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アルルの腕前

「い、行きますよ」


アルルは俺が見せた通りに銃を正面に構え、少し停止した。

そのまま撃てば良いのに、全く引き金を引こうとしない。

まだ引き金を引くことに対する恐怖が残っているんだろう。


「……あ、あの、り、リオさん」

「何だ?」

「えっと、私もこれ、伏せて撃った方が良いのでしょうか?」

「いや、さっき見せただろ?」

「で、でも、普段リオさんは伏せて撃ってますし」

「あれは狙撃銃だからだ、拳銃の伏せ撃ちはお勧めしないぞ

 拳銃の最大の利点である機動力を失うわけだからな

 まぁ、不意打ちを仕掛けるなら問題無いが

 銃撃をしてる間に伏せ撃ちは危険すぎる」


拳銃最大の利点は機動力の高さと取り扱いやすさにある。

遠距離、中距離での銃撃ではアサルトライフルやスナイパーに劣るが

接近戦での強さはずば抜けていることだろう。

接近戦で強い武器は他にもショットガンやSMGがあったりする

ショットガンは確かに強いが、一発外した後が危険だし

急所に狙いを定める際も拳銃よりも長身だから遅い。

SMGは接近戦では確かに凄い威力を持ってはいるが

弱点として、連射できるから油断してしまうこともあるし

反動で銃弾がばらけることも多い。

だが、ハンドガンの場合は小さな銃身で扱いやすく

外したとしても次が撃てる。

他にも重量が軽く扱いやすく、狙いを定めるのも速い

当然重量が軽く、銃身が小さいから持ち運びも楽。

上手く使いこなせば、接近戦で最強レベルなのがこの拳銃だ。

で、それを上手く扱うには立っておく必要がある。

機動力が低くなる伏せ状態では非常時に動きにくいし

狙いを定めるときも急所がかなり上だから狙いにくい。

接近戦で使うことが多いハンドガンでそれは不味いからな。


「基本的に伏せ撃ちは長距離の銃撃戦ですることが多いんだ

 だから、狙撃銃を扱う俺はよく伏せ撃ちをしていたんだ」

「ですが、狙撃銃で近い相手とよく戦ってましたよね?

 前もかなり近い距離で使ってましたし」

「仕方ないだろ? 俺が出せるのは狙撃銃だけなんだから

 まぁ、銃も扱えない状態のお前らが俺と同じ事をしたら

 必ず失敗するから狙撃銃は接近武器とか覚えるなよ?

 俺が結構特殊なんだから」

「確かに平然と的の真ん中を撃ってましたしね」

「まぁ、それ位なら練習すればお前らにも出来るさ

 だからほれ、さっさとやってみろ、習うより慣れろ

 案ずるよりも産むが易しだ」

「リオさん! もしかして私との間に子供を!」

「何馬鹿な事を言ってるんだ、はよやれ間抜け

 お前の腐りきった脳みそぶちまけるぞ?」

「むぅ、案ずるよりも産むが易しですよ~」

「黙れ間抜け、速くやらないとマジでぶち抜くぞ?」


何かイラついたからS&W M500をアルルに向けた。


「ごめんなさい! やりますから銃口をこちらに向けないでください!」

「分かったならさっさとやれ」


まぁ、S&W M500の弾は抜いてあるから弾は出ないんだが

そんな事を知らなけりゃ、結構怖いだろうなぁ

銃の説明でビクついてたのに、この馬鹿でかい銃を向けられちゃ

こいつの威力を知らなくても誰だって怯えるだろう。

知ってたら余計怯えるだろうな、最強の拳銃だし。


「い、行きますよ…すぅ…はぁ…よ、良し、真っ直ぐ見て、ひ、引き金を」


アルルが震える指先で引き金を引くと、銃声が響く。


「ひゃぁぁあああぁ!!」


その時の反動にかなり驚いたのか、腕か持って行かれて

銃が空を向いていた、ここまで反動が来るか?


