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傷跡

…結局、リオさんの可愛い服は拝むことが出来なかった。

いや、まさか他にも着替えがあったなんて…

ただフレイさんの勘違いで無いと思ってただけ…うぅ、見たかった。


「すぅ、すぅ…」


でも、次の日からはリオさんの体調も回復傾向にあります。

かなり辛そうにしていた就寝も今では結構普通に眠れています。

咳も少なくなってきましたし、熱だって引いてきました。

どうやら、昨日が峠だったようですね、で、今は大丈夫。

安定期と言う奴でしょう、はぁ、安心しました。

しかし、リオさんの寝顔、可愛いですね。

いやぁ、起きてるときはワイルドで格好いいのに

こうやって寝ていると、普通の女の子ですよ…

それなのに、リオさんは体中傷だらけ…何ででしょうね。

こんな普通の小さな女の子が、全身をボロボロになっても必死に戦って

それでも世界の戦争は終わってない…そもそも、リオさんみたいな女の子が

自分の未来を捨ててまで戦ってる地点で世も末でしょう。


「アルルさん、もしや、寝ているリオさんを襲おうなどと」

「いえいえいえ! 決してそんな事はありませんよ!

 と言うか、シルバーさん…帰ってきてたんですね」

「えぇ、まぁ、あなたを見張る必要が無いので

 私達は大分楽でしてね、各子供達に最低1人付くことが出来ます

 しかしまぁ、必要は無いように感じますけど」

「何でですか?」

「皆さん、リオさんの為にと必死でして、私達が見張っていなくても

 皆さんは完璧と言って良いようにこなしているんですよ

 特にトラさんがリオさんに心配を掛けないよう、確実に行こうと

 行ってくれましてね、皆さん慎重に行動しているのですよ」


はぁ、流石トラさん、リオさんの次に皆さんへの指示が得意なだけはあります。


「それでシルバーさんはここにいると言うことですか?」

「私が担当していた子達の仕事が終わったからここに来ているんですの」

「狩りの方が終わったんですね」

「えぇ、3人しか行動出来ませんでしたが、しっかりやってくれましたわ」


リオさんと今回はウィンさんがリオさんの看病で居ないからからですね。


「ですが、やはり少々早すぎるのでは?」

「ウィンさんが居ないので運搬が大変なんですよ、運搬できたのは

 フレイさんがいてくれたお陰ですわね、彼女は怪力ですから」

「でも、やはり早すぎると」

「ウィンさんが居ない以上、多くは運搬できませんわ

 フレイさんも1人しかいませんし、早く切り上げるのも仕方ないでしょう」


往復すればいい気もしますが、きっと無理はさせたくなかったのでしょう。


「それで、リオさんの体調は?」

「順調ですよ、寝るときも辛そうにはしていませんしね」

「それはよかったですわ、で、あなたは何を考えていたのですの?

