表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/294

2人だけで釣りを

「それじゃあ、これから釣りをやるか」

「うん!」


俺達2人はひとまず釣りの準備をすることにした。

問題は釣り竿なんだよな、召喚魔法だし

形を言えばウィングが出してくれるとは思うけど。

出来なかった場合は…作るしか無いか。


「えっとだな、釣り竿って出せる?」

「釣り竿?」

「そうだな、こうだ」


俺は砂浜に釣り竿の絵をリアルに描いてみた。


「…リオちゃん、絵なんて描かないのに凄く上手いね!」

「そ、そうか?」


絵が上手いと言われたのは初めてかもしれない…

いや、考えてみれば俺って絵を誰かに見せたことなかったっけ。

そりゃ、誰にも言われない訳だ、はは。


「じゃあ、えっと、これ出せるか?」

「うん、でも、どうなってるの? これ」

「えっとだな、この長い棒の部分が竿で、上に行くほど細くなって

 しなるんだ、細くても折れない頑丈さが必要だな

 で、この糸は細くても千切れないほどに頑丈な糸

 この糸が沢山巻き付いてるのはリールって言って

 この持つところを回すとクルクル回って、糸を巻いて

 短くしていくんだ、ロックとかもあるし、この出てるところは

 釣り糸を海に落とすときと、引き上げるときや止めるときに切り替える

 立てらせると釣り糸がクルクルと回って海に沈んでいき

 倒すと止まって、クルクル回って釣り糸を巻き付けることが出来る」

「ふーん」

「で、この糸の先端にあるのが釣り針、これに餌を付けて

 魚をおびき寄せ、食いつくと魚が刺さって釣り上げることが出来る

 で、食い付いたときに釣り糸が切れず、釣り針が外れないように

 慎重にリールを巻いていき、釣り上げる、こんな所だ」

「分かった、やってみる!」


ウィングは俺が書いた絵を見ながら、手元に意識を集中させた。

そして、しばらくの間、時間が経つと、手元に釣り竿が出て来た。

俺が描いた絵とそっくりだ、凄いな。


「出来た!」

「凄いな、釣り竿をここまで完璧な形で出せるのか

 と言うか、俺の絵と瓜二つだし、どうなってるんだ?」

「この絵を見てイメージして出したんだよ、えっと、大丈夫?」

「大丈夫だ、完璧だな」

「やった!」


俺はウィングから釣り竿を貰い、餌になる虫を軽く集めて

釣りをする準備を完了させた。


「よーし、準備できた、やるぞ」

「うん!」

「じゃあ、まずは虫を釣り針に刺して」

「ま、待って! え!? その…虫さんを、さ、刺すの?」

「あぁ、そうだよ」

「む、無理! わ、私には無理! 触れない! 触れないよ!」

「ん?」

「な、なんでリオちゃん、平然と…怖くないの?」

「虫なんて何も出来ないだろ? 精々噛み付くくらいだ

 怖がる要素なんて何処にある? 蜂とかムカデならまだしも」

「で、でも…うぅ、無理だよぉ…」

「……はぁ、分かったよ、お前の餌は俺が付ける、それ位はしてやるよ」


俺はウィングの釣り竿に餌となる虫を付けた。

その間、ウィングは俺の手元など見ずに目を瞑っていた。

どれだけ怖がってるんだよ、まぁ、良いか。


「んっと、ほい、こんなもんだな、ほれ」

「あ、ありがとう…その、ごめんなさい」

「気にすんな、苦手なら苦手で良いだろ、致命的な物ならまだしも

 この程度なら別に無理することはねぇよ」

「えへへ、あ、ありがとう」

「じゃ、やるぞ、のんびりとな」


俺達2人は砂浜の先にあったちょっと高い岩場に移動し

そこから釣り糸を飛ばし、釣りをする準備をした。

ただウィングはまだ投げるのは得意じゃ無いのか、殆ど飛んでいない。


「うぅ、飛ばせない」

「んー…よし、分かった」