「お、おぉ、おぉぉ!? な、何か凄い力で腕が引っ張られました!」

「反動だな、言ってなかったかもしれないが、銃を撃つと

 さっきみたいな反動が来るんだ、反動の大きさは銃によって様々

 今回撃った拳銃はそこまで反動がキツいわけじゃ無いんだけど

 どうしてお前の銃は真上を狙っているんだ?」

「さ、流石に不意にあんなのが来たら驚きますよ…

 後、反動というのがあるのは知ってたんですけど

 何だかいつもリオさんは平然と使ってるので

 ここまで酷いとは思わなくて…リオさん、良く平然と使えますね」

「慣れだよ、慣れ、反動になれてりゃ、大した事は無い

 ひ弱な俺でも押さえることが出来る程度なんだから大丈夫だろ」


銃はあまり力が無くても結構撃つことは出来る。

だが、握力はそれなりに必要だな、握力が無いと

反動で手から離れて、銃が吹き飛んで、地面に落ちる。

そうなったら、土が銃に入ってジャムの原因になるし

暴発して怪我をする危険性があるから、握力は大事だ。


「まぁ、今回激しく上に持ってかれたようだが

 銃が落ちなくて良かったよ、土が入ったりしたら

 銃がジャムる事があるからな」

「……ジャムるって何ですか? よく分からないんですけど」

「あぁ、悪い悪い、ジャムって言うのは弾詰まりのことだ

弾が途中で詰って、銃が一時的に使えなくなる状態とかだな

 確率はかなり低いんだけど、そこに整備不良

 例えば土が入ったりすると弾が詰る確率が上がり

 戦闘中に弾詰まりが起るかもしれない

 そうなったらそりゃもうさよならだ

 だから、地面に銃を落とすとかは止めろよ?

 俺みたいに銃を魔法で出せるならまだ問題無いけどさ」


銃撃戦の最中に弾詰まりが起るのは致命的すぎるからな。

そんな事になりゃ、死ぬのはほぼ確定だろう。

とっさの判断が出来るならいざ知らず、今のこいつらならそうなるだろう。


「なる程…そう言うのには気を付けないといけないんですね」

「そうだ、あっと、ちょっとベレッタを貸してみろ」

「あ、はい」


実際の状態を見せるためにベレッタを借りて、スライドを少し動かして

わざと弾が詰った状態にした。


「おや!?」

「ん、これが弾詰まり、ジャムだ、この状態になると銃は撃てない」

「はぁ…でも、この状態をどうすれば直せるんですか?」

「そうだな、それはこうやって」


で、直す方法を教える為にベレッタのスライドを何度か動かして

詰っていた弾を排出した。

弾は勢いよく飛びだしたが、アルルがキャッチしてくれた。


「おぉ!」

「ナイスキャッチだな」

「あ、ありがとうございます」


アルルがキャッチしてくれた弾を返して貰い

すぐにベレッタのマガジンを取りだし、そこに戻し

再びベレッタにマガジンを挿入した。


「さて、さっきのがジャムと、その直し方だ

 実際の戦場でああなったらさっきみたいにすれば良い

 因みに場合によっては直らないから気を付けろよ」

「そんなちょっと危険な事をやったんですか?」

「ここで銃が使えなくなるよりも、戦闘中に銃が使えなくなって

 直し方も分からないってなるよりはマシだろ?」

「確かにそうですわね、ここなら最悪壊れても命に別状はありませんが

 戦場で武器を持った状況で戦ってる最中に故障となれば

 撤退することも難しく、命の危機に陥りますわ」

「そう言う事だ、安全第一ってね、死にたくは無いだろう?」

「そうだね…」


さーて、一応ジャムの説明もしたし、アルルの弾が何処に当ったかを

見てみるか…えっと、アルルが撃った弾は…何処にも痕が無いんだけど。


「おいアルル、何処にも痕が無いぞ? お前、外した?」

「……そ、そうかもしれません」

「お前、かなり視力良いのに狙うの下手なのか?」

「い、いえ! 弓矢は当ります! はい!」

「じゃあ、弓矢で3回的を狙ったとき、何処に何発当る?」

「さ、3回当りますよ…全部的の外にある木の空白ですが」

「……お前」

「いえ! あれです! あまり練習してなかったからです!」

「アルルさんは視力が良いのですが、そう言うのは苦手らしく…」

「いえ、あ、当りますよ!? 当りますよ!?」

「そうか、狙撃の腕が皆無だから、遠距離戦闘ではスポットだけなのか

 うん、そうだよな、考えてみれば射撃が得意なら弓矢持ってるよな

 遠距離メインなんだから、自分も遠距離武器で! って感じになるだろうし」

「……」


アルルはもはや反論すること無く、沈黙した。

何となくアルルの姿が白黒に見える気がする、燃え尽きたのか。


「うぅ、私、リオさんの部下失格です……こ、こんな役立たずな私なんか!

