誰でもヤバい
ぶっ倒れて、次に目を覚ましたのは、自分達の部屋だった。
どうやら、アルルの奴が運んでくれたようだな。
しかし、まだ頭が痛い、魔力を使いすぎた影響って、結構あるな。
時間は・・・・あぁ、5時間は寝てたのか、外は夕暮れ時だしな。
「ふえぇ、疲れちゃったぁ」
扉の方から、フレイの声が聞えてきた、どうやら戻ってきたようだな。
しかし、あいつらは5時間近くも訓練してたのかよ。
「あ、リオちゃん! 起きてたんだね!」
フレイ達は、俺の近くまで小走りで走ってきた。
「え? 俺が倒れてたこと、知ってたの?」
「うん、休憩時間中にアルルさんが教えてくれたの」
「心配してたんだけど、大丈夫そうで良かったよ」
「無茶したら駄目だよ? リオはすぐに無茶するんだから」
まぁ、そうなんだよな、昔の記憶が残ってるせいか知らないけど、俺は良く無理をする。
もう少し、自重しないといけないな・・・・今は幼いんだから。
「あぁ、今度からは気を付けるよ、下手したら死ぬらしいしな」
「死ぬって! そんな危ない訓練をしてたの!?」
「いや、やり過ぎると死ぬってだけで、別に無理をしなければ」
「死んじゃ駄目だよ!? ねぇ!」
「分かってるって、だから、そんなに揺さぶるな」
心配してくれてるって言うのはよく分かるな、俺の言葉を聞いて、全員軽く半泣きだし。
いや、うん、単語だけ聞くと、かなりヤバいからな、死ぬとか。
実際は、どの訓練も下手したら死にそうだけど、他にどんな訓練があるか知らないが。
「とにかく、別に死にはしないって、無理しなければ」
「そう? 無理したら駄目だからね?」
「そうだよ、リオちゃんが死んじゃったら、私は泣くよ? ずっと泣いちゃうよ?」
「うん、無理は駄目だよ、本当に駄目だからね?」
「分かってるって、だから、泣かないでくれよ」
はぁ、やれやれ、ま、無理はしないようにしないとな、こいつらを泣かせるわけにもいかないし。
とりあえず、今日はそのまま寝るか、明日、もう一度訓練だ、出来る限り、早急に魔力を増強しないと。
「それじゃあ、今日は飯食って、風呂入って寝るか」
「そうだね」
「あぁ、起きていらしたのですね」
「シルバー? どうしてここに?」
「今日は、私がお守りなのです、お食事のご用意をいたしますね、その後はお風呂のお世話も致します」
あぁ、このお守りって言うのは交代制なんだな、とりあえず、アルルじゃ無いなら良いか。
こいつなら、別に一緒に風呂に入っても、問題は・・・・いや、問題しかねぇわ。
フレイ達はまだ言い、子供だし、体もスレンダーだから一切問題は無い。
だが、あいつは駄目だ、完全に大人だし、こんなのと風呂には入れるか!
「と、とりあえず、飯を作ってくれ、風呂は、俺は1人で入る」
「何故ですの? もしも、お一人でお入りになって、おぼれたりすれば、大変ですわよ?」
「いや、大丈夫だから、風呂くらいもう一人では入れるって、うん」
何とかこいつと風呂に入るのは避けたい、大人だぞ? 相手は大人の女性だぞ?
見た目年齢的には、くたばる前の俺と同じくらい、絶対に無理だ。
いや、待てよ、別に一緒に入っても良いんじゃないの? 俺は中身は男でも、外見は幼女だし。
でも、駄目だ! お、俺には刺激が強すぎる!
「駄目ですわ、もしもの事があったら大変ですので」
「いや、でもさ」
「とにかく、今はお食事のご用意を致しますね」
そう言って、シルバーは台所に移動した。
うーん、このままでは、あいつと風呂に入る事になってしまう。
だが、アルルと違って、下心は皆無だろうし、完全に俺を心配しての言葉なんだよな。
しかしだ、それでも、あいつと風呂に入るのは不味い! 主に俺の理性がブレイクしてしまう!
いやいや、待てよ、考えてみれば、俺は先生と風呂にも入っていたじゃ無いか。
そうだ、女の人と一緒に風呂に入るなんて、大した事無いって!
俺はシルバーが作ってくれた料理を食いながら、自分にそう言い聞かせることにした。
「しかし、美味しいな、このご飯」
「私特製のソースを使った、ハンバーグですわ」
「どんなのを使ったの!? 凄く美味しい!」
「伊達に安い材料を美味しく調理してきたわけではありませんわ
このソースは安値で買える大豆を使い、黄金比で味付けをしたソースですの」
良家のお嬢様だったとは思えない発言だな。
いや、節約上手の料理上手って言った方が良いかな。
しかし、これほどの腕があれば、軍人なんて止めて、料理屋でもすれば良いのにな。
そう言えば、アルルの料理も美味かったな、サポーターは料理が上手くないとなれないのか?
