生き残った報酬
俺の報告を受けた結果、国は結構な混乱状態になった。
俺の活躍を今まで見ていたんだから
銃火器の脅威はよく分かっているのだろう。
だから、今回の敵も銃火器を使うという報告を受けて
敵側に俺と同じ程の脅威的な戦闘力を持つ部隊があると知り
混乱状態に陥った、これは仕方ないだろうけど。
「軍全体はかなりの混乱状態みたいですね」
だが、小さな戦士達全員は殆ど混乱などはしていなかった。
他の兵士達よりも、1番俺の能力を知り
俺の力と脅威も知っているはずなのにだ。
何だか不思議だ、なんであまり詳しくない奴らは騒いでるのに
1番詳しいはずのこいつらは一切動揺していないのだろうか。
「…なぁ、なんでお前らは焦らないんだ? 他の兵士よりも
俺の能力に詳しいし、俺の能力の強さも知ってる
そんな俺と同じ様な力を持つ敵が出て来たって言うのにさ」
俺のその疑問を聞いたアルルは、少々笑って答えてきた。
「単純ですよ、その程度の相手、リオさんが生きてくれていれば大丈夫です
私達はリオさんの事をよく知ってますからね
混乱するのはきっと、リオさんが居なくなった時位ですよ」
俺に対して絶対の信頼をしてくれているのか。
「…はぁ、過大評価だ、現に俺はこの様だろ? 何処にそんな力があると」
「1人で敵の大将を弱らせ、単身で後から来た兵士達の殆どを排除
そんな芸当をした人が何弱気な事を言ってるんですか?」
アルルのちょっとからかうような笑顔が向けられた。
だが、確かに少しくらい自信を持った方が良いのかも知れない。
現に俺はあれだけの数を単身で削ったわけだしな。
「…そうだな」
「ですがリオさん、1人での無茶は止めてくださいね
リオさんは本当に平然と自分の命を捨てようとするんですから
フレイさんもあの後散々泣いてましたし」
「あ、そうだ! お前、どうしてあの時戻ってきたんだ!?」
フレイが泣いていたという言葉で蘇って来た疑問だった。
俺は確かに逃げろと命令したはずだった、だが戻ってきた。
全員を引き連れてだ、そんな無茶をしたのは流石に。
「それ聞きます?」
「あぁ、聞く、命令違反だろ」
「私はリオさんの教育係、場合によっては命令を無視できるのですよ」
そうなんだ、いや、まぁ、命令を無視出来る権限が無いと
小さい子が無茶な命令を出したとき、死ぬしか無いからな。
「…じゃあ、一旦撤退したのに戻ってきたのは何でだ?
あのまま逃げれば良かったじゃないか、その方が安全だったし」
「私は元々全員と合流した後、救援に向うつもりだったんですよ
私達2人だけではリオさんの助けにはなれませんからね
あ、因みに残った敵兵士1人ですが、無力化しましたよ
相手が優秀な武器を持ってたとしても、あの状況なら勝てます」
「おま! そんな事したのか!? 怪我人は!?」
「いませんよ、すぐに無力化できました
あ、それとその兵士が持ってた武器ですけど、はい」
アルルが懐から銃火器を取り出してきた、病室に何持ってきてるんだよ。
その銃はS&W M500だった。
最強レベルの威力の弾丸を発射できるマグナムだ。
装弾数は確か5発の回転式拳銃、超火力だから俺が好きな銃でもある。
と言うか、リボルバー系はスナイパーの次に好きだ、格好いいし。
その中でもこいつは割と好きだ
INWでも最強レベルの拳銃として出てくるしな。
「後1つの大きい方はデカいので部屋に置いてます」
「…もしかして、引き金引いたか?」
「いいえ、危ないと言われてましたし回収だけです
私達にはこれがどんな物か分かりませんが、リオさんは分かるのでしょう?」
「あぁ、超火力の拳銃だが、反動が大きく、連射は難しいだろう
再装填無しで攻撃出来る回数は5発だ」
「はい、よく分かりません、ですので、リオさんに渡しておきます
私達が使うってなると、ほぼ間違いなく扱えませんし」
「持ってた方が良いんじゃ無いか? そうすれば、銃を持ってる奴にも
対応することが出来るぞ?」
「ですが、使い方が分からないんじゃちょっと」
うーん、S&W M500は反動が大きいから素人には難しいか。
だが、拳銃を取ることが出来ると言うなら1挺は持ってて欲しい。
またあの敵兵とやり合うことになった時に銃が無いと危険だしな。
じゃあ、そうだな、俺がパクってきたベレッタM92を渡そう。
一応、銃は隣の机の引き出しに入れてたっけ、おし、あったな
渡すときにちゃんとセーフティーは掛けておかないと。
それともうすでに入ってたマガジンは取り出しておこう。
で、もうすでに装弾されてる弾丸は取り出して、旧マガジンに装弾。
これで暴発の危険性はほぼ皆無になった訳だ。
「よしっと、ほれ」
「あ、あの時拾った」
「新品のマガジンは1つだけある、パクってきた奴だ
まぁ、銃の扱い方は後で退院したら教えるから持ってろ
それと、その時までマガジンは入れるなよ?