 もう社会的に死んだ後に死にます! と言う訳で、リオさん!」

「は?」

「いただきます!」


何を思ったのか、アルルのアホがこっちに飛びかかってきた!

何考えてるんだ!? 馬鹿なのか!? 馬鹿だろ!


「馬鹿な事やってないで練習すれば良いじゃ無いですの!」

「あだぁ!」


飛びかかってきたアルルの頭にシルバーの鉄拳が炸裂し

地面に顔から落下した…こりゃ痛いぞ。


「うぅ…拳骨は痛いんですけど、せめて平手打ちとかで」

「あなたに今更加減など必要ありませんわ

 さ、リオさん、今のうちにアルルさんの頭でも

 思いっきり踏んで差し上げたらどうでしょうか?」

「そうだな、じゃあ」

「お願いします! さぁ! 私の頭を強く踏んづけてください!

 出来れば裸足で! いや! 靴下でも良いので! いやもう靴でも良いです!」

「……やっぱいいや、何か怖いわ、こいつ」

「そうですわね…」

「何でですかぁ!? 踏んづけてくださいよぉ!」

「じゃあ…フレイ、こっちにき」

「すみませんでしたぁ!」


流石にフレイに踏まれるのは恐ろしかったのか、すぐに謝罪した。

うん、そりゃな、フレイに本気で踏まれたりしたらきっと頭がグチャっとなる

それ位あいつの身体強化魔法は強力だしな。

だが、今更謝罪は遅い、報いは受けてもらおう。


「ん? 何?」

「あぁ、ちょっとアルルの頭を踏んづけてくれ、全力で」

「ちょ! リオさん! 私、謝りました!」

「お前、今更謝罪程度で済むと思ってんの?」

「分かった! 踏んづければ良いんだね!」

「あ、あー! ふ、フレイさん! か、勘弁してくださいよ!

 私の頭がぺらぺらになってしまいますから!」

「元々ペラペラだろ?」

「いや! 中身的な方じゃ無く! 物理的に!」

「じゃあ、行くよ-!」

「あ、あー! 待って! 待って! ペチャンコは勘弁し、ひゃー!」


フレイの全力の踏みつけは、ギリギリでシルバーが引き起こすことで回避。

その代わり、フレイの全力の踏みつけで周囲に大量の砂埃が舞う。

ふぅ、ベレッタを避難させてて良かった、ジャムったら大変だ。

と言うか、いくら何でも砂埃が酷すぎだろ、流石フレイだ。


「あ、あわわ…」

「うーん、ちょっと手加減しちゃった」

「手加減してこの威力は凄いよ」


フレイの足下は小さなでも落ちたのかと思うくらいにへこんでいた。

あそこにもしアルルがいたら…まぁ、ぶちまけてたな。


「さ、流石フレイさん…」

「何だか知らないけど、褒められたんだよね? 流石私!」

「まぁ、そうだな、誇って良いぞ」

「いえーい!」

「……リオさん、私、オシッコ漏らしたかもしれません」

「大の大人が? それはハズいな」

「いや! 危うく死ぬところでした! 

 これはオシッコが漏れてもおかしくないレベル!

 まぁ、な、何とか漏れてなかったんですけどね!

 訓練前におトイレ行ってて良かったです!」

「まぁ、これに懲りたらもう馬鹿は止めろ」

「…でも断ります! 私はリオさんの為なら何度死にかけようとも!

 全力のダイブでリオさんを!」

「フレイ、今度はあいつの頭を」

「すみませんでした! 調子乗った事言いません!」

「それで良い」

「ん? ん? 何だか良くわからないけど、解決したならそれでいいや」


全く、アルルの奴め、本当に馬鹿なんだから。

マジで勘弁して欲しい、何かもう慣れてきたけどさ。

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