シルバーの評価
ふぅ、初日は散々な目に遭ったな。
ずっとこんな調子、と言う事はまずあり得ないだろうが
たまにはあるかもしれないから気を付けないとな。
「戻りましたわ」
2日目になるとマナが合宿場を出てシルバーが戻ってきた。
どうやら1日置きに交替して行くみたいだな。
まぁ、うん、そういう方が体力的にも良いだろう。
2日以上も連続であいつの面倒見るのは怠いだろうからな。
「あ! シルバー先輩! こ、こ、こんにちは! お久しぶりですね!」
「おや? どちら様ですの?」
「えぇ!? そ、そんな…うぅ、忘れられるなんて…うぅ
特徴が無かったからかな…」
「冗談ですわ、真に受けないで欲しいですわ、ノエ」
シルバーでも相手をからかうと言う事があるんだな。
かなり意外だった、と言う事はアルルもこの子をからかったりするのか?
あいつも人をからかうことは意外と少ない、振り回すことは多いけど
主に俺を…と言うか、俺くらいしか振り回されてない気がする。
「よかった! 覚えててくれたんですね!」
「えぇ、そもそもあなたの様な特徴の塊を忘れるはずがありませんわ」
「それはそれで何だか…あ、そうだシルバーさん
髪の毛の色どうしたんですか? 前は緑色だった気が…」
「銀色の方がそれっぽいと言われて髪の色を変えましたわ」
「あ、確かにお名前がシルバーですし、そうかもしれません」
「まぁ、そうですわね、銀髪の方が分かりやすい気もしますわ」
自分の髪の毛をいじりながらちょっと嬉しそうに答えた。
「で、ノエ、皆さんとは仲良くなれそうですの?」
「えっと、まだ分かりません…あまり皆さんの特徴が分からなくて」
「では、少しだけ皆様の事をお話ししましょう」
俺達の事か? そう言うのは本人から聞いた方が良いだろうが
でもまぁ、フレイ達に自分達の事を話す技術は無いだろうし
そもそも自分達の事をよく分かってないと思う。
あいつは自分のそういったことにあまり興味無いし。
しかしどうするかな、このまま盗み聞きしておこうかな。
それとも姿を出して…いや、このままで良いか。
その方があいつも話を聞きやすいだろうし
シルバーの俺達に対する評価も聞く事が出来るからな。
「まずは私が使えるトラさんについてですわ
トラさんの魔法は周囲の物体を浮遊させる魔法ですわ
浮かした後、自由にその物体を操ることも出来て
かなり強い方ですわ、性格も冷静でとても優秀
ですが、普段は冷静なのですが、感情的になると
暴走してしまう所があります、特に友人を傷付けられたり
怪我をしたりすると我を忘れて泣いてしまいますわ
そう言うとき、私たちには何も出来ません
その状態のトラさんをなだめられるのは大体リオさんくらいですわね」
「リオさんですか、あの小さな女の子に思えない程大人びた方ですね」
ふーん、第一印象そんな感じだったんだ、俺って。
まぁ、中身は高校生だしそりゃあ、大人びてるよな。
「はい、では、そのままリオさんの事をお話ししましょう
リオさんの魔法は確か狙撃魔法と言っていましたわ
距離があっても相手を倒すとが出来る魔法だと
詳しい事は私はあまり知りません、本人かアルルさんなら
知っているとは思いますが」
まぁ、シルバーはイマイチ俺の魔法に詳しくないからな
かなり特殊な魔法だし、色々とほぼ完璧に把握しているのは
俺くらいだろう、アルルもよく分かってないだろうしな。
「性格は冷静ですが、すぐに感情的になってしまうと言う難点もあります
ですので、場合によっては上官に対しても罵詈雑言を言うこともあります」
「それ、大丈夫なんですか?」
大丈夫じゃ無いだろうな…何とか直そうとしても直らない。
うー、感情的になる悪い癖、どうしようも無い…
「意外と大丈夫ですわ、感情的になろうともしっかりと成果を上げていますわ
それともう一つの注意点ですが、リオさんはすぐに自己犠牲に走りますわ
自分よりも仲間、いえ、お友達を優先し、命を平然と投げようとします
ですので、私たちはそんな彼女を死なせないように動かなくてはなりません
リオさんは皆さんの精神的支柱、彼女にもしもの事があれば
皆様は死ぬと思われます、恐らく私たちの全滅もあり得ますよ
それ程リオさんは私達小さな戦士達にとって重要な存在なのです」
俺が死ねば全員死ぬ…確かにあり得る話ではある。
だが、推測として、俺達は誰か1人でも死んでしまえば
全員死ぬと思う、少数精鋭というのもあるが、全員にとって
全員は大事な存在、1人でも死ねば冷静に行動できるわけが無いだろうな。
だから、1人死ねば全員乱心、暴走して全滅という可能性は十分ある。
「そんな方なんですか、ですが昨日はフレイさんに振り回されて」
「それはいつもの事ですわ、かなり強いはずなのに振り回される
それだからフレイさん達もリオさんの事が大好きなんでしょう
何度も痛い目に遭っても、それでも構って欲しくなるほどに」
「仲が良いんですね」
「えぇ、リオさん、フレイさん、トラさん、ウィングさんの4人の仲は
私達が入る隙間も無いほどに固いですわ」
「なる程、羨ましいです」
「全くですわ、では、次はフレイさんについて話しましょう」
今度はフレイか、あいつの評価どうなってるんだろうか。
「フレイさんはそうですわね、すぐに暴走してしまう女の子ですわ
更に彼女の魔法は身体強化魔法、それもかなりの規格外となっていますわ
主にその身体強化魔法の犠牲になっているのはリオさんですわね」
「り、リオさん、凄い人なのに大変ですね」
「まぁ、カリスマ性がありすぎるのか、魅力的すぎるのか
散々な目に遭っていますわね、主に3人から強烈すぎるアタックを受けてます
いえ、最近は4人に増えている気もしますがね」
フレイ、アルル、フラン…あと1人は……多分ウィンだな。
でも、あれは姉妹では普通の事なんじゃ無いか?
