裏取引について
裏取引の情報収集を指示して、数日の時間が経過した。
そろそろアルルから裏取引の事に関しての情報が知らされるはずだ。
「ただいま戻りました」
丁度良いタイミングにアルルが戻ってきたな。
表情からして、今日も中々に手応えがあった様だ。
「アルル、そろそろ集めた情報を詳しく教えてくれ」
「はい、そろそろ言われると思っていたのでまとめてきました」
アルルは自分の胸元に手を入れて、そこからメモ帳を取り出した。
あいつ、何処に入れてるんだよ、まぁ、アルルは胸がデカいわけじゃ無いし
別に胸ポケットとかに入れていても、取り出すのは簡単なんだろう。
「リオさん、なんか妙な事考えてません?」
「な、何の事だよ」
「いえ、ほら、私が胸ポケットからメモ帳を出したときに
明らかに視線が…あ、リオさんが私のお胸を見たいというなら
このアルル、いつだろうと全てをさらけ出す所存で!」
「んな訳ないだろうが! 誰がテメェなんぞの胸を見るかよ!
そんな事するくらいなら、自分の胸見てたほうがまだマシだ!」
「ま、まぁ、リオさんのペチャンコおっぱいの方が可愛いですし」
「うっさいな! とにかく情報を教えろ!」
ま、まぁ、ペチャンコだしな、うん、もうちょっと胸があれば
揉んでみて女の胸の柔らかさを体験できていただろうが…
な、何考えてるんだろう、俺…やっぱり童貞だったからだな。
仕方ないじゃ無いか、彼女なんて出来なかったんだから。
家でずっと引きこもりゲーマーやってたんだからさ。
そりゃぁ、ネット上では女の子と会話くらいはしたさ
よく話してた唯一フレンドだった子は自分は女の子ですって言ってたし。
でも、その子が女の子という保証は無いし
住んでる場所もかなり違ったし、会えずじまいだよ。
はぁ、家が近けりゃ、会ってみたかったんだけどな。
もしもネカマだったとしても、気が合う人だったから別によかったのにな。
「うぅ…」
「リオさん? あの、何だか暗いですよ?」
「うっさいなぁ! 童貞で何が悪い!」
は! しまった! つい口が滑ってしまった!
ヤバいよ、アルルがものすごく怪訝な表情してるし!
「…リオさん」
「あ、あ、あれは、その!」
「女の子は童貞じゃ無くて処女ですよ? それにリオさんの年齢なら
そりゃあ、処女が普通です、と言うか、処女以外だと問題しかありません
因みに私も処女だったりしますよ? ですから、気を落とさないでください」
「え? あ、そ、そうか」
え? そこ? そこなの? 何でそこ? いや、普通はさ
何でそんな言葉を知ってるのかとか聞いてくるよな?
「まぁ、あれですね、きっとお互い初めては!」
「それ以上、口は開かない方が良い、アルル、殺すよ?」
「ふ、フランさん、そのマジな感じで言うのは止めてください」
「リオの初めての相手はこの私、リオの唇は私が奪う」
あ、ありゃ? そ、そんな話だったっけ? 唇なんて話題に出たか?
「リオさんの初めては両方私が奪うのです、そして、私は初めてを捧げます」
「何を言ってる、初めては」
「待て! 何か怠い! 何かこれ以上は面倒くさい!
