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居酒屋へ

授与式の後、俺達はトロピカル地方にまで戻り。

そのままサンズ地方まで移動し、迎撃態勢を整えることにした。

休憩は十分やったし、いつでも動けるようにしたいからな。

で、しばらくの間、俺達はエナさんの居酒屋で過ごすことにした。

バイトとしてでは無く、お客としてだ。


「失礼しまーす」

「いらっしゃ…あぁ、リオちゃん達かい!」

「久し振りでね、エナさん」

「そうかい? まぁ、いいか、ちょっと待ってておくれよ

 今すぐセレスを呼ぶから、あの子も悲しんでたんだ

 いきなりあんた達が消えたからね、帰ってきたと知れば

 かなり喜ぶと思うよ!」

「いきなり消えたのは、本当にすみません」

「良いさ、そっちにも事情があったんだろ? 英雄さん?」

「その言い方、止めてくださいよ」

「自信持ちなよ、あんたのお陰でサンズ地方は随分と賑やかになったからね」


そう言って、エナさんは2階に上がり、セレスさんの名前を呼んだ。

するとすぐにセレスさんが階段から降りてきた。


「ほ、本当だ! いやぁ、僕は凄く嬉しいよ!」


すぐに俺の方に近寄ると、俺を抱き上げてきた。

久々に見る高い景色だ、前までは見慣れていたが

久し振りすぎて、妙に怖いと感じるな。


「何も言わないで居なくなったから、僕は本当に心配したんだよ!?」

「それは本当に申し訳ないと思ってます」

「でも、こうやって会いに来てくれて嬉しいよ!」

「むぐ!」


柔らかい物に挟まれてる! ヤバい! ヤバい-!

キツいって! これは、これはキツい! うぐぐぅう!


「ぷは!」

「ん? 凄い顔が赤いね」

「えっと、だ、抱きしめるのは勘弁してください」

「苦しかったんだね、ごめんごめん、つい嬉しくって」


は、はぁ、あ、危なかった、何とか噴出せずに済んだ。

危ういって、あれはマジで厳しい…はぁ、なんとか堪えられて良かった。

この体になって、結構こう言う経験をして居る気がするのだが

やはり何度やられても慣れない、あれは無理だって。


「ふぅ」


何とかセレスさんは俺を降ろしてくれた。


「えっと、今日はお客としてきたんです」

「まぁ、そんな気はしてたよ、でも、居酒屋に沢山の子連れって

 結構変わってるね、お友達かな?」

「友達であり、家族であり、大事な仲間です」

「フレイです! リオちゃんと一緒に大きくなったんだ!」

「トラです、リオとは子供の頃から一緒にすごした仲です」

「うぃ、ウィング…です」

「マルです、リオちゃんに色々と助けて貰って何とか元気です」

「メルです、マルと同じくリオに助けて貰った身の上です」

「…あの時は妹扱いだったけど、実は私の方が年上

 実際は姉妹じゃない、私の妹はウィング

 リオも妹でも良いけど、受入れてくれない」

「ウィンです、リオお姉ちゃんの妹です!」

「私はシルバーと言われています

 トラさん達の部下という立場ですわ」

「私はメルト、シルバーと同じくウィングさん達の部下だね」

「わ、私は、マナと言います、同じくフレイさん達の部下です」

「で! 私は分かっていると思いますがアルルです!

 リオさんとは姉妹でも何でも無く、実は部下です

 そろそろ部下という間柄ではなく、別のと思うのですが

 部下なのです…残念な事に」


本来の俺達の自己紹介を全員がしたところで

そろそろ飲み物を頼もうかなと、席に移動したとき。


「リオさんは自己紹介しないのですか?」

「え? いや、今更良いだろう?」

「いや、やっぱりここまで来たらリオもして欲しいねぇ」

「そうだね、自分の事を色々とさ」

「…はぁ、分かりましたよ、えっと、俺の名前はリオと言います

 あの時は3姉妹といってましたが

 実際は違って、お互い部下と上司という間柄です」

「誰が1番上なんだい?」

「俺が表面上1番上ですね、実際はそんな事はありませんが」


実際は全員同じくらいの立場だからな。

アルル達はちょっと違うが、幼子組みは全員同じくらいだ。

そもそも、フレイ達に上司、部下のなんたるかなんて分かるわけ無いが。


「へぇ、地位が高いのはリオなんだね」

「まぁ、そこまで何かやってないんですがね」

「リオさんはすぐに謙虚になりますね、あなたの活躍は相当でしょう?

