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森の賢者さま  作者: 山原望
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俺、災害に備える。

 良仁の朝はランニングから始まる。

 自宅から村道に続く砂利道を1往復約7キロ。それが終わると筋トレをして汗をシャワーで流す。

 この家の給水システムは地下水をポンプで汲み上げ給水タンクに注入、そこから各蛇口へ流れて行くようになっている。お湯は電気温水システムがありスイッチを入れると30分ほどでお湯が沸くようになっている。ずっと流しっぱなしにしておくと加温が追い付かず水になってしまうが、こまめに止めていれば急に水になることもない。

 シャワーが終わると朝食。大抵は簡単に済ませる。

 元妻が料理をしなかったのでこちらも鍛えられていて、男性にしては料理上手な方と自負している。自負した後で落ち込むのが常だが。

 朝食が済むと畑の手入れ。

 ジャガイモは収穫済みで、今は家庭菜園の本を片手にトウモロコシの栽培に挑戦している。土壌がいいのか順調に育っており、あまり苦労は無い。

 畑仕事が済むと昼になっているので昼食。収穫したジャガイモを簡単に調理して済ます事が多い。午後は日によっては猟に出かけるし、最近凝っているパン作りの時間に充てる事もある。ゴミ焼却炉かと思っていたのが実はピザ窯で、ネットで調べたらパンも作れるとの事だったので。いずれはピザも作りたいと思っている。

 夕方になり日が落ちてくると夕食の時間だ。時間をかけ凝ったものを作ることが多い。

 食べ終わるとバルコニーに出てウィスキーグラスでちびりと一杯。自宅周辺は真っ暗闇だが、空を見上げれば満天の夜空が広がっている。都会では味わえない贅沢なひと時である。

 この家と土地を手に入れたのは偶然だが、おかげで良仁は充実した毎日を過ごせていた。


「何だか変な天気だねえ」

 ジープの給油にいつものガソリンスタンドに行くと店長が言った。

 空を見上げてみると確かに雲が渦を巻いているような、妙な状態である。

「嵐でも来るんですかね」

「どうだろうねえ。天気予報では何も言ってなかったけど」

 40年以上ここに住んでて初めて見るよと店長は笑う。

「ほい、後携行缶ね。軽油入れておくかい?」

「あ、それでお願いします」

 携行缶に軽油を入れ、助手席に運び入れてもらう。

「ありがとうございます。じゃあ今日はこれで」

「毎度どうもね。気を付けて」

 店長に見送られてジープを走らせる。空は相変わらず変な雲が浮いていて、雨が降るのか降らないのかはっきりとわからない状態である。

「帰ったら一応雨対策しておくか」

 そんな独り言を言いながらアクセルを踏み込む。ディーゼルエンジンの力強いサウンドを心地よく聞きながら短いドライブを楽しむのであった。


 「と、言っても大してやることは無いんだが」

 元々バンガロー自体はしっかりとした作りである。雨漏りも無いのだが、念の為各部屋を見回り戸締りを確認しておくことにした。2階には4部屋あり、うち一部屋を寝室にしている。もう一部屋は先日大量に買い込んだ本が置いてある「書斎」である。残り二部屋は今のところ空き部屋だ。ざっと見回り問題が無い事を確認。

 1階はリビングでキッチンもある。風呂とトイレは別棟の小屋にあるので一旦外に出なければならないが、おかげで風呂場は広い。トイレはバイオトイレという排泄物を微生物の力で分解させるシステムになっている。年2回ほど内容物を取り出し新しいおがくずと入れ替える必要があるが、下水不要のエコなトイレだ。回収した排泄物は有機肥料として活用可能である。

 外側をぐるりと見回り、こちらも問題無い事を確認する。

 さて、と一息つくとぽつぽつと雨が降ってきた。空を見上げると奇妙な形の雲が竜巻のように回り始めていた。土砂降りになるかもしれない、今日の午後は何もせずだらだらしようと決めて良仁はログハウスに入った。

 その直後、案の定大雨になった。

 良仁は知る由もなかったが、雨は彼のログハウスを中心にした半径5キロしか降っていなかった。そして真上には例の不思議な雲が、まるで天に穴を開けるドリルのようにぐるぐる回っていた。

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