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リオさんの看病

リオさんの体調不良は風邪だというのは間違いありません。

リオさんくらいの年齢での風邪はここまでの高熱が出ることがあります。


「トラさん、リオさんに冷たいタオルをお願いします」

「分かった」


トラさんは私の指示通り、テキパキとリオさんの看病をしてくれています。

やはりトラさんだと安心しますね、言う事もちゃんと聞いてくれますし

すぐに理解して行動してくれます、そこがトラさんの良いところです。

問題は明日の担当になるフレイさんですかね。

フレイさんは結構無理もしますし

最悪リオさんの体調が悪化する可能性もあります。

ですが、フレイさんのお気持ちを無下にするわけにはいきません。

それにです、フレイさんに取って、その経験は大きな物となるでしょう。

フレイさんの成長の為にも、私がしっかりしないといけません。

ですが、今はトラさんにしっかりと指示を出さないといけませんね。

いくらトラさんが優秀だとしても、失敗をすることはあるでしょうし。


「あぁ、ありがとうな、トラ」

「気にしないで、困ったときはお互い様だから」

「はは、そうか…ケホ、でも、せめて何かで口を隠せ

 移るぞ…ケホ、あ、アルル、お前も何かで口は隠してろ

 …風邪が移ったら大変だぞ」

「リオさん、トラさんの心配は分かりますが、私の心配までしてくれるんですか?」

「馬鹿言え、誰がお前の心配なんぞ、するか…ケホ

 面倒ごとが増えるのが、嫌なんだ」


リオさん、絶対に私の心配をしてくれていますね! うん! 優しいです!

いやぁ、いつもこれは自分の為だからと言っていますが嘘が下手ですよね~

本当に自分の為なら、なんで自分が苦労する方を選ぶんでしょうね~?

うふふ~、いやぁ、リオさんのこう言う不器用な優しさに触れる度に

何だか心が満たされるというか、幸福になると言うか

あぁ~、失われたリオさん成分が満たされている気がします~!

ですが! 落ち着くのです、私! 今、リオさんは苦しんでいるのです!

こんな時に自分の欲望を爆発させるわけにはいきません!

やはり私の最高の幸福は元気な笑顔のリオさんを見たときなのです!

その笑顔が私に向けられるのならなお良し! 違ったとしても

元気な笑顔を見れただけで幸福なのです!


「リオさん、本当に素直じゃありませんね」


私は心の中で涎を垂らしながらも表面上は冷静に振る舞う!

そうですよ! 落ち着かないと! クールに! クールに!

頬を緩めるな、私! リオさんを不安にさせてはいけません!

疑われてしまえば、肝心な時にお側で看病できませんからね!

それでリオさんに何かあったら大変です、リオさん大事!

自分の欲望を爆発させるのはその後なのです!

あ、でも、リオさんがこんなに近くに、うへへ

あ! ちょっと頬が! い、いけない! ちょっと出ちゃった!