 このサンズ地方を制圧したのもリオさんではありませんか」

「あれはコスモスに運良く働けたからだからな

 ここが無かったら、あんな事にはならなかった」

「あら、じゃあ、コスモスは戦犯かしらね」


エナさんは結構嬉しそうにそんな事を呟いた。


「まぁ、ここが平和になったなら、戦犯じゃ無く功労者でしょうね」

「じゃあ、お祝いに何か頂戴な、そうね、皆の笑顔が良いわ

 ただし表面上では無く、この居酒屋でどんちゃん騒ぎしたときの笑顔ね」

「それって、今日店が開く時間までここに居ろって事ですか?」

「勿論よ、折角来たんだし夜遅くまで遊んでいきなさいな

 ここは居酒屋だしね、でも安心して、ちゃんとジュースも用意してあるわ

 料理だって出してあげるわよ? 勿論タダで」

「じゃあ、お言葉に甘えて夜までのんびりしますよ」


俺達はエナさんが用意してくれた料理を食べながら

コスモスが営業する時間までゆっくりと待機した。

そして、あと数分でコスモスが開店すると言う時に

俺達はエナさんに言われ、2階の部屋で待機することになった。

理由はここの常連へのサプライズらしい。


「サプライズねぇ」

「良いじゃ無いですか、サプライズ、気分良いですよ? 間違いなく」

「だが、怒られたりしないだろうが」

「無いと思う」

「だと良いけどな」


俺の不安をよそにコスモスは営業を始めた。

開店と同時に何人もの声が聞えてくる。

流石はコスモス、常連は店が開くのを待っていたという感じか。


「ふぅ、今日も飲むぞ!」

「あぁ、そうだな」

「注文は?」

「生1つ、酌はリオちゃんでお願いだぜ!」

「おいおい、まだ言ってんのか? お前、リオちゃんはもう居ねぇよ」

「…分かっちゃ居るんだがよぅ、やっぱり酌して貰いたいし」


はぁ、まさかそんな事を言う人がまだ居るとはな、予想外。


「えぇ、良いわよ、その注文受けてあげる」

「え!?」


おっと、ま、このタイミングで出る感じかな。


「どうも、お久しぶりです」

「お、おぉ! り、リオちゃんじゃねーか!」

「えぇ!? な、何でここに!?」

「リオ、今日は仕事じゃ無いけど、頼めるかしら?」

「まぁ、求められてるならやりますよ、酌くらい」

「お、おぉ! り、リオちゃん! それにアルルちゃんに

 フランちゃんも居るのか! その他にも沢山カワイ子ちゃんが!」

「手を出したりしたら許さないよ?」

「分かってるよ!」

「はい、これ位ですね」

「おぉ! な、何か感激だぜ! 最高!」


本当に嬉しそうに飲むな、何かこっちも嬉しくなってくる。


「あら、今日は賑やかに…あら? リオちゃん来てたんだ」

「おぉ! ケイさん! あぁ、そうなんだよ!

 リオちゃん達が来てくれたんだ! 感激だぜ!」

「と言うか、ケイさんも喜ぶと思ったんだが、意外と普通だな」

「そりゃね、リオちゃん達は本部で良く過ごしてるしね」

「「「「何!?」」」」


ケイさんの言葉で居酒屋で飲んでいた兵士達が一斉に席を立った。


「ど、どういうことだよそれ!」

「そのままの意味よ、まぁ、城壁の見張りとかしか出来ないような

 府抜けたあんた達じゃ、会えないでしょうね

 まぁ、偶然街中でバッタリか、城壁見張り中に会える程度でしょうけど

 私は一緒に料理食べたり出来る訳よ、あ、これは本部勤め

 兵士大半の権利よ? 割と一緒にご飯を食べたりする程度なら

 あっさり承諾してくれるもの、いやぁ、一緒にご飯食べる度に

 かなり食事が美味しいわ、楽しいからね」

「ぐぬぬぅ! な、何と羨ましい!」

「俺達だって! 俺達だってぇ!」

「へっへっへ! ろくに動かねぇお前らにゃ無理な話だぜ!」

「ぐ、グラード! そ、そう言えばテメェも!」

「おうよ! 本部勤めだ! 美味いぜぇ? あの子達と食う飯は!

