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洗いっこ

「じゃあ、次は私が洗う!」


俺にとって最悪拷問になるかもしれない時が来た。

力加減を完全に忘れているフレイに背中を洗って貰うとき。

正直言って、こいつに背中を洗って貰うと言うのは恐怖しか無い。

だって、怪力娘なのに更に加減を忘れて背中を洗ってくるんだ。

マジで地獄でしか無いと思う、あれはさ。


「えっと、フレイ…ちゃんと手加減してくれよ?」

「うん! ……所で、手加減って何? まぁ、いいや!」

「ちょ! 良くな! いだ! 痛ぇって! 加減しろ加減!」


フレイの激しい背中洗いには一切の手加減が無い。

分かりきっていたことなのだが、やはりこれはキツい!

何か背中が焼けるような感じ! 超痛い!


「ぬぉぉ! 止めろぉ! 痛いって言ってんだろうがぁ!」

「痛いのかな?」

「痛いんだよ! お前全然力加減できてないんだから!」

「ご、ごめんね、ちょっと弱くやるよ」


意外な事にちゃんと手加減してくれるという。

しかし、さっきと殆ど変わってはいない。

やはり手加減がかなり苦手だから何だろうな

そもそも今までやったことがあるかすら怪しい。

そんな奴がいきなり手加減なんて出来ないか。

でもまぁ、最初と比べりゃ楽だけどさ、まだね。


「お姉ちゃんはやっぱり背中を洗うのは上手いね」

「こ、これでも、何度かこう言う洗いっこはやったからな

 でも、まだ背中は痛いんだけど

 なぁ、フレイ…背中、赤くなってないか?」

「あ、赤くなってる…よ」

「やっぱりなぁ」


あんなに力一杯やられたら、そりゃあ背中も赤くなる。

でも、皮がへげないだけマシだろう。

皮がへげるほどの力ってどれだけか分かりゃしないが

ほぼ間違いなくフレイならそれ位の力は出せるだろうし

あり得ない可能性では無いといえる。

マジで身体強化系の魔法は怖いな、本当によ。


「どう? 今は大丈夫?」

「まぁ、最初よりは」

「よかったよ」


ルーリアは一安心したように一息ついた。

しかし、まぁ、俺の方はまだマシだったりするんだよな。

アルルの方と比べると。


「あだだだだ! 痛い! 痛すぎですよ!」

「手加減! してるんですけどね~!?」

「嘘です! 絶対に一切手加減無しです!」

「ちゃんと! 手加減は! して居ますわ!」

「一言一言から力バリバリ入れてるの丸分かりですよー!!」

「勘違い! ですわ!」

「ギャー! せ、背中の! 背中の皮膚がぁ!!」


お仕置き故に仕方ないとは言え、あれは絶対に痛いだろう。

何かシルバーの手の甲に血管浮いてるしさ。

あれはかなりガチだな、一切の情け容赦ない。


「ウギャー!」

「少しは反省しました?」

「う、うぅ…」

「どうですの? もうリオさんに変な発言をしないと誓えますか?」

「リオさんに対しての永遠の愛なら誓いましょう!」

「反省の色は無いようですわね、ここまでやっているのに

 ある意味では見上げた根性ですわ、まぁ、その方向は間違っていますが!」

「ギャアー! いだだだぁぁ!」


アルルの悲鳴をよそに、俺達は俺達でのんびりと体を洗う。

うん、何かほっくりするなぁ、あのやり取りを見た後で

自分達の現状を見ると、何かさぁ。


「どう? 綺麗になった?」

「ま、いい位だとは思うぞ」

「じゃあ、今度は前だね!」

「…やっぱり、やるのか? 別に前は自分で出来るだろうに」

「楽しそうなことをするんだ! さぁ、3人で洗いっこ!」

「…はぁ、分かったよ」


前をお互いに洗うってのは初めてだな、一度も無い。

何か斬新な気分だ。


「じゃあ、行くよ、えい!」

「んー、ちゃんと加減できてるな」

「まぁね」

「それじゃあ、その間、私は後ろからお姉ちゃんの頭を洗うよ」

「え? 何? 俺は板挟みって感じで洗われるの?」

「何か面白そうだよね、やろう!」

「おー!」

「はぁ、じゃあ、俺は何すれば良いんだ? フレイの方を洗えば良いのか?」

「じゃあ、それで!」


何て言うか、こう言う格好でお互い洗い合うってマジで斬新だな。

正直子供じゃ無いと考えつかない発想なきがする。