さっさとウィングの方に行き、ウィングの釣り竿を預かり

細かく投げ方を教え、ウィングと一緒に釣り糸を飛ばした。


「よしっと、まぁ、こんな感じかな」

「かなり飛ぶんだ…」

「あぁ、結構飛ばせるからな、さて、釣り上げる方法は教えたよな?」

「あ、う、うん、多分大丈夫…だと思う」


よし、じゃあ、俺もさっさと釣りに戻ろうかな。

よしっと、さてさて、釣ることが出来れば良いけどな。

まぁ、気長に待とうか、こう波の音を聞いてのんびりするのも良いだろ。


「…ねぇ、リオちゃん」

「んぁ?」

「静かだね」

「そうだな」

「…静かすぎて落ち着かないね」

「んー、そうか? ま、確かに1人じゃ落ち着かないかもな

 でもまぁ、お前もいるし、俺は割といつも通りだぞ?」

「え? ……わ、私なんかと一緒にいるだけなのに落ち着くの?」

「いや、何かってなんだよ、落ち着くっての」

「…え、えへへ…う、嬉しい…私、あまりリオちゃんとお話ししないから

 少し…その…私何かいなくても…とか、思ってて」

「何馬鹿言ってんだよ、お前、自分が俺達に取ってどれ位大事かくらい

 自覚してろ、そもそもお前の事を気にして無けりゃ

 誰もお前と一緒にいないし、お前の心配もしない

 こんな風に会話もしないし、頼りにもしない」

「リオちゃん…私、嬉しい……」


ウィングは少し自分に自信が無いからな

だからよく後ろ向きに考えるんだろう。

本当に優秀なのにな。


「そうか、ま、安心しろ、誰もお前の事を要らないとか思っちゃいない

 安心してワイワイ騒げ、辛くなったら頼れ、1人にゃしない」

「…うん、一杯遊ぶし、一杯頼る…だからさ、リオちゃん」

「ん?」

「リオちゃんも…あの、私を頼って…あ、あの…あまり役に立てないかもだけど

 でも、わ、私は…私も……リオちゃんの役に…立ちたいから」


な、なんで少しだけ涙を浮かべてこんな事を言ってるんだ?


「…お願い、私を…私達を頼って…リオちゃん」


……前も言われた、何度も言われたか、自分達を頼って欲しいと。

色んな奴から同じ事を言われる、何度も何度も。

その度に分かったと言う、だけど、何度も約束は破った。

分かっちゃいるんだけど…どうしても、最悪の事態を考えてしまうんだよな。


「……そりゃ、もちろん」

「ねぇ、もしかしてリオちゃんは…私達の事…信じてない?」

「そんな事無い! ちゃんと信じてるぞ!」

「だったら…その…お願い、1人で無理しないで

 大丈夫だから…私は、わ、分からないけど、フレイちゃん達は凄いから…」


たまにウィングは俺の心を読んでるかと思う位勘が鋭いよな。

それとも、俺が分かりやすいのか? どうなんだろうか。


「ま、まぁ、ちゃんと頼ってるから、安心しろよ、うん」

「…本当? も、もう、無理しない?」

「し、しないって」

「約束…だからね?」

「分かったよ、約束だ」

「…もし、破ったら……私達の言う事、何でも聞いて貰うから」

「分かったよ、破ったらお前らの言う事を聞いてやるよ」

「うん、約束…あ!」


俺と話をしていると、ウィングの釣り竿が激しく引っ張られた。

どうやら魚が掛かったらしいな! でも、大丈夫か? 引っ張られて、うぉ!


「げ! 同時か!?」

「あ、あわ、あわわぁ…」


くぅ! 結構引かれてるな! くぅ! 釣り上げてやる!

こりゃ、かなりの大物じゃねーの!? 絶対に釣るぞ!

あまりアウトドア派じゃないが、2回は釣りはした!

その2回では魚は釣れなかった! だが、今回は強い!

今までの中で1番だ! やってやる! 絶対に釣るぞ!

人生で初めて魚を釣り上げる瞬間が今だ!


「あ、あ、あわ、あわわ!」

「く…ん? お、おい! ウィング!」


ヤバいって! ウィングの奴! あと少しで海に落ちそうだぞ!


