久々の銃撃戦
馬鹿な、あり得ないぞ…何でベレッタ?
いや、大事なのはベレッタであるかどうかじゃ無い
大事なのは…何で銃火器がない筈のこの世界に
銃火器が…それもマスケットとか、火縄銃とか
そう言った進化の過程をすっ飛ばして
何故もうすでに拳銃サイズになっているんだ?
「リオさん、あの音…私の記憶に間違えが無ければ
あれはリオさんも使っている、狙撃銃と同じ音ですよね?」
「あぁ、だが武器は違う…俺の武器は狙撃銃だが
奴らが使ったのは拳銃、持ち運びが容易な装備だ
狙撃銃と比べて接近戦に強い武器だ…だが、なんで…」
あり得ない…と、今までなら言っていた事だろうが、あり得る。
考えてみればC4爆弾があったり、無線機があるんだからな。
それなら拳銃くらいはあってもおかしくないはずだ。
「おい! 出て来やがれ! 臆病者共が!」
「くぅ! 誰が臆病だってぇ!」
「よせフレイ、挑発だ、下手に出るな…真っ向から出たら向こうの思うつぼ
…まぁ、俺に任せておけ…お前らはここに隠れたままで待機だ」
「え?」
まぁ、考えるのは後でいくらでも出来る、今は状況の打破が先だ。
相手の人数は3人だ、だが、銃火器を持っていると言う事は
ただ真っ向からやり合えば、こちらの被害がデカくなるのは明白だろう。
だが、俺1人で動くなら話は別だ、俺は銃の特徴くらい知ってる。
立ち回りだって分かりきってるんだ、環境もこちらの味方だ。
向こうは恐らく最初の攻撃から推測して反応も遅く、精度も悪い。
つまり、あまり銃火器の扱いに慣れていない兵士だと分かる。
慣れているなら、即席で俺達を狙えていたはずだ
いや、まぁ、慣れていないというのは言い過ぎだが
あの反応と精度は普通だ、俺の方が相手が拳銃だろうと早撃ちは勝てる。
「っし」
俺はさっさと狙撃銃をM21に変化させた、セミオートのライフルだ。
相手は3人、ウィンチェスターの様な
ボルトアクション式で捌ききれる数じゃ無い。
だったら、セミオートで素早く落とすことを考えた方が良い。
で、恐らくだが、あいつらの次の行動は俺達を狙う為に一気に来るだろう。
向こうは俺の能力を知らないから、のこのこと来るだろうな。
「何処だ? へ、ビビってないで出て来いよ」
足音が近い…数は1人、バラバラに移動したと踏んだようだな。
判断としては間違いだ、まぁ、向こうは俺の事を知らないのだから
この判断で動くのは明白、だが、向こうは当たり前の様に
こちらに近寄っている、この行動から拳銃に絶対の自信があるらしい。
そりゃな、銃火器が無い世界で銃火器を使っていたというなら
そういう考えに至ったとしても普通だ、だが、そこが命取り。
「何処だ!」
「ここだ」
「んな!」
足下を見なかったのか、馬鹿だな…普通は足下を警戒するだろう。
まぁ、足下を警戒していたとしても、こちらの方が速く撃っていただろうが。
「おぉ! 仕留めたか!」
「おい、何眠って」
あの音の後に仲間が倒れるという発想に至ってない奴なら
仲間が倒れていればのこのこと来るのは分かってた。
だから、敵が警戒無しに来るのは大体想像が付いた。
来る方向だって大体分かってたんだからな。
それさえ分かれば不意打ちを仕掛けて撃破など簡単だ。
「2人目仕留めた感じか? ん?」
っと、移動の足音に気が付いたか、意外と耳は良いみたいだな。
「…まぁ、小さな足音だったし、動物か」
だが、残念ながら臆病じゃ無かったようだな。
臆病者ならここで警戒をして行動する、勝手に納得しようとはしない
よく分からない事があれば、分から無いと不安でしょうが無い
だから、警戒して移動する、そうすれば対処は出来ていただろうに。
「久々の銃撃戦、手応えの欠片も無かったな」
3回目の銃声が周囲に響き渡り、3人の兵士のダウンを告げる。
やれやれ、銃を持っているからどうしようかと思ったが
意外と大した事は無かったな、むしろ相手が銃を持っている方が
俺からして見ればやりやすい、今回、そう感じた。
「…ふぅ、とりあえず探るか」
ひとまず撃破した3人の持ち物を確認することにした。
この3人が持って居たのはベレッタM92だった。
やっぱりベレッタか…何でマスケットも無い世界にオートマチック式が?
