大都市への潜入
何かアルルが元に戻ってしばらくの時間が経った
当然、そのまま何も起らない等と言うことは無く
ついに潜入の指示が俺達に下されることとなった。
目的地は山を越えた先にある敵の国だ。
まぁ、まだ本拠地というわけではないのだろうが
あんな事があったんだ、山を越えるのは苦労するだろうなぁ。
「ふぅ、それじゃあ、行くか」
今回一緒に行動するのはアルル、フラン、ウィンの3人だ。
理由は最初の潜入と同じで、フランは催眠術で
ウィンはテレポートでの移動をする為だな。
これで行き来が大分楽になるし、効果的だろう。
「それじゃあ、行きましょうか…またあの山を越えるのは怖いですが」
「やるしか無いだろ? 警戒されてるかもだし、こっちも警戒を強化して
移動しよう、バレたりしたら今度こそお陀仏かも知れないからな」
俺達は最初以上に山を登る際に警戒をして進んでいった。
で、俺達が戦闘した場所には別に警戒網などは張って無く。
今度は誰1人敵の姿は無かった。
「いませんね」
「あぁ、だが、警戒はして進むぞ」
そのまま俺達はゆっくりと足を進めていき、リ・アース国へ進んだ。
まぁ、今回は金の心配は無い、今回はケイさんに協力して貰って
サンズ地方にあった金があるからな。
1都市の運営資金全部だ、そりゃもう、何千万とある。
しかも国民のお金もミストラル王国で使う通貨と交換したから
その分も全て合わせると、億は容易に越えているらしい。
だから、宿代は何の問題も無い。
「今回は金があるから宿は問題無いな」
「そうですね、ケイさん達に協力して貰って正解でした」
まぁ、問題はまだあるんだけどな、今回の問題はどうやって国に入るかだ。
サンズ地方は結構ざる警備だったから問題無く通ることが出来たが。
この国はサンズ地方よりも規模があって、警備もかなり厳重みたいだ。
1度国の中に入る事が出来ればウィンの魔法で行き来は自在。
だが、1度入るまでが難しい、後は拠点を入手するまでが厳しいんだよな。
「…どうしましょうか」
「とりあえず夜間まで待機だな」
敵の門が俺の狙撃銃で見えるだけの距離をとって、夜間まで待機することになった。
で、2日目の夜間、流石に厳重な警戒網をしいているこの都市でも
夜間は警戒が緩くなるみたいで、門番が1人だけになる様だった。
これはチャンスだな、ひとまずゆっくりと近づく。
「うん、後は」
ある程度まで近付いたら、フランの魔法で門番に催眠術を掛け。
門番に入国の為の手続きをさせ、俺達は国に侵入することに成功した。
後は嘘の記憶を催眠術で埋め込んで、俺達は容易に侵入することに成功した。
やっぱりフランの催眠術は汎用性が高いな。
「侵入、成功しましたね」
「あぁ、中々に上手く行った」
その日はとりあえず民宿で1夜を過ごし、次の日に1軒の家を購入した。
いやぁ、かなりの金があるお陰で、潜入がかなり楽だな。
で、確か家を建てるときは国の兵士の検分が入るらしいが
そこはフランがいる、その兵士を催眠術で操り
俺達に取って都合の良い様に検分を終わらせた。
まぁ、家を新しく建てて2日間は動けなかったが、それは仕方ないことだ。
本当、催眠術の汎用性は本当に凄まじい、フランが仲間になってくれて助かった。
「上手く行きましたね」
「あぁ、まず第1段階成功という所だな」
計画は順調、後は情報収集をすることだな。
と言っても、子供1人が色々と聞くとなると目立つな。
こっからが割と厳しいんだよなぁ、まぁ、俺は狙撃銃での情報収集をするけど。
「よしっと」
狙撃銃を召喚して街の人達の色々な話を盗み聞くことにした。
「ねぇ、あの店、特売ですって」
「そうなの!?」
しかし、聞えてくる会話の殆どは取るに足らない情報。
結構仕方ないんだよな、重要な情報を知ってる国民なんて殆どいないんだから。
「はぁ…ウィン」
「何?」
「山上にテレポート出来るか?」
「うん、大丈夫だよ」
俺はウィンに頼んで昨日待機していた山上までテレポートで移動した。
その場所から狙撃銃を構えて国の中をのぞき見る。
この方が目立たないし効果的だ、国の中に潜入した理由は
アルルとフランが国民達から情報を直接聞き出すためだ。