兄妹とかいなかったから良く分からないけど
アニメとかならよくあんな感じだと思うしあれが普通なんじゃ
……う、うーん、どうなんだろうか。
「よく抱きしめられて気絶しそうになったり
腕を引っ張られて振り回されて色んな所にぶつかったりと
かなり大変そうですわ
ですがフレイさんはリオさんを恐れているらしく
怒り狂った状態のリオさんからはしょっちゅう逃げ回ってますわ
まぁ、その状態のリオさんを恐れているのはフレイさんだけで無く
ウィングさんもみたいですが」
「恐れているのにそんなに引っ張り回したりするんですか?」
「恐怖よりも遊びたいという気持ちが勝るのでしょう
フレイさんはそういう方です、まぁ、ムードメーカーですわね
後、フレイさんも相当無茶をする方らしく
戦闘になればすぐに最前線で敵を薙ぎ倒していますわ
近接戦闘では無類の強さを誇っていますわね
ですが、周辺警戒等がろくになっていないらしくて
正面しか見ておらず、背後からの攻撃を受けそうになるらしいですわ
その度にマナさんがサポートしているらしいので、余裕があったら
ノエもフレイさんのサポートをお願いしますわ」
「はい!」
やっぱりちゃんと聞いたり、見ていたりするんだな。
流石はシルバー、観察能力は相当な物だ。
「次にウィングさん、彼女は非常に引っ込み思案なのですわ
彼女の魔法は召喚魔法、主に剣や槍などの接近武器ですわね
このウィングさんの魔法とトラさんの魔法の組み合わせは
かなり凄まじいので頼りになりますわ」
「連携魔法ですか、何だか格好いいですね」
「えぇ、ですがご本人はさっきも言いましたが引っ込み思案
あまり前面には出ません、しかし芯はしっかりとしており
絶対にやらないといけないと判断したことは
何が何でもやろうとするとても強い子なのですわ
彼女は4人の中で1番目立たないのですが
やはり他の皆様と同じく、友達の事を大事にしていますわ
ウィングさんもリオさんが重傷を負ったりしたときは
いつも側で泣いていますし、間違いありませんわ」
「リオさん、重傷を負うことなんてあるんですね」
「まぁ、今までで少なくとも3回は死にかけていますわね」
「何でですか!?」
「無茶ばかりしているからですわ」
うぅ、その場を想像すると凄い罪悪感が…は、反省しよう。
「その度にウィングさんは泣いて泣いて、気絶に近い形で寝て」
「かなりお友達思いなんですね、皆さん」
「はい、皆様は個々に色々な魅力を持っていますわ
それはもう、私たちが命を捨ててでも守りたいと思うほどに
一生の忠誠を誓う程に魅力的ですわよ」
「そこまでなんですか?」
「えぇ、ですので、ノエはとても良い部隊に入ったと言えますわ」
「何だか嬉しいです!」
…俺も嬉しいな、そんな風に思ってくれてるなら頑張った甲斐がある。
「さて、では次にあなたが仕えることになっているフランさんについてですわ
彼女は元は敵対していた国の幼子、昔はよく暴走していていたらしいですわ
今はそんな事はありませんが、たまに狂気の片鱗を見せることがあります
主にリオさんに関する事で見せることがあるので気を付けてくださいな」
「は、はい」
「それと、もうすでに分かっていると思いますが、フランさんは大人嫌いですわ
仲良くなるのは中々難しいかもしれませんが根気よく付き合ってくださいね
因みに彼女の魔法は催眠魔法、一定時間見た相手を操ることが出来ますわ
今は魔法の使いすぎで1人のみですが、十分強い魔法なのでお気を付けて」
「だ、大丈夫でしょうか…」
「大丈夫ですわ、今のフランさんは大分落ち着いてきていますし
よっぽどの事が無い限り暴走はしないと思いますわ
それとフランさんは異常な程にリオさんとウィングさんに執着しているので
お2人が狙われたりした時は頑張って庇ってあげてくださいませ」
「は、はい、が、頑張ります」
やっぱりシルバーの目から見てもあいつは俺に対して執着したように見えるのか。
いや、実際そうだけど、かなり執着しているけど。
あれ、何とかならないかな、ノエがあいつの教育係になって
そう言うのを何とかしてくれるんなら良いんだけど、大丈夫かな。
「他の方々については後日お話しすると思いますわ
流石にこれ以上お話しというのは時間が掛かりますもの
サバイバルとなっている今回の合宿で時間のロスは致命的ですわ」
「そうですね、頑張ります!」
「えぇ、ですが、私たちの主な仕事はお料理ですわ
正確にはお料理を教えるのが主なお仕事ですわね
狩りの時は皆様が命の危機に瀕したとき等に助けるのが役目
では、頑張りましょうか」
「はい!」
そうか、今回の合宿ではこいつらの力はあまり頼れないのか。
まぁ、そういう能力を俺達が身につけた方が良いからな。
さて、じゃあ、今日から頑張るとしようか。