良いからさっさと裏取引の話をしろ!」
じ、自分が原因だとは言え、これ以上は流石に止めないと不味い気がする。
このままだと話進まないぞ、大事な情報を聞こうってのにさ。
「そ、そうですね、すみません、少々熱くなりすぎました」
「ごめん、リオ…」
「初めてって何? 唇を奪うってどういうこと?」
「それはですね…えっと、初めてのキスをいただくと言う事ですね
一生のうち、初めてのキスをいただく、凄いことなんですよ」
「あ、因みに俺の初めてのキスは先生だったりするぞ?」
「「えぇ!?」」
確か3歳くらいだったかな、カナン先生がキスしてくれたんだよなぁ。
成長したことが嬉しかったらしい、フレイ達にもキスはしてたな。
「ど、どういう!」
「ほっぺにこう、チュッと」
「リオさん、それファーストキスじゃ無いです」
「え!? そうなのか!?」
マジで? 俺は今までそれ位でファーストキスなのかと。
意外とそうじゃないんだな、知らなかったよ。
「キスというのは、お互いの唇と唇を付けた時です」
「こんな感じ?」
「ん?」
ウィンがアルルの説明通りの事を俺にしてきた。
「「なぁぁあ!!」」
「なる程、これでキスなのか」
「ちょ、ちょっとぉ! お二人とも何を!!」
「あ、あぁ…私の…」
2人が何故か異常な程に愕然としている、何だ? 凄く動揺してるな。
「おい、何か勘違いしてるみたいだが、唇は付いてないぞ?」
「え?」
「えっと、こんな感じかなって試しただけで…その…」
「あぁ、しかし、異常なくらい顔近くなるんだな、あれ
何か相手がウィンでも妙に恥ずかしかったな」
「わ、私も恥ずかしかった、あのまま付けてもよかった気もしたけど」
「いやいや、兄妹であれは不味いと思うぞ」
「姉妹ですよぉ…それにしても、何か安心しました」
「い、今すぐ奪わないと」
「駄目ですよフランさん! こう言うのはもっとこう
ロマンチックな状況でやらないと!」
「…確かに」
何だかまた話がそれてしまった気がする、いや、原因俺だけどさ。
とにかくさっさと裏取引について聞かないと。
「まぁ、この話はここら辺にして、そろそろ裏取引のことを教えろ」
「そ、そうでしたね、話が異常なくらいにそれてしまいました
ちょっとお待ちを…っとと、これだこれだ、全部お話しした方がよいでしょうか?」
「あぁ、頼む」
裏取引の情報をようやく聞く事が出来るぞ。
何かめちゃくちゃそこに行き着くまでに時間が掛かった気がするけど。
…まぁ、原因は俺なんだけど、まさかアルルの勘が妙に鋭いとは思わなかった。
「えっと、まずは何について話しましょうか、とりあえず裏取引の内容を話します」
「あぁ」
「裏取引でやり取りされてる物はかなりあるらしいのですが、そろそろ開かれるのは
オークション制による奴隷商らしいです」
「奴隷商!?」
「はい、奴隷をやり取りするためのオークションだそうです
まさか奴隷なんて物が動いているとは思いませんでしたよ
後、奴隷以外にも奴隷に与える服や拘束具等を置いているとも噂されています
他にも拷問器具もあるとも噂されています」
まさかの奴隷か…いや、戦火の中じゃ、あってもおかしくは無いのか。
制圧された国の国民が捕獲され、人権を奪われて金で買われる家畜になる。
人権が無いから無理をさせて死なせようがお咎め無し。
戦争ばかりの国ではほぼ確実に出てくることか。
特にリ・アース国は急に力を付けてきた国家らしいから
その時に沢山の奴隷が捕獲されていてもおかしくは無いだろう。
ただサンズ地方では奴隷商なんて聞いたことが無かった。
理由は何だ? ここと比べると規模があまりデカくなかったから
奴隷を買おうとする国民がいなかったからか?