で、俺は外から情報を探る、情報を探す手段が
複数あると言うのは大分良いことだ。
「っと」
「……」
ひとまず城の門兵に狙撃銃を向けて情報を探ろうとしたが
一言も言葉を発しない、常に周囲を警戒しているようだし
…どうやら、今までの連中とは練度が違うらしい。
流石は大都市…油断は出来ないと言う感じか。
「お」
俺が狙撃銃で色々とみていると、1箇所で何人もの兵士達が集まっていた。
これはチャンスかも知れない、さっさと探ってみるか。
「て、今回の訓練は近接戦闘だ、良いか? 我らは接近戦最強で無ければならない
あの娘の部隊に我々が遅れを取っていると言う事実は変わらぬが
我らは違う方向で強くならねばならぬのだ
故に、常に鍛錬を忘れず、上を目指し続けろ!」
「は!」
「ケビン様、まずは何を!」
「最初は打ち合いだ、ある程度準備が整い次第、報告をしてこい」
「了解です!」
あいつが指揮官か…かなりの存在感があるな、多分実力も相当。
ここで仕留める事が出来れば、きっとかなりの損害を。
「…ふむ、気のせいか、殺気を感じた気がするのだが」
…あ、ありゃ、中々仕留められない気がする、フランみたいな感じか。
戦闘が得意で、勘が鋭い…ああいう奴は仕留めにくいな。
でも、今やらねぇと不味いだろうな、仕留められる内に仕留めないと。
……ち、駄目か、死角に入った。
「はぁ」
中々に面倒くさそうな奴が居る、こりゃ、非常に厄介だ。
それに、他の指揮官とかと違って、どうもあいつは
かなり周りに慕われてるようにも見えた。
もしかしたら、リ・アース国の数少ない常識人なのかも知れない。
総司令となるはずの国王は話に聞いたところ屑らしいし
ああいうまともそうな奴は生かしておいた方が良いのか?
…判断に苦しむな、あいつが力を付けて行ってくれれば
敵国が内側から崩れる可能性もあるしなぁ。
「…難しいな」
とりあえず、あの男の評価を聞いてみた方が良いか。
良い感じの評価なら、内側から壊してくれる可能性もあるし。
しばらくは放置しておいた方が良いだろう。
ただ、あまり評価がよくない場合なら…やっといた方が良いだろう。
まぁ、今は情報収集するしか無いか。
「っと」
ひとまず街の人々にスコープを向けてみて、情報を探る。
「ね、またあれが始まるらしいわよ」
「あれか、全く潰れてくれないな、ケビンさんに何度か言って
何回も潰してくれてるはずなのに、終わらないって言うな」
「噂によれば、かなり狡猾な人が管理してるらしいわよ
だからケビンさんでも捕獲することが出来ないらしいわ」
ケビンさん、さっきの指揮官様か
なる程、国民からの信頼も割と厚いみたいだな。
しかしなぁ、1都市の兵力が総出で動いても捕獲できない謎の人物か
あの話を聞いた感じ、あくどい事をしてるんだろう。
多分組織だろうな。
「本当止めて欲しいよ、裏取引とか治安が悪くなっていけねぇっての」
「本当よね、早く捕まえて欲しいわ、今度またケビンさんにお願いしましょう」
「だな」
裏取引か…何だかヤバそうな響きだな。
でもなぁ、違和感があるな、国民も分かるほどに堂々としてる裏取引。
それなのに未だに解決できてないのか、かなりの規模だろうに。
もしかしたら、そのケビンとかって言う奴がどうしようも無い規模なのか。
そんな規模となると、可能性は1つ、国王が動いているという可能性だ。
リ・アース国の国王が裏で糸を引いてる取引だとすれば
その組織に所属しているケビンが手出しできないのもうなずける。
かといって、奴も動かないと国民から反感を食らうだろう。
だから動いてはいるが、捕獲には至ってない。
裏取引と言うくらいだ、相当の金が動いていると考えても良いだろう。
それ程の金が動くほどの取引を潰したとなれば
ケビンは国王に処罰される、そりゃ、捕獲も出来ないわな。
あくまで推測だが、大方あってるとは思う。
「裏取引ねぇ」
「裏取引?」
「あぁ、そんなのがあるらしい…どうも臭いな」
「すんすん…私、臭い? お風呂入ってると思うけど」
「…そう言う意味じゃ無い、ま、とりあえず戻るか
アルルにも色々と伝えないといけないからな」
俺達は一旦家にテレポートで戻り、アルル達が帰還するまで待機した。