「おいウィング! さっさと釣り竿離せ! 落ちるぞ!」

「で、でも…」

「良いから!」


俺はすぐに自分の釣り竿を離し、急いでウィングの方に走った。


「あ、あ、あ!」


あと少しでウィングが落ちそうになったギリギリで

俺はウィングを背後から掴み、何とか落ちない様にした。


「リオちゃん!?」

「早く離せ! 落ちるぞ!」

「あ、う、うん! あ!」


だが、ウィングが釣り竿を離すのが遅く、ウィングは足を滑らせた。


「ヤベ!」


当然と言えば当然か、背後で押さえていた俺も一緒に落下する

真下は岩場! このままじゃ叩き付けられるのは明白!

当れば痛いじゃすまないんじゃ無いか!?

くぅ! 割と高いからな、下手すりゃ、意識を失うかも!


「あぁあああ!!」


急いで考えを巡らせろ! このままでは落下して大怪我!

せめてウィングは守りたい、だったら俺が下に行く?

いや、だが…そんな事をすれば俺が頭をぶつけてウィングが自分を責める事になる!

自己犠牲が良い結果になると言うわけじゃ無いと言う事は学んだ。

だったら、1番良い結果になるのは2人とも怪我も無く助かること!

そんな事が…この落下している間に! …そうだ!


「やれるか!?」


俺は瞬間的に召喚できるウィンチェスターを召喚して対物にした。

そして、引き金を引き、その激しい反動で背後に飛ばされ

真後ろにいたウィングにぶつかり、何とか海にまで飛んだ。


「あぁああ!」


それと同時くらいに俺の視界は水中に変わり、すぐにウィングを抱えて

自分の出来る全力で水面に浮上した。

まさか昨日フレイに散々振り回されたお陰で

水面に浮上する術を覚えたのがここで役に立つとは思わなかった。


「ぷは…ふ、ふぅ、危なかった」

「うぅ…」


ウィングは軽く意識を失いかけている、それだけ恐ろしかったのだろう。

そりゃな、あの高さから落下して、地面が目の前にまで近付いて居たんだ。

あんなの子供の精神力で耐えられるわけが無いだろう。

意識を失うのも致し方ない、しかしまぁ、良く俺も

あの落下する短い時間に危険回避の方法を閃いたよな。

我ながら凄い頭の回転速度だ、あれだな、火事場の馬鹿力って奴かもな。

もしくは1度走馬燈を見たから回転速度が上がったとかな

走馬燈って、ほんの一瞬の間に色々と頭を駆け巡るし。

まぁ、よく分かってないんだけどな。


「ウィング、大丈夫か?」

「…リオちゃん…ごめんなさい」

「はぁ、早く離せと言ったのに、ま、何事も無くて良かったな

 いやぁ、運が良い、運良く海に落ちて良かったよ」

「…リオちゃん、なんでそんな意味の無い嘘を言うの?

 …私、分かってる、リオちゃんが助けてくれたって」

「…ま、あの銃声が聞えりゃ、そりゃ分かるよな」


目の前の俺がぶっ放した壁には大穴があいていた。

対物の弾丸だし、かなりの大穴があくのは仕方ないがな。

少しだけ壁が崩れ、ヒビからパラパラと小石が落下している。


「ごめんなさい…やっぱり、私…」

「失敗はあるだろ? 先生もよく言ってっただろ?

 反省できればそれで良いってさ」

「……ごめんなさい」

「さてと、さっさと陸に上がろうや、泳げるか? 俺はあまり泳げないが」

「私も…泳げないかも」

「じゃあ、協力して進むか、多分いけるだろ」


俺達2人は協力して何とか陸に戻ることが出来た。

やれやれ、危うく溺死するところだったよ。

ま、何とかなって良かった、ふぃ、しかし、魚釣れなかったな。

まぁ、もう一度挑戦するか、次は大丈夫だろう。

今度は2人で協力して1つの釣り竿で釣ってみるかな。

子供1人の力じゃ、魚は釣れないって分かったし。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