まぁ、いいや、とりあえず大切なのは、美味しいって事だし。
「あぁ、フレイさん、お口にソースが付いていますわよ?」
「もごもご、むぐぅ、ほーふふはい、ひいひゃん」
「食べながら喋るのは行儀が悪いですわ」
フレイは、このハンバーグを1口でかなり頬ばっているな。
まぁ、美味しいから分かるんだけどさ。
にしても、口の周りが汚ぇな、ソースまみれじゃないか。
「ん、はぁ、美味しい!」
「はい、お顔を近づけてくださいまし、お口を拭きますわよ」
「はーい!」
「頬ばりすぎですわ、嬉しいのですけど、もう少しゆっくりとお召し上がりくださいまし」
「美味しいからね! 一気に食べたくなるのは当然だよ!」
「まぁ、嬉しいですわ、腕によりを掛けただけはありますわ」
「そうか、だからこんなに美味しいんだ」
「えぇ、それはもう、皆様方に作るお料理に手を抜けるはずもございません」
「本当に、シルバーは料理が上手いね、流石だよ」
「これからも、料理の腕を磨いていきますので、期待していてくださいね、トラさん、皆さん」
あぁ、やっぱりトラだけ特別に名前を言うんだな、ま、直属の上司だしな。
そんな風に、賑やかな会話をしながら、俺達は食事を終わらせた。
「「「「ごちそうさまでした」」」」
「お粗末様ですわ、それでは、食器を洗ってきます、しばらくお休みくださいね」
そう言って、シルバーは俺達の食器を取り、台所に移動した。
その間、俺達はお腹をさすりながら、部屋でのんびりすることにした。
そう言えば、何か忘れているような? いや、気のせいだろう。
「食器の片付けは終わりましたわ、では、お風呂に入りますよ」
「はーい!」
ヤバい! 忘れてた! そう言えば、お風呂があったんだった!
「無理! 無理! だっての!」
「わがまま言わないでくださいまし」
シルバーは全力で拒否している俺に近寄ってきて、軽々と持ち上げた。
そうだった! 俺って今は幼女だった!
「止めろ! 止めてくれー!」
「お風呂が嫌いなのですね、でも、大丈夫でございますわ、私が付いていますわよ」
「お前が付いてるからヤバいんだよ! あ、そうだ! せめて、お前はタオルを巻いてくれ!」
「お風呂において、タオルを巻いての入浴など邪道ですわ!」
マジかよ! そういう感じなの!? お風呂すきーなの!? こいつ!
「それでは、服を脱いでくださいまし」
「誰が脱ぐか!」
シルバーが俺を離した今がチャンス! 今のうちに、脱衣所から抜け出してやる!
「おっと、何処に行くの?」
「げぇ! フレイ!? 何で邪魔するんだよ!」
「駄目だよ? お風呂には入らないとさ、ほら、服を脱ぐのを手伝ってあげよう」
「止めろ! 止めてくれ-! 服を脱がそうとするな! こら!」
「あはは! 駄目だよ、抵抗しても、それにさ、リオちゃんの服は脱がせやすいの」
「あ! ちょま! 止めろ! 止めろって! わぁあ!」
俺の抵抗も虚しく、周りにいたトラたちの乱入もあり、俺はあっさりと服を脱がされてしまった。
いや、別に良いんだ、俺が服を脱がされるのは、何の問題も無い。
だが! 服を脱がされたことにより、退路が無くなった!
裸で外に出るわけにも行かないし! 男なら良いよ!? いや、子供だし、裸でも問題は無いんじゃね?
そうだ! 問題は無いはずだ! このまま!
「それでは、入ますわよ」
「あぁ! ちょま! 何で俺を抱き上げる!」
「逃げそうですので」
「うわぁあ! 先読みされた!」
結局、逃げることは出来ずに、俺はシルバーにお風呂まで連れて行かれた。
うぐぅ、まぁ、あれだ、シルバーの方を見なければ良いんだ。
「気持ちいいですわね、お風呂はやっぱり」
「そうだよね、温かいし」
「そりゃそりゃ、リオちゃん、隅っこで何してるの? ほらほら」
「こら、止めろ、お湯を掛けるな」
落ち着かない、端っこの方にいるのに、どうも落ち着かない。
シルバーを背にしているのに、何か、落ち着かない。
何だろう、こう、振り向きたいんだけど、その、駄目だ! 駄目だ! 振り向けない!