下手にぶち込んで暴発なんかしたら困るからな」
「あ、はい、でも、なんでこれを?」
「敵に銃火器がある以上、こっちも銃を使うしか無いからな
で、銃を持つのはお前ら教育役だ
フレイ達に銃火器は危険すぎるからな
だから、俺が退院した後は教育係全員を呼んで、そこで銃器の扱いを教える
まぁ、この銃器は敵の魔法で召喚されているものだから
そいつの一存で消すことも出来るかもしれないが
無いよりはマシだろう、無くなったらパクれば良いし」
「大丈夫でしょうかね」
「取り扱いは簡単だからな、ただお前が持ってきた銃は
ちょっと危険だから俺に渡しておいてくれ」
「あ、はい」
俺はS&Wのシリンダーを開けて、弾丸を取り出した。
中に入ってた薬莢は5発でどうやら1発も撃ってないらしく
全弾が入ってる、悪くは無いな、だが、弾は拾ってきてないだろうから
あまり実用性があるわけじゃないけどな。
「っと」
「リオさん、なんでわざわざ回転させた後、振って戻したんですか?
そうやるのが普通なんですか? 普通にやった方が楽な気が」
「え?」
あ…は、恥ずかしい、何か恥ずかしい! エアガンで
シリンダーを戻そうとする度にこうやってわざわざ回転させて
スイングアクションで戻してるからつい癖で!
ひ、人前でやると、何かスゲー恥ずかしい!
「え、えっと、あっと、その…き、気分だよ! 気分!」
「リオさん、顔、真っ赤ですよ」
「くぅ!」
超恥ずかしい! めっちゃ恥ずかしい! これは恥ずかしい!
うぐぐぅ、この癖、どうにかしないとなぁ。
「ま、まぁ、良いじゃ無いか、何だって」
「そ、そうですね…むふ」
「その気持ち悪い笑顔を止めろ!」
「顔真っ赤っかなリオさんが可愛いので無理です!」
「その顔止めろってのぉ! イラつくだろうがぁ!」
く、クソ、また恥をかいてしまった、うぅ、嫌だな。
「いやぁ、リオさんはやっぱり可愛いですねぇ~」
「お前、マジでぶち抜くぞ、何ならS&Wで頭撃つぞコラ
多分吹っ飛ぶからな、お前の頭があった場所に何も無くなるからな」
「な、何ですかそれ、凄く怖いんですけど」
S&W M500はそれ位出来てもおかしくない程の超火力だ。
実弾を撃った事なんて無いけど、調べた結果、それ位は出来ると思う。
それ程の超火力だ、となるとかなりの反動だろう
この銃は自分の魔法じゃ無いから俺が撃った場合、どうなるかは分からないな
封印しておいた方が良いか。
それ位ヤバい、バレットシリーズの火力ほどではないにせよ
拳銃最強だからな、下手に撃ったら相手の体の一部がすっ飛ぶ。
こうなったら、むしろ生き残った方が辛いだろうし。
「何か嘘っぽく聞えないですよ?」
「事実だからな、実際やったことは無いけど間違いなくそうなる」
「……か、考えたくもありませんね」
「だったら変な事を言うな」
1発、的に撃ってみたい気分にもなるんだけど反動エグいだろうし
俺みたいな小っちゃい子供が使えば吹き飛びそうだよな。
肩とか脱臼するんじゃ無いかな、バレットの方は
俺自身の魔法だから、反動で自分にダメージは無いけどさ。
もしバレットの反動でダメージあったら最初の対物で腕が大変な事に
なっているだろうし、無茶な使い方は出来ないだろうからな。
「しかし、銃というのは凄い威力なんですね」
「あぁ、凄い火力だぞ、だから下手に触るな」
「でも、そんな危険な物を何で私に?」
「お前は銃に対して肉弾戦を挑もうとするほど馬鹿なのか?