大人になってまでこんな事をする訳ないだろうしな。


「ん」

「おぉ! やっぱりここはぷにぷにしてるね!」

「そりゃそうだろ」

「私の方もぷにぷにしてる?」

「ん、まぁ、そうだな」

「あはは! ぷにぷにしてもぷにぷにされても面白い!」


そんな風に感じた事など1度たりともないんだがな。

そりゃそうか、こんな事になったこと、一度も無いし。


「わしゃわしゃ!」

「うぐぅ、今更だが相手の体を洗いながら頭洗われるのって

 ちょっとキツくね? シャンプーが目に入りそうだし

 何か頭が少し振られるから、頭も割と」

「じゃあ、もうちょっと力を抜いてやるよ!」

「そうしてくれ」


少しは振動が無くなって、一応フレイの方をちゃんと見られるようになった。

これなら作業しやすいだろう。


「えい! えい!」

「フレイ、腹ばかり洗ってくるなら、やっぱ自分で洗った方が速いと思うんだが」

「おぉ! ごめんごめん! ぷにぷにするの楽しくてつい!」

「はぁ、これだから自分で洗いたかったんだ」

「うん! ちゃんと他の所も洗うよ!」


一応俺の言う事を聞いてくれたようで、フレイは他の場所も洗ってくれた。

お互いで洗い合ってるんだし、当然なんだけども。


「くぅ! り、リオさんがフレイさんとウィンさんに挟まれて!

 色々と洗われています! これは、近くで見るしか!」

「あら、そんな事を私が許すと思っていますの?」

「離して下さいシルバーさん! 私はリオさんとフレイさん達が

 お互いを洗っているあの姿を近くで見なくてはいけないのです!

 その為なら、死んだって構わないという覚悟を持って!」

「あなたのその不純すぎる覚悟なんぞ興味ありませんわ!」

「うぐぐぅ! 泡で滑ると思いましたが意外! 滑らない!」

「私の怒りの方が強いと言うことですわね」

「あ、あー! あ、あんな所にUFOがぁ!」

「おや、何処ですか?」


え? あのシルバーがあんな幼稚な手に引っ掛かるのか?


「チャンス!」

「なんて、私が引っ掛かると思いまして?」

「うげぇ!」


まぁ、そんな訳ないよな、何か安心したよ。


「ふふふ、さて、私を馬鹿にしたことを後悔なさいな」

「あー! 私の! 私の桃源郷がぁ! 理想の楽園がぁ!

 私も! あの中に挟まってリオさんに前の方を洗って貰いたい!

 そして私もリオさんを洗って、ラッキースケベを起したいのに!」

「あなたのその不純すぎる願望、断罪ですわ!」

「あ、アー!! つ、冷たぁ! 超冷たい! 凍える! 凍えてしまうぅ!」


……聞えない聞えない、暴走気味のアルルの声なんて聞えなーい。


「……うぅ、私も混ざりたい、リオに洗って欲しい」

「あ、お姉ちゃん、私じゃやっぱり駄目だった?」

「そんな事無い! ウィングに洗って貰っても嬉しい」

「良かった、でも、気持ち分かるよ、私もリオちゃんに洗って欲しい

 普段あんな事しないから、フレイちゃんが羨ましいよ」

「じゃあ、私達も混ざろう」

「…良いのかなぁ?」

「多分大丈夫だと思うよ、ほら、楽しんだ者勝ちってね」

「うん、メルトの言うとおり、行こう」

「分かった…ね、ねぇ、リオちゃん」

「ん?」


恥ずかしそうにしているウィングと何か嬉しそうにしてるフランがやって来た。

何だ? さっきまで向こうで仲良く洗い合ってたのに。


「リオ、私達も混ぜて欲しい」

「なんでだ? 多くても3人がげんか」

「うん! やっぱり沢山で洗った方が良いよね!」

「え!?」


何か2人は妙に乗り気だ、何でだ? 面倒になるだけじゃ。


「後、皆でリオちゃん洗ったらどうなるか気になるし!」


何でそうなる!? 今の状況でも結構面倒なんだけど!?


「はぁ!? 何でだよ! ただでさえこの状況でも窮屈で!」

「沢山で洗った方がきっとすぐだよ! 面白そうじゃん!」

「だ、だったら別れて洗えば良いんじゃ無いか?」

「それじゃあ、さっきまでと一緒だし、やっぱり変わった事したい!

 だから、普段構ってくれないリオちゃんを皆で洗いまくるの!」

「は、はぁ!? ま、待て、それはちょっと」

「賛成!」

「面白そう」

「ウィングまで何言って!」


何で俺が中心なんだよ! 嫌すぎるんだけど!?