「うっさい…」

「り、リオさん」


私がちょっと限界で少しだけ表情に笑みがこぼれたけど

リオさんはそれに気が付かなかったようで、何も言及しなかった。

普段のリオさんならまずあり得ない、普段ならちょっとだけでも

油断して表情が緩んだりしたらバレちゃって避けられるのに

今回はこの至近距離で頬が緩んだのに気が付かれない。

これでリオさんがかなり弱っていると言う事が改めて分かりました。

これは完全に癒えるまで時間が掛かりそうですね」


「リオさん、付きっ切りで看病してすぐに治してあげますね」

「ケホ、そりゃ、嬉しいが、それよりお前は、自分の予防しとけ

 本当、俺の風邪がうつると、ケホ、不味いだろ」

「いえ、私は大丈夫ですよ、病気程度」

「看病する奴が、ケホ、大変なんだよ…お前、異常な程にくしゃみ出すし

 ケホ、それも、食事中ばかり、ケホ! ゴホ!」

「リオさん!?」


咳が酷くなってきています、急いで咳止めを飲ましてあげないと。

ですが、焦ってはいけません、食後が基本です。

子供のうちは食後じゃ無いと胃へのダメージが大きいかもしれません。

胃にダメージが入ってしまい、腹痛になってしまったりしたら

リオさんを余計に苦しめてしまいます、落ち着かないと。


「トラさん、おかゆを…いえ、お米がありませんでしたね…」


基本はおかゆなんですが、このサバイバルをしている状況では

お米なんてありませんか…何とか消化の良い物を作らないと。

とにかく収獲した物を探してみないといけませんね。


「…おや?」


皆さんが収獲した物を見てみると、意外な事に小麦も稲も取ってきていました。

あぁ、この時期は自然の稲や小麦もなるんですね、運がよかった。

これならリオさんに消化の良い食べ物を提供することが出来ます。


「トラさん、手伝ってください」

「分かった」


トラさんは私の言葉を聞いて、すぐに走ってきて、料理をする準備をしてくれた。

流石トラさん、反応も早いですね

色々と指示を出す立場としては凄く嬉しいです。

本当に小さな子供とは思えないほどに出来てますよね、リオさんもトラさんも。


「えっと、では、こちらの青菜を細かく切ってください」

「分かった」


トラさんは私の指示通りに青菜を切ってくれた。

私はその間にご飯の用意をする、ちゃんと食べられる程度に脱穀しないと。


「痛!」

「どうしました!?」


後ろの方で聞えた叫び声に反応して振り向いて見ると。

そこではトラさんが痛そうに指を自分の口に入れていた。


「トラさん、もしかして斬っちゃいました?」

「うん」

「じゃあ、急いで指を流水で流してください!」

「う、うん」


トラさんは少し涙目になりながら私の指示通りに流水で指を洗おうとした。

だけど、焦っていたのか、トラさんは包丁を乱雑に置いており

移動したときに包丁が落ちそうになった!


「危ない!」

「え?」


それに気が付いて、私は急いで包丁を掴み、落下を阻止した。

はぁ、危うく落ちた包丁でトラさんが更に怪我をしてしまう所でした。


「はぁ、よかったぁ」


ひとまず安心して、包丁を安全な場所に移した後。

トラさんが自分で傷を流水で流している所を確認した。


「ごめん…」

「いえいえ、気にしないでください、はい、これで指を保護して

 さぁ、胸より上に手を上げてください、強く握りますよ」

「ありがとう、結構優しいね、リオにはかなりあれなのに」

「いえいえ、私はどんな時でも淑女です」

「ケホ、お、おい、だ、大丈夫か?」


私がトラさんの手当をしていると、よろよろとリオさんが台所に来た。


「リオさん! 何で歩いてるんですか!? 安静にしてないと!」

「と、トラの叫び声が聞えて…アルルの叫び声も…ケホ、で、ど、どうなんだ?