 めちゃくちゃ楽しそうにしてるリオちゃんも見られるって言う

 最高の特権付きだぜ! いやぁ、本部までのし上がった甲斐があるってもんだ!」

「こ、こんちくしょう! 羨ましい! マジで羨ましい!」


そんなに羨ましいことなのだろうか、ちょっと一緒に飯食うだけなんだけど。

席も割と離れてるし、何せ周りにはフレイ達が座るしな。


「リオさん、愛されてますねぇ、まぁ、分かりますけどね!」

「分からないで良い」

「まぁ! あなた達もそんな食事がしたいって言うんなら?

 精々門番頑張って出世するが良いわ! ま、無理でしょうけどね!」

「な、舐めるなよ! ケイさん! 目標が出来た俺達は強いぜ!」

「当然だ! グラードみたいなポンコツだってリオちゃん効果で本部勤めだ!

 それなら、俺達だって出来るに決まってらぁ!」

「誰がポンコツだ誰が! 出世も出来ねぇお前らよりは大分お利口だぜ!」

「舐めるなよグラード! 待ってやがれ! 俺達だって昇格するからな!」

「はっはっは! てめぇらじゃ、一生掛かっても無理だよポンコツ!」

「だと!」


まぁ、いつも通りだな…しかしまぁ、嫌われてなくて良かった。

と言うか、俺は本来騒がしいのが嫌いな筈なんだけど

こう言う空間にいるのも、最近じゃ楽しいと感じれるようになった。

フレイ達の影響かな……あいつらと居ると静かな時は無いし

いつの間にか1人で居ることも出来なくなったからな。

まぁ、感謝はしよう…それで今、楽しいと感じているのだから。


「そんなに本部勤めが良いなら、ここで勝負とかどう?」

「何だって! 本当か! ケイさん!」

「えぇ、そうね、私に飲み比べで勝てたら勝った奴は

 グラードの代わりに本部勤めよ」

「はぁ!? ちょ! ケイさん! なんだそれ!」

「面白そうじゃ無いの」

「だったら俺も混ぜろっての! 俺とケイさんに勝ったらだぜ!」

「それで良いわよ」

「よっしゃぁ! グラード! 見てやがれよ!」

「はは! てめぇらみたいなポンコツに負けるかよ!

 酌はどうする? えぇ?」

「当然リオちゃんで!」

「俺もそうだし!」

「私もよ、だからジャンケン!」

「じゃ、俺はフランちゃんで」

「なら俺はアルルちゃんだな、うん」


何で自然に俺達が酌しないと行けない流れになってるんだよ。

まぁ、面白そうだからやってやるがな。


「じゃあ、俺はそこの銀髪のカワイ子ちゃんで!」

「残念ですが、私は殿方に酌などしませんわ

 酌をする相手は私が気に入った相手のみなのですわ」

「な、何かお嬢様って感じだ! より可愛いじゃねーか!」


気に入った相手にしか酌をしないのか

でも、割と飲み物注いでくれるんだけどな。

あ、気に入ってくれてるって事か? だとすれば嬉しいな。


「っしゃー! リオちゃんの酌の権利はこの私の物よ!」

「クソ! ケイさん、こう言う時はスゲー力あるんだよな!」

「何とでも言いなさいな! さぁ! 勝負よ勝負!

 負けた奴は虚しく自分で注いで飲みなさい!」

「く、くっそー…だが、この戦いに勝つことが出来れば!

 本部勤めだ! そうなりゃ、何だって良いぜ!」

「何言ってんだよ! 絶対に死守してやっからな! 