トラ達は魔法の応用で戦えるだろうが
お前らはそうはいかないだろう?」
「そ、そうですね…」
問題はフレイなんだよな、魔法を扱えるとは言え身体強化だ
接近戦が主体となる以上、下手に戦う事は出来ない。
そうだ、木とかで壁をつくって戦わせるか?
その方が安全性が高いな、割と危険ではあるが
だが、あいつに銃を持たせて戦わせる方が怖い。
何か銃口を覗いて誤って引き金を引いて酷い目に遭いそう。
あいつは何度注意してもろくに聞いてくれそうに無いしな。
だから銃を渡すのは怖い。
「だから、今回銃を渡したんだ、分かったか?」
「は、はい」
「あ、そうだ、今更なんだけどフレイ達は何処だ?」
「あぁ、フレイさん達なら」
「リオちゃん!」
病室のドアが開き、そこからフレイ達が姿を現した
何故か料理を持ってきているけど…何でだ?
「リオちゃん、何でも食べて良くなったんだよね?」
「あぁ、まぁ、そう言われたけど」
「だから料理作ってきたんだよ! 皆で!」
「え?」
料理? こいつら料理作ったのか? て言うか、料理出来たんだ。
「シルバーさん達に協力して貰ったんですよ」
「後、ケーキもあるよ! 頑張って作ったんだ!」
「ケーキ? 何でまた」
「何でって、リオさん、忘れたんですか? 今日ってリオさんの誕生日ですよ?」
「え?」
「正確にはリオがひまわりに来た日らしいけどね」
そうか、今日は12月22日か、じゃあ、俺の誕生日だな。
実際に生まれた日は知らないけど、この日が誕生日だ。
いつもこの日になると全員が祝ってくれる。
あぁ、これで俺もとうとう8歳か、身長は変わらないけど。
「リオちゃん、こんな状態で言うのも何だけど、お誕生日おめでとう!」
「……あぁ、ありがとうな、嬉しいよ」
「はい! 私達からのプレゼント!」
フレイが料理を渡そうとしたタイミングに足下から犬が飛び出してきた。
「うわぁあ! 犬! 犬! こんな誕生日プレゼント要らねぇ!」
「あぁ! ナナちゃんがぁ!」
「なんで連れてきたんですか!?」
「知らないよぉ!」
「うわぁあ! 舐める、痛! そこまだ怪我治ってな! 痛いだろがぁ!」
「ナナちゃん! 離れて! まだリオさん怪我完治してないですよ!」
「早く引き剥がして、う、うぉおあ!」
今度は病室のベットから頭から落下してしまった。
「うぅ、痛い! 何で傷の場所ばかり舐めてるんだよ! 痛い! 痛いって!」
「リオさんがナナちゃんに押し倒されてる形です! 何か良い!」
「アルルさん! 馬鹿言ってないで早く引き剥がしてください!」
「あ、はーい、ナナちゃん、離れましょーねー」
「わざとゆっくりやるな馬鹿!」
うぅ、頭痛い…ほっぺの傷も痛い、何か本当にドタバタした誕生日だ。
…でも、まぁ、こんな形でも誕生日を迎えることが出来たんだ
迎えることが出来なかったかもしれない誕生日…まぁ、こんな感じでも
迎えることが出来て…良かったかな。