 怪我でもしたか? うぐぅ…もしかして、指先切ったとか…無理は」

「無理してるのはリオでしょ!? その体調で無理したら駄目だって!」

「いや…でも、ケホ、あ」


リオさんが少しクラッとして、後ろに倒れそうになったのを

私は急いで受け止めた、かなり体調が悪いみたいだ。


「大丈夫ですか!?」

「…ケホ、あ、アルル…」

「全くもう! 無理したら駄目じゃないですか、こんなに酷い熱なんですから!」

「でもよ…大事な奴の叫び声なんて聞えたら…誰だって、ケホ」

「リオ…ごめん、ちょっと指を切っただけだから、安心して…

 アルルも一緒だし、大丈夫だからさ」

「…そう、だな…ケホ、こう言うときのアルルは、頼りになるか…」

「それ、普段は頼りにならないって事ですか?」

「よく、分かってるじゃ無い…か、ケホ」


リオさんはいつも通りに振る舞っている。

だけど、こんな状態だとかなり不味いのは丸分かり。

とにかく、リオさんを寝床に運ばないと。


「えっと、トラさん、少し待っててくださいね

 帰ってくるまでその紙の上から指先を押さえていてください

 リオさんを運んで、絆創膏取ってきます」

「分かった」


私はすぐにリオさんをベットに連れていって、横にした後、布団を掛け

急いで医療箱から絆創膏を取り出して、トラさんの元に戻った。


「はい、絆創膏です」

「ありがとう」

「はい、傷は浅いです、これなら絆創膏だけで大丈夫ですよ

 気を付けてお料理してくださいね、お野菜を切るときは猫の手です

 でも、何で猫の手なんでしょうね? 犬の手でも良いでしょうに」

「こういうことだと思う」


トラさんが招き猫のポーズを両手でしてくれた。

あれ? 何だか凄く可愛い、無表情なのはトラさんっぽいですね。


「あぁ、なる程です、それにしても、凄く可愛いですね」

「もしこれをリオにやらせたら、アルルは凄いことになりそうだね」


さ、さっきのポーズをリオさんにして貰う!?


(リオさん! お願い聞いてください!)

(変な事だったら承知しないぞ?)

(猫の手をしてください! こう、両手でやって、にゃんって!)

(はぁ!? 何で俺がそんな事をしないといけないんだよ!)

(お願いします! この通り! この通りです!)

(…クソ、わ、分かったよ、まぁ、色々と助けて貰ってるからな…

 だが! 1つ約束しろ! 言うなよ!? 誰にも言うなよ!?)

(もちろんです! お願いします!)

(よ、よし…じゃあ…ね、猫の手で…にゃ、にゃん…)

(そ、そのまま! アルルお姉ちゃんって! 言ってください!

 アルルお姉ちゃん、こんにちはだにゃんって!)

(なんでだよ!?)

(お願いします!)

(く、くぅ…あ、あ、ある、アルル…お、お、お、お姉ちゃん…こ、ここ…こ

 こんにちはだ…にゃ、にゃん)


くはぁ! 強烈! 強烈なのです! 想像しただけでぇ!

絶対に顔真っ赤にして言ってくれます! 超可愛いです!

少し顔を逸らして、凄く恥ずかしそうにしながら言ってくれるはずです!

あぁ! あぁ! 鼻血がぁ! もう死んでも良いと言うくらい幸せ!


「うへへぇ…リオさーん…」

「アルル、鼻血出てる、何想像したの?」

「いえ! ちょっと楽園を!」

「…やっぱりリオの事になると恐ろしいね、アルルは」

「愛故に! なのです!」


うへへぇ、あぁ、想像だけじゃ無く、現実でも見てみたい!

でも、リオさん絶対言わないだろうなぁ、間違いないね。

だけど、1つだけ! 1つだけ可能性があるとすれば!

フレイさんがノリでリオさんを巻き込んでやると言う可能性!

そうすればリオさんはきっとやると思われます!

リオさん、フレイさん達のお願いは渋々受入れている気がしますし!

その時が来れば、リオさん達4人で同時ににゃんって!

ぐはぁ! 想像しただけでヘブンです! 天国でし! 楽園です!

わ、私の! 私の桃源郷はまだ完全に潰えたわけではないのですね!

ですが! その桃源郷に行けようがいけまいが

やらないといけないことはあります! リオさんを元気にすること!

それが今、私がやるべき大事な仕事ですから!


「よし! トラさん! やりますよ! 頑張ってお料理作りましょう!」

「きゅ、急にやる気になったね、何があったの?」

「いえ、改めて使命を再確認しただけです!

 早くリオさんをあの辛い状態から救い出さねばなりません!

 その為なら、私は何だってしますよ! 頑張りましょう!」

「本当にリオが好きなんだね、アルルは」

「もちろんです! もちろん、皆さんの事も大好きですよ?」

「そう、嬉しいや」


トラさんが少しだけニッコリと笑った、猫のポーズのままで。

うん、やっぱり可愛いです、さぁ! やる気も回復しましたし!

全力で行きますよ! 絶対にリオさんの病気を治して見せますとも!

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