に小さな爆発音、更には飛んできた弾が止まった。
私はそのチャンスを逃さず、すぐに左に走り出す様、2人に指示を出し。
3人同時に横に動く、それから少しして右側から大きな爆発音と強い風が吹いた。
きっとさっきまで私達が居た場所だ、そこから聞こえた音だ。
あのままあの場所に居たら、私達は終わってた。
でも、なんで弾が止まったの? いや、今は良い。
私達はすぐに移動して、鉄の塊まで急接近した。
「だりゃぁあ!」
フレイは鉄の塊を強く殴りつけ、鉄に穴を開けた。
同時くらいに鉄の塊は軽く爆発、上の方から人が姿を見せ
逃げだしていった…これは追った方が良いのかも知れないけど追わない方が良い気がする。
それよりも…何で弾が止まったのか…それがよく分からなかった。
でも…何となくだけど…誰のお陰かは分かった…予想でしか無いのだけど…また、助けられた。
やっぱり、私達だけじゃ…ごめん、無理させちゃって。
「…リオさん、本体を狙えばよかったのでは?」
「は、馬鹿言え、あいつが頭捻って考えた作戦だ
あと1歩の所で俺がいいとこ取りしたら酷だろ?
それに、ちょっと嬉しくてな、あいつら…あそこまで成長してたんだな」
「少しは頼りになると感じましたか?」
「最初から頼りになる奴らだとは思ってたさ、でも、ここまでとは思って無かった。
これなら、少々は安心だろう、さて、アルル、一旦戻ろう
あいつらが戻ってきたときに俺が居ないとバレるだろうし」
「案外、もうバレてたりして」
「何でだよ、姿も見せてないぞ?」
「姿を見せず、さりげなく助ける事が出来る人物なんて1人しかいない出ように」
「あれはただのハプニングだ、そう考えるのが普通だ、ほら、さっさと帰るぞ、しんどいし」
「はいはい、分かりましたよ、リオさ…!?」
「な、何だよ」
「そのだっこしてのポーズ! 可愛い、可愛いのです!」
「はぁ!? おま! 止めろ! 俺結構しんどいんだよ!」
「あぁ、リオさーん、お姉ちゃんがだっこして差し上げまちゅよー!」
「キモい表情で近寄るな!」
「あば!」
「はぁ、はぁ、さっさと帰るぞ! 怪我とかで痛いんだよ! こちとら!」
「は、はい…申し訳ありませんでした…」
「はぁ、本当勘弁して欲しい」