「ただいま戻りました」
「あぁ、お帰り」
アルルが帰ってきたようだな、とりあえず今回の情報を共有しよう。
「アルル、とりあえず情報を共有しよう」
「そうですね」
俺は今回集めた情報を細かくアルルに告げた。
「なる程、裏取引などがあるんですね、後、ケビンと言う人の事」
「あぁ、で? その2つに関する事でそっちは何か似たようなのは?」
「あ、ありますよ、えっとですね、そのケビンさんですが
国民からの信頼は大分厚いようです、国民が困っていることなどを告げれば
すぐに行動に起してくれるような積極性的な人らしいです」
「どんなレベルで動くんだ?」
「そうですね、盗人が現われた場合、すぐに捕獲に移り
詐欺師が出て来た場合でもすぐに捕獲してくれるらしいです
他にも殺人、窃盗、浮浪者等を追っ払ったりと、その功績は凄いです
戦争でもかなりの強さがあるらしく、毎度前線に出ては敵を薙ぎ倒し
その実力もあり、盗賊等が出て来た場合でもすぐに壊滅させるらしいです」
「なる程な、近距離戦闘では最強と言ってたのはそういう意味か」
ただミロルの部隊の台頭もあり、最強の部隊というわけじゃないのだろう。
だが、昨日見た感じ、ミロルの兵士達よりも練度は高そうだったな。
つまり近距離戦闘になると、結構不利だと言う事か。
フレイみたいに怪力馬鹿じゃ、最悪1人の兵士にすら勝てない可能性もある。
あいつは怪力だが、単純な近距離の格闘戦は圧倒的というわけでは無い。
一撃食らわせることが出来れば一撃かも知れないが
当たらなければ何の意味もなさない、フレイに接近戦闘の技術を
叩き込むことをしないと不味そうだな。
まぁ、そこは多分マナがやってくれてるはずだが。
「後、裏取引ですっけ」
「あぁ、その事については何か聞いたか?」
「いえ、その事に付いてはまだ、私が聞いた情報は
ケビンという騎士団長の話位でしたね
あ、彼はこの国のトップでもあるそうです」
ここのトップか、なる程ね、通りで存在感があったわけだ。
「それと、この国は今現在防衛を強化するために子供を集めているらしいです」
「魔法を使える子供か?」
「詳しい事は知りませんが、恐らくは」
でも、あの時訓練していた兵士の中に子供なんていたっけ?
いや、いなかったはずだ、じゃあ、訓練している場所が違うのか?
ちぃ、よく分からないな。
「それともう一つ、そのケビンさんですが
この国で1番の上官は城にいると言う総執行者の方らしいのですが
実質的に1番権力があるのはケビンさんらしいです
確かリ・アース国、国王直属の騎士団の指揮官らしいので」
「なる程、だからあそこまで練度が高かったのか」
じゃあ、時間が経てばあいつらが消える可能性があるのか。
その時が来れば攻め時と言う感じかな。
「まぁ、何にせよかなりの実力者が動いてきてると言う事だよな
そろそろリ・アース国も追い込まれてきてる感じなのかねぇ」
まだまだ2つの都市を落としただけだが
どうやらこの世界、思ったよりも広くないのかも知れない。
まぁ、それでもかなり距離があるとは思うけどな。
都市の一つ一つが割とデカいし、山とか森とか多くて
都市を造る事が出来る場所も少ないからな。
「恐らく向こうの予想以上の速度で私達は侵攻して行っていますからね
本当に短い間隔で2つの都市を制圧してきてるわけですし
そりゃあ、向こうも本腰を入れてきても良いでしょう」
「だな、よし、じゃあ、話を変えて、明日のお前らの行動についてだが
アルル、明日の情報収集は裏取引について調べてくれ」
「おや? 裏取引ですか? 何故?」
「理由としては、リ・アース国の国王が絡んでるかも知れない取引だからさ
もしも特定して、上手くその取引を潰せたり、利用することが出来れば
俺達に取って結構有利に働くと思う、国王が直々に動いてる可能性があるならな」
「なる程、分かりました、では、明日はその事で動いてみます」
「頼むぞ」
裏取引についての情報収集、結構危ない橋を渡ることになりそうだが
まぁ、危ない橋を渡るのが俺達の役目だろうし、覚悟を決めよう。
さて、裏取引の場所とかを特定できれば良いがな。
難しい気もするが、やって貰うしか無いか。