「じゃあ、行くよ!」


結局俺の言うこと等聞いてくれず、このまま開始することに。

いや、このままじゃ無いな、何故かフレイが俺の後ろに回り

いきなり羽交い締めをしてきた!


「うえ!? マジで!? ちょっと待てフレイ!

 俺を拘束する必要はあるのか!? なぁ!」

「逃げちゃうじゃん」

「あ、どうせならトラちゃんも呼ぼうよ、皆でやりたい」

「ウィング! 何でお前もそこまで乗り気なんだよ!」

「呼んだ?」

「トラもすぐ来るなよ!」


俺達の会話を聞いていたのか、すぐにこちらにやってくるトラ

何だか妙に嬉しそうなのは気のせいだろうか。


「向こうは暇だし、こっちの方が面白そう」

「面白いとかじゃ!」

「じゃあ、お2人も行きます? 楽しそうですし」

「うん」

「分かった」


マナが変な気を遣い、マルとメルもこちらに向わせてきた。

そして、何故かこちらに向けて親指を立ててくる。


「マナも変な気を遣うな! 後、親指立てるな!」

「うん、それじゃあ、洗っちゃおう!」

「ま、待て、お、落ち着け…お、お前らの望みは何だ?

 い、言って見ろ、ほら、叶えられる範囲なら叶えてやるから!

 だから止めろ!」

「私達の望みは多分だけど、リオちゃんと遊ぶことだよ」

「じゃあ、遊んでやるよ! だから、これは止めてくれ!」

「えっへっへ、今やりたい遊びはリオちゃんを全員で洗うことなの!」

「ま、待て! そ、それはぁ!」

「じゃあ、行くよぉ!」

「うわぁぁあ!」


全員一斉に俺の体を触り、全身を洗い出した。

何か! くすぐったい! くすぐったい!

超くすぐったい! 待って! これは不味い!


「ま、待て! わぷ!」


こ、今度は顔まで洗ってきたぁ! 危ない! 目が開けられん!

その間にも髪の毛もワシャワシャされてるし、背中も洗われてるし!

何か色んな所が触られすぎて、もう訳分からん!

そして何よりくすぐったい! 笑えないこの状況で

くすぐったいのは不味い! 何か、我慢してるのがキツい!

口を開けたりしたら泡が口に入るから笑えないんだよ!

マジでこれは勘弁して欲しい! 処理が! 頭の中の処理が追いつかん!

必死に逃げ出そうとしても、フレイに羽交い締めにされてるから

どう頑張っても逃げられない! フレイの奴め!


「や、止めろ! 限界! 限界だから!」

「何だか新鮮、リオちゃんとこんな風に遊ぶことあまり無いからなぁ」

「だから! あ、遊んでやるから! だから、止め、あひゃ! ま、ま!」

「リオ、足の裏弱いんだ」

「腋も弱いよ」

「同時にやったらどうなる?」

「やったこと無い」

「やろう」

「待て! それは待って! ま、くふ、あは! ま、あははは!!」

「おぉ! リオちゃんが凄い笑ってるね! うん! 新鮮!」

「や、やめ! きょ、強制的な笑顔は! あはははは!」


その後も、何か全身を洗うと行っておきながら、くすぐられてしまった。

もう…無理、笑い死ぬ、笑い死んでしまう…い、息も苦しい。


「えーっと、み、皆? 流石にそこまでにした方が良いんじゃ」

「え? 何で?」

「凄く苦しそうだし、ほら、こう言うのってやっぱり皆で楽しまないと

 今のままじゃ、周りが楽しんでばかりでリオさんは楽しめてないと思うよ?

 きっと苦しいばかりだからさ」

「……はーい」


メルトのお陰で…よ、ようやく、か、解放された、死なずに済んで良かった。


「はぁ、はぁ…あ、ありがとう、メルト」

「しかし、本当に懐かれてるね、リオさん、普通はこんな事無いよ?」

「な、懐かれてるって、い、言うのか?」

「言うと思うよ、そうじゃないと、中心にはいないと思う」

「い、いじめもいじめられてる奴が中心だろ? 

 それは懐かれてると言えるのか?」

「周りに悪意があるか悪意が無いかの違いだよ、それは

 で、今回は悪意が無い、だからいじめじゃ無いよ」

「分かってるよ、こいつらがそんな事しやしないって事くらい」

「それは良かった、大事な友達を部下を疑ってるのかなって思って」

「疑うか、疑ってるならここには居ない」

「ごもっとも」


はぁ、ま、とにもかくにも何とか解放されて良かった。

本当に…妙な懐かれ方をするのは嫌だな。

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