 てめぇらなんぞにリオちゃん達と食事をする権利をくれてやるかっての!」


そんなこんなでハイテンションのままの飲み比べが始まった。

その結果、勝利者は殆ど分かりきっていたことだがケイさんだった。

当たり前と言えば当たり前だ、あの人スゲー酒に強いし。


「くぅ…か、勝てねぇ…」

「おぁっはっは! 出直してきなさい!

 私に勝とうなんて、何千年も速いのよぉ~!」

「うぅ、完全に酔っちまった」

「楽しそうですわね」

「シルバーさん、お酒飲めるんですね」

「一応20歳ですので問題はありませんわ」

「にゃにぃ! シルバーと言ったわねぇ、私と飲み比べなさ~い」

「え? しかし、あなたはもう大分ヘロヘロで」

「問題無いわぁ、これ位ハンデよ、ハンデ~」

「…まぁ、良いですわよ? 皆様が騒いでる間に

 ちょっとやってみたいと思っていましたの」

「ノリ良いじゃないのお嬢様のくせに~、おほほ~

 勝つのは私よ~、私~」

「いいえ、勝負となれば勝つのは私ですわ、勝負には負けませんわ」

「じゃ~あ~、初黒星を付けてあげるわぁ~」

「黒星はあなたの方ですわ!」


何故か始まったシルバーとケイさんの飲み比べ。

ケイさんはかなりベロンベロンだったが、それでもかなり飲んだ。

だが、シルバーも負けずとお酒を何杯も飲んだ。

その結果勝利したのは…まさかのシルバーだった。


「ぐへぇ~…」

「ヒック、まだまだですわね…」

「し、シルバーって意外と飲むんだな」

「かなり飲みましたね、ジョッキ何杯ですか」

「ま、まさか、このケイ様が飲み比べで敗れるとは~…」

「ハンデ有りで勝てるほど、私はヤワでは無いのですわ

 おかわりくださいまし」

「え? ま、まだ飲むのかい?」

「えぇ、まだまだ全然余裕ですわ」

「ま、マジか…」


その後、シルバーは何杯もの酒を飲み干した。

まさかここまで飲むとは意外だったな、シルバーの奴がねぇ。


「ふぃ…の、飲み過ぎましたわ」

「シルバー、大丈夫か?」

「う、うん、流石に飲みすぎだよ」

「お、おぉ~、トラさん、リオさん~」

「「へ!?」」


な、何だ!? シルバーに担がれたんだけど!?


「お星様を見に行きましょう」

「え!? え!?」

「あ! し、シルバーさん!」

「お代は置いておきますわ~」

「ちょ、ちょっとあんた! これ多すぎ! 

 それに今回はタダにするつもりで」

「お釣りは取っておいてくださいませ~」

「ちょっと! シルバーさん! リオさんとトラさんを担いで

 何処行くんですか!? ねぇ!」

「あっと、アルル、このお代返しといて、タダにするつもりだったし」

「え? でも、結構飲んでましたよ? 大丈夫なんですか?」

「大丈夫だよ、どうせ趣味だしね、貯金はまだまだあるし問題無いよ」

「は、はぁ、そうですか」


いや、まぁ、お代は良いんだけどさ、それより助けて欲しい。


「待って! リオちゃーん! お星様なら私も見たい!」

「あ、フレイ駄目、走ったら危ないよ」

「うふふ~、綺麗なお星様を見ましょうね~」

「ちょっと待ってシルバー! 何処行くんだ!? おい!」

「行くなら付いていくから、担ぐのは!」


だが、シルバーは俺達2人の言うこと等聞かずに、そのまま走り

何故か城壁の上にまで行き、夜空を見上げた。


「綺麗ですわ~」

「そ、そうだな…うっぷ」

「う、うん…うえっぷ」


俺達は全力で走るシルバーに振り回されて結構酔ってしまった。

酒を飲んだシルバーって、意外と面倒なんだな…


「……うむぅ」

「え? ちょ! あだ!」


その後酔いつぶれたシルバーは俺を下敷きにして眠り出した。

か、勘弁して欲しい、あ、足場が不安定な状況でこれはちょっと怖いな。

その後、俺達は後から付いてきたアルル達に連れられ

サンズ地方の本部まで戻り、シルバーを寝かせた。

まぁ、楽しかったが、シルバーの意外な一面を見てしまったな。

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