色々と過程を飛ばしすぎだが…もしかしたら、向こうは大分進歩してるとか?
いや、そんな事は無いか…何で銃火器があるなら兵士に標準装備させてない?
量産できる体制がは結構簡単に出来るはずなのに。
「リオさん、真剣な顔で何を見てるんですか?」
「あぁ、ほら」
「何ですか? この小さな塊、何の塊なんですか?」
「銃だよ、銃、拳銃、割と重いだろ? 鉄で出来てるところ多いし」
「ん? 重くはありませんね」
「え?」
少々は重いと感じると思うが…っと、あ、本当だ、割と軽い。
実在の銃を持ったことなど無いが、結構軽いんだな。
エアガンでめちゃ重い奴を買ったことはあるが
それよりも軽い…ふーむ、実際の銃はこんな物なのか?
とりあえず、1挺くらいは拾っておこう、調べることも出来るだろうし。
「でも、変わった道具ですね、どう使うんでしょうか」
「敵に狙いを付けて、手元にある引き金を引く
それだけだ、あ、触るなよ? 暴発したら怖いし」
「暴発?」
「誤って銃をぶっ放すことだ、一撃だけで当たり所によれば
一撃で相手を殺せる武器だからな、出来れば触るな」
「な、何だか怖いですね、私、触らないで居ます」
「それで良い、じゃ、フレイを押さえてろよ? あいつの事だ
下手したら珍しい物だって飛びかかって暴発させる可能性もあるんだ」
「そ、そうですね」
とりあえず、俺はそのまま兵士を探る事にした。
そして、もう一挺の銃火器が出て来た、それはKMP M2000…
この銃はINWの主人公が所属する組織が作ったアサルトライフル…
あのゲームオリジナルの銃……デザインも一緒だ…馬鹿な、何でだ!?
それに銃にはINWの主人公が所属していた
組織の名前である、MUBCと書いてある!?
「……あ、あり得ない…こんな筈…こんな馬鹿な事…」
あり得るわけが無い、銃火器があったのは無理矢理納得することは出来る
向こう側の技術が発達していたんだなと言う解釈で。
だが、これだけはどうしても納得できない!
ゲームとデザインも一緒! 組織の名前も書いてある!
そうだ! あの時、サンズ地方にあったC4! あれも!
……じゃあ、これは…そんな馬鹿な!
「リオさん、真っ青な顔してどうしたんですか?」
「……いや、何でも無い」
「そんな風には見えませんけど―! リオさん!」
「な!」
俺がかなり動揺していると、不意にアルルに引っ張られ
俺は近場の木の後ろに引っ張られた。
理由はすぐに分かった、何発も連続で聞えた銃声のお陰で。
「……」
銃を放った人物はすぐに俺の視界の中に入った。
そこに居たのはピンク色のツインテールで白い瞳の少女だった。
手にはMP5と思われるサブマシンガンを2挺持っている。
「MP5…マジであり得ねぇ」
「そこに隠れてるのは分かってる、出て来なさい」
「出て来たら蜂の巣だろ? 誰が出るか」
「…だったら、無理矢理でも引きずり出してあげる」
彼女が手に持っていた2挺のMP5を投げると
そのMP5は光りに包まれ消え、彼女手元には
RPGー7があった、召喚したと言う事か!?
じゃあ、もしかしてあの銃火器もこの子が!
「吹っ飛びなさい!」
「ちぃ!」
俺は彼女がRPGー7を放った音を聞くと同時に
超集中状態を強制発動させ、飛んでくるRPGー7の弾頭を撃ち抜いた。
この超集中状態じゃ無けりゃ、流石にRPGの弾頭を撃ち抜くのは無理がある。
しかし、予想以上に効果があるな、この状態
弾頭がかなりゆっくりに見えたぞ。
「な!」
「く!」
弾丸をモロに食らった弾頭はその場で大爆発を起し
周囲にかなり巨大な爆発音と衝撃を吹き出し、俺を吹き飛ばした。
「マズ!」
「リオさん!」
あと少しで飛ばされるという所で木に引っ付いていたアルルが
俺の腕を掴み、俺を抱きしめるように引き寄せた。
「ありがとよ、だが、胸に俺の後頭部を押し付けてるのはワザとか?」
「いえ、完全に偶然ですよ、流石にこんな危機的状況で
リオさんに変態行動を取ろうなどと思うはずもありません
ですが、鼓動は速くなってます、そりゃもう、こんなに近くに」
「状況考えろ…かなり悪いぞ? 敵は1人だけだが
あの1人はほぼ間違いなくさっき仕留めた3人よりも断然強い
銃火器を召喚したのも彼女だ、それに反応速度も精度も結構良い
どう考えても、あの3人よりも手練れ…侮れば死ぬ」
「リオさんがそこまでいうと言う事は、よっぽどなのでしょうね」
「そうだよ、だからお前も気を引き締めろ、あれで死んだわけじゃ無いぞ?」
弾頭が爆発した場所と、彼女がいた場所はそれなりに距離があった。
だから、吹き飛ばされたりする事はあるだろうが、死ぬことは無いだろう。
元々殺したくないからある程度時間を空けて撃ち抜いたんだ、死なれちゃ困る。
殺すつもりだったら、RPGを出した直後に弾頭を撃てば良かっただけだしな。
「…発射された弾頭が爆発した、それに銃声…あぁ、そうか、そうかそうか!
あなたが、そう…あなたがリオね、会いたかったわ
戦場の狙撃手、ミストラル王国唯一の狙撃手! リオ!
まさかこっちの2つ名の通り、幼き狙撃手だった訳ね」
「何だ? 俺も結構有名になった物だな、てか2つ名か
だが、幼いってよく分かったな」
「ミストラル王国の強者は幼子ばかりだからね
しかしまぁ、有名になったせいであなたは私に狙われた
不運だったわね、あなたを殺せば、民衆達は喜ぶことでしょう!」
「何だ? 民衆のために戦ってるのか?」
「そうよ、私は私を信じてくれている人達の幸せのために戦う!」
「…クソが、お前の作った兵器のせいで死ん」
「死になさい!」
「うぉ!」
くぅ! 何だよ! 人の話くらい聞けよ!
「アルル! お前は岩陰に隠れてろ!」
「ですが!」
「お前の役目はサポート!
なら、その仕事が最大限にする為の行動をしろ! 分かったか!」
「…はい!」
…同じ銃を使う、実力が同じ程の幼女との戦いか。
で、あいつはガキにしては随分と口調が大人っぽい。
それにゲームの兵器を使っているところから考えて
あいつは恐らく俺と同じ転生者…はは、面白くなってきたじゃないか!
久々にやってみたかったんだよな! マジの銃撃戦!
最近はめっきりご無沙汰だったんだ! 楽しませて貰おうじゃ無いか!
「おい! お前! お前の名前は何だ!? テメェだけ
俺の名前を知ってちゃ不平等だろ?」
「…私はミロル、そう呼ばれてる」
「答えてくれて感謝ってな、じゃあ、ミロル
折角転生者同士があったんだ、勝負をしようじゃ無いか
命を賭けた真剣勝負、1回死ねば本当に死ぬ
1対1の真剣勝負…どうだ? 乗るか?」
「……良いでしょう、私! こう言うのに飢えてたの!」
「は! 良い返事! まぁ、勝つのは俺だがな!」
「馬鹿言わないで、勝つのは私!」
命を賭けた真剣勝負、今まで何度もやって来たが
同じ銃を使う同志での戦いは初めてだ、楽しみだな。
久し振りに銃相手に本気で立ち回わる! 久々に血が騒ぐ!