 襲おうなどと考えていないと言っていましたが、リオさんを前に

 かなり悲しそうな表情をしていたようですが」

「…そうですね、リオさんの傷を見て、色々と考えてました」


リオさんの傷は至る所にある、肩にもあるし

足にもある、腕にもありますし、腹部にもある。

腹部の傷は服で隠れて見えませんが。


「シルバーさん、どうして戦っても戦いは終わらないのでしょうね

 終わったと思っても、また新しい戦って、その度にリオさんは命を賭ける

 フレイさん達もそうです、トラさん達も…あんな小さな子供達が

 自分達の尊い未来を捨ててまで戦って…でも…終わらない」


皆さんは色々な魅力を持っています、色んな才能だって持ってます。

もしも戦争なんかが無ければ、皆さんは自分の夢を見付けて

その夢へ向けて走り出していたことでしょう。


「…アルルさん、すみません、私には何も言えませんわ

 自分達の事をどう思っているかを知っているのは彼女達自身です

 私には何も言えませんわ、ただ1つ分かることは」

「…リオさん達を死なせないよう、尽力すること…ですよね?」

「はい、私たちに出来る事はそれだけですわ

 もしもを考えても意味は無いなら、意味があることをやるだけですわ」


リオさんを守る、それが私の第1目標。

結ばれるという目標はありますが、やはりその為には守らねばなりません。


「ねぇ、シルバーさん」

「何ですか?」

「リオさんの寝顔、普段は見ませんよね?」

「はい、そうですわね、リオさん達が寝る頃には私たちも眠っていますし」

「…だったら、今、少し見てみてくださいよ」


シルバーさんは私に言われたとおり、リオさんの寝顔を見た。

とっても幼い可愛い寝顔、普段なら想像もつかないほどに可愛い寝顔。


「…どうですか? 凄く可愛いですよね」

「…そうですわね、普段の強気な姿からは想像も出来ないほどの可愛い寝顔ですわ」

「そんな子が命を賭けて戦ってる、世も末ですよね」

「…そうですわね、でも、救いようのない世界でも救う事は出来ますわ

 そんな世界をぶっ壊すために私たちは命を賭けています

 それはアルルさん…あなたもそうでしょう?」

「ふふ、そうですね、しかしシルバーさんもかなり変わりましたよね

 前までは家を建て直すために戦うなんて言ってたのに」

「変わりもしますよ、あんなに一生懸命に頑張ってる皆さんを見てたら

 小さいのに私以上に大きな考えを持って生きてる皆さんを見ていたら」


シルバーさん、凄く変わりましたよ、本当にね。

前まで、大事なのは家のことだけで、その為に死ねるなら

それで本望、そんな事を言ってたのに…

当然、私も変わった、特に理由もなく軍に入って。

その才能を買われて小さな子達の面倒を見ることになった。

それは嬉しかった、初めてリオさんに会った時も

ただ自分の欲望に忠実になり、好きだっただけ。

それが今じゃ…心の底からリオさんを救いたいと思ってる。

何も無い空白だった私、ただ優秀だと褒められるのが嬉しかっただけの

そんな何も無い私の中に現われて、すぐに私に色を与えてくれたリオさん。

でも、私がリオさんに出会えた理由…それは戦争。


「…しかし、本当に皮肉な話ですよね…」

「何ですの?」

「私達を救ってくれた皆さんに会えた理由が…戦争だなんて」


忌むべき存在、消したい存在であるはずの戦争…

でも、私達はその戦争のお陰でリオさん達に出会えて

その戦争のお陰で、何も無かった自分達の心を救って貰えた。

戦争が無ければ、私達は今、こうやって出会えてない。

そして多分…戦争が無ければ皆さんは生まれてない。


「そうですわね…自分達を救ってくれたのは戦争

 それは…分かってはいます、何度も思ったことですわ

 でも、それでも、このまま戦争が続いて良いわけが無い」

「分かってます、何とか止めましょう、この不毛な争い」


自分達は与えられた人間、でも、奪われた人間の方が多いに決まってる。

リオさん達はきっと奪われた立場だ、戦争のせいで親も失い

自分達の明るい未来も失ってる、下手すると命まで…

他にも沢山失った人間は多いはず、戦争に巻き込まれて死んだ一般人も多い。

命懸けで戦って、戦争で死んだ人も多い、その死んだ人の家族も多いだろう。

だから…戦争は止めないといけない。

リオさんの傷を見て、私は改めてそう思う様になった。

リオさん、あなたは本当に私には居なくてはならない存在です。


「でも、まぁ、今は訓練に励みましょう、リオさんの体調不良も治さねば」

「そうですね、少し熱くなりすぎちゃいました、こんなに話すのは久し振りです」

「そうでも無いでしょう? 拘束してる間」

「あ、散々話しましたね、飽きるほどに、だって暇なんですから」

「同じくですわ、あの時は謎のリオさん持論を出してきて驚きましたわ」

「そりゃね、リオさんは魅力的な人ですからね! 普段は超厳しくて!

 ことごとく私への当たりは強いのですけど、たまに私に向けてくれる

 凄く不器用な優しさ! 何だかんだで私の事を信頼してくれている愛らしさ!