「あの、リオさん、私はあなたに何か悪いことでも致しましたか?」
「いや、お前は何もしてない、気にしないでくれ」
「でしたら、私の方を見てくださっても良いのでは? さきほどから
後ろでお湯を掛けられているのに振り向こうとはしませんし」
「いや、その、何だ問題ないし」
「えいえい! ほらほら、髪の毛がびちゃびちゃだよ?」
「フレイ! いい加減に! うおぉ!」
ちょっとだけ横を見たとき、そこにシルバーが移動していた!
い、いつの間に移動してやがったんだ!
「そこまで驚くことは無いではありませんか」
「いや、驚くって! 知らないうちに近くに居たら!」
「はぁ、そうなのですか?」
「ねぇ、シルバー、そろそろ髪の毛を洗った方が良いんじゃないのかな?」
「あ、そうですわね、それでは、お1人ずつ洗います」
最初はトラが頭が風呂場から出て、頭を洗って貰っている。
「はぁ」
「えいえい、ほらほら!」
「フレイ! いい加減にしやが!」
「え、えい、えい」
え? あ、普段、こういうことをしないウィングがこういうことをしてる?
それだけ、気分が良いのか? もしかして、風呂場だから?
うーん、こう言うときに怒るのはちょっとな、フレイなら良いけど。
「じゃあ、俺もやるか、ほら」
「きゃー、えい、えい」
「むぅ! 何さ! 私の時は容赦ないのに! ウィングの時は優しいのはどういうことなの!?」
「いや、ほら、お前は容赦なくやらないと反省しないし」
「てりゃぁ!」
「ぶふぁあ!」
「きゃー、温かい!」
あいつ、思いっきりやりやがったな! 大量のお湯が飛んできたし!
相変わらず、加減と言う物を知らない奴だ!
「こら! やり過ぎだろうが! この! この!」
「あはは! やーい、やーい! これでも食らえー!」
「うぁあ!」
こいつが飛ばしてくる湯はとんでもないくらい多い。
魔法で強化してるんじゃ無いか? って疑うくらいにすごい勢いだし!
「えい、えい」
「わひゃぁ、負けないよ! てりゃぁ!」
「きゃー、あはは!」
本当に子供だな、年相応だよ、そんな感じで、俺達はお湯かけを行なった。
その後、トラも参加して、かなりの大賑わいだ。
大体はフレイが大暴れしているからだな。
だから、フレイが頭を洗って貰っている間は、少し大人しい感じだったな。
「それでは、次はリオさんですわ」
「げ!? マジで!?」
「マジですよ? ほら、来て下さい」
「いや! ちょっと待って! 止めて! ストップ!」
「駄目ですわ、皆さんは頭を洗ったのに、1人だけ洗わないなど」
「あぁ! また強引に!」
俺はやっぱり風呂に入ってきたシルバーに抱き上げられて、椅子に座らされた。
く、くそう、何てこった。
「はい、目を瞑って下さいませ」
「うぅ」
し、仕方ない、こうなったら言う事を聞くしかない。
俺は仕方なく目を瞑り、シルバーの言うとおりにすることにした。
「では、洗いますよ」
んぁ!? か、肩当たりに、妙に柔らかい触感がぁ! これは、これはあれだよ!?
最悪だぞ! 何でよりにもよって当たってるんだよ!
「ちょっま! シルバー! 近い! 当たってるぞ!?」
「ほら、リオさんが逃げては困りますので、すぐに対応できるように近付いてるのですわ」
「いや! ちょ、ま! 逃げない! 逃げないから! 少し離れて!」
「駄目ですわよ、そう言って、隙を伺って逃げるのでしょう?」
言う事を聞いてくれない! と言うか! よ、余計に近寄ってきたぁ!
逆効果だ! このままだと! 俺の理性がぁ!
「ま、マジで離れてくれ、本当にマジで!」
「駄目ですわ、逃げられるわけには行きませんから」
「や、やめ・・・・うぐふぁぁ!」
俺の鼻から、何か変な物が出て来た気がする。
「わぁ! リオさん!? どうしたのですか!? 何故鼻血を!?」
「もう、無理・・・・」
「ちょっと!? リオさん!? 意識を失いすぎですわ!」
「ま、まだ、意識は失ってな!」
俺が目を開けると、目の前には大きな桃がぁ!
こんな物を見てしまったら、み、見てしまったらぁ!
「ぐふぁあ!」
俺の鼻から、真っ赤なエネルギーが放出されたのが分かった。
そして、そのまま意識を失った・・・・何か、最近、凄い意識を失ってる気がす・・・・
「リオさん!? リオさーん!!」
「え? また気絶しちゃったの? 何だか良く意識が飛ぶよね、リオちゃん」
「瓦礫が当たっちゃったから、意識を失いやすくなったのかも?」
「じゃあ、私のせいじゃん! ごめんね! リオ!」