はたまたケイさんがそういう商売の全てを取っ払っていたのか。
だが、後者はあまり無いと思う、いくらケイさんでも
国王が介入するであろう取引に真っ向から反発は出来ないだろう。
なら、サンズ地方では奴隷を買う人間がいなかったから裏取引は無かった
そう考えるのが自然かな。
「詳しい話は聞けなかったんですけどね、国民の皆様も
そんな詳しい事は知らないでしょう、裏取引なんて言う物に
参加出来る程のお金は無いでしょうしね」
「でも、内容は露見してるんだな」
「噂の伝達速度は侮れませんからね」
確かにな、だから一瞬でも露見した場合、その噂は
かなりの速度で国を伝達していくだろう。
でも、国民は手出しできないし、国王が介入してるだろうから
ケビンも手出しは出来ない、きっと強行することだろう。
それに噂が広がってくれれば、奴隷を欲しがってる奴の耳に届く。
そうすりゃ、自然と収獲も増えて行く。
だから、噂が流れているからと言って奴隷商を無くす理由はないだろうな。
「次に日時ですけど、日時は噂では今日から4日後の午後0時から
この国の東北にある、小さな建物の地下で開かれると言う事です
参加する為には前金として50万の資金をその場で払うと
参加することが出来るらしいですよ」
前金で50万もするのか、多分参加費と言った所だろう。
そりゃあ、オークション制だからな参加費が無いと
国に大してメリットが無いだろうしよ。
オークション制の場合、商品を買うことが出来るのは1人だけ
それだけでは大したメリットが無い。
だが、参加費があればやって来た奴全員から金を奪えるからな。
そりゃまぁ、参加費とか用意するわけだ。
「なる程な、かなり大規模なやり取りって事か」
「そうなりますね…それと、何故この裏取引について調べろと?」
「リ・アース国の国王が動いている可能性があるからな
金はあるし、俺達も参加してみても良いと思ってよ」
「何故ですか!? 危険では!?」
「かなりの情報があるはずだろう? 敵国の権力者も動くし
ただその場に居るだけで有効な情報を得られる可能性もある」
「確かにそうですね」
「ただ1つ問題が、参加するとして、俺達が参加するのが難しいと言う事だ
アルル1人なら問題無く参加は出来るだろうが
俺達も参加するとなると、中々に不便だと思う
子供を3人も引き連れてる女が奴隷商に来るなんて」
俺がそこまで話した後、アルルが何かを閃いた様な動きをした。
「何か閃いたのか?」
「はい、でも、結構失礼な事ですが」
「構わないから言え、情報収集のためだからな」
「では、お話しします、えっとですね、参加するときに
皆さんを私の奴隷という事にして参加すればあまり違和感は無いと思います」
「奴隷としてだと?」
マジかよ、何かスゲー屈辱的なんだけど…
でも、確かにその手ならあまり違和感なく入れるかも知れない。
「でもよ、奴隷を買いに来る奴が何で奴隷をもうすでに引き連れてるんだよ」
「ですから、拘束具を新調しに来たとか、拷問器具を買いに来たと思うと思います
直接拘束具を試して、気に入った物を買うとかあるかも知れませんし
まぁ、私はそもそもそう言う事はしないのでハッキリと分かりませんが」
「そりゃそうだろ! 奴隷を買い慣れてるとか怖すぎるわ!」
「ごもっともです」
…はぁ、どうするかな、でも、参加しておきたい気もするんだよな。
色々な情報が転がってるかも知れないし、連れていくとすれば
フランも参加して欲しいところだ。
フランが参加してくれれば、運よく孤立した権力者を催眠術で操って貰って
その権力者から今回の裏取引とか国について色々と聞き出せるからな。
「どうするか…参加するならフランにも参加して欲しいが」
「アルルの奴隷とか嫌だ」
「俺も嫌だ、何か無茶ぶりされそうだし」
「しませんよ! 流石にそんな事!」
「不安だ」
「信じてくださいって! 何だかんだでそう言う事してないでしょ!?」
まぁ、確かに普段あんな感じだけど、何だかんだで最後の一線は守ってるよな。
守ってるのが最後の一線だけなのが結構な問題だけど。
「…変な命令するなよ?」
「分かってますよ」
「リオがそう言うなら私も行く、リオとアルルを2人だけにするのは怖い」
「信頼無いですね、私…」
「むしろ何で信頼されてると思ったの?」
「あはは、手厳しい」
さて、じゃあ4日後だな、4日後に色々と行動に移すか。
しかし、奴隷として参加となると、後々響く可能性もあるんだよな。
「とりあえず4日後に奴隷商に参加するときは
奴隷の服を買いに来たって事にしますね
その時、ついでとしてオークションを見るとか、そんな感じで」
「別に良いが、奴隷の服をなんで取り扱ってるんだろうな
服なんて普通の店で置いてあるだろうに」
「きっと普通の店には置くことが出来ない服があるんでしょうね」
「うわぁ、見たくないな」
はぁ、どんな感じになるのか何か怖いな。