 たまに見せる弱い部分、最高! 最高です!」

「さっきまでの真剣な表情は何処に行ったのやら、2重人格ですの?」

「どっちも本当の私ですよ、ただ前面に出ている気持ちが違うだけです」


飾りは嫌いですからね、ただの建前も嫌いです。

私はどっちとも本当の私、ただ前に出て来ているのが違うだけ。

さっきまでの真剣に悩んでいたのも私、リオさんの事が大好きなのも本当の私

皆さんの事を大事に思っているのも私です、何処まで行っても私は私のまま。

そこが数少ない自信がある部分ですからね。


「裏表があるのか、裏表が無いのか分からない回答ですわね」

「裏も表もありますよ? ただ隠してる気持ちが無いだけです」

「本当、よく分かりませんわね」

「まぁ、後ろ暗い気持ちが無いだけ、という感じですかね

 どっちの私にも私は自信を持ってます、隠す必要もありませんしね

 皆さん達に対して隠し事なんて今更くだらないですし」

「はぁ、せめてノエには隠してあげて欲しい物ですわ

 あの子、あなたの事も大分尊敬しているでしょうしね」

「幻滅するでしょうかね? こんな私を見たら」

「すると思いますよ?」

「あはは、じゃあ、一応は隠しておきます」

「そうしてください」


尊敬されてたんだ、私…少しだけ嬉しいかもしれないなぁ。

でもまぁ、いつまで隠せるか分からないけど。

私は隠し事が苦手ですしね、リオさんにもすぐに感付かれましたし。

まぁ、その後から隠すのを止めて自分の心に忠実に行動してましたが。


「んん…」

「あ、リオさん駄目ですよ、布団を蹴ったりしたら」

「暑いのでしょうね」

「もう、寝間着もズレておへそ見えてますよ」


おへそと共に、リオさんの横腹にある深い傷も見えた。

……絶対に守って見せますからね、リオさん。


「はい、風邪が酷くなったら大変ですよ」

「…あ、るる」

「ほえ? まさか、起きて」

「…り、と」

「……寝言、ですか」


一体何を言ったのか分かりませんが、でも、表情からして

悪夢では無いのでしょう。


「リオさん…お休みなさい、きっと次に目が覚めたときは

 元気になってますよ」

「それじゃあ、私たちは外に出ておいた方がよいでしょう

 これ以上ここで話をしていては、リオさんを起してしまいますわ」

「そうですね、今は付きっ切りじゃ無くても大丈夫でしょうし、それに」

「ふぅ、お待たせお姉ちゃん、タオル変えるね」

「可愛い可愛い妹さんもいますしね」


しばらくはウィンさん1人に任せてても大丈夫でしょう。

リオさん、お大事に、次は元気な姿でお会いしましょう。


翌日、リオさんは無事に体調不良が回復、元気になった。

…だけど


「ケホ、ケホ」

「アルルさん、風邪が移ったようですわね」

「うぅ、何という…それにまたここで監禁ですかぁ…」

「まぁ、1度言ったことはやらないといけませんしね

 はい、風邪薬ですわ、まぁ、しばらくは私たちが看病してあげますんで

 …ただ、食事は1人でとってください」

「分かってますよ、へ、へ、くしゅ!」

「…絶対に食べさたりはしませんわ」

「2度も言わなくても…」


私、ご飯食べるとき、大体くしゃみ出るから、仕方ないですよねぇ…

あぁ、元気な姿でお会いするつもりだったのにぃ…あぁ、何て事でしょう。


「シルバー、いる?」

「メルトさんですか?」

「そうそう、はい、これ」


メルトさんがシルバーさんに何か小さな箱を渡した。


「何ですの?」

「リオさんからのプレゼントさ、アルルの馬鹿へってさ」

「わ、私ですか?」


箱の中には手紙と花束が入っていた、手紙の内容は

アルル、お前、馬鹿のくせに風邪引いたんだってな

とりあえずお見舞いとして花束を贈ってやる

本当は嫌なんだが、まぁ、面倒見て貰った手前

これ位はしてやらないと可哀想だしな。

まぁ、さっさと治しやがれ、別に俺が面倒見るわけじゃないが

風邪引いたときのお前って周りに超迷惑だからな。

くしゃみウザいし、いっつも狙ったようなタイミングに出すし。

それと、元気ないお前はあれだろ? 周りを不快にさせるから。

だからさっさと治せ、まぁ、1ヵ月後、生まれ変わったお前を楽しみにしてるぞ。


「はぁ、リオさん! 優しい! 凄く優しい!

 凄く回りくどく書いていますけど要するに

 元気の無い私を見てると自分達も元気じゃ無くなるから

 早く元気になれと言う事ですね! 早く元気になってやりますとも!」

「はは、もう十分元気だと思うけどね」


全く、アルルさんは本当にリオさんが大好きですわね。

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