救い
あいつはきっと、俺の反撃に警戒してフレイ達を利用してくるはず。
それが1番効果的だし、1番ダメージを与える事が出来る。
だが、その攻撃の弱点くらい分かってた方が良いと思うがな。
「そらよ! 大事なお仲間さんだぜ!」
投げたな、やはり投げた、だけど、今回はさっきまでとは違うぞ。
力強く投げたのが失敗だったな、ロリコン変態野郎!
「うし!」
俺は飛んできたウィングを少し飛び上がり、キャッチした。
そのまま俺は背後までウィングと一緒に飛ばされる。
その間にあいつを狙い、撃つことは可能だ!
「これで!」
「良い作戦だ、でもよ!」
クソ! 今度はトラを盾にしやがった! ふざけやがって!
「くぅ!」
「分かったろ!? 何やっても無駄なんだよ!」
「く!」
相手の攻撃に対し、反射的に手に持っているウィンチェスターを
盾にした、大事な銃器を無下に扱うのはちと痛まれるが!
それは今はどうでも言い! こいつは戦うための武器だ!
何かを守る為の武器だ! 大事な物を守る為に傷付いても良いだろ!
それは名誉の傷だ! 何かを守る為に付いた傷!
「うぅ!」
「マジで面白いよ、お前、勝てないと分かってても立ち向かう度胸
お前がもし女じゃ無く、男だったら、兄弟分にしてやりたいほどだ」
「は! お前みたいなクズ野郎の下に付くわけ無いだろ?」
「だよな、お前みたいなタイプならそう答えるだろうな」
「そりゃそうだ、誰が卑怯者のロリコン野郎の下に付くかよ
ガキ1人に翻弄されて、卑怯な手を使っても足をさせられてんだ
実力もたかが知れてるだろ? 脳みそも腐ってんだろ?」
「そのなりでよく言えるな、だが、そこが面白い、良いぜ
どれ位にまで追い込んだら、その減らず口を叩けなくなるか興味が出て来た」
「クソ野郎に負けるか!」
だが、状況は悪化する一方か、何とかフレイ達をこっちに来させないと不味い。
このままあいつらを盾にされたりしていたら攻撃が困難だ。
何とかあいつらが目を覚ますまで粘るか? そうすればまだ勝機はある。
1対1でもここまで戦えたんだ、1対4なら…可能性はある。
だが、あいつらの実力じゃ、こいつに到底敵わないのはさっき分かった。
つまり、勝利する最たる手立ては背後からの奇襲だ。
今、あいつの足下に居るのはトラだ、フレイはその後ろ。
このタイミングでフレイが意識を取り返してくれれば勝算はある。
この攻撃方法の弱点は、あいつらの意識が戻るまでの時間を早めることだからな。
「じゃあ、行くぜ、何発目に」
あいつはトラを盾にしたままこちらにゆっくりと歩いてきた。
狙撃銃で狙えるか? 何とか足は見えてるし、そこを狙えば!
…くぅ、駄目か、あいつは俺が何処を狙ってるのかちゃんとみてやがる。
俺が狙った方向に合わせてトラを動かしてくるから狙えない。
上にしてるときは、僅かに目玉が見えているのだが
ダメージを受けてブレが激しくなってきてるこの状況で
そんなギリギリを狙ったショットは怖くて出来ない。
少しでもズレれば、その弾丸はトラに当たるんだからな。
「死ぬかな!」
「うぐぁ!」
クソ! しまった! 首を捕まれた!
「クク、まぁ、端からこうすりゃあ良かったんだがな」
「こ、の!」
「ジタバタしても無駄だぜ? 因みに手をこっちに向けるのも無駄!」
くぅ! 狙撃しようとしたら両手を捕まれたか!
「は、離せ!」
「へ、お前の蹴りなんぞ大したことないな」
「くぅ!」
ガキの体じゃ、大の大人を攻撃してもダメージは与えられないか…
クソ! どうする? かなりヤバいぞ、この状況…
「まぁ、このまま股の方を舐めてやっても良いんだが
それじゃあ、何だか面白くないよなぁ?
やっぱ抵抗する気力を奪った後にじっくりとだな!」
「このロリコンが! 離しやがれ!」
「良いぞっと!」
「あぐぁ!」
両手を離すと同時に、あいつの蹴りが俺の腹に入る。
何か…こんな目にばかり遭ってるな…ケホ、クソ。
「こ…の…」
「おら」
「あぐぁあ!」
は、腹を踏んで来やがった! クソ…腹…痛い…
「でー、今度はこの針の方を」
「うぐうっぁあ!!」
あ、あぐ…い、あ! は、りが…体の中に! 痛い!
「へへ、良い悲鳴だな、お嬢さん?
さっきまではあんなに強気だったのに
こんなに可愛らしい悲鳴上げやがってよ、あそこがいきり立つぜ」
「気持ち…悪い事を…言ってんじゃ、うぐぁぁう!」
「はは、まだまだ抵抗の意思はあるんだな、やっぱ根性スゲーよ」
クソ! こんな…こんな奴に負けるとか! ふ、ふ、ふざけんなよ…
ふざけんなよ! 負けるか! こんなクソ野郎に! 負けて、たまるかぁ!
「くぅ!」
「おら!」
「うぐ!」
狙撃銃を召喚して反撃をしようと思ったが、右手を強く踏まれて狙えない。
なら、今度は左手で!
「無駄だって」
「く、う…」
両手を両足で押さえられた、あいつは両手が自由。
俺は両手が殆ど動かせない…殆ど。
「さぁて、どうする? こんな体勢じゃあ何も出来ないよな?
抵抗できるわけが無い、で、お前は今大股開き、俺は両手が自由だ」
「ま、まさか!」
「俺はロリコンだってお前も何度も言ってたとおり、俺はな
お前らみたいなガキが大好きでよ、ぐちゃぐちゃにしたいって思うんだ
で、この体勢、どうやらお前さん、ガキのくせにそれなりの知識があるみたいだし
分かるよなぁ? この後、俺がどうするか
ロリコンである俺が誰も居ないこの場所で、お前と2人きり
お前は抵抗できずに大股開き、こうなってくると次がどうなるか分かるよな?」
「や、止めろ!」
ん? 何だ? この感覚…この状態で超集中状態にでも入ったか?
ん? 何か見える、銃口の先、赤い線が…まさか、これは!
「その焦った表情、可愛いもんだ、でもよ、止めるわけ無いじゃねぇか」
……あぁ、最悪だ、八方塞がりだ、もう駄目だ、お終いだぁ~
勝てるわけ無いよ、どうやら俺はここまでのようだ。
「あぁ、もう駄目だな~、終わったな~、俺の人生終わったな~」
「んあ? 随分と余裕そうじゃねーかよ」
「……まさか、八方塞がりだよ~、勝てるわけ無いよ~」
「あぁ?」
「ま、もう勝負付いたけどな!」
俺は両手に持っている狙撃銃の引き金を引いた
銃弾は赤い線の通りに飛んでいき、壁に当たり、跳弾
それも赤い線で見えたとおりの軌道だった。
そのまま上に打ち上げられ、弾丸同士が激突し
右側の弾丸があいつの背中を貫いた。
「うぐ! 何!?」
「跳弾って言うんだ、ケホ、さんざんやってくれやがって
まぁ、そのお陰でこの力を手に入れたんだ、感謝はしてる」
「こ、の、ガキ!」
「おいたが過ぎたな、クソ野郎…これで今度こそ死ね」
「や、止めてくれよ! 助けてくれ!」
「今更命乞いか? もう遅いんだよ」
「頼む! 俺には娘も息子も居る! 俺が死んだらそいつらが悲しむ!」
「……」
「な? 頼むよ!」
「…お前みたいな奴に嫁が出来るのか?」
「く」
「待て!」
「うぉ!」
「それ以上、後ろにさがるな、ウィングの所には行かせねぇ」
「…クソ」
「大人しく死にやがれ、これで…あ、く」
こ、このタイミングでめまい? あ、そ、そうか、あいつに刺されたせいで
出血ヤバいのか…このままじゃ…
「は! 精神は大丈夫でも体は限界らしいな!」
「クソ! ウィング!」
「へ、これで俺の勝ちだな、その状態じゃ俺は撃てないだろ?
立ってるのも相当辛いんだろ? 分かるんだぜ? 何人ものガキの
苦しむ姿を見てきたからな、体力が限界だというのは表情に出るんだ
お前のその表情、もうすでに限界を超えてるのはもろわかりだ」
「こ、の…」
「さぁて、この娘のあそこを舐めてやろうかなぁ?」
「止めろ!」
「んー? それで止めると思ってるのかぁ?
俺はそろそろ限界なんだ、お前が代わりに相手してくれるか?」
「…そ、それは」
「じゃあ、こいつを」
「や、止めろ!」
「まぁ、どっちにせよ、お前ら全員同じ目に遭うんだ」
クソ…ウィングを抱きかかえたまま俺を踏み付けやがった!
「あぐ…」
「もうちょっとやったら死んじまいそうだな
まぁ、その状態で見てろよ、お前が守ろうとした奴が
全部ぶっ壊れるところを」
「や、やめ!」
「私はね…今、すごく怒ってるの」
「あ?」
あいつの背後にいつの間にか立っていたフレイが
全身を震わせながら、一切の容赦ない一撃をあいつに食らわせた。
その衝撃であのクソ野郎はウィングを離し
足下に居た俺の上に降ってきたから、少し無理をして手を動かし
何とかウィングを一瞬だけ支える事に成功した。
「うぐぁあ! な、何だと!?」
「…よくも…リオちゃんを…ウィングちゃんを…トラちゃんを!」
「や、止めろ、俺には妻が」
「そんなのどうでもいい、私には関係ない」
「な!」
「私は別にお前の家族がどうなろうと知ったこっちゃ無いの
ただ、お前を…リオちゃん達を酷い目に遭わせたお前を殺す
…私は! 私自身が許せない! 私のせいで、リオちゃんがあんな目に遭って!
リオちゃんが…私達を庇ってあんな怪我をしたんだ、それは分かった
さっきのお前の姿を見て分かった! ウィングちゃんを人質に取って!
リオちゃんがお前なんかに負ける訳がないんだ! お前は卑怯者だ!
許さない! 許さない! 許さない! 許さない!!」
あいつ…我を忘れそうなくらいキレてる!
あのままじゃ…あいつが、あのクソ野郎を殺す!
「殺してやる! 殺してやる!」
色々あったが、あいつは今まで誰1人殺してない。
死にそうなダメージを与えたことはよくあったが
それでもブレーキなのか誰も殺しちゃいない。
人をやったことがあるのは、あの中じゃ俺、フラン、メル。
駄目だ、フレイ…お前は!
「や、止めろ!」
「フレイ! や、止めてくれ! そんな、そんなクソ野郎のせいで!
お前が、人を殺る事は無い! それは!」
「…大丈夫、これで私は…リオちゃんと同じになるだけ
ようやく私は…リオちゃんの友達として…やっと一緒になれるの」
「止めてくれ! フレイ!」
「うわぁあああ!!」
フレイの拳があのクソ野郎に向けて振り下ろされた。
俺はもう、目を瞑ることしか出来ない。
俺には…止めることが…出来なかった……
「…フレイさん、大丈夫です」
「…え?」
「……マナ」
目を開け、前を見ると、振り上げられたフレイの拳はマナによって止められてみた。
「リオさん! 大丈夫ですか!?」
「…アルル」
「ウィングさん、トラさんは大丈夫です!」
「……お前ら」
「敵の騎士団が撤退、何とか間に合いました」
「で、そこの男が皆さんを?」
「……皆さん、席を外しててください、後、フレイさんをお願いします」
「え? あ、はい…あの、マナさん? 何だか雰囲気が」
「……こう言うお仕事は私達がします、フレイさんの手は…汚させない。
こんな男の血で、フレイさんの手は汚させない」
「ど、どういう」
マナの威圧に負け、俺達は一旦外に出た。
「うぐあぁああわああ!」
その直後くらいだ、総司令の内部からあの男の叫び声が響いた。
……マナ、こう言うのはおかしいかも知れないし、不謹慎かも知れないけど。
「うわぁああ! リオちゃん、ごめん、ごめん! 私、出来なかったよ!
私…出来なかった…私は皆の仇を取れなかった!」
……ありがとう、フレイを守ってくれて…こいつの代わりに仇を取ってくれて。
「ごめんね、ごめんね! リオちゃんがあいつのせいで!
あんなに酷い怪我したのに! 私は! 私は!」
「…それで良いんだよ、俺はお前を救えて嬉しいんだ」
「ふえ?」
「…ありがとうな、仇を取ろうとしてくれて、でもよ、やらない方が良い
あんな奴の血で何もお前が手を汚すことは無い
1度やっちまったら…もう後戻りは出来ないからな」
「う、うぅ…うわぁああ!」
フレイは、マナが来なくても、きっと殺さなかっただろうな。
だって、マジで殺そうとしてたなら、こいつの怪力を
マナが止められるわけが無い…だが、止めることが出来ていた。
それはきっと…フレイはあいつを殺そうとしても殺せなかったからだ。
それで良い…もし殺してたら、俺はこいつらを救えてない。
ありがとうな、マナ…でも、ごめんよ…汚い事をやらせてしまって